テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
menu

ラトバラ「僕にとって最高のラリーステージ」 第2戦「ラリー・スウェーデン」が開幕

WRC(FIA世界ラリー選手権)、第2戦「ラリー・スウェーデン(2月14日~17日開催)」が間もなくスタートする。

世界最高峰モータースポーツのひとつであり、年間14戦で行われる世界選手権の第2戦目となる「ラリー・スウェーデン」。

©TOYOTA GAZOO Racing

このラリーは、スウェーデン国内にあるカールスタードを中心に開催される。

カールスタードは、スウェーデンの首都ストックホルムとノルウェーの首都オスロを直線で結び、その距離を三等分して、オスロから最初の1等分あたりをほんの少し南に下ったところにある小さな町だ。

木曜日に行われるのはSS1。カールスタード内に作られた全長1.9kmの特設コースでは、通常のSSが1台ずつのタイムアタックであるのに対し、ここでは2台が同時に走行してタイムを競い合うSSS(スーパースペシャルステージ)という、観客がまるで対戦ゲームを見るような感覚で楽しめるステージとなっている。

◆唯一の全面雪道を走行する“スノー・ラリー”

「ラリー・スウェーデン」の特徴は、全14戦あるWRC活動のなかで、唯一となる全面雪道を走行するスノー・ラリーであることだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

そのため、「ラリー・スウェーデン」を戦うマシンが履くタイヤは、一般的な冬用タイヤのスタッドレスタイヤではなく、タイヤの表面にスタッドと呼ばれる金属ピンを1輪あたり300本以上埋め込んである特殊なスパイクタイヤで走行する。

しかも、このスパイクタイヤには更なる特徴があり、ターマック(舗装路)用タイヤと比較すると、2/3程度のタイヤ幅しかない。

普通のタイヤは路面にタイヤが設置することでグリップと呼ばれる摩擦が生まれ、それがエンジンからの力を前に進む“駆動力”という形で伝える。当然、接地面積が大きいほうが、より大きな摩擦となる“駆動力”が生まれる。レースを走るフォーミュラカーなどのタイヤが太いのはそれが理由だ。

基本はラリーも同じなのだが、こと雪道となると話が違ってくる。一般的に雪道は摩擦係数が低く滑りやすいのだが、スパイクタイヤはタイヤに埋め込まれた金属ピンが雪道や氷道に食い込み、強制的にグリップを生み出す。

例えれば、普通の靴では雪の上を歩けないが、登山靴などに使われるアイゼンを履けば氷の上だって問題ないのに近い。スパイクタイヤの金属ピンが食い込むことでグリップを生むので、タイヤ幅を太くして雪の抵抗を増やすより、細いタイヤ幅で雪をかき分け、ステアリング操作の操作性が良くなるようにしているのだ。

◆ラトバラは「ラリー・スウェーデン」の最多勝記録タイなるか

そんな特殊な環境のラリーだけあって、「ラリー・スウェーデン」は、雪道に慣れ親しんだ北欧出身ドライバーが圧倒的に強く、北欧以外のドライバーでは、セバスチャン・ローブ(ヒュンダイ)とセバスチャン・オジェ(シトロエン)、ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)の3名だけが勝利を経験している。

そしてここを得意とする北欧出身ドライバーのなかでも特に注目を集めているのが、「ラリー・スウェーデン」でWRC初勝利を飾り、過去4度勝利しているフィンランド出身のヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ)だろう。

©TOYOTA GAZOO Racing

実は、この「ラリー・スウェーデン」でラトバラはWRC出場197戦目となり、過去最多記録を持つカルロス・サインツの記録を抜くことなる。

また、「ラリー・スウェーデン」の最多勝記録は、フィンランド出身のマーカス・グロンホルムとスウェーデン出身のスティグ・ブロンクビストが記録した5勝で、ラトバラはもう1勝で歴代最多勝に並ぶこととなる。

