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佐津川愛美、女優デビュー20周年。昔は“怒鳴る現場”に恐怖を感じることも…「今はそういうやり方をしなくてもできる時代」

2005年に公開された映画『蝉しぐれ』(黒土三男監督)で女優デビューし、20周年を迎えた佐津川愛美さん。

現在主演映画『毒娘』(内藤瑛亮監督)が新宿バルト9ほか全国で公開中。映画『バジーノイズ』(風間太樹監督)、映画『かくしごと』(関根光才監督)の公開も控えている。

さらにデビュー20周年を記念して2024年4月22日(月)から26日(金)まで「佐津川愛美映画祭」が開催され、5月には著書も出版される。

 

◆“推し”がいないと生きていけない女性

2021年、佐津川さんは、『科捜研の女 -劇場版-』(兼崎涼介監督)にウイルス研究者・秦美穂子役で出演。さらにドラマ『科捜研の女』(テレビ朝日系)にも同役で出演した。

「映画ではウイルス研究者で、その後ドラマで特殊清掃人に。ドラマにまで呼んでいただいてうれしかったです」

――一途というか、崇拝している人のために一生懸命になる人ですね。

「“推し”がいないと生きていけない人だという一言ですごく腑に落ちました(笑)。映画ではウイルス研究の権威、テレビでは特殊清掃会社の社長を崇拝していて、守ろうと必死になっていました」

――キャラに統一性がありますよね。撮影はスムーズに?

「科捜研は京都で撮影しました。京都はすごく好きな場所なんです。撮影で毎年のように京都には行かせてもらっていて、撮影所の皆さんもとても優しくて『おかえり』とか『待ってたよ』って言ってくれるんです」

2023年、佐津川さんは『サブスク不倫』(TBS系)に主演。このドラマは、不倫など考えたこともなかった専業主婦・鳥山未知留(佐津川愛美)が、ほんの興味から始めたサブスク不倫サービスの沼にハマッて堕ちていく様を描いたもの。

「このドラマは、『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)でご一緒したプロデューサーの方が『ぜひ!』と言ってくださって。プロデューサーさんが声をかけてくださったとか、この監督とご一緒したいというご縁を大事にしています。

内容ももちろん大事な部分ではありますが、今回の『毒娘』の内藤監督もそうですが、台本を読む前に内藤監督とご一緒できることがうれしいって思いました。そういうことがいっぱいあって、そういうご縁が繋がって、今ここにいさせていただいているという感じです」

――『サブスク不倫』は、結構ハードな内容でしたが、ご自身としてはいかがでした?

「潤沢に時間がなかったので、不倫のために着飾っているときと、主婦のときはメイクが違うんですが、アイラインを濃く入れないようにしようとか、いつも以上にいろいろ考えながら進行していました。

サッと直せるネイルに変えたり、そういう工程が多くて、メイクさんとここの髪型はこうしようとか、とにかくたくさん相談しながら撮影していました」

――主婦のときと不倫のときの雰囲気が全然違っていて、“女の顔”になっていましたね。

「メリハリが効いていました? 良かったです(笑)。監督は女性の松本(佳奈)監督だったのですが、気持ちを良く理解してくれましたし、本当にすばらしくて、キャラクターの見せ方も一緒に悩んでくださって。

導いてくださるところも多くて、松本監督だったからできたというところが大きかったです。あの作品をやって本当に良かったのは、松本監督と出会えたことです」

©『毒娘』製作委員会2024

※映画『毒娘』
新宿バルト9ほか全国公開中
配給:クロックワークス
監督:内藤瑛亮
出演:佐津川愛美 植原星空 伊礼姫奈 馬渕英里何 凛美 内田慈 クノ真季子 竹財輝之助

◆ホラー映画の撮影現場が楽しくて

現在、主演映画『毒娘』が公開中。この映画は、2011年にインターネットの匿名掲示板で話題となった、ある新婚家族の出来事をモチーフに、10代の娘(植原星空)をもつ夫(竹財輝之助)と新しく家族となった萩乃(佐津川愛美)一家と謎の少女“ちーちゃん”(伊礼姫奈)との壮絶な争いを描いたもの。

「内藤(瑛亮)監督の『ミスミソウ』など他の作品も見ていたので、ご一緒できることがうれしかったです」

――拝見させていただきましたが、ちーちゃん怖かったです。

「ちーちゃんは、ある意味カッコいい、羨ましいって思いました(笑)。内藤組の撮影は、皆さんがとても楽しそうなんです。それぞれの部署の皆さんが、作品作りを楽しんでいらっしゃる感じですごくいいなあって。血が出るシーンとか、部屋を荒らしているシーンとかは、皆さんテンションが上がっていてすごかった(笑)。おもしろかったです」

――撮影にあたって監督とはどんなお話をされたのですか。

「お話をいただいて初めてお会いしたのですが、監督がどういう風に作品に向き合っているかお話してくださって。そのときにちょうど私もいろいろ現場のことを考えているときだったので、若い役者さんに無理をさせるような現場にはしたくないし、大変な作品なので現場がギスギスしたくないということをお伝えさせていただきました。

そうしたら監督が『それは僕も同じ意見です。怒鳴っている人がいたら、ちゃんと僕が話しますから』って言ってくださって。それが大きな決め手の一つになりました。内藤監督の時点でやりたかったですし、内容を読んでももちろんやりたいなとは思ったのですが、こういう想いをもってくださっている現場でやりたいって思いました。

そういう意思表示をさせていただける立場というのが初めてでしたし、そういう意識ってすごく大切だと思いました。『僕も怒鳴る現場は嫌いなので』と言ってくださったので、こういう風に作品に入れるということがすごく希望になりました。うれしかったです」

――これまで怒鳴る現場も結構多かったですか。

「20年以上このお仕事をやらせていただいているので、昔は正直ありました。怖いなと思いながら現場にいたこともたくさんあります。でも、それは先輩方がそういう環境のなかで、そういうやり方で築き上げてきてくださったという歴史も、それはそれで一つの形であったのだと思います。

でも、今の我々の時代というのは、もうそういうやり方をしなくてもできる時代だと思います。なるべく私は、現場は穏やかにみんなで楽しくやりたい、そのほうがいい芝居ができると思っているので。だから20年やってきて、最近はそっちのほうを大切にしていて、現場の雰囲気が良くなるほうがいいなって思っています」

©『毒娘』製作委員会2024

――撮影はいかがでした?

「夫役の竹財(輝之助)さんがすごくいい感じでひどいというか(笑)。セリフはひどいモラハラで奥さんを抑圧しているし、娘のことも抑圧しているのですが、すごく爽やかにいてくれるので、何かいいことを言っているみたいに聞こえるんです(笑)。

だから、萩乃もはじめは良き夫だと思っているし、本人も良き夫、良き父だと思い込んでいる。そのズレを表わせたらいいなと思っていたので、萩乃としては、その状況を受け入れてしまっているところから始めて、徐々に家に縛られているということに気づいていくという感じに…と思って演じていました。

竹財さんが本当にいい感じに嫌な風に演じてくださったので、それでどんどん追い詰められていったというか。台本で感じなかったことを、現場でたくさん感じさせていただきました」

――ちーちゃんとすさまじいバトルシーンもありましたね。

「伊