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根岸季衣、“覚醒”が話題のホラー映画で最強ばあちゃんに。放送禁止用語連発で大暴れ「これは楽しいぞ」

劇作家・つかこうへいさん、黒澤明監督、大林宣彦監督など名だたる監督たちとタッグを組んできた根岸季衣(ねぎし・としえ)さん。大林監督の遺作となった『海辺の映画館-キネマの玉手箱』にも出演した。

「(大林監督は)やっぱり自分が現場にサッと行けないことが、すごくもどかしいみたいでしたね。離れたところで指示を出すのは、すごくもどかしそうでしたけど鬼気迫る感じで、何かを遺そうという熱い思いは伝わっていました」

現在、ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』(東京建物Brillia HALL)に出演中。これはバレエに魅せられた少年の夢が、炭鉱町の希望となっていく様を描いた映画『リトル・ダンサー』(スティーブン・ダルドリー監督)のミュージカル版。根岸さんは、主人公の少年・ビリーのおばあちゃん役を演じている(阿知波悟美さんとWキャスト)。

「初演が2017年で今回が3回目になるんですけど、東京公演は10月までで、そのあと大阪公演。今まではもっとやりたいな、もっと出番ないかなぐらいに思っていたんですけど、年齢を重ねるとちょうど良かったなって(笑)。

やっぱり長丁場だし、何よりもまず無事に乗り切るということ、それが一番のテーマですね。だから、とにかく故障のないように気をつけています」

――あれだけ大掛かりでキャストも大人数で動きも激しくて…となると大変ですよね。

「そうなんです。だから今はスウィング(アクシデントや体調不良などで舞台に出演できないキャストに代わって出演する)。切り替えができるように、スウィングのスウィングとか、それを今でも稽古しているんです。

そういう人たちを入れて、いつでもどの役でも対応できるように…というのは、昨日もそうだったんですけど、公演が終わってから稽古なんですよ。

公演が終わってからの稽古ってかなりつらいんですよね。やっぱりからだがどうしてもその日の公演が終わって一回燃え尽きていますから、2公演やるのとはまた違う疲れなんです。今もそういうのをまだやっていますね」

――厳しいオーディションがあって選ばれた子、選ばれなかった子がいると思うと切なくなりますね。

「そう。だから、ずっとオーディションに付き合っているホリプロの人とかはかなり切ないらしいですよ。情が移っちゃって、ふるいにかけていくのがつらいって。みんな一生懸命頑張っている姿を見ているのに全員を出すわけにいかないっていうのは、つらいですよね。

でも、さすが勝ち抜いてきた子どもたちはすごいです。始まってからも伸びるし、どんどん変わっていきますからね。真っ暗ななかでギリギリまでダメ出しノートを読んでいたりしてね。『二宮金次郎か?』みたいな子もいたりしますけど、それなりに自分のコントロールの仕方みたいなのをそれぞれがちゃんと持っているんじゃないかな。しっかりしていますよ」

――根岸さんは、最初はちょっと認知症が始まっているのかなという感じのおばあちゃんですが、孫の夢を応援しながらどんどん元気になっていきます。

「この舞台は、もう二度とできない子たちのそのときの一番の輝きを見られるという、その楽しさって他の演劇とはまた全然違ったものなんですよね。その貴重さというか。

子どもからもらうエネルギーっていっぱいあって。温かみとね。だから、すごくカンパニーもみんな集約される、まとまるという気持ちもちょっと他の芝居とまた違いますよね。

あの子たちも同じ時はもう二度と来ないですからね。子どもたちも二度とできないし、おまけにどんどん成長していっている姿を近くで見られるのは本当に幸せですね。

2017年が初演で、今回は3回目になるんですけど、1回目の子も2回目の子も見に来てくれて、一緒に写真を撮ってもらいました。何とも言えない感慨深さですよね」

――キャストも多く舞台の出入りが多いので、裏は結構バタバタでしょうね。

「それが今はコロナのこともあるから、基本的には外部の方はマネジャーも入れないし、子どもたちの親御さんも一切入れないんです。

子どもたちの担当のスタッフは付いていますけど、子どもたちはみんな一人の演者としてちゃんと楽屋にいますね。バタバタはすごいですけどね、本当に。シングルキャストの人なんて着替えているか出ているかどっちかですからすごいですよ。

