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シシヤマザキが思い描く、アニメーションとアートの未来。コロナ禍で感じた壮大な気づきと希望

11月14日(土)に東京ビッグサイトで開催され、オンラインにてのべ21万人が視聴した「東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.5」。初の完全オンライン開催となった今回は【学生部門】の最優秀賞がFOREST(日本電子専門学校)、【U-25部門】の最優秀賞がHarada:Labという結果になった。

今回、テレ朝POSTでは、同アワードの審査員を務めたアーティスト・シシヤマザキ氏にインタビュー。自らの身体を題材にしたロトスコープアニメーションによる斬新な表現で、各界から注目を集めるシシ氏に、自身の目指す未来、絵を描くことの意味について語ってもらった。

ーー2019年に続いて審査員を務められた今回のアワードですが、2020年は新型コロナウイルスの影響で初のオンライン開催となりました。

2019年とはかなり違う雰囲気になったことはもちろんですが、2020年はオンライン上に設けられた「リアクションスタンプ」を通じて観客の反応が直接、反映されるというインタラクションが用意されました。スタンプのデザインも華やかですし、観客のみなさんもイベントに参加している感覚が得やすかったと思います。

ーー今回エントリーしたみなさんは、学生部門、U-25部門ともにシシさんよりやや下のミレニアル世代、Z世代でした。彼らにどんな印象をお持ちですか。

東京藝大でワークショップをやらせていただいたり、先生の話を聞いたりするなかで、「協調性」のある人が増えてきているという印象を持っています。

とくにプロジェクションマッピングのような、チームで制作するタイプのアートには、協調性の高い新しい世代の方が向いていると思います。それから、最近、グループワークで問題が起きにくくなったという話をよく聞きます。一人では出来ない大規模な空間演出などのアプローチは、今の世代の方がスムーズに出来るんじゃないかと感じますね。

(インタビューはオンラインで実施)

ーーシシさん自身の活動についてお聞きします。シシさんは作品制作において「ロトスコープアニメーション」と呼ばれる技法を使っていますが、どういったきっかけで使いはじめたのでしょうか。

この技法は今から100年ほど前、『ベティ・ブープ』や『ポパイ』などを制作したフライシャー兄弟が発明したもので、ディズニーアニメなどにも使われているテクニックです。実際の映像をトレースして、そこにアニメーションの動きをつける、ちょっとヌルヌルとした不自然な風合いが特徴です。

私はもともと、アニメーションなどの動的なイメージを作りたいという気持ちが幼い頃からあったのですが、自分の身体を使ってそれが作れる、という自信もなぜか最初からあったんです(笑)。「私、なんかおもしろい動き出来るかも」みたいな。

成長して、いざアニメーションを作ろうと思ったとき、何もないところからイメージを動かすのはすごく難しいなと感じて。そこで、自分の動きをアニメ化することをやってみたら、思いのほか自分の感覚とマッチしたんです。

ーーそんなシシさんの作品からは、デジタルでありながらアナログのような独特の温もりや手作り感が伝わってきます。

自分の出来る範囲で、自分の出来ることを探っていったら今のスタイルになったというのがまず一つあります。そうやって10年くらい同じ手法で作品を作ってきましたけど、ずっとやっていると、ただ動きをなぞっているばかりで、「これは何をやっていることになるのだろう?」と漠然と思うことがありました。

でも、しばらくやってくうちに、自分は「身体」をただ描いているのではなく、「身体」と「空間」の交差を描いているんだ、ということに気づいたんです。崩れているけどいい形に見えているものを探っていったり、動きに伴った残像(スクロール)みたいなものを自分で新たに作って描いたり。筆で描いているときの「身体性」が、作ろうとしている映像にだんだん混ざり合ってくるというか。

ーーなるほど。

(インタビューはオンラインで実施)

そもそも「身体」はとても曖昧なものだと私は思っていて。たとえば自分の背中を自分ではじっくり眺められないように、自分の体を他人が捉えているのと同じように捉えることは一生ムリじゃないですか。

つまり、自分のイメージはイメージでしかない。私の作っている作品は、その曖昧性と通じる部分があるのではないかと。

ーーその想いに至ったということは、今の制作スタイルがシシさんのほぼ完成形であるということなのでしょうか。

いえ、そうやって自分を通じて見つけたおもしろさを、やはり作品としてきちんと観る人に伝えないといけないと思っています。

ロトスコープはある意味でチート的なイメージのある手法ですが、私はもっとその先を開拓出来るし、もっと新しい発見があるはずだと希望を抱いています。

◆コロナ禍で感じた壮大な気づき

ーー今回のアワードも新型コロナウイルスの影響で例年と開催方法がかわりました。シシさんは新型コロナウイルスが自分の生活にどんな影響を与えたと感じていますか。

一言で言えば、壮大な気づきを与えてくれるものだったのではないかと。

ーーそれは具体的にどのようなことですか。

よりかけがえのないもの、よりかけがえのないことを意識するようになりました。コロナがきっかけというわけではないのですが、私は2020年、栃木県の益子に移住しました。

2019年から陶芸もはじめて。偶然のタイミングでしたけど、都会から離れて距離を置くことによって、世界の動きや情報の波といったものを少し俯瞰して見られるようになりました。

ーーライフスタイルを含め、社会での営みが大きく変化した年でしたね。

たぶん2020年って、みなさん、よりいっそうネットやSNSで情報を探ったり、かきわけていったりすることが増した年だったと思うんですけど、そうなるとネット上のコンテンツも自ずと増えていくじゃないですか。

それらを毎日浴びるように見ていると、自分自身が削がれる、消費されているような感覚になっていくというか。

単純にSNSに触れる時間が長くなると、他人に対する嫉妬心、羨む気持ちが増していく。そして、その反動でネガティブなコンテンツが蔓延して広がっていく、という印象を持っているのですが、それが今、あまりにも広がりすぎているのではないかなと。

