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俳優・玄理、弟は韓国で映画監督に。日韓合同作品も増える今「一緒にできたらいいね」

主演映画『水の声を聞く』(山本政志監督)で第29回高崎映画祭最優秀新進女優賞を受賞し、注目を集めた玄理さん。

2017年から5年間、J-WAVEのパーソナリティとして毎週日曜日3時間の生放送をこなし、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)、『ミストレス~女たちの秘密~』(NHK)、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)、2PMのジュノさん主演映画『薔薇とチューリップ』(野口照夫監督)など次々と話題作に出演。

2024年7月26日(金)より声優に初挑戦したアニメーション映画『めくらやなぎと眠る女』(ピエール・フォルデス監督)が渋谷ユーロスペースほか全国で公開される。

 

◆女性にとって35歳の壁は高い?

2019年、イギリスのBBCで放送された『Mistresses』の日本版リメイクドラマ『ミストレス~女たちの秘密~』に出演。このドラマは、偶然の出会いから親友となった4人の女性(長谷川京子、水野美紀、玄理、大政絢)たちは、女子会を開いては楽しく酒を飲み、おいしいものを食べてストレスを発散させていたが、それぞれシリアスな問題を抱えていることが明らかに…という展開。

玄理さんが演じたのは、化粧品会社勤務のキャリアウーマン・原田冴子。ようやく責任ある地位に抜擢されそうになったのだが、子どもを欲しがる夫(佐藤隆太)と心がすれ違いはじめ、同僚(細田善彦)と一夜の過ちを犯し妊娠してしまう。

「一夜だけの過ちを犯して、それで妊娠してしまうってすごい展開ですよね。女性4人で主演というのもなかなかないし、長谷川(京子)さんも水野(美紀)さんも(大政)絢ちゃんもみんな普段のときもキャラが立っているというか。

全然タイプが違うんですよ。見た目もそうかもしれないですけど、キャラクターも結構違っていて。撮影中、長谷川さんのお家でご飯を食べさせていただいたりして楽しかったですね。

私が演じた冴子は過ちを犯してしまう役ではあるんですけど、一番理解してあげられる友だちみたいな気持ちだったので、撮影が終わったとき、ちょっと寂しい気持ちになりました」

――仕事を一生懸命やってきて、ようやく責任ある立場になるかもしれないときに、義理のお母さんと旦那さんに「子どもを…」と言われても躊躇しますよね。

「そうですよね。どうしても女性のほうが仕事に支障が出ちゃうじゃないですか。あのドラマを撮影していたとき、私は30前半だったんです。

今でも別にそういう風に迫られていることは全然ないんですけど、やっぱりどうしても女性の場合はキャリアが中断されてしまうというのは、周りの友だちの話を聞いていても今はすごくよくわかる悩みだなって。

あと、冴子が悩んだ末、離婚届を書くというシーンがあるのですが、最終回の放送後に『このドラマに背中を押してもらって、私も離婚届を書くことができました』というコメントをくださった方がいて。

離婚自体がいいことなのかどうなのかということではなくて、そういう風に誰かの背中を押すことができた作品、役だったという意味では記憶に残るし、一生懸命やったドラマだったなって思います。

冴子が流産しそうになって病院に運び込まれるシーンがあるんですけど、(病院の)ベッドの上にいて、駆けつけた長谷川さんと水野さんと絢ちゃんの顔が見えたとき、とくに気持ちを作ることなくすごく自然に涙が出てきて、涙が止まらなかったんです。それぐらい3人が心の支えになっていました。

4人の中では、長谷川さんと水野さんがお姉さんグループ、私と絢ちゃんが妹グループみたいになっていたんですけど、絢ちゃん以外はみんな30代だったんです。『私も30代ですよ』って言ったら、『女は35歳で結構変わるのよ。35の壁は高いの。こっち側みたいな顔しないで』って言われて(笑)。言葉の重みが違うなって思いました。でも、自分が35を超えたらその気持ちがよくわかりました。

思い返すと何でも作品は、今ならまた違う捉え方ができるとか、今ならもっとわかるみたいなことがあるので、やっぱり経験ってすごくお芝居の役に立つんだなって思います」

――ストーリー展開も、キャラクターもそれぞれユニークでしたし、皆さんが美しくて目の保養になりました。真っ赤なドレスを着用したタイトルロールもステキでしたね。

「ありがとうございます。それぞれ違う赤いドレスを着ていて、あのドラマのポスター、カッコ良かったですよね。私のお気に入りです。イギリス版と韓国版もあるので、見比べてもらっても楽しいかなって思います」

 

◆2PMのジュノにお姫さま抱っこされて

2019年は2PMのジュノさんのために東村アキコさんが書き下ろした漫画を映画化した『薔薇とチューリップ』も公開された。玄理さんは、世界的な現代アーティスト、ネロ・パーク(ジュノ)を献身的に支えるマネジャーのミョンア役を演じた。

個展を開催するために来日したネロは、日本に到着早々彼の絵の盗作が飾られているという噂がある温泉旅館に向かう。その旅館で自分と顔がソックリな韓国人留学生デウォン(ジュノ)と出会い、自分と入れ替わってくれと依頼する。

「2019年は、連ドラ3本と映画3本撮っていたので、移動が多くて1日に3つの現場に行かなきゃいけないときも。生まれて初めてギックリ腰になりました。忙しかったけど楽しかったです。

今考えると、韓国の俳優さんと初めて一緒にお芝居をしたのがこの作品でした。その後、『君と世界が終わる日に』でキム・ジェヒョンさんが弟役だったり、この間も『Eye Love You』(TBS系)でチェ・ジョンヒョプさんと一緒だったり、日本の作品で韓国の俳優さんとご一緒したのは『薔薇とチューリップ』が初めてでしたね。韓国語のセリフを日本の作品でしゃべるのも、あの作品が初めてだったと思います」