でも、今回もまたやらせてもらえて本当に良かったなって。長丁場なのでまだまだこれからですけど、このまま次に繋げたいって思いますね。やり続けられるところまでやりたいなって思っています」

©2024『サユリ』製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス

※映画『サユリ』全国公開中
配給:ショウゲート
監督:白石晃士
出演:南出凌嘉、根岸季衣、近藤華、梶原善、占部房子、きたろう、森田想、猪股怜生

◆太極拳で“霊”と壮絶バトル

かつてないほど最強のおばあちゃんを演じた映画『サユリ』が公開中。念願だった夢のマイホームへと引っ越した神木家だったが、次々と不可解な現象が勃発し、家族が一人ずつ死んでいく。神木家を恐怖のどん底に突き落とすのは、この家に棲みつく少女の霊“サユリ”だった。そして中学3年生の則雄(南出凌嘉)は祖母・春枝(根岸季衣)とともにサユリへの復讐戦に挑むことに…という展開。

これまでのホラー映画のイメージを覆す痛快な作品。突如覚醒し、スクリーンで暴れ回るハードボイルドなおばあちゃんぶりが話題に。

「台本の中で、私が覚醒したところで、『古いロックが流れる』って書いてあったんですよ。それもカセットでって言うから、『おーっ、やったー!これは楽しいぞ』って思って(笑)。そこで一番乗っちゃいましたね。

監督は私に『どうですか?』ってお話を持っていこうと思っていたら、『ここはジャニス(ジョプリン)で行きましょう!』なんて先に言っちゃったものだから、あまりにも前のめりでびっくりしたみたいなことをおっしゃっていました(笑)」

――ファッションもファンキーでロックなカッコいいおばあちゃんでした。ホラーだから怖いんですけど、気持ちいいというかおもしろいですね。

「ありがとうございます。いろんなことをやらせていただいておもしろかったです。かなり評判もよくてうれしいですね。『大丈夫かな?ちゃんとやれているのかな?』って不安な感じがあったんですけど、見てくださった方が、『ばあちゃんすごい。怖いけど最強!』とか、色々言ってくださってうれしいです(笑)」

――『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)を知っている世代の人はかなり驚くでしょうね。禁句の四文字のセリフも多くて。

「『ふぞろいの林檎たち』が大好きな人には、病弱でかわいそうな暗い人だと思われていますからね(笑)。反対どころか、すごいことになっていますよね。

私はホラー作品が結構多いんです。今年は『変な家』(石川淳一監督)もあったし、一番古いのは長崎(俊一監督)さんの『死国』という作品。あそこらへんからちょっとババア歴がつながっているんですけどね(笑)」

――『サユリ』の撮影現場はいかがでした?

「みんな合宿で、とにかく『サユリ』しかないっていう状態で撮影していました。今は熱海に住んでいるので、車だったら30分ぐらいのところだったんですけど食料の調達だけで全然帰らなかったですね。自分の家に泊まる気に全然ならなかった。3週間ぐらいだったかな。

部屋に調理ができる設備があったので、そこで自炊みたいなことをしながらやっていました。やっぱりそれだけ他のものを入れずに集中できる時間というのは、役者にとっては幸せな時間ですよね」

――撮影期間中は、怖い夢を見たりしなかったですか。

「疲れているから、終わったらもうすぐに寝るみたいな感じで(笑)。あとは鍼の先生に来てもらったりしていましたね。同じ伊豆だったので、熱海でかかっている先生に通って来てもらって」

――太極拳のシーンとか、結構アクションもありましたものね。

「そうなんです。実はすごいおばあちゃんで、太極拳で何人も倒したことがあるという設定だったので、太極拳の練習をしすぎて筋肉痛が結構大変でした」

――完成した作品をご覧になっていかがでした?

