女優・小島藤子、ガリ勉からレディースの総長まで変幻自在。朝ドラの“しっかり”寮長役は「私とは正反対でした」
『小公女セイラ』(TBS系)で主人公をいじめる真里亜役で注目を集めた小島藤子さん。
映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』(猪股隆一監督)、映画『ランウェイ☆ビート』(大谷健太郎監督)、連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)など多くの映画、ドラマに出演。
現在、東京芸術劇場 シアターウエストで初主演舞台『明けない夜明け』に出演中。母親が父親を殺すという事件を起こし、幼くして被害者の子であり、加害者の子になってしまった三姉妹の次女で主人公・恵を演じている。
◆ストレスを撮影の“書道パフォーマンス”で発散
2010年、小島さんは、映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』に出演。この映画は、全国の高校から集まった書道部が書の腕とパフォーマンスを競い合う「書道パフォーマンス甲子園」を題材に、さまざまな問題を乗り越えていく女子高生たちの姿を描いたもの。小島さんは、中学時代にいじめに遭い、そのことがトラウマになり、いつもヘッドホンをつけて心を閉ざしている山本小春役を演じた。
-過去のいじめが原因で心を閉ざし、書道だけが心の支えで唯一の感情表現という女子高生の役でしたね-
「はい。あの当時、オーディションを受けて立て続けに決まった作品だったんですけど、あの役もまた極端で。私は、出ているシーンは結構多かったんですけど、映画の中でしゃべったのは、1、2回ぐらいしかないんですよ(笑)。ずっと出ているのに全然しゃべらないみたいな役でした」
-書道は得意だそうですね-
「はい。もともと好きなほうでした。だから楽しかったです。別に段があるとかではないんですけど、字を書くのも楽しかったですね。
あの映画も撮影で愛媛に1カ月間ぐらい行っていたんです。極端に人数が少なかったし、みんな私よりちょっと年上だったので、お姉ちゃんがいっぱいいたという感じで楽しかったです」
-書道は座って書くと思っていましたが、立って大きな筆を振り回して書くというのが驚きでした-
「たしかにそうですよね。撮影では慣れてきて普通にやっていましたけど、ストレス発散にもなりました。結構練習もしたんです。筆が重たくて苦労しました。一発勝負だったので」
-ひとりが失敗したら、また一から書き直すことに?-
「そうなんですよ。撮るにしても、やっぱりつながりもあって、失敗しちゃうと、『引きの画と違うくない?』みたいな感じになっちゃうので、結構リアルにみんな一生懸命練習していました」
-そうやってガッツリ取り組める形の作品が多いのはいいですね-
「そうですね。ロケ地に行きっぱなしで撮影をしていると集中できるし、皆さんと一緒に作っていくので関係性も築けて役にも入り込みやすいし、 すごく良かったです」
◆深夜の学校でファッションショーを撮影
2011年、小島さんは、映画『ランウェイ☆ビート』に出演。この映画は、天才的なファッションセンスをもつ高2の美糸(瀬戸康史)が転校して来たことにより、いじめられっ子のワンダ(田中圭)が大変身。美糸を中心に文化祭のファッションショーを開催することに…という展開。小島さんは、大人しい学級委員から大変身するけいこを演じた。
「懐かしいです。あれもすごく特殊な映画だったので、本当に地方の学校を借りて撮影して、深夜にファッションショーをやったりしていました(笑)」
-すごいスケールでしたね-
「本当にすごかったです。あの時代は、ああいうちょっと派手というか、エンターテインメントみたいな作品が結構多かったなって思います。すごく楽しい撮影でした」
-モデルのお仕事もされていたので、ファッションショーのシーンはお手のものだったのでは?-
「それが、私はランウェイを歩いたことはなかったんです。雑誌のモデルはやっていたんですけど、ランウェイはなかったので、あれも結構レッスンしました。先生をつけてくださったので、みんな交互に練習していました。生徒みんながファッションショーのシーンもあったので」
-プロ並のステージでしたよね。小島さんは出番に衣装の仕上げが間に合わなくて、自ら破いてステージに出ますが、スムーズにいきました?-
