大谷翔平、メジャー初勝利!花巻東高校の恩師「ベーブ・ルースを超えてほしい」
大リーグ(MLB)でも、二刀流の歴史を刻んだ。大谷翔平投手(23=エンゼルス)が、メジャー初勝利を飾った。1日(日本時間2日)のアスレチックス戦で初登板・初先発。初回にこの日の最速100マイル(約161km)をマークして、2回に3ランの被弾もその後は立ち直り、6回3安打3失点、6奪三振の好投だった。
3月29日の開幕戦はDH起用で初安打。そして開幕3戦目に投手で鮮烈デビューを飾り、大谷はスタッフや周囲に感謝して「ただただ楽しく。楽しんでマウンドで投げられた」と喜んだ。
MLB公式サイトは「歴史的な6回デビュー勝利」と見出しを付けて、主砲のマイク・トラウト外野手(26)は「Sho Time !」(翔タイム)と試合前から興奮していたと伝えた。開幕前は投打とも低迷して「二刀流の実力は誇大宣伝」「マイナーから鍛え直せ」と酷評していた米メディアも、手のひらを返すように絶賛した。
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球団発表によると開幕戦に野手で先発出場して、10試合以内に投手でも先発登板した選手は、1919年のベーブ・ルース(当時レッドソックス)以来。99年ぶりに大谷が、本物の2WAY(二刀流)を復活させて「世紀の1勝」を挙げた。
オープン戦2試合の防御率は27.00だったので、劇的に変貌したように見えるが、本人に言わせれば段階を踏んで準備した結果だろう。紅白戦、オープン戦で打ち込まれても「段階がありますから」「いろいろ試している」と説明していた。
空気がとても乾燥しているキャンプ地のアリゾナではボールの抜けを気にしていたが、湿気のあるカリフォルニアに戻ると制球が安定。スプリット(フォークボール)の落ち方もよくなり、この日の登板前は「投球のポイントになる」とみていた。日本ハム時代の関係者に聞くと、大谷はダルビッシュ有投手(31=カブス)ほど器用ではないが、着実に修正を図るタイプ。MLBの初勝利にも、それが現れたといえそうだ。
上々の滑り出しに、どうしても100年ぶりの10勝&10本塁打以上の大記録を期待したくなる。ルースは1918年に13勝7敗(防御率2.22)、11本塁打をマーク。MLB5年目で、23歳だった。メジャーで唯一の伝説レコードに、ちょうど同じ年齢の大谷は届くことができるだろうか。
この日の投球を見ると、MLBが導入している解析システム「スタットキャスト」によれば、直球の平均球速は96.6マイル(約155.4km)。開幕直後とはいえ、全体の3位にランクイン。同97.9マイル(約157・5km)で先発投手1位のルイス・セベリーノ(24=ヤンキース)らメジャー屈指の速球派と肩を並べるレベルだ。おかげでスプリットなど変化球も効果的に使えるため、2ケタ勝利が期待できそう。ただし、スピン量が平均2033回転と比較的少なく、この日は直球で三振は奪えなかった。フォームにクセのある中南米人投手と違って球筋がキレイなので、不用意にストライクを取りにいくと、これまでの日本人投手と同じく簡単に被弾する恐れがある。また、他のMLB投手があまり投げないように、スプリットの投げ過ぎはひじに負担がかかる。3回に高めに浮いたスライダーを打たれたが、変化球の制球力がカギになる。
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打席ではメジャーのパワー・ピッチング、手元で動く球に慣れるまで、もう少し時間がかかりそうだ。開幕戦は初打席で中前安打を放った後、内角攻めにてこずり、1安打に終わった。キャンプの打撃練習では圧倒的な長打力を示しても、実戦ではまだ打ったボールに角度が付いていない。米国では、5本塁打以下に終わると辛口予想した記者もいる。しかし指導陣の助言でノーステップ打法に切り替える修正能力を見せており、マイク・ソーシア監督(59)は「ロングヒッターの才能は間違いない。打席を重ねれば、打てる」と心配していない。
「ベーブ・ルース2世」と期待されるように、大谷には100年ぶりの2WAY記録の夢を抱かせるスケールの大きさがある(ルースは意外にも奪三振が少なく、打たせて取るタイプの投手だったこともあり、打撃専念を勧められて次第に登板が減り、1919年は29本塁打、1920年は54本、1921年は59本を記録)。日本では2年目の2014年に11勝&10本塁打、日本一に貢献した2016年は10勝&22本塁打を記録。花巻東高の恩師・佐々木洋監督(42)は「大谷にはベーブ・ルースを目指すのではなく、超えてほしい」と願っている。1948年8月16日にルースが亡くなって70年目でもある今季、MLBの二刀流ルーキーがどんな成績を残すのか見ものだ。