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波岡一喜、『火花』でW主演した林遣都は「最高の俳優」 “3児のパパ”としての顔も語る「優しくなりました」

映画『パッチギ!』(井筒和幸監督)で注目を集め、映画『クローズZERO』シリーズ(三池崇史監督)、映画『ドロップ』(品川ヒロシ監督)、ドラマ『遺留捜査』シリーズ(テレビ朝日系)、OV(オリジナルビデオ)『疵と掟』など多くの映画・ドラマに出演してきた波岡一喜さん。

近年はドラマ『火花』(Netflix)や本格的なアイスショー『氷艶hyoen2019 ー月光かりの如くー』(宮本亜門演出)に出演。さらに自身初となるデジタル写真集『FOURTY』も発売するなど新境地を開き続けている。

◆林遣都さんとW主演、飲むシーンは本物のお酒で

2016年、波岡さんは、又吉直樹さんが芥川賞を受賞した小説をドラマ化した『火花』(全10話)に林遣都さんとW主演。この作品は鳴かず飛ばずのお笑い芸人・徳永(林遣都)と尊敬する破滅型の先輩芸人・神谷(波岡一喜)が、漫才の世界でもがき苦しみながらも懸命に生きていた10年間を描いたもの。林遣都さんとの息の合った演技も話題に。

-相手役が林さんだと聞いたときにはいかがでした?-

「よかったと思いました。遣都が高校生のときに『ラブファイト』という映画で共演したんですけど、そのときに師弟関係というような役で、そのまま大人になっていったという感じでしたし、ずっと連絡も取っていたので。やっぱりそこは『はじめまして』から構築していくのとは違いますから、何の気兼ねもなくできるなと思いました。

僕と遣都はそれまで10年以上年月を重ねているので、『過去にああいうことがあったね』とか『俺が遣都に昔電話して怒ったね』とか、いろいろな関係性があるわけですよ。

遣都も僕も俳優としても人間としてもいろんなことを経験して、また一緒にやれるということがうれしかった。最高の俳優なので、林遣都という俳優は。しかもいい作品でいいものを作っていこうというメンバーで撮影というので、その4、5か月間はこれに命をかけようと思いました」

-廣木(隆一)監督をはじめ、映画畑の監督でしたね-

「最高ですね。廣木さん、白石(和彌)さん、沖田(修一)さん、毛利(安孝)さん、久万(真路)さん、すごいメンバーです。みんな『10本の映画を撮ろう』という気持ちで撮っていてすごくいい現場でした」

-漫才のシーンも結構多かったので大変だったのでは?-

「以前『ベイブルース 〜25歳と364日〜』(高山トモヒロ監督)という映画で漫才師の役をやったり、朝ドラ(『わろてんか』/NHK)で落語をやったりしていて結構、お笑いの稽古をすることが多かったんです。

『火花』も漫才シーンがめちゃめちゃあるんですけど、その漫才の相方役が『とろサーモン』の村田(秀亮)で、村田も昔から知っていて『はじめまして』じゃなかったので、何かみんな知っているメンバー。それで村田は『火花』が終わって2年後に『M-1グランプリ』に優勝したので、何か巡り合わせでああいうふうにやらせてもらえたなあって」

-劇中のコンビ名が「スパークス」ですけど、ほんとにスパークしたという感じですね-

「本当にそうです。みんなスパークしたんです(笑)」

-劇中、お酒を飲むシーンが実に多いですけど、本当にお酒を飲んでいたとか-

「はい。撮影初日に、酔っ払って2人で歩いているシーンを撮るんですけど、そのときに遣都と2人で監督のところに行って、『今回お酒を飲むシーンがいっぱいあると思うんですけど、僕たちはセリフとか完璧にやるので、本当にお酒を飲んでやってもいいですか』と聞いたら、『おう、いいよ』って言ってくれたので全部本物のお酒です。飲むシーンはほとんど全部酔っ払っているんです(笑)」

