授業中に「また携帯いじって」という言葉は絶滅する。有馬トモユキが語る“未来の表現法”
2018年8月、クリエイターを目指すミレニアル世代を対象にオープンしたオンラインサロン「CREATOR’S BASE byテレビ朝日」。
この「CREATOR’S BASE」は、クリエイターを目指す若者を対象とした会員制コミュニティサービスで、各界で活躍する若手クリエイター陣によるセミナーイベントを軸に、「好き」を仕事にする方法や才能の育て方を発信している。
「CREATOR’S BASE」第6回として開かれたイベントでは、Adobe社の田中玲子氏によるPremiere Rush CCのワークショップ後、有馬トモユキ氏のトークイベントが行われた。
有馬氏が「『視点』を持つと、クリエイティブはもっと面白くなる」をテーマに語った内容を一部紹介する。
◆「また携帯いじって」の言葉は絶滅する
日本デザインセンターに勤めながら、グラフィック、ウェブ、アプリなど幅広くデザイナー活動を行っている有馬トモユキ氏。
自身の価値観が大きく覆された出来事として挙げたのは、“初音ミク”との出会いだった。
「初音ミクの登場で、音楽をやったことがなかった人が音楽を始めるようになったことが、とてもエキサイティングに見えたんですよね」(有馬氏)
それまでは、音楽を作るためにはボーカルを用意する必要があり、また、そもそもボーカルを探すのにもコネクションが必要など、音楽を制作することの障壁が高かった。
その壁を壊したのが“初音ミク”だったというのだ。
女性の声を自由に使い、プロアマ問わず誰でも簡単に音楽を作成できるようになったことで、新しい音楽の可能性が生まれた。
いまや動画も、Premiere Rush CCなどのアプリをはじめ、スマホで誰でも簡単に作れるようになっている。
「昔だったら、授業中にスマホをいじっていたら取り上げられることもあったと思いますが、そういう世界ではなくなってくるのだろうなと。スマホが仕事のツールになっていけば、『また携帯いじって』という言葉は絶滅すると思います」(有馬氏)
作り手がプロアマを問われず、作業する場所も問われなくなり、「道具が僕らを自由にしてくれる」と有馬氏は話す。
◆「自分なりの『視点』を持つ」
しかし、“誰もがものを作れる時代”になったにも関わらず、「クリエイターが足りない」と有馬氏は指摘する。
「デジタルのプロダクトは増えているのに、作り手が決まっていないのです」(有馬氏)
例えば、VRの新しいプラットフォームが出てくると、インターフェースを考える人は3Dアーティストなのか、スマホのインターフェースデザイナーなのか、誰がやるのか決まっていないというのだ。
有馬氏はそこに「チャンスがある」という。
「決まっていないってワクワクしません?」(有馬氏)
新しいものができて環境が変わるたびに、産業構造もまた新しくなる。それはつまり、作り手がいつでも参入する余地がある、チャンスがあるというのだ。
その一方で、「このプロダクトを作るのが得意」は10年後、あるいはもう数年後には通用しなくなっている可能性がある。
そんな環境が絶えず変化する中で、肝心なのは各々が『視点』を持つことだと、有馬氏は強調する。
「何をしたら自分も楽しく、世の中にも面白いと感じてもらえるか。社会と自分との接点、視点を見つけられるといいのだろうなと思っています」(有馬氏)
有馬氏の場合は、それが「デザイン」だった。ただ、これはネットでできることに限らず、それぞれが違っていいという。
「文章でも、音楽でも、イラストでも、写真でもなんでもいい。自分なりの具現化の仕方、表現の仕方は無限にあると思います」(有馬氏)
その中で、有馬氏は「プランナーも立派なクリエイターだ」と語る。
「プランナーは広告やポスターをどのタイミングで投下すると一番効果があるのか等を考えています。造形とは違うスキルですが、デザインそのものをツールにして世界を作ろうとしているので、プランナーも立派なクリエイターだと思います」(有馬氏)
デザインをやったことがない、絵は苦手だ、映像のセンスがないなど、人それぞれ不得意はあるが、「自分なりの表現法」を探すことが大切だという。
誰でも簡単にものを作れる時代になった今だからこそ、どんな方法を使って、何が表現できるのか――必死に模索すればおのずと自身の“クリエイター像”が見えてくるかもしれない。<制作:CREATOR’S BASE>
※「CREATOR’S BASE」次回イベント
「自分を止めるな!~選んだ道を必死で正解にする生き方~」
登壇者:上田慎一郎
日時:2018年11月29日(木) 19:30~21:30(開場19:00)
映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督によるトークショー&ワークショップが開催されます!詳しくは、「CREATOR’S BASE」の公式サイトまで。