でも、行くところまで行ったらその反動で本当にかけがえのないもの、何があっても人生のなかで大事なことに焦点が当てられていくんじゃないか、と希望を持ちたいですね。

Createdbymodifying”TokyoBigSight”(©AIST(LicensedunderCCBY4.0)) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

ーーだとすると、シシさんの思い描くアニメーションおよびアートの未来ってどんなものなのでしょう。

今って、なにか新しいものをこの世界のなかにポン!と生み出したら、そのとたんに焦点が当てられて即座に人々のジャッジにさらされてしまう時代なんだと思うんです。今はその状況を踏まえて物事を判断しがちなのかなと。私としてはそのベースの部分に抗うくらいがちょうどいいかなと思っていて。

今までいろいろなアーティストや表現者がいろいろな作品を世に送り出すことで、抗う姿勢を示してきたと思うんです。

先ほど、協調性がある若者が増えていると言いましたけど、それはそれでいい面もある一方、もっと「プロ意識」というか、いい意味で「私のなかにあるものこそが!」という思いを強く表現出来る人が、生まれにくい世の中になっているような気がしますね。

プライドを高くもつこと=他人を見下すことではないし、自分の根底にある感覚を、本当にプライドをもって自分で底上げして放っていく、そういう「底力」がこれからの未来、より希少なものになっていくと思うし、そんな機運が生まれるようなコミュニティや団体、場所から新しいエンタメや新しい価値観が生まれてくるのではないかと思っています。

ーーぜひシシさんが生み出して欲しいです。

そこはもう、私は「やってやるぞ!」という気持ちで、何を言われてもやるのみ、です。(笑)。

2020年、オンラインのお絵かき教室を開校したんですが、そこでわかったことがあって。

「絵を描く」という行為は本来1人の人間が起こせる最小限のアクションの一つですけど、みなさんそれをけっこう早い段階であきらめてしまっていると思うんです。

根本的に「絵」にはいいも悪いもないはずなのに、学校の先生によって早い段階で、それこそジャッジされてしまう。自分にしか描けない線や、自分のためにだけ描く絵が、誰も傷つけずに自分を高めていくことにつながると私は思うから、「我こそは」という気持ちをこれからも大切にしていきたいです。

シシヤマザキ
アーティスト / HOTZIPANG所属
水彩画風の手描きロトスコープアニメーションを独自の表現方法として確立。
独特のピンク色を多用した作品は、シシピンクと呼ばれている。
CHANEL、PRADAや資生堂などのブランドのプロモーションイメージの制作を担当し、世界的に活躍している。
オリジナルアニメーション『YA‐NE‐SEN a Go Go』(2011)、『やますき、やまざき』(2013) は国内外問わず数多くのフェスティバルで上映され、反響を呼ぶ。
2018年には、Forbes 30 Under 30 Asia – Class of 2018 に正式に選ばれる。
芸術活動として一日一個の顔『MASK』を毎日作り続けるプロジェクトも行う。(2010〜現在)
2019年には陶芸作品を中心とした個展『舕 TONGUE』を原宿VACANTで開催。
2017年よりクリエイター集団「1980YEN」(イチキュッパ)のメンバーとして楽曲制作や各地でのライブパフォーマンス、アートプロジェクト等を行っている。

 

~東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.5受賞作品~

【学生部門】
最優秀賞
日本電子専門学校 チーム名 : FOREST 作品名 :『共存』
受賞コメント: 東京ビッグサイトの大画面であらためて自分たちの作品を見たときに、イメージや色味が違ったり、映像が早くみえたり、落ちてくる玉の演出も少なくみえていたりと本番環境とのギャップに反省する箇所もありましたが、本当に嬉しいです。すべてのチームメンバーがすごい働きをしてくれ、素晴らしい作品を作れて幸せです。

【優秀賞】
Royal College of Art(イギリス チーム名 : 34 White City 作品名 :『Narstalgia』
受賞コメント: 受賞できたことも嬉しかったのですが、何よりコロナ禍でのイベント運営そのものにも感動しました。
会場にいくことは叶いませんでしたが、実際に会場にいたような気持ちになれたのでオンラインでの参加でも充分に楽しむことができました。ありがとうございました。

【優秀賞】
城西国際大学 チーム名 : TEAM KIOI 作品名 :『Shape Of Sounds〜音の可視化〜』
受賞コメント: この度はとても光栄に思っております。半年間リモートで制作していくなかで完成した映像を、このビッグサイトに投影していただいただけで感無量です。いろんな人が協力してくれて、来場できなかったメンバーにも、投票してくれた人にもあらためて御礼申し上げます。

【U-25部門】
最優秀賞
チーム名 : Harada:Lab 作品名 :『Mirror』
受賞コメント: このような機会を設けていただき有難うございます。今年からU-25部門が新設され、2回目の挑戦が実現し、最後のチャンスだと思って参加しました。このメンバーで最後まで創り上げることができて本当によかったです。チームメンバーはもう壁を超えて家族のような存在です。

【審査員特別賞】
チーム 名 : ATTO(カナダ 作品名 :『Fraektəl』
受賞コメント: まずここにこういった形で参加できたことがとても嬉しいです。心からお礼を申し上げます。新型コロナウイルスとの戦いが共存から収束に向かったときに、いつかかならず日本に行ってこの喜びを皆さんとシェアしたいです。

<取材・文/中村裕一>

東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol.5
©東京国際プロジェクションマッピングアワード実行委員会
https://pmaward.jp/

特設サイトにてイベントの模様をアーカイブ配信中!

シシヤマザキのお絵かき教室
https://community.camp-fire.jp/projects/view/288325

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