ラトバラは、WRC公式インタビューで「ラリー・スウェーデン」で結果を出して、今シーズンのタイトル争いにも名乗りを上げたいと意気込みを語っている。

「ここは僕にとって最高のラリーステージだ。2008年のWRC初勝利以降、ここで4勝している。僕にとってスパイクタイヤを履いた状態でのスノー・ラリーはとても走りやすい。ずっと慣れ親しんできたからね。

ここ『ラリー・スウェーデン』は他のラリーイベントとは完全に別世界だ。マシンはグラベル(未舗装路)走行用のサスペンションセッティングにしてスパイクタイヤを履いて走る。タイヤの表面にはスタッドと呼ばれる金属ピンのスパイクが7mmほど突き出ていて、タイヤ1輪あたり300本以上のスタッドが埋め込まれている。

そのスパイクタイヤで走ると、正直、通常のグラベルよりもグリップしていることが分かる。それこそが『ラリー・スウェーデン』を面白くしている要因だ。というのも、コースは下が凍っていて、その上に雪が積もっている。

つまり、実際に走ってみると、雪の下側にある氷の状態によっては突然滑りやすい場所があったりして、マシンが横滑りする。スピードを出して走るには勇気が必要だ。少しでも恐怖心を持っていると、簡単に多くのタイムを失ってしまう。

そして、今年のチャンピオンシップだけど、僕は2018年シーズンの後半6カ月間のような走りをすることができれば、2019年のドライバーチャンピオンシプを十分に戦えると思う」(ラトバラ)

昨年『ラリー・スウェーデン』で勝利したヌービルは「昨年の『ラリー・スウェーデン』は完璧だったと思う。積雪が多い状態が良いのだけど、それだと高速で走行することが実は難しい。あと、走行順にも左右される。ただ、僕たちのマシンはポテンシャルが高く勝つことができたんだ」と、マシンの重要性を説いた。

過去3度勝利を経験している王者オジェは「ここでのラリーは好きだ。良い雪の状態では本当に他にはない最高のラリーイベントだ。昨年、僕は苦しんだけれど、それは路面コンディションも影響したし、苦しんだのは僕だけじゃない。

今年心配なのは、気温変化によって氷の層があまり厚くないことだ。簡単にグラベル(未舗装路)層へと掘り返してしまうかもしれない。そうなると厄介だ」と語った。

実はここ数日の昼間の平均気温は摂氏4度で天気予報ではさらに気温上昇の可能性があると指摘されているため、氷が緩み、簡単にスパイクタイヤで削られてしまうことが予想される。

雪道や氷の上では強い味方となるスパイクタイヤだが、グラベル(未舗装路)では泥や砂利をかき出すには、金属ピンのスタッドが邪魔となり、タイヤ幅の細さもグリップ不足の原因となる。

◆マーカス・グロンホルムがスポット出場

さて、こうした上位陣に加えて、今年の「ラリー・スウェーデン」にはWRCファン注目のドライバーがスポット出場する。

フィンランド出身、2度のWRC世界王者であり、この「ラリー・スウェーデン」最多勝を誇るマーカス・グロンホルムだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

つい先日、2月5日に50歳を迎えたグロンホルムは、プライベーターとしてトヨタのヤリスで出場することになった。

グロンホルムは、今年ヒュンダイでWRCにフル参戦復帰したローブ、トヨタのトミ・マキネン代表と現役時代のライバル。また、グロンホルムの最初の引退を引き継ぐ形で、フォードのワークス・チームへとステップアップしたのがラトバラだった。

多くのドライバーやチーム関係者と縁があるだけに、最新マシンでどんな走りをしてくれるのか楽しみだ。

1日目のラリー・スウェーデンは、SSS1のスーパースペシャルステージが行われる。SSS1の現地スタート時間は午後8時8分。日本時間では翌金曜日午前4時8分となる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>