-廣木監督がいいとおっしゃって?-

「はい。廣木さんが総監督なので。そこから遣都と2人でググッと飲んで、2人ともメイクをしてなくてすっぴんなので、顔が赤いのは全部本物。はじめに乾杯のシーンを撮るというときには飲まないですけど、次のシーンは飲んでいるというときには常に飲んでいました。

2人ともすでに酔っ払っているシーンの場合は、その30分ぐらい前にプシューッと缶を開けて飲んで、いい具合に出来上がって(笑)」

-酔っぱらって走るシーンも多かったと思いますが-

「そうです。だからすごいリアルなんですよ。ハーハー言ったり、変な汗が出てきたり、ちょっとろれつが回らなかったり…本当にリアルです。酒を飲んで撮影に臨むというのは、僕はあれ1回しかやったことがないんですけど、いい感じに出来上がっていました(笑)」

出演が決まる前から「神谷は普段の波岡さんにソックリだ」と言われていたというだけあって、まさにハマり役という感じだが、実はその直前には俳優を辞めようと思ったことがあったと話す。

「35歳くらいのときだったんですけど、俳優としての仕事が減ってきた感じがあって、気持ちも停滞していたので、何か違うことをしたほうがいいんじゃないかと真剣に思いました。年齢的にもまだ何かほかのことにチャレンジできるんじゃないかなと思ったんですけど、結局、俳優以外にできることは何もないんですよね。逃げ道なんてないんだから頑張ろうと思いました。それから少しあとで『火花』のお話をいただいたので、この世界に踏みとどまらせてくれた作品です」

※波岡一喜写真集『FOURTY』(デジタル限定)
集英社刊 全撮影:岡本武志
ハードボイルドな演者の表情と、3人の子をもつ父でもある素顔、ロングインタビューも収録している自身初の写真集。

◆自身初となる写真集、アイススケートショーに挑戦

2019年、41歳の誕生月に自身初となるデジタル限定写真集『FOURTY』(集英社)が発売。″男が惚れる男″として「週刊プレイボーイ」が発売する男性被写体のデジタル写真集第1弾となった。

-写真集のお話があったときはどんな感じでした?-

「ドッキリなんじゃないかと思いました(笑)。ドッキリじゃないとわかってからは『本当に僕でいいんですか?』って」

-スクリーンで見るのとは違う顔、そして裸も多かったですね-

「裸多かったです。脱がされました(笑)。ちょうどあの撮影のとき、別の仕事といろいろ重なっていて、からだをすごく絞っていたのでタイミンとしてはよかったんです」

-写真集とは対照的な『火花』のラストシーンが浮かびました-

「あのときはわざと太っていますからね。女性のおっぱいを付けて(笑)」

-はじめての写真集ができたときにはいかがでした?-

「恥ずかしかったです。『僕でいいんですか?』って何度も聞きました。写真集ってどうしても女性にモテるというか、女性が見るというか…そういうものだという認識がすごく強いから、『僕の写真集なんて誰も欲しがらないですよ』って言ったのを覚えています。

ただ、40歳の節目としてそういうお話をいただけて、写真を撮っていただけるということだったので、どうせだったらちょっと頑張っていろんな姿を見せられたらいいなあと。写真集のタイトルが『FOURTY』、40歳のときで、僕が50歳、60歳になったときにあれを見て『若いな』みたいになるんだろうなって(笑)」

-撮影で印象に残っていることはありますか?-

「六本木での撮影がめちゃくちゃ寒くて死ぬかと思いました。みんな厚い上着を着ていたんですけど、僕は薄手の衣装1枚だけだったので『早く終わらないかなあ』って(笑)。でも、撮影は3日間だったんですけど、3日目は浅草の花やしきで遊んで、原宿で猫とたわむれて、最後に酒を飲むという最高に楽しい1日でした」

写真集が発売された2019年には高橋大輔さん主演のアイススケートショー『氷艶hyoen2019 ー月光かりの如くー』(宮本亜門演出)に出演。本格デビュー作『プライド』(フジテレビ系)で習得したスケートの腕前を披露して話題に。

