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元祖グラマー女優・烏丸せつこ、大杉漣さん最後の主演作で“ノーメイク”の死刑囚人役

©テレビ朝日

1979年、6代目クラリオンガールに選ばれて芸能界デビューを飾り、CM、ポスター等でセミヌードを披露した烏丸せつこさん。日本人離れした抜群のプロポーションは男性のみならず、女性をも魅了し、ポスターは貼るそばから盗難が相次いだ。

映画『海潮音』(1980年)で女優デビューを果たし、主演映画『四季・奈津子』(80年)で日本アカデミー賞主演女優賞・新人賞をはじめ、数多くの映画賞を受賞。映画、テレビドラマに多数出演。ラジオDJ、歌手としても活躍。今月6日(土)公開の映画『教誨師(きょうかいし)』では女性死刑囚を熱演。完成披露試写会が行われた日、烏丸さんにインタビュー。

©テレビ朝日

 

◆若い頃はおっぱいの話ばかりで…

-烏丸さんを最初に見たのが『四季・奈津子』、日本人離れしたプロポーションが衝撃的でした-

「みんながそんなことを言ってたけど、私はなんとも思ってなかった。おっぱいが大きくてイヤだなあと思ってただけ。デビューのときがそういうことだったでしょう?

そのことばっかり取り上げられて、それ一色になっていくわけじゃない。それが嫌だなぁっていうのはずっと思っていた」

-クラリオンガールが最初ですよね-

「そう。でも、あの前に、NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)のオーディションをずっと受け続けていたの。6回ぐらいね。そのときに所属していた事務所がそういう方針だったから。それで結構最終までは残るんですよ。でも、最終的には決まらなくて…。それでヒロインの友だち役とかがくるんだけど、それはやらない。『次も主役でいくから』って言って」

-最終まで残った方がヒロインの友だち役で出演して、翌年にヒロインになったというケースも結構あるみたいですが-

「前の事務所の社長の方針だったみたいで、私はやらなかった。そうこうするうちにキャンペーンのイメージガールから役者になるという道もあるって聞いて、クラリオンガールっていう話になったんだけど、私は背が小さいし、無理だって言ってたの。それがなぜか受かっちゃって(笑)。

それが受からなかったら、もうやめちゃおうかなって思ってたの。NHKも落ち続けていたしね。NHKの人に後から聞いたんだけど、『あんた最後まで残っていたのに残念だったね』って言われた。デビューしてからね」

-女優になると決めたのはいつ頃ですか-

「大学の3年生のときに休学届けを出して東京に出てきてたんだから、21歳だったかな。温泉のパンフレットの写真とかに素人のモデルを使ったりしていたんだけど、それがギャラが高かったんですよ。

それで私も名古屋の大学に行っているときにやっていたら、そのときの友だちが養成所に入ってるって言って、何か面白そうだから一緒に行ってみたの。

そしたらそこの社長が『東京に出て来てオーディションを受けてみないか』って言って。そのときは別になるつもりはなかったのね、大学を途中でやめるのも嫌だったし。やめなきゃ良かった。こんな世界に来なきゃ良かったなぁ。『なんでやねん?』って感じ(笑)」

©テレビ朝日

※烏丸せつこプロフィル
1955年2月3日生まれ。滋賀県大津市出身。6代目クラリオンガールとして注目を集め、映画『海潮音』(80年)で女優デビュー。数々の賞を受賞した映画『四季・奈津子』(80年)をはじめ、映画『マノン』(81年)、映画『駅 STATION』(81年)等、話題作に立て続けに出演。

映画女優としての地位を確立。人気絶頂の1982年、自身の所属事務所の社長で映画プロデューサーだった男性と結婚。娘2人に恵まれるが、夫が事業に失敗し、2001年に離婚。2014年に2歳年下の大手レコード会社のディレクターと再婚。今年は4本の映画が公開され、女優業も絶好調。

 

◆再婚を知ったとき、前の夫は…

-数々の映画賞を受賞されて、これからというときに結婚、結構騒動になりましたね-

「そうね。色々あったけど、小悪魔だとか、そういうイメージがすごく嫌だった。だから、もう早く結婚してやめようって思ったのよね。そんなもんですよ(笑)。役者って面白いと思い出したのは最近。50歳ぐらいからかな」

-結婚されたとき、女優業に未練は?-

「全然。これでやめられるってホッとしたくらい。ずっとこのまま家にいたいと思った。とにかくすごい出無精なわけ。インドア派。子供と一緒にいるのがずっと楽しいみたいな感じで、仕事のことなんて全く思いもしなかった。でもすぐに復帰するんだよね。

あの時代は映画監督が2時間ドラマを撮っていたからテレビにシフトしていって。あのときの作品は結構いいのがありますよ、私が気にいっているのがね。

基本的に現場は好きだけど、そこに付随するインタビューだとか、そういうのがあまり好きじゃない。聞かれるのはおっぱいのことばかりだし、『こいつら何なんだ?』って、もう疲れ果てちゃったんだね」