「あれは結構練習しました。衣装もみんなそれぞれ一つひとつ作ってくださっていたんですよね。作品的に衣装とメイクはすごい時間をかけていて、どうやったら撮りやすいかとか、衣装を破いたときにどうやったらきれいに見えるかというのをスタイリストさんや監督と何回もやっていました」
-破いちゃうの?って驚きました-
「めちゃめちゃですよね(笑)。一番地味な女の子が、そういうめちゃめちゃなことをするみたいな感じで(笑)」
-あれも優等生の役でしたね-
「ガリ勉の女の子みたいな感じでメガネをかけていましたね。『ちびまる子ちゃん』のたまちゃんみたいな感じで(笑)。あれも最後にいいところを持っていく役をいただいたなって思って(笑)。すごく楽しかったです」
-それだけみんなで一緒にやっていると、撮影が終わって別れるときは寂しいでしょうね-
「それはあります。でも、今も活躍されている方がたくさんいらっしゃるので、他の現場でお会いしたりできるから、それがうれしいですね。バイバイするのは寂しいですけど、次に現場で会ったときに『お久しぶり』って言ってもらえたりするのがうれしいです。
それこそ瀬戸康史くんは、『おはスタ』から一緒なので。1年間一緒にやっていて、その後『ランウェイ☆ビート』をやって、舞台も一緒だったので、要所要所でお会いする機会があって、そういうのがすごくうれしいです。
何回も現場でお会いする方というのは安心できますね。瀬戸康史くんは、年もちょっと上なので、お兄さん的な感じで、お名前を見かけると、『この人がいるから安心だ』みたいな感じはあります」
-そういう意味では、13歳からお仕事をされているので、お知り合いに会う機会も多いでしょうね-
「そうですね。ありがたいことに最近はすごく増えてきました。大人の方とかも。キャストさんだけじゃなくてスタッフさんも、昔は助監督さんだった人が監督になって呼んでくださるということもあったりするので、何か不思議な感じがします」
◆恥ずかしかった“レディース総長”役
2016年、小島さんは、映画『青空エール』(三木孝浩監督)に出演。この映画は、甲子園を目指す野球部員・大介(竹内涼真)と出会い、彼を応援するために吹奏楽部トランペットを始めたヒロイン(土屋太鳳)が惹かれ合いながら成長していく姿を描いたもの。小島さんは、吹奏楽部のトランペットのリーダー・春日瞳を演じた。
-『青空エール』も青春していましたね-
「青春でした(笑)。でも、主役の2人はすごい青春しているんですけど、私たちは基本部活をしていたので、トランペットがめちゃめちゃ大変でした。
私は、多分あれが最後の制服なのかな。回想シーンで制服を着るということはあるんですけど、ガッツリ学生を演じたのは、あれが最後だったと思います。あのときも制服はリアルでは卒業していたので、まさかあんなにガッツリ青春なことをすると思いませんでした。東宝スタジオに行って、先生にみんなでトランペットを教わって、10曲ぐらい覚えました」
-『小公女セイラ』の志田未来さんとまた一緒になって-
「はい。未来ちゃんとは、何年かぶりに共演できて、久しぶりに一緒にお芝居もさせてもらえて、うれしかったですね」
-吹奏楽部はかなり大人数でしたね-
「そうですね。他の生徒役の方たちはリアルに吹奏楽をやっている子たちだったので、教えてくれたりしてめちゃめちゃ頼もしかったです。全員が一から始めるのはなかなか難しいので」
2016年には、『HiGH&LOW THE MOVIE』(久保茂昭監督)に出演。小島さんはレディースの総長を演じた。
-レディースの総長役が新鮮でした-
「あれはめっちゃ恥ずかしい(笑)。私は、いまだにわからなくて。何で私に総長の役が来たのか。特攻服みたいなのを着て、E-girlsの方たちを引き連れてね。私も勝手にE-girlsになった気持ちになっていました(笑)。
あのシリーズはいまだに続いているじゃないですか、コンテンツが。それで、キャストがどんどん増えていっているので、全然お会いしていなくても、いろんな現場で『HiGH&LOWに出ていましたよね』って親近感みたいなのがあるんですよね。
今回の舞台も吉本実憂ちゃんが、映画の『HiGH&LOW』に出てらしたので、最初にその話になりました。どの現場でも絶対にいるんですよ、『HiGH&LOW』に出た役者さんというのが。あれはすごいなあって思います」
-スクリーンで総長姿の自分をご覧になっていかがでした?-
「楽しかったです。それこそ男性キャストが多くて、結構殴り合いのシーンなどが多い中で、ちょっとコメディーみたいなところだったので。男性キャストはずっと戦っているので、すごいですよ。みんな運動神経がすごくて身体能力の高い人たちが集まっていたので、すごい迫力でした」
