ビーチバレー界期待の姉妹ペア 高島屋で会社員として勤め、山の中の“手作りコート”から世界へ
灼熱の砂浜を舞台に熱戦を繰り広げるビーチバレー。今、この競技で大きな注目を集める姉妹ペアがいる。
現在日本ランキングトップに立つ松本恋(28歳)と松本穏(26歳)、通称「れんのんペア」だ。
「ロス五輪でメダルを取ることがいちばん大きな目標」と語る姉妹の挑戦を、テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』が追った。
◆練習場は海ではなく“山の中”
7月、愛知県犬山市にある姉妹の練習場所へ向かった。そこは海ではなく、なぜか山の中。さらに奥へ進むと、突如としてビーチバレーコートが現れた。
実はこの自然豊かな場所にあるコートは、松本姉妹専用のコート。「この支柱や鉄もお父さんが全部(設営した)。(私たちは)なんもしてない」と穏が明かす通り、父・健一さんがたったひとりで作り上げたという。
健一さんはこう振り返る。
「ここは何もないただの雑木林だったんですが、ちょうどコート一面分の平らな土地があって、これなら作れるなと。海に行くまでに1時間くらいかかるので、家の近くにコートを作っちゃいました。先立つものがあるわけでもないので借金して、まだ全然返済できていないです」
借金してまで自宅近くの雑木林を購入。土地をならし、砂を運び入れるなどすべてひとりで行った。
「砂が少ないからもうちょっと砂を入れようかなとか。手を加えた結果、6年半でこれぐらいって感じですね」(健一さん)
すべては娘たちのため――。お金や労力を惜しまない父の愛情に支えられ、姉妹は家のすぐそばでビーチバレーに打ち込める環境を手にしたのだ。
◆「姉妹でできる」ビーチバレーを始めたきっかけ
愛知県で生まれ育った2歳差の姉妹は、小学生のときにバレーボールを始め、県内の強豪・誠信高校では主力メンバーとして活躍した。ビーチバレーを知ったのは、その高校時代。
「もともとビーチバレーっていう存在をそんなに知らなくて、お父さんに『2人で出られる試合があるよ』って言われて、『2人でできるのっていいね』って。妹が卒業するのを2年待って、自分が20歳、妹が18歳のときに始めました」(恋)
「姉妹でできる」という魅力に惹かれ、妹の穏が高校を卒業した後、ビーチバレーに転向。すると、わずか3年にしてジャパンツアー初優勝。結成から5年で全日本選手権の日本一に。2025年には日本代表に選出され、現在日本ランキングでトップに立っている。
その歩みを支えてきたのが、父・健一さんと母・尚江さんだ。父はコートを作っただけでなく、未経験だったバレーボールをイチから勉強。練習でのボール出しやコーチングまで担当している。母の尚江さんも主にボール拾いで練習をサポートしている。
こうした両親の献身的なサポートについて、穏は素直な思いを語る。
「自分たちはコーチ代とか払っていないので、ある意味ボランティアでやってくれている。いちばん得してないのは親たちなのに、毎日3時間ここで汗をかいて練習してくれると思うと、ありがたいなと思います」
姉妹が競技に専念できるのは、家族の支えだけではない。4月から「ジェイアール東海高島屋」に揃って入社。以前はアルバイトをしながら競技を続けていたが、就職したことでよりビーチバレーに打ち込めるようになった。
「サポートがすごく大きくて、好きなように海外にも行かせていただけるのでありがたい。社員の方がめちゃくちゃ応援してくれて、『この前も試合見てたよ』とたくさん声をかけてくれるので嬉しいです」(恋)
◆姉妹だからこその“武器”と、恩師が指摘する“弱点”
家族、そして周囲の人たちに支えられながら、夢を追い続ける松本姉妹。そんな2人に強さの秘訣を尋ねると、穏は「8年組むペアって日本には他にいない」、恋も「8年間ずっと同じペアを組んでいることがいちばんの強み」と声を揃えた。
五輪を目指す選手は平均4年のサイクルで新たなペアを結成しているが、8年もの間ペアを組んでいるのは松本姉妹だけ。長い時間をともにする姉妹だからこその武器がある。
「一言で表すとリズム。あまりボールを高く上げずに、リズムでポンポンポンって。結構6人制に近いようなバレーをやっています」(恋)
6人制のバレーボールとは違い、2人でプレーするビーチバレーでは、レシーブした選手がすぐに攻撃へ向かう必要がある。そのため高いトスで時間を作るのが一般的だが、姉妹は低いトスでテンポ良く攻撃する。
こうしたリズムの良い攻撃に姉妹ならではの“阿吽の呼吸”も加わり、得点を量産。日本ランキングでトップに立っているのだ。
しかし、今シーズンはライバルに優勝を阻まれることも。
恩師である誠信高校の中村与直監督は「『サーブをもっと磨け』とずっと言っている」と語り、課題はサーブの精度にあると指摘する。7月の大会でも恋のサーブは相手に簡単にレシーブされ、得点を許していた。
「精度良く速いサーブでコートの角を狙ったり、相手の右肩から外れて角に行く、斜めに切れて角に行く、前に落とす、ネットインを狙う。そういうサーブの精度を高め、前後左右に揺さぶる練習をしないとダメです」(中村監督)
そこで取り組んだのが、サーブで相手を崩す練習。コートにフラフープを置き、輪の中を目掛けてひたすらサーブを打ち込む。
「フラフープを置いているけど、相手がいる意識を持つように。相手の肩付近に狙う意識というか、そういう設定にして打つようにしています」(恋)
相手の立ち位置を想定し、奥に置いたフラフープはレシーブしにくい肩付近を狙う目標に設定。一方、手前のフラフープは、相手の手が届かない目標として狙っていた。
さらにラインギリギリを狙う練習も。こうした前後左右に揺さぶるサーブを、来る日も来る日も磨き続けた。
◆3度目の日本一へ、そしてロサンゼルス五輪へ
そして迎えた、ロス五輪を見据えた重要な大会、全日本選手権。
早速磨いてきたサーブが冴えわたる。相手の肩を狙ったサーブで得点を重ね、トーナメントを難なく勝ち上がると、決勝戦でもサーブが炸裂した。
妹の穏が相手の前に落ちるサーブで崩して得点すれば、姉の恋も相手の肩口を果敢に狙う。サーブで前後左右に揺さぶり、姉妹の武器であるリズムの速い攻撃も威力を発揮し、見事、3度目の日本一に輝いた。
試合後、姉妹は充実した表情で手応えを語った。
「サーブ良くなったと思うよね。サーブで崩れると楽だなっていう試合展開が今年は多かったので、これは一個成長かな」(穏)
松本姉妹の本当の挑戦はここからだ。目標は2年後のロサンゼルス五輪。夢に突き進む姉妹の戦いは続いていく。
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)