「スケートは『プライド』のオーディションのときにメチャメチャ練習して、どんどん上手になってスケートの技術だけで受かったという感じでしたからね(笑)。

あのドラマの後も定期的にリンクに行って滑ったりしていましたし、何よりスケーターの方たちと一緒に氷上で演じるという経験をさせてもらえる機会はないので、ぜひやらせていただきたいと思いました。すごく楽しかったです。

2021年もまた5月15日~17日の3日間、アイススケートショー『LUXE(リュクス)』(横浜アリーナ)をやるんです。前回はできなかったことに挑戦していくという感じでしたけど、今回はおそらく自分の得意分野を伸ばしつつ表現をしていくものになるんじゃないかなと思います」

©︎2021『聖なる蝶 赤い部屋』製作委員会
※映画『聖なる蝶 赤い部屋』
4月16日(金)~29日(木)シネマート新宿にて2週間限定レイトショー。
配給:キングレコード
監督・脚本:窪田将治
原案:江戸川乱歩『悪魔人形』
出演:栗林藍希 波岡一喜 柾木玲弥 柳憂怜 草野康太 木下ほうか
女子生徒への盗撮が発覚し、すべてを失った元高校教師・杉浦(波岡一喜)の前に現れた女子高生ルミ(栗林藍希)。2人は愛欲に溺れていくが…。

-今月16日(金)には主演映画『聖なる蝶 赤い部屋』が公開になります。ロリコンの元教師役ですがいかがでした?-

「そうですね。すべての女性を敵にするような役です(笑)。女性は二十歳過ぎたら劣化するという嗜好(しこう)のもち主の男を演じているんですけど、自分とはかけ離れすぎていて、何なら娘ぐらいになっちゃうから何か変な感じではありました。

でも、とてもおもしろいんですよ。その本が変わっているというか、江戸川乱歩ですから。ちょっとエロあり、暴力もあり、切なさもあって…短い期間でギュっと撮ったんですけどおもしろいです。こんなはずじゃなかったという展開もあって、ぜひこれは見てもらいたいと思います」

◆3人の子どものパパになって変化

私生活では2006年に結婚。2007年に長女、2010年に長男、2016年に次女が誕生、3人の子どもを育てるパパとしても奮闘中。どんな役にでも挑戦するが、子どもを虐待する役だけは断ったこともあるという。

「僕に来がちな役なんですけど、どうしても子どもを激しく虐待するみたいな役はお受けするかどうかとても悩んでしまうんです。人を殺したり、刺したり、殴ったりという役は割り切ってできるんですけど、やっぱり子どもを虐待というのはちょっと…。

たとえば小さな女の子に馬乗りになって殴るシーンがあったとして、『ちょっと本番1回だけ本気でいくよ』って言ってやって、『カット』がかかったとき、その子が泣いていたら、『俺はちょっとこれは違うかな』ってなりそうで、すごく考えてしまいますね」

-お子さんのお話をされているときは全然表情が違いますね-

「3人子どもがいますからね。女、男、女で一番下が4歳なんですけど、もう今デレデレです(笑)。毎日毎日、僕が家を出るときに、恒例の儀式として、お互いのほっぺにチューして、ぎゅーして、手と手で左右タッチして、さらにもう一回ぎゅーして、『バイバイキン!』って、言って家を出ます(笑)。長いときは、それを5分間くらい繰り返して(笑)」

-可愛いですね。お子さんたちは波岡さんが出ている作品を見たりしていますか?-

「僕の作品はバイオレンスシーンがあったりして子ども向きではないですからね(笑)。あまり見せないようにしているんですけど、上の2人は僕が一時期『仮面ライダー』をやっていたとき、ちょうど幼稚園、小学校くらいだったから見ていました。2人はアイススケートショーも見に来ていましたしね。

