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「人の不幸は、無課金で遊べるゲーム」か。ドラマ『私のおじさん』が現代の闇を描く

就職した途端、超過酷ロケで有名なバラエティ番組に配属されたポンコツ新人AD・一ノ瀬ひかり(岡田結実)。彼女の前に突如現れたのは、「妖精」を名乗るおじさん(遠藤憲一)だった――。

©テレビ朝日

どうやらひかりにしか見えていない妖精おじさんとともに始まった珍妙なお仕事ライフを描く金曜ナイトドラマ『私のおじさん~WATAOJI~』

2月中に放送された同ドラマ第5話・6話について、そして、3月1日(金)放送の第7話について、小劇場特化型メディア「ゲキオシ!」編集長で、独自のドラマレビューも人気を集めるライター・横川良明さんに寄稿してもらいました。

新米AD・ひかり(岡田結実)と番組制作会社・テレドリームの面々の奮闘を通じて「働くとは何か」を描き続けてきた金曜ナイトドラマ『私のおじさん~WATAOJI~』。

第5話(2月15日放送)、第6話(2月22日放送)を通じて見えてきたのは、新しい価値観と旧い価値観の対立、そして、その先にある柔らかな答えでした。

◆あなたは仕事が好きですか?―働く背中に込められた愛と夢

©テレビ朝日

第5話では、実は妻子持ちであることが明らかになった若手ADの九条(戸塚純貴)がメインに。印象的だったのは、九条の小さな娘がバラエティ番組『限界MAX★あなたも私もヤッテミー!!』の撮影に駆り出されたくだりです。

ロケ中、突然泣き出した娘を案じ、九条は撮影中止を申し出ます。テレビ的には、泣き出す子どもは“おいしい”ネタ。九条の勝手な行動に、ディレクターの千葉(城田優)は声を荒げます。

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だけど、九条にとっては大事な家族のことを思えば、テレビ的な“おいしさ”なんて二の次三の次。ヤラセやイジリなど、これまで“おいしい”とされてきたテレビ的な笑いが批判の対象となることの多い昨今、イマドキADの九条がとった行動は、非常に現代的と言えます。

では、根っからのテレビマンである千葉の考え方は時代錯誤なのか? そんな裏テーマを感じさせた第5話。最終的な着地は、決してどちらの価値観も否定することなく、そうした多様な価値観がクロスする組織という場でひとつのものをつくるということはどういうことなのかを提示していました。

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そして第6話は、番組愛の塊である千葉が主人公。ちょっと仕事に行きづまり感を抱える千葉のもとに、新進のネットメディア企業・ネットサバイバーから引き抜きの話が舞い込みます。

ちなみにこのネットサバイバーのCEOを演じるのが、浦井健治。ご存じミュージカル界のプリンスです。同じく城田優も今やミュージカル界の星。ふたりが同じ画面に並んだ瞬間、なぜかそこは日生劇場に。いつ高らかに歌い出すか手に汗握りながら見守っていました。

新興メディアであるネットの目から見れば、オールドメディア扱いされることもあるテレビ。古い雑居ビルにオフィスを構えるテレドリームに対し、ネットサバイバーのオフィスはオシャレで先進的。活躍のステージもグローバルに広がっています。

どちらを選んだ方が今後のキャリアのプラスになるかは一目瞭然。その中で千葉が出した答えには、新旧や損得といったものでは割り切れない、愛や夢が込められていました。

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このドラマを見ていてふいに熱いものがこみ上げてくるのは、結局そういうところなんですよね。

何か夢中になるものに出会いたい。一生懸命になってみたい。世の中の流れがどんなに変わっても、心の奥底に疼いている、そういった人間臭い想いを『わたおじ』はガツンと突いてくる。だから、ついグッと来てしまうのです。

◆暗雲漂う第7話。テレドリームに炎上騒動が勃発!

ところが第7話(3月1日放送)では、そんな何だかんだでハートフルな『わたおじ』ワールドに異変が。

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週刊誌が『限界MAX★あなたも私もヤッテミー!!』のヤラセ疑惑を報じたのです。

さらに追い打ちをかけるように、別の週刊誌がひかりと番組出演者・パウダー(JP)の熱愛写真をスクープ。世間のバッシングは過熱し、番組もパウダーも危機にさらされ…。というのが、第7話のストーリー。

今や有名人だけでなく、一般の人たちでもちょっとした不用意な発言やおふざけで炎上に巻き込まれる時代。正直、大抵の人が思っているはずです、なんだかおかしいと。

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やれ不倫をしたら叩きまくり、ちょっと失言をしたら叩きまくる。それも相手の息の根を社会的に止めるまでバッシングはやみません。どんな弁解も火に油。たとえ謝罪をしても、言葉の切れ端を拾って揚げ足の材料に使われる始末。そして、もう草ひとつ生えていない焼け野原になったら、すっかりその人のことは忘れて、次の標的を探すだけ。

真実なんて興味もない。袋叩きにした相手の人生がこれからも続いていくことなんて考えもしない。一瞬の欲求不満が解消されれば、それでいい。

行き過ぎた正義感なんて言葉が出回るようになりましたが、そこにあるのはもはや正義感でさえありません。ただの暇潰しとストレス発散。人の不幸は蜜の味とは言いますが、今の時代、もはや人の不幸は無課金で遊べるスマホゲームのようなものなのかも

そして、そのゲームの参加者は攻撃している人だけとは限りません。炎上を見て心ひそかにワクワクしている人。大して関心もなければ真実を確かめたわけでもないのに、流れてくるツイートを深く考えずリツイートして拡散に加担してしまう人。みんながこの誰も幸せにしない無課金ゲームのプレイヤーなのです。

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そんな現代の闇を炙り出す第7話。これまでは降りかかるトラブルや世代間ギャップも、人の想いでクリアしてきたテレドリームですが、今度は見えない不特定多数が相手。一生懸命流した汗も、涙と鼻水まじりの言葉も、彼らには決して届きません。

このままテレドリームはバッシングに負けてしまうのか。「一生懸命」が伝わらない相手と、ひかりたちはどう立ち向かうのか。炎上社会に生きるすべての人たちに見てほしいお話です。<文/横川良明>

※番組情報:金曜ナイトドラマ『私のおじさん~WATAOJI~』第7話
2019年3月1日(金)午後11:15~深夜0:15、テレビ朝日系24局(※一部地域を除く)