-それでもコンスタントに映画、ドラマに出演されて-

「離婚したとき、まだ下の娘は小学生だったしね。今はもう娘たちも大人になっているから良いけど」

-4年前に再婚されたそうですね-

「そう。ラッキーよ。今の旦那さんはすごくいい人だから。ほんとに優しいの。前の旦那さんはひどかったじゃない?あんな人はいないよ、本当に(笑)。

でも、私が再婚したときに『おめでとう。良かったね』って電話がかかってきたんですよ。だから電話では話しますけどね。本当に、再婚して今は幸せ。良い感じですよ」

©「教誨師」members

 

◆大杉漣、最初のプロデュース作にして最後の主演作で女性死刑囚に

※映画「教誨師(きょうかいし)」
教誨師とは受刑者の心の救済につとめ、彼らが改心できるように導く人のこと。教誨師の佐伯牧師(大杉漣)が面会するのは、年齢、境遇、性格の異なる6人の死刑囚。

彼らに自分の言葉が本当に届いているのか、そして死刑囚が心安らかに死ねるよう導くのは正しいことなのか…そんな葛藤を通し、佐伯もまた自らの忘れたい過去と向き合うことに…。烏丸さんは6人のなかで唯一の女性死刑囚・野口を演じている。

-大杉漣さんの初プロデュース作品で最後の主演作ですね-
「そうですね。漣さんが亡くなったのはあまりに急でビックリしました。撮影現場で漣さんが『僕がお願いしました。こんなに予算がないのに、よく受けてくれましたね』って言って(笑)。

『あぁ、漣さんが私を選んでくれたんだ。うれしいなあ』って思いましたね。『前から言っていた光石(研)君もOKしてくれた』って、すごく喜んでいました」

完成披露試写会が行われたこの日は土砂降りだったが、光石研さんは大杉さんにもらったジャケットを着用し、大杉さんのお墓に寄ってから会場に来たという。烏丸さんも「漣さんはきっと会場のどこかにいる」と話していた。

主演だけでなく、プロデューサーとして、脚本やキャスティングについても率先して携わっていた大杉さん。「お昼はお弁当じゃなくてケータリングにして、あったかいものを食べようよ」と言って大杉さんが手配。ときには現場で自らサラダを作ってくれたこともあったという。

「漣さんは本当に良い人で、彼のことを悪く言う人は1人もいない。面倒見が良くてね、本当に好きなのよ、この世界のことが。苦労してるからね、若いときに。きっと何度もやめようと思ったんでしょう。売れたのが結構遅かったけど、売れる前からいい役者さんだなぁと思っていたの。舞台では結構気持ち悪い動きとかやっていていたけどね(笑)」

-撮影はいかがでした?-

「ものすごく大変だった。教誨師と会うシーンが4回あるんだけど、あれを全部1日で撮ったんですよ。お金がないから(笑)。死刑囚6人、それぞれみんな1日か、長くて3日。

私はおしゃべりな関西のおばちゃんの設定だから、とにかくセリフがめちゃめちゃ多くて大変。私とのパートは漣さんが楽だったと思う。私がしゃべり倒しているからセリフが少なくて。

おまけにワンシーンワンカット。だいたい映画監督は『カット、カット』じゃない?全然切らないわけ。だから、途中でセリフが出てこなくなっちゃって、3回ぐらいNG出したかな(笑)」

-虚言癖があって言うこともコロコロ変わるしたたかな主犯格の殺人犯…見た目も実際の烏丸さんと全く違っていてギャップがすごい-

「かわいそうでしょう(笑)?死刑を待つ身で拘置所に入れられているから、化粧もするわけにはいかないし、髪の毛も染められない。ボサボサ髪でノーメイク。何にもしないで撮影に臨んでましたからね。

『いやぁ、もうビックリ!』って感じだけど、『しょうがないなぁ、これがリアリティーだから』ってね(笑)。『きっとまた色々と書かれるんだろうなぁ』とかって思いましたけど、これはこれで楽しいなって(笑)」

-それがまた新鮮ですよね-

「意外性のある役とか、そういう裏切りは面白いかなぁと思って。たぶん、そのインパクトが芝居よりも勝っちゃってるんだと思う。だからラッキーみたいな感じ。

芝居はね、自分ではもっとできたかなぁっていろんな思いがあるんだけどね。それはどの作品でもそう。でも、今後も面白いのをやっていくつもり。ビックリするようなものをやるほうが楽しいじゃない(笑)」

いたずらっぽく笑う姿に小悪魔と言われていた若き日の烏丸さんがオーバーラップする。次回後編ではバラエティ番組で“暴走女優”と言われた理由、炎上騒動について紹介。(津島令子)

©「教誨師」members

※映画『教誨師(きょうかいし)』
10月6日(土)より、有楽町スバル座、池袋シネマ・ロサ他にて全国順次公開。監督:佐向大 出演:大杉漣 玉置玲央 烏丸せつこ 五頭岳夫 小川 登/古舘寛治・光石 研