◆『ひよっこ』の撮影は毎日が“修学旅行”
2017年には連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)に出演。このドラマは、茨城県の農村で生まれ育ち、集団就職で上京したヒロイン・みね子(有村架純)が、工場の仕事仲間、幼なじみたち、洋食店の家族らに支えられて成長していく様を描いたもの。小島さんは、みね子が就職した工場の乙女寮の寮長でルームメイトの秋葉幸子を演じた。
「『ひよっこ』は、いまだに言ってくださる方が多いです。『寮長』って言われます(笑)」
-決まったときはいかがでした?-
「自分とは正反対の役だったので、『しっかりしなきゃなあ』って思いました」
-小島さんは、すごくしっかりしているイメージがありますけど-
「よく言われます。『優等生なんだろうな』って。でも、全然違うんです。基本的には、人にくっついて、いい感じにいたいみたいな(笑)。『ひよっこ』は乙女寮のシーンがほとんどだったんですけど、私が誰よりも子どもでした。
あのメンバーの中で一番年下は16歳の子がいたんですけど、彼女のほうがずっと大人でした(笑)。私はどっちかというと松本穂香ちゃんが演じていた澄子に近いです。ドジっ子ではないんですけれども、みんなに絡(から)みにいって、本番ギリギリまでみんなにしゃべりかけているタイプなので」
-ドラマの中では、誰よりも真面目で、一人だけちゃんと恋愛もしていましたね-
「そうなんですよ。私とは正反対でした(笑)。婚約者役の井之脇(海)さんとはあまり会話もなく。あまり男の人が得意ではないし、乙女寮でずっと女の子同士でいたので、そっちに慣れちゃっていて。
途中から井之脇さんが来たんですけど、2人のシーンになったときに、私が急にしゃべらなくなっちゃうので、乙女寮のメンバーはみんな爆笑しながらモニターを見ていたらしくて(笑)。『いつもあんなにしゃべっているのに、井之脇さんが来たときだけずっと黙っている』って」
-乙女寮のシーンは楽しそうでしたね-
「本当に楽しかったです。毎日が修学旅行みたいな雰囲気でした。皆さん切り替えの早い方たちで。本番ギリギリまであまり役に入っている感じではなくて、スタートになってから役を入れるタイプの方が多かったので、セットに入ってもギリギリまでみなさんにちょっかいを出したりとかしていました。みんな優しかったので」
-皆さんご活躍されていて-
「そうですね。でも、乙女寮のメンバーには全然会ってないですね。プライベートでもですけど、お仕事でもまだお会いしたことがないんです。『ひよっこ』に出ている他の方にはあるんですけど、乙女寮のメンバーには会えていないので、お会いしたいです」
-朝ドラは撮影形態も雰囲気も他とはちょっと違うと思いますが、小島さんは『カーネーション』にも出演されていましたね-
「はい。『ひよっこ』のときは、私も20代になっていて、ある程度仕事のことをわかりながらお芝居していたので、結構気持ちは楽に入っていたんです。同世代の方も多かったし。
だけど『カーネーション』のときはまだ10代で、高校に通っていたときに大阪に2、3カ月間1人で行っていたので、同じ朝ドラだけど感覚がちょっと違いました。
『カーネーション』は、周りの大人の方たちに、『お仕事とかお芝居というのは、こういうことだよ』というのを教わることが多かったので、『カーネーション』をきっかけに、お芝居ってやりがいのあるものだなって思うようになりました」
幅広い役柄を演じてきた小島さんは、2018年、『馬の骨』(桐生コウジ監督)で映画初主演を飾り、『映画 としまえん』(高橋浩監督)、『グランマの憂鬱』(フジテレビ系)などに出演することに。
次回はその撮影エピソード、初主演舞台『明けない夜明け』も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:木村真弓
※舞台『明けない夜明け』
2023年7月14日(金)~7月20日(木)
東京芸術劇場 シアターイースト
主催:演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)
作・演出:小野健太郎
出演:小島藤子 吉本実憂 誠子(尼神インター) 小野健太郎 奥田努ほか
小島さんは主人公となる三姉妹の次女・恵役。三女・茉菜役に吉本実憂さん、長女・愛役は「尼神インター」の誠子さん。母親が父親を殺すという事件を起こし、幼くして被害者の子であり、加害者の子になってしまった三姉妹がそれぞれ成長し、大人になってからの姿を描く。