トヨタには厳しい?グラベルと泥にまみれるメキシコでの熱戦【世界ラリー(WRC)】
◆ラトバラ(トヨタ)は、昨年優勝したメキシコにどう挑む?
FIA世界ラリー選手権(WRC)の2017年シーズン。
第2戦ラリー・スウェーデンで、18年振りの復帰でいきなり勝利したトヨタ。そのトヨタのエース、ヤリ‐マティ・ラトバラが昨シーズン優勝したラリーイベントが、「ラリー・メキシコ」だ(3月9~12日開催)。
13戦ある世界ラリー(WRC)において、シーズン最初のグラベル(未舗装路)ラリーとなる。
ラリー・メキシコは、首都・メキシコシティから北西に約400km離れたグアナフアト州にあるレオンという都市を中心に開催される。
このレオンを中心とした地域は革製品の産地として有名で、革靴やブーツなど、メキシコ産の靴の70%はこの地域で生産されている。もちろん、革製のジャケットや鞄といった製品の生産も盛んだ。メキシコ製の革製品や革のアクセサリーを持っている人は、もしかするとレオン地域で生産されたものを所有しているのかもしれない。
また、メキシコと聞くと治安が悪いイメージが強いことも残念ながら事実だ。しかし、このレオン地域はメキシコシティとは違い、メキシコ人からして「レオン地域の人々はフレンドリーだ」と言うほどに良きイメージのメキシコを感じることができるという。
地域の建物はゴシック建築で立てられたものが多い。というのも、地図に詳しい人ならレオンという名前にピンと来たかもしれないが、スペインにもレオンという地域がある。カスティーリャ・イ・レオン州レオン県の州都レオンのこと。紀元前からの古い歴史を持つレオン王国があった地域が、スペインのレオンだ。
こちらメキシコのレオンは、メキシコがスペイン王国の副領地として新スペイン(ヌエバエスパーニャ)と呼ばれていた16世紀に、そのヌエバエスパーニャ副王でペルー副王も歴任したドン・マルティン・エンリケス・デ・アルマンサによって1576年に命名された。現在もスペインのレオンと姉妹都市にある。
◆グラベルラリーはトヨタには厳しい?
シーズン初となるグラベル(未舗装路)ラリー。じつは、マシン性能が大いに現れるラリーとも言われている。
というのも、ターマック(舗装路)ほどグリップはしないが、スノー(雪道)ほどグリップが悪いわけでもない。しかし、マシンパワーをうまくタイヤに伝えられなければ、加速が悪くなり、タイムが伸びない。また、グラベルはコーナリング中に車体が横滑りしやすいが、バランスが良いマシンはうまくコントロールがしやすいと言う。
つまり、ドライバーの腕で多いにカバーできるラリー・モンテカルロ(開幕戦)やラリー・スウェーデン(第2戦)、はたまた、タイヤの強力なグリップ力でカバーできるターマック(舗装路)とは違い、マシンの性能が成績に直結してしまう、各チームのマシンポテンシャルが見えてくるラリーということだ。
そんなラリー・メキシコだが、トヨタのエースであるラトバラは昨シーズン、唯一優勝している。ただし、相性の良いラリーでありながら、ラトバラは「今年のメキシコは、たぶん一番厳しいのではないか」と事前のメディア取材に対して答えている。
というのも、トヨタのマシンはエンジンのピークパワーこそあるが、ライバルたちと比較すると、扱いやすさにまだ改善の余地があると言う。また、ターマック(舗装路)やスノー(雪道)でのテスト走行は積んできたが、グラベル(未舗装路)でのテストは十分とは言えない。18年振りに復帰した事実上の新チームだけに、まだまだ経験値が必要なのだ。
一方、ここで強そうなのがヒュンダイ。また、ラリー・モンテカルロとラリー・スウェーデンでは決して目立たなかったシトロエンだが、シーズン開幕前のテストでは、とくにグラベル(未舗装路)でのテスト映像がとても速いと話題だっただけに、ヒュンダイやシトロエンがここメキシコでどんな走りを見せるのか、注目が集まるところだ。
日本チームであるトヨタにとっては、シーズン中でもっともタフなラリーとなりそうだが、勝負は時の運。始まってみなければわからない。誰もが第2戦のラリー・スウェーデンでの優勝を予測できなかったように、短い事前テストでマシンをグラベルに合わせてくるかもしれない。
まずは情熱の国で行われる、ファンも熱狂するラリーを楽しく観戦していただきたい。
【文/田口浩次(モータージャーナリスト)】
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