「初めて見たときというのは冷静じゃないんですよね。俯瞰(ふかん)で見られないし、『どうなんだろう?』って、マネジャーに聞いたりしていたんですけど、予告編ができたら『あれっ?イケてるんじゃないか』みたいな感じになって(笑)。評判も良いって聞いて。

感想を書いてくださる方がすごく褒めてくれているので、ちょっと図に乗って、今いい気持ちになっています(笑)」

――ホラー映画ですが、気持ちが明るくなって元気になるというのはいいですよね。

「そうですね。とくにシニア層は元気になるんじゃないかな。若い人も結構『元気が出ました』って書いてくれたりしていますよ」

 

◆熱海での生活を満喫

私生活では1981年に、つかこうへい劇団の数々の舞台劇中歌の作詞や作曲を手がけた大津あきらさんと結婚。男児2人をもうけるが1997年に死別。2008年にブルースバンドのメンバー・宇賀啓祐さんと再婚。根岸季衣&ザ・ブルースロードのボーカルとしても活動。約6年前から熱海に移住。都内でのロケや撮影で朝早いときには都内に泊まっているという。

「今やっている『ビリー・エリオット』も穴をあけるわけにいかないから、危ないと思ったときはもう早めに泊まるようにしています」

――健康状態を維持してコンスタントに続けてこられている秘訣は?

「もともと動くのは好きだったから、放っていても何かしら動いていたというのはあるかもしれないですよね。だいぶ最近動きにくくなりましたけど(笑)。

本当は食事とかも、もっと気をつけたほうがいいなと思うんですけどね。ライブをやっていたときはドレスを着なきゃいけないと思って、ドレスがダイエットになっていたんですけど、コロナでライブを解き放ってしまったらちょっとね。ドレスダイエットをしなくなったら、どんどん玉手箱を開けちゃったみたいな感じで(笑)。もくもくって煙が出て実年齢の体型になりつつありますね」

――ライブの映像をちょっと拝見させていただいたのですが、色っぽくてカッコいいですね。

「普段そういう役が少ないので、ここぞとばかりにね(笑)。こういうライブのときは思いっきりやろうと思って、それを楽しんでいたんですよね。バンドもみんなずっと仲良くて、一緒にお酒を飲んだりはしているんですけど、コロナでお休みすることになって。

もう1回自分を奮い立たせるのは、ちょっと難しいかもしれないです。舞台も結構長丁場だし、やっぱりライブをやるのであれば、絶対に毎回新しいことをやりたいんですよね。そうすると新曲をやりたいって思うんだけど、英語の歌詞とかがなかなか頭に入ってこないんですよ。それを思うとね。

何か今までの持ち曲ばかりやるのは嫌だし、やっぱり新しいものをちゃんと見せたいなと思うと、ちょっと力足らずだな、今はって感じですね」

2024年1月には、元劇団員・長谷川康夫さんの書籍『つかこうへい正伝II 1982-1987 知られざる日々』(大和書房)の刊行と、紀伊國屋ホールの開場60周年を記念して「劇団つかこうへい事務所 一夜限りの大同窓会」が開催された。

根岸さんをはじめ、風間杜夫さん、平田満さん、岡本麗さん、石丸謙二郎さん、酒井敏也さん、井上加奈子さん、長谷川康夫さんといったそうそうたるメンバーが集結して話題に。

「今でも幸せなことにみんな仲良くて、何かと良く集まっているので、私たちにとっては実は全然一夜限りのことではないのです。

私たちの青春、走り抜けた20代を精魂込めて本に纏めてくれた長谷川康夫への感謝の気持ちでつか本パート2のイベントを盛り上げる助けになれればと集合した次第です」

今一番幸せだなと感じるのは、『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』の上演中に暗い舞台裏を歩いているときだという。「こんなことがやれているなんて幸せだなあって思います」と話す笑顔がステキ。パワフルでカッコいい!(津島令子)

ヘアメイク:熊田美和子
スタイリスト:渋谷美喜

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