一番下の子だけはまだ4歳なのでほとんど見れてないです。だから一番下はパパが何となくテレビに出ているのか出ていないのかよくわからないみたいな感じです。もしかすると、5月のアイススケートショーがはじめて見られるものになるかもしれないです。

真ん中の子は僕の舞台を3歳か4歳ぐらいから見ているので、何かちょっと変な感じじゃないですかね。パパが舞台に立っているのを見るのが当たり前みたいな感じなので、感想もたいして言わない。何か恥ずかしい、照れたような感じで楽屋に来ていましたよ(笑)」

-お子さんができて変わったことはありますか-

「優しくなりました。女の子とか女優さんが、『パパと仲がいい』とか『パパのことが好き』という人は好きです(笑)。『いいなあ。いい家に育ったんだなあ』って」

-ご自分もそういうふうに言われたいなという願望も?-

「そうなりたいですよね。あとはそんなに怒らなくなりました。それとモラルに厳しくなったのはあるかもしれないです。ルールは守る。簡単なことです。ゴミは決められた場所以外に捨てない、信号は守るとか。僕は、今はタバコを吸わないんですけど、歩きタバコをしないとか、携帯を見ながら歩かないとか、何かそういうモラルに厳しくなりました。

最近感動したことがあって、朝6時くらいに野球のユニフォームを着てヘルメットをかぶって自転車に乗っている小学生の女の子が、車が1台も走っていないのに、ちゃんと信号を守っている姿を見て、ちょっと涙が出ました。いい子だなあと思って。

いけないことなんですけど、小学生のときの僕なんて余裕で渡っていましたよ。車が来ていても渡っています、昔の僕だったらね。それを誰も見ていないのに、真冬で寒いなか、信号をちゃんと守っている姿を見ただけで涙が出ました。大事なことですよね。その子は絶対に悪い子じゃないもん。そういうことを考えるようになりました」

-波岡さんは意外なことにインドア派だとか-

「そうなんです。あまり外には行かない。今、コロナのこの時期だからということではなくて、外に飲みに行ったりとか、遊びに行ったりということはあまりしないほうです。

だから自粛要請期間は、子どもと公園に行っている時間が長くなったり、子どもの塾や習い事の送り迎えをしている時間が長くなったり…という感じでした。子どもたちが習い事をいっぱいしているので。でも、実はいま僕はピアノをやっているんです。

今年の僕の目標は『戦場のメリークリスマス』という曲を1年かけて弾けるようになること。いま、町のいろんなところにピアノが置いてあって、結構流行(はや)っているじゃないですか。そういうところで弾いて、それを撮ってインスタかなんかにちょっと上げてみようかなと思って。

それを1年の目標にしていて、家にある電子ピアノ練習しているんですけど、上のお姉ちゃんがめちゃくちゃうまいので、教えてもらっています。家のなかに先生がいるわけだから、わからないとすぐに聞いて教えてもらってやっています。

ピアノに関してはずっとやりたいと思っていたんですけど、めちゃくちゃ難しいですね。右手だけとか左手だけだとできるんですけど、両手になったときに譜面もあるし、右手、左手、どこを見たらいいのかわからなくなるんです。

でも、ちょっとずつ曲になってくるんですよね。今だいぶ曲にはなっていますけど、人前でまだ弾けるほどではないので、今年中に何とか頑張りたいなと」

-今後の抱負は?-

「そんなかっこいいことは何もないですね。小さなことからコツコツとやれたらいいかなと思っています。今あることを粛々と一生懸命にやって、ガッツリ関わったという作品が何年かに1回できたらいいのかなと思いながらやっています。それが何年かやっていることに対してのご褒美(ほうび)なのかなって」

若い頃は芝居の現場は戦いの場と考え、オーディションではメンチを切ったりしていたというが、さまざまな経験と年齢を重ね、役柄の幅も広がり、さらなる活躍が期待される波岡さん。何事にも一生懸命全力で取り組み、新たなことに挑戦し続けているところがカッコいい。(津島令子)

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