――ジュノさんにお姫さま抱っこされるシーンもありましたね。

「はい。現場ではスタッフの皆さんに羨ましがられました。私はお姫さま抱っこのシーンよりもニセ者のジュノさん(デウォン)を本物のジュノさん(ネロ)として見せるために教育するシーンが全部アドリブだったのが印象的でした。『それは違う!』って怒ったり、『ダメ!』って言ったり、その度に違う可愛いリアクションをしてくださるので…いろいろ試しながらやっていたのがおもしろかったですね」

――ジュノさんカッコ良かったですね。

「元々アイドルの方で、韓国でも時代劇の作品に出て大人気で。お芝居も真摯にやられていてすごいなと思いました」

2020年には、『路上 カオサン・タンゴ』(キム・ボンサム監督)で韓国映画初主演を果たし、タイで2カ月間の撮影に挑んだ。

 

◆ワクチン研究者からゾンビと戦う人に

2021年、生きる屍(=ゴーレム)が出現した終末世界を描くゾンビサバイバルドラマ『君と世界が終わる日に Season1』に出演。玄理さんは、生きる屍のワクチンを研究するために来日した医師ジアン役を演じた。

――Season3まで出演されることは、最初から決まっていたのですか?

「いいえ、決まってなかったです。Season1が終わって好評をいただいたので、Season2と3を一緒に撮ったという感じだったと思います。

日本のゴールデンタイムの民放のドラマでゾンビが出るのは初めてだったんじゃないかな。Season1は地上波だったので制限があって、血とか内臓をそんなにいっぱいは出せなかったんですけど、2からは地上波じゃなくなったので、これでもかというぐらい血も内臓も首も飛んでいました(笑)。そういう違いがあるというのはおもしろかったですね。

あとはやっぱり本当に怖いんですよ。私は何かに追いかけられている夢が一番嫌いな夢で、鬼ごっこもあまり好きじゃないんです。ゾンビの格好をした俳優さんだってわかっているのに、やっぱり怖くて。逃げ終わった後、腰が抜けたり、何もないところで転んじゃったりしながら結構本気で怖がっていましたね」

――玄理さんはワクチンの研究者で、Season1では白衣を着て研究者という感じが強かったですが、2ではガラッと変わって。

「戦う人になっちゃいました(笑)。あれから、まだ今公開されてない作品もあるんですけど、どうしても戦うということになったときは、女性だと特殊な、たとえば警察官とか、そういう役柄じゃないと、武器とかがない限り基本攻撃されるアクションが多いんですよね。それで強くなりたいなと思って、今年からボクシングを習いはじめました(笑)」

――銃を構えて戦う姿も画になっていました。

「ありがとうございます。うれしいです」

――弟(キム・ジェヒョン)が双子だったという設定には驚きました。最初から決まっていたのですか?

「決まってなかったです。あの作品は、自分の役がいつまで生き残るのか、いつどうやって死ぬのかも知らされずにやっていたので」

――弟役のキム・ジェヒョンさんとの共演はいかがでした?

「ドラマの設定と同じく私にも弟がいて、ジェヒョンさんにもお姉さんがいて女優さんという共通点もあったので、関係性は作りやすかったし、お芝居はとてもしやすかったです」

――玄理さんの弟さんは映画監督だそうですね。

「はい。弟は高校まで日本にいたんですけど、私と一緒で大学から韓国に留学して、仕事が軌道に乗って韓国で映画監督をやっています」

――弟さんの監督作品にはまだ出演されていないのですか?

「本当に初期の頃、2人で短編を作って韓国の映画祭に出して賞をいただきました、1本目で。『一緒にできたらいいね』って話しています。日韓合作作品もすごく増えているので、企画の話や作品の話はいろいろしています。

日本のドラマシステムでいいなと思うのが、やっぱり1月、4月、7月、10月できっちりクールが分かれていて、合間がちょっと空くんですよね。韓国は近いのでその間に会いに行ったりしています」

玄理さんは、『アトムの童(こ)』(TBS系)、『弁護士ソドム』(テレビ東京系)、『院内警察』(フジテレビ系)、『Eye Love You』(TBS系)など話題作に次々に出演。

次回は撮影エピソード、声優に初挑戦し、2024年7月26日(金)に公開されるアニメーション映画『めくらやなぎと眠る女』も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:石川奈緒記
スタイリスト:KOSEI MATSUDA

©2022 Cinema Defacto Miyu Productions Doghouse Films 9402-9238 Quebec inc. (micro_scope Productions l’unite centrale) An Original Pictures Studio Ma Arte France Cinema Auvergne-Rhone-Alpes Cinema

※映画『めくらやなぎと眠る女』
2024年7月26日(金)より渋谷ユーロスペースほか全国ロードショー
配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー、レプロエンタテインメント
監督:ピエール・フォルデス
日本語版演出:深田晃司
声の出演:磯村勇斗 玄理 塚本晋也 古舘寛治 木竜麻生 内田慈 平田満 柄本明

6つの短編『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFOが釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』を翻案した村上春樹原作初のアニメ化。2011年、東日本大震災直後の東京。置き手紙を残して姿を消した妻・キョウコ(声:玄理)、妻の突然の失踪に呆然としながら北海道に向かうことになる小村(声:磯村勇斗)。同じ頃のある晩、小村の同僚の片桐(声:塚本晋也)が家に帰ると、そこには2メートルもの巨大な“かえるくん”(声:古舘寛治)が彼を待ち受けていた…。

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