ノーノー達成の日ハム・細野晴希。“覚醒間近”の怪物が、異色のフォーム改造で手に入れた「究極の一球」
3月31日、プロ野球史上91人目のノーヒットノーランを達成した北海道日本ハムファイターズの細野晴希(24歳)。
球史に名を残したプロ3年目の躍進の裏には、「新たな投球フォームへの挑戦」があった。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、覚醒が期待される細野の“独特の思考”に迫っている。
◆「疲れにくく、長いイニングを投げられるように」
今シーズン、初の開幕一軍入りを果たし、初登板でノーヒットノーランを達成。その後もローテーションの一角を担っている細野。
過去2年間はドラフト1位として期待されながらも、2024年が2登板で0勝0敗、2025年は6登板で3勝1敗と、その期待に応えるような数字は残せていなかった。「一度も1年間投げられなかったので悔しさはすごくありました」と本人も振り返る。
そこでプロ3年目、1年間投げ切るために、1月の自主トレである選手の元へ弟子入りした。それが、日本ハムのエース・伊藤大海だ。
「大海さんは入団してからずっと規定投球回を投げられているので、(自主トレに)秘訣があるんじゃないかと思っていたタイミングで、『自主トレの弟子、いつでも待ってます』という記事を見て、すぐ連絡しました」(細野)
参加した自主トレで、細野は投球フォームの変更を決断する。
「(腕の振りを)ちょっと横からにしました。いちばん心強かったのは、大海さんが『俺も入団してから腕下げたよ』と色々教えてくれて。大海さんぐらいのレベルでもフォームを変えたりするんだと思って変えました」(細野)
横から投げるフォームへの転換――。昨年までは上から腕を振り下ろしていたが、今シーズンはわずかに腕を下げ、横から投げている。過去の映像と比べてみると、腕の位置にはっきりと違いがあることがわかる。
このフォームの変更に踏み切った最大の理由について、細野は次のように説明する。
「横から投げたときがいちばん身体に負担がかからない。昨年まではたぶん腕が遅れてしまっていたんです。正面を向いているのに、肩が後ろに向いていたらズレるじゃないですか。身体が正面を向いているのに対して、真横に腕があったら(肩への)負担も少ないので、そういう意図でやっています」
フォームの変化を今度は横から見てみた。注目すべきは、身体がホームへ向かって正面を向いたときの腕の位置だ。昨年までは腕が身体から遅れて出てくるようなイメージだったのに対し、今年のフォームは腕が身体の真横にあるイメージ。わずかな差だが、腕の振り遅れが解消されたことで、肩への負担が減ったという。
細野は横から投げる感覚を掴むために、試合前にはメディシンボールなどの大きなボールを使い、身体と腕を同時に回旋させる動きを繰り返し行ってきた。
1年間投げ切るための、負担のかからないフォーム。その成果は確実に表れている。
「疲れにくくなりましたし、長いイニングを投げられるようになりました。球速も以前だと右肩下がりだったんですよ。イニング追うごとに球速が落ちていたんですけど、今年は一回(球速が)下がっても最後上がったりしているので、そこに成長を感じています」(細野)
これまでのプロ2年間、最長で7イニングまでしか投げられなかった細野。しかし、今シーズンは既に2試合で完投している。
さらにストレートのイニングごとの平均球速を見てみると、昨年までは1回の球速と7回の球速で6キロも下がっていたが、今年は1回から9回までほとんど球速は変わらない。
実際、ノーヒットノーランを達成した試合では、100球を超えて迎えた9回に150キロを連発していた。負担のかからない投げ方によって、最後まで強いストレートを投げることができているのだ。
◆「ストラックアウトをイメージ」独特の思考を実践
さらにもうひとつ、横から投げることで改善された要素がコントロールだ。
細野自身、「投げたいところにしっかり投げられているんじゃないかなっていうのは、ここまでやってみて感じます」と手ごたえを感じている。
投球でのストライクの割合を見ると、昨年が62.0%だったのに対し、今年は67.2%。9イニングあたりの平均のフォアボール数を表す与四球率も、昨年の5.88から今年は2.50に大きく改善。ここまで、12球団平均(2.82)よりも低い数値となっている(※数値は5月29日時点)。
横から投げることで明らかにコントロールが良くなった。
「(腕が)上からだと“点”なんですよ。上からだとパンって(リリースポイントが)一瞬だけなので。横から投げると、投げる場所に対して“線”で投げられるので、イメージしやすいのかなって。横からのほうがラインに対して長く捉えられるので、真っすぐとかはとくにイメージ通りに投げられることが増えました」(細野)
投げるボールの軌道、いわゆる“ライン”をイメージする時、昨年はオーバースローのため“点”で投げるイメージだったのが、今年は横から投げることで“線”で投げるイメージになったという。実際、5月の楽天戦では、フォアボールを1つも出さず、プロ入り初の無四球完投を果たした。
さらにコントロール向上の裏には、この試合から描いた“独特の”イメージがあった。
「小さい頃にバッティングセンターのストラックアウトのコントロールがめっちゃ良かったんですよ。バッターが立つとコントロールが悪くなるなと思ったら急に閃いて、ストラックアウトの1から9のパネルを試合でイメージして、『何番』とか言いながら投げるようにしたら、コントロールが良くなりました」(細野)
なんとストラックアウトをイメージしながら試合で投げることで、コントロールが良くなったという。
◆球界の強打者・浅村栄斗も脱帽した“魔球”
横から投げるフォームへの変更と独特の思考により成長を遂げている今シーズン。
しかし、細野の天井は計り知れない。もうひとつ進化を遂げているものがあった。それがスライダー。いったいどのように進化したのか?
「(去年までは)カーブまではいかないですけど、斜めの変化球だったかなと思います」(細野)
去年までのスライダーは、斜めに鋭く落ちる変化だった。しかし――。
「アームアングルを下げたことで、今年はスイーパーっぽくなって横の変化幅が増えたぶん、去年より真横に曲がるようになりました」(細野)
今年は横から投げることで、横への変化が大きくなったというスライダー。なかでも、究極の一球を投じた対戦が、5月5日の楽天戦だ。
打席には、通算2000本安打を達成している球界を代表する強打者・浅村栄斗。細野は1ボール2ストライクと追い込み、最後はスライダーで見逃し三振に仕留めた。
このときのスライダーは、あきらかなボールゾーンからストライクゾーンへ、大きく横に変化していた。
「見逃し三振を狙って、外からだと一瞬ストレートっぽく見えるので、手が出ないかなと思って、外のボール球くらいから曲げるようなイメージで投げています」(細野)
狙い通りの一球で見逃し三振を奪ったこの魔球。では、バッターからはどのように見えていたのだろうか。対峙した浅村が証言してくれた。
「外のボール球くらいからグッて曲がってきたのでボール球と思ったんですけど、中に入ってきて手が出なかったという感じです。やられた、という一球になりました。細野君のスライダーは曲がりがすごく大きくて、ちょっと独特というか、曲がり幅は普通のピッチャーよりも大きいなと思いました」
フォーム変更で進化を遂げたストレート、そして独特の曲がり幅を手に入れた変化球。この2つを武器に、プロ3年目、まさに覚醒のシーズンを突き進んでいる細野。
「まずは規定投球回を投げることと、二桁勝つこと。一年間怪我せずに回るということを第一にしてやりたいです」と今季の目標を語り、「将来的にはどういう投手になりたいと思いますか?」という質問には、力強くこう答えた。
「サイ・ヤング賞をとれる投手になりたいと思っています」
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)






