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50歳でテレビ音楽番組制作から離れ、ロックフェスを作る道へ。原点回帰目指す新フェス『ロックアンセム』仕掛け人が語るその理由

50歳でテレビ音楽番組制作から離れ、ロックフェスを作る道へ。原点回帰目指す新フェス『ロックアンセム』仕掛け人が語るその理由

“超ストロングスタイル”を標榜する新しいロックフェス『ロックアンセム』が、2025年4月5日(土)・6日(日)に幕張メッセで開催される。

出演するのはACIDMAN、ザ・クロマニヨンズ、東京スカパラダイスオーケストラ、レキシ、サンボマスター、10-FEET、ヤバイTシャツ屋さん、ハルカミライ、Chevonなど、ベテランから中堅、若手までバラエティ豊かなラインナップだ。

イベントの仕掛け人であるプロデューサー・三浦ジュンは、長年テレビ業界で音楽番組を手掛け、フェスカルチャーを見つめ続けてきた人物。そのキャリアと想いをもとに、新たな音楽フェスの形を模索している。

今回テレ朝POSTでは、そんな三浦にインタビュー。年間250本以上のライブに足を運ぶという生粋の“ミュージック・ラバー”でもある彼が『ロックアンセム』に込めた想い、そしてそのコンセプトについて話を聞いた。

◆音楽を伝えることの原点

三浦の音楽体験の原点は、中学・高校時代にまで遡る。まだインターネットが普及していない時代、彼の情報源はテレビやラジオ、音楽雑誌だった。なかでもテレビ神奈川で放送されていたミュージックビデオを流す番組に影響を受け、自分の好きな音楽を友人に勧めることに喜びを見出したという。

「レンタルレコードショップに行ってレンタルしたり、買ったCDを友だちと交換したり。それで自分なりのプレイリストをカセットテープで作って、周りの音楽好きとシェアしていました。今で言うプレイリスト共有の原型ですね。学校では『これ知ってる?』『この曲めっちゃかっこいいよ』と、常に音楽の話をしていました」

大学時代にはイベント企画にも挑戦。ザ・コレクターズや当時まだ駆け出しだったフィッシュマンズをブッキングしたイベントを主催するも、集客が伸びず“大失敗”に終わってしまう。しかし、この経験が「より多くの人に音楽を届ける」という使命感を強くする契機となった。

「イベントを通じて人に音楽を伝える楽しさ、難しさを知りました。この経験が、その後テレビ業界に進むきっかけにもなったと思います。最初は何もわからず、アーティストにどうコンタクトを取るのかも試行錯誤でした。やってみたら想像以上に大変で、でも楽しくて、それが自分の軸になったんです」

◆テレビ業界での挑戦と葛藤

1997年にフジテレビに入社し、ほどなくして念願の音楽番組制作に携わることとなった三浦。しかし、音楽番組はバラエティ番組と比べて制作のチャンスが限られ、ディレクターとして独自の企画を実現するまでには長い道のりがあったと話す。

「『HEY!HEY!HEY!』のADを経て、2000年代初頭に深夜番組『FACTORY』のディレクターを担当しました。これはライブハウスの雰囲気をそのままテレビに持ち込むという実験的な番組で、まだテレビに出ていないバンドを積極的に紹介していました」

当時、ミッシェル・ガン・エレファント、サカナクション、10-FEETといったあまりテレビに出なかったバンドを番組に登場させ、彼らのライブパフォーマンスをテレビを通じて多くの人に届けることに尽力した。

「テレビの音楽番組は、どうしてもメジャーなアーティストばかりが出演する傾向にあります。でも、僕は“これから売れるかもしれない”というアーティストを推していくことにこそ価値があると考えていました。それが自分のやりたいことだったし、テレビが担うべき役割でもあると思っていました」

2015年にスタートした音楽番組『Love music』では、立ち上げには関わっていなかったものの、ブッキングを任されるようになり、最終的にチーフプロデューサーに就任。しかし、テレビの世界は変化していく。2020年代に近づくにつれ、インターネットの影響力が増し、テレビの役割が変わりつつあった。

「テレビがネットでバズったアーティストを後追いで取り上げるようになり、僕がやりたかった“新しい音楽の発掘”という役割が薄れていくのを感じました。昔はテレビを見て『このアーティスト誰だろう?』と興味を持ってもらう流れがあったのに、今はネットが先行する時代になりましたよね」

そして2023年、8年間続いた『Love music』が終了。ちょうど50歳を迎える節目の年でもあった三浦は、これを機にフジテレビを離れ、番組制作から音楽イベントのプロデュースにシフトすることを決意した。

◆『ロックアンセム』の誕生とコンセプト

『ロックアンセム』は「フェスの原点回帰」をテーマに掲げている。その最大の特徴は、30〜40代の音楽ファンをメインターゲットにしつつ、新旧のアーティストを融合させる点にあるようだ。

「ここ数年、特にコロナ禍以降にフェスの客層が大きく変わりました。来場者は10代~20代の若者が中心になり、以前は当たり前だった30代以上のオーディエンスが減ってしまい
ましたが、フェスだからこそ味わうことができた興奮や一体感は忘れられないはずなんですよ」

『ロックアンセム』では、30〜40代を中心とした音楽ファンが“もう一度ライブに行きたくなる”ようなラインナップを意識したという。

「たとえば、RISING SUN ROCK FESTIVALやARABAKI ROCK FEST.のように、ライブシーンで活躍し続けるベテラン勢と新しい世代を共存させるフェスが関東には意外と少ない。だからこそ、僕がその役割を果たしたいと思いました。

フェスというのは、世代を超えて新しい音楽との出会いを作る場でもあるんです。若い世代のファンがベテラン勢のライブを見て新しい発見をし、逆にベテラン勢のファンが新世代のアーティストに触れる。そういう交流が生まれることが理想ですね」

また、フェスの構成にも工夫を凝らしている。移動の負担を軽減し、指定席エリアを設けるなど、体力に不安のある観客でも快適に楽しめる設計になっている。

「今回はファミリー向けのエリアも用意しています。30〜40代の音楽ファンの中には子育て世代も多い。子どもと一緒に安心して楽しめる環境を整えたかったんです。たとえば、キッズエリアや授乳スペース、ファミリー向けの休憩エリアなどを設けることで、家族連れでも気軽に参加できるフェスを目指しました」

◆三浦にとっての“ロックアンセム”

最後に、三浦にとっての“ロックアンセム”とは何かを聞いた。

「THE YELLOW MONKEYの『バラ色の日々』ですね。初めてフェスに行ったのが2000年のROCK IN JAPANだったのですが、台風が直撃し、大雨と強風の中でのライブでした。THE YELLOW MONKEYの『バラ色の日々』が流れた瞬間、僕は全身びしょ濡れになりながらも、ただただ夢中で聴いていました。“雨の中を傘もささずに”という歌詞が、その瞬間の光景と完璧にリンクして、鳥肌が立ちました。そのときの経験が僕にとってのフェス体験の原点なんです」

彼が『ロックアンセム』を通じて目指すのは、「フェスの中で一生忘れられない瞬間を作ること」だという。

「ライブ会場で体感する熱量、一体感、それが音楽の本質だと思います。何年経っても色褪せないんです。そしてその瞬間をひとりでも多くの人に味わってほしい。来場者それぞれが“自分のロックアンセム”を見つけられるような体験を提供したい。そのために『ロックアンセム』を全力で作り上げています」

『ロックアンセム』は音楽とリスナーをつなぐ新たな試みだ。その幕開けが、これからの音楽フェスの未来を変えていくのかもしれない。

※イベント情報:『ロックアンセム – BY ROCK LOVERS , FOR ROCK LOVERS –
■開催日:2025年4月5日(土)・6日(日)
■開催場所:幕張メッセ9,10,11ホール
■時間:開場10:00、開演11:00、終演21:00(予定)
■出演ア―ティスト(五十音順):
<Day1>
打首獄門同好会、キュウソネコカミ、go!go!vanillas、Chevon、四星球、THE BACK HORN、ハンブレッダーズ、BLUE ENCOUNT、フレデリック、ヤバイTシャツ屋さん、UNISON SQUARE GARDEN、レキシ、(O.A.)バックドロップシンデレラ
<Day2>
ACIDMAN、ORANGE RANGE、氣志團、ゲスの極み乙女、ザ・クロマニヨンズ、サンボマスター、ストレイテナー、10-FEET、東京スカパラダイスオーケストラ、ハルカミライ、THE BAWDIES、ROTTENGRAFFTY、(O.A.)ビレッジマンズストア

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