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映画『バイス』は、主人公の“趣味”を念頭に置いて観るのがポイント<japanぐる〜ヴ>

コンサート、映画、舞台など、あらゆるエンターテインメントをジャンル問わず紹介する番組『japanぐる〜ヴ』(BS朝日、毎週土曜深夜1時~2時)。

4月6日の放送では、映画『砂の器』シネマ・コンサート2019を特集し、森田健作と島田陽子による対談を放送。また、映画評論家の添野知生と松崎健夫による独自目線が人気の映画コーナーでは、『バイス』と『ハンターキラー潜航せよ』を紹介した。

◆映画の枠を越えた感動。映画『砂の器』シネマ・コンサート2019

“シネマ・コンサート”では、映画のセリフや効果音はそのままに、音楽部分のみをフルオーケストラが生演奏。最新のライブ・エンタテインメントとして注目されている。

映画『砂の器』シネマ・コンサートは、2017年から2度公演され、生のオーケストラによる臨場感が映画の枠を越えた感動を呼び大きな話題を集めた。同公演が昨年に引き続き、4月29日(月・祝)大阪・フェスティバルホール、4月30日(火・休)東京・Bunkamuraオーチャードホールで開催される。

映画『砂の器』は、1974年に公開。迷宮入りと思われた事件を追う刑事と殺人を犯した天才作曲家の宿命を描いた、松本清張の原作による不朽の名作だ。番組では、事件を追う若手刑事役を熱演した森田健作、天才作曲家=和賀英良の愛人役を演じた島田陽子によるスペシャル対談が実現。撮影秘話や作品の思い出を語った。

四季折々の風景を織り込むために2年という歳月を費やしたという大作。ロシアの映画祭に出品された際には、スタンディングオベーションが沸き起こった。

監督やスタッフの並々ならぬ熱意を感じながら演技に没頭していたと語った2人。島田は、当時はまだ女優になりたてで不安を抱えていたそう。

「実体験とはかけ離れた、大人の女の役は難しかった。今見ると恥ずかしくて、何も分からないでやっていたなというのが見えてしまう。私は緊張してひたすら自分の役のことだけを考えていたが、加藤剛さんは、そんな私にも優しく、下手な私の演技を受け止めてお芝居をしてくださった」と振り返る。

また、「ヌードのシーンが嫌で、“胸が大きくないから”と監督に直談判したら、監督から“幸薄い女の胸が大きかったらおかしい”と返され、何も言えなくなってしまった」という、ヌードシーンにまつわるエピソードも明かした。

森田は、実際に警察官だった父親に「刑事の立ち居振る舞いを教えてほしい」と相談したことがあったそう。

「テレビや映画のようにかっこいいものじゃない。1週間くらい警察署に行って立ち居振る舞いを見ていれば分かると言われ、実際に警察に行って見ていたら、実に普通の立ち居振る舞いだった。いちいちかっこつけるようなことはしない。それを知って演じられて、父親が警察官だったのはラッキーだった」と当時を振り返る。

また、「1カットも撮らない日が何日も続いたことがあった。理由を聞くと、雲の形がよくないからだった」と監督のこだわりについても語った。

映画『砂の器』シネマ・コンサートは、クライマックスにあるコンサートシーンが大きなみどころ。森田と島田は、ぜひこの贅沢な体験をしてほしいとアピールした。

◆やり手監督による『バイス』、リアリティに注目『ハンターキラー 潜航せよ』

映画コーナーでは、松崎健夫が『バイス』、添野知生が『ハンターキラー 潜航せよ』を紹介した。

(c) 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

『バイス』は、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の座に就き、アメリカをイラク戦争へ導いたとされるディック・チェイニーを描いた作品。本年度アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことでも話題を集めた。

松崎は、「アダム・マッケイは、『サタデー・ナイト・ライブ』というコメディ番組で世相を斬るコーナーの作家をやっていた経歴がある人。その人が、今の時代に繋がる存命の人を主人公にした作品で作家性を発揮しているところにアメリカ映画の懐の深さを感じる」と、まずは監督・脚本・製作のアダム・マッケイに注目。

そのうえで、さまざまなことを意図した編集にも言及。「作中では当時の実際のコメント映像も出てくるが、それをAというエピソードの前に入れるのと後に入れるのでは、同じコメントでも見え方が違う。そういう編集によって、果たして我々が見ている情報は正しいのか? 何が本当なのか?…ということを考えさせられる構成になっている。またチェイニーは、偽の餌の付いた針で魚を釣るフライフィッシングが趣味というのもポイント。それを念頭に置いて観てほしい」と、社会派らしくひねりを効かせて解説した。

(c) 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

添野知生が紹介した『ハンターキラー 潜航せよ』は、ロシア国内で企てられた世界を揺るがす壮大な陰謀を阻止するために、過酷なミッションに挑むジョー・グラス艦長率いる攻撃型原潜「ハンターキラー」の乗員達の活躍を描いた作品。

添野は、現代ミリタリー映画としてのリアリティを評価した。「例えば潜水艦が急潜行するときの身体の傾き方は、他の潜水艦映画では観たことがなかった。でもこれが実際です。原作小説を書いた作家コンビのひとりジョージ・ウォーレスは、実は元潜水艦の艦長だった。それだけに、細部にまでリアリティがある」とコメント。

また、「ミリタリーアクション映画でありながら言葉の力がある」として、戦闘シーンに注目が集まるミリタリー映画とはひと味違うことに触れる。

「ジョー・グラス艦長が、艦内放送でスピーチして乗員の心を掴むシーンがある。また映画のクライマックスに出てくる副主人降格のアンドロポフ艦長の言葉が実にすばらしい。すべての争いは言葉で解決できるのではないかということを描いたミリタリーアクションでもあると思う」

大人が観たくなる、良質な映画やシネマ・コンサート。ぜひ、劇場やホールへ足を運んで体感を。(文=榑林史章)

※番組情報:『japanぐる~ヴ
毎週土曜深夜1時~2時、BS朝日