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中村優一、「超楽しそう」と思って出演した“国産サメ映画”。監督・共演者をつないだ特撮ドラマの縁

『仮面ライダー響鬼』の桐矢京介役&『仮面ライダー電王』の桜井侑斗(仮面ライダーゼロノス)役などで人気を集め、多くの映画、ドラマに出演するも持病の腰痛の悪化がきっかけで俳優業を一時休業、引退した中村優一さん。

自分自身と向き合い、俳優業への思いを新たに2015年、映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(柴﨑貴行監督)で復帰。主演映画『スレイブメン』(井口昇監督)、映画『八重子のハミング』(佐々部清監督)、映画『恋のしずく』(瀬木直貴監督)など多くの作品に出演。

現在、江戸時代を舞台に巨大ザメと忍者との戦いを描いたアクション映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』(坂本浩一監督)が公開中。

 

◆仮面ライダー俳優2人でバイクに相乗り

2018年には、映画『恋のしずく』に出演。この映画は、東京の農大でワインソムリエを目指す日本酒嫌いの“リケジョ”の詩織(川栄李奈)が、日本三大酒処の一つとして知られる東広島市西条の日本酒の酒蔵に実習に行くことになり、さまざまな人との触れ合いを通して日本酒の魅力に目覚めていく様を描いたもの。中村さんは、西条にある有重酒造という蔵の若き蔵元・有重一紀役を演じた。

-日本酒の専門的な知識のセリフも結構あって大変だったのでは?-

「そうですね。専門的なセリフもですけど、広島の方言も難しかったです。あの作品の一番好きなセリフが、最後に告白するときに日本酒の知識というか、日本酒の作り方を交えて好きだと告白するのがすごくすてきだなと思いました。

初恋の人でずっと好きだった人に、単に告白するのではなくて日本酒の話を絡めるのがおもしろいなあって。あの当時は、いろんな地方に行って撮影をすることが多かったですね」

-蔵元という設定でしたが、日本酒は飲まれました?-

「結構飲んでいました。撮影以外でもお酒を飲んでいたので、共演者の皆さんともすぐに打ち解けられました(笑)。

いい日本酒は次の日に残らないということを初めて勉強しました。日本酒は温度や飲み方で味がすごく変わるということもわかって、日本酒が好きになりました」

-詩織の実習先の蔵元の長男役が小野塚勇人さん。仮面ライダーを演じたお二人の共演も話題になりました-

「僕は、小野塚くんが出演していた『仮面ライダーエグゼイド』も観ていたので、共演できてうれしかったです。仮面ライダー俳優2人でバイクに乗るシーンもあったんですけど、男2人で乗って、しかも後ろに乗るというのは初めての経験でした(笑)」

演じる役柄の幅も広がり、2020年に公開された映画『踊ってミタ』(飯塚俊光監督)では、“ダメなおぼっちゃま”町長役に挑戦。

この映画は、過疎化が進む町の住民たちが“踊り”によって再生していく姿を描いたもの。映像作家の夢に破れ、故郷の町役場の観光課職員として働きながらも夢を諦めきれずにいる三田(岡山天音)に「2週間で町を活性化しろ」という町長命令を下す。

「目立ちたがり屋の町長の役で、変わっていましたね。子煩悩でいい父親なんだけど、女性問題で町長を追われることになってしまって(笑)」

-演じられていていかがでした?-

「若いときは、道をはずれない役が多かったんですけれども、20代後半、30代に入ってから個性的な役とか悪い役が増えてきたというところに、幸せを感じています。ちょっと上から目線の役とか、結構イヤな役も多くなりましたけど、演じていておもしろいです」

 

◆急逝した佐々部清監督への思い

2020年に急逝した佐々部清監督の映画の現場は『八重子のハミング』が初めてだった中村さん。遺作となった映画『大綱引の恋』にも出演。

この映画は、鹿児島で400年以上の伝統を誇る川内(せんだい)大綱引を軸に、主人公・有馬武志(三浦貴大)と韓国人女性研修医ヨ・ジヒョン(知英)の恋愛と彼の家族の姿を描いたもの。中村さんは、レストランの店長で、武志の妹・敦子(比嘉愛未)と交際中の福元弦太郎役を演じた。

「『八重子のハミング』では、出番はそんなに多くなかったということもあって、ちょっと悔しい気持ちもあったので、『大綱引の恋』で三浦貴大さんのライバル役というすごくいい役をいただいて本当にうれしかったです。ちゃんと佐々部監督に恩返ししたいという気持ちが強かったですね」

-三浦貴大さんもおっしゃっていましたが、太鼓の練習が大変で腕がパンパンになったとか-

「はい。腕がパンパンになりました(笑)。鹿児島に着いたその日に太鼓の練習から始まりました。練習初日から貴大さんがすごく上手だったんですよ。初日のときに地元の先生が、『上手だね』って言っていて、それでまた悔しい気持ちが強くて(笑)。

もちろん先生にご指導していただける時間もあったんですけど、バチだけお借りして、個人練習をずっとしていました。さすがにホテルの中で太鼓は叩けなかったので、ホテルの部屋でずっと枕を叩いて練習したり、川に行って練習していました」

-腕をずっと上げて叩くというのはきついですよね-

「そうですね。本当に1分間やっているだけで、腕がパンパンになったりするので。でも、いざ撮影というときには2、3分間続けてやっていたので、もうリアルに最後のほうは気持ちだけでやっているという感じでしたね。腕はもう感覚がなくなっていたので」

-努力の甲斐があって、すごく迫力のあるシーンになっていました-

「ありがとうございます。あれはもう鹿児島の川内の皆さん、エキストラの皆さまのおかげというか、映画をバックアップしてくださった地元の皆様のおかげでああいう迫力のある映像になったと思います」

-中村さんは髪の毛を切りすぎてしまったとか-

「はい。衣装合わせと本読みという、初顔合わせみたいな日の前に、ドキュメントで大綱引の本当のお祭りの映像を見させていただいたんですけど、みんな気合が入っていて、髪の毛がすごく短かったんです。

それで、その前に監督から『髪の毛を切って欲しい』と言われていたので、衣装合わせの前に髪の毛を切っておこうと思って切ったら、気合いが入りすぎちゃって(笑)。

めちゃくちゃ髪の毛を短くして行ったら印象が違いすぎていたみたいで、佐々部監督が僕だとわかってくれなくて、監督にあいさつしても、『この人誰?』みたいな感じで(笑)。

僕は今も結構髪の毛が短いほうなんですけど、基本的に前髪が長かったので、イメージが違ったみたいで『お前、ちょっと髪の毛切りすぎだ。もう切らなくていい』って言われました」

-ロケでは撮影が終わると、どんな感じだったのですか-

「佐々部監督は、撮影が終わった後、みんなでご飯を食べるというところまでが1日のスケジュールに入っているんです。

ナイターのシーンが遅くまである日以外は、撮影を夕方6時くらいまでには終わって、7時くらいからみんなでご飯を食べようというのが佐々部組なので、鹿児島ではキャストの皆さんや鹿児島の映画に携わる方々と毎日ご飯を食べて、鹿児島の焼酎を飲んでいました」

-そういう楽しみがあると皆さんの志気も上がりますよね-

「そうですね。佐々部監督がすごいのは、お酒を飲んでも、そのあとホテルに帰って、次の日のシーンを勉強し直すんですよね。

東京にいるときに監督が決めていたカット割りとか、こうしたいと思っていたものがあって鹿児島に来ているんですけど、日々の撮影をしているなかで、こうしよう、ああしようというのは、また出てくるじゃないですか。それをまた前日にもう一回考えるというか、勉強されるというのを毎晩、酔っ払ってもされていました。

お食事をされているときには『酔っ払っているのかな?』って思うんですけれども、帰ったあとは、また監督のスイッチが入るんでしょうね。『あれからまた2時間くらい今日の撮影のことを考えていたよ』と言っていたので、酔っ払っているようで酔っ払ってなかったんだって。だから監督はもしかしたらみんなに楽しんでもらえるような場作りをされていたのかなって思いました」

-とても愛のある監督で、一生懸命頑張っている方は必ずまた次の作品で使ってらっしゃいましたね-

「本当にそうでしたね。キャストだけじゃなくて、佐々部組に携わる全員の環境を考えていましたし、人をすごく大切にされる監督だなあって。

身内というか作る側もそうだし、観てくださる皆さまへの感謝とか、すべての人を大切にされていました。監督の仕事だけということではなくて、人として本当にすばらしい方だったなあって思います」

-『大綱引の恋』は佐々部監督の遺作になってしまいました-

「本当に急で驚きました。『大綱引の恋』が終わって、『次の作品、お前出るのか?何かとスケジュールが被っていたら、お前はどっちを優先するんだ?』って聞かれたので、『佐々部組です、僕は』って。僕は、結構そういうところでいじられていたんですよね。最終的には笑顔で応えてくれていました。

『大綱引の恋』が公開される前に亡くなってしまって…それが今でもすごく寂しいです。佐々部監督のように人を大切にする、愛のある人には近くにいてほしいなあって思います」

-中村さんにとって、佐々部監督の作品2本に出られたということは大きいですよね-

「はい。大きいです。僕よりも監督のことをもっともっとご存じの方はいらっしゃると思うんですけど、2本出させていただいて学んだことがたくさんあるので、佐々部監督の魂を忘れずにこれからも頑張ってきたいと思っています」

©2022 REMOW

※映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』
全国公開中
配給:エクストリーム
監督:坂本浩一
出演:平野宏周 西銘駿 長野じゅりあ 宮原華音 桝田幸希 島津健太郎 中村優一

◆国産サメ映画で衝撃の姿に…

中村さんは、現在公開中の映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』に出演。この映画は、不老不死の力を得るため忍術でサメを操る邪教集団・紅魔衆vs忍者vs巨大なサメの怒涛の死闘を描いたもの。

中村さんが演じたのは、村一番の美男ゆえに邪教集団・紅魔衆の首領・鮫士郎に肉体を奪われてしまった清丸。首領・鮫士郎としての妖艶な演技も見もの。

この映画を手掛けた坂本浩一監督は『スーパー戦隊』、『仮面ライダー』、『ウルトラマン』という日本の三大特撮ドラマシリーズをすべて演出したことで知られるが、中村さんは『仮面ライダー』シリーズではタッグを組んだことはなかったという。

「テレビアニメ『ポプテピピック』の最終回の実写パートの撮影現場で、坂本監督から直々に『忍者とサメの映画をやるんだけど、もし良かったら出ないか?』って言われて。

僕はサメ映画が大好きなんですけど、海外の作品しか思いつかなかったというか、日本のサメ映画ってあるのかないのかわからなかったんですよね。なので、忍者とサメって言われたときに『超楽しそう』って思って、『ぜひ、出演させてください』って言ったんですけど、まさかああいう役だとは思いませんでした(笑)」

-中村さんは、村一番の美男であるがゆえに邪教集団の首領に肉体を奪われてしまいます-

「ちょっとハードルが高いなと思いました。村一番の美男と言われて(笑)。年齢も上がってきているし大丈夫かなって思いながらやっていました」

-外見は清丸だけど、中身は邪教集団の首領ですから演じるのが大変だったのでは?-

「そうですね。からだを乗っ取られるわけですから、最初の首領役の方次第だなという感じで(笑)。先代の方に僕も合わせなければいけないなというのはありました。外見が変わったからといって、キャラクター自体は変えられないので」

『ウルトラマンZ』(テレビ東京系)の平野宏周さんと『仮面ライダーゴースト』の西銘駿さんのW主演。『仮面ライダー響鬼』と『仮面ライダー電王』の中村さんとの共演も話題に。特撮ドラマという共通点を持つ3人は、同じ中学校出身みたいな感じがするという。

※2023年4月15日(土)池袋シネマ・ロサにて

-撮影はいかがでした?-

「もう振り切って思い切りやるしかないなと思っていたので楽しかったですし、あれだけ血がドバーッと出てみんな血だらけになったり、ゾンビになったりとか、いろんな要素がてんこ盛りの作品は、作りたいと思ってもなかなか作れなかったりするじゃないですか。

その中で、これだけ思い切って坂本監督がやりたいことをやるという作品に出演できたことは、すごく良かったと思いますし、試写を観て気持ち良かったです。最初からジェットコースターに乗っているという感じで、坂本監督がやりたいことが詰まっている作品だなあと思いました。

僕と西銘(駿)くんは毎日血のりだらけでしたからね。毎日一緒にお風呂に入って血のりを洗い流してから帰っていました(笑)」

-サメの迫力もすごかったです-

「そうですね。あそこまでサメをちゃんと作られていることに驚きました。サメはCGですけど、僕たちは特撮でCGに慣れているので、困ったことはなかったです。『ここで巨大なサメが出てきます』と言われてもイメージできたので。

坂本監督が試写のときに『すごい作品ができたと思います』って言われていて、やりたいことは全部やれたという雰囲気が伝わっていたので良かったなあって思いました」

-この映画で中村さんのイメージもだいぶ変わるのではないかと思いますが-

「そうかもしれないですね。僕としては、『最後までちゃんと観てください』としか言えないですけど。最後まで頑張ったので」

-今後はどのように?-

「コロナ禍で緊急事態宣言の期間、社会全体が止まって僕たちも舞台や撮影ができなくなったなかで、『ものづくりをしたい』という気持ちが強くなってきたんですよね。

自分たちでどうにか作品を作れたらいいなと思うようになって、今そういう活動をしています。俳優として作品に出演しながら裏方もやって、自分でも作品をゼロから作っていきたいと思って、去年9月に短編映画の監督をやらせていただきました。

地元横浜をテーマに3作品短編を作ったんです。オムニバスなんですけど、2作品は企画と出演で、1作品のみ監督をしました。その『YOKOHAMA(仮)』が来年春に全国で公開される予定です。今後も機会があれば、監督、プロデューサーとしての活動も続けていきたいです」

-昨年ご結婚されましたが、何か変化はありましたか?-

「このお仕事で変わったことというのはありませんけど、意識は変わりました。今までは自分のことしか考えていませんでしたけど、家族ができて、家族のことを第一に考えるというように変わったかもしれません。家族の生活だったり、人生を考えながら生きていかないといけないなと」

俳優としてはもちろんのこと、監督、プロデュ―サーとしての作品製作にも意欲満々。初監督作品の公開も楽しみ。公私ともに充実した日々が続く。(津島令子)

ヘアメイク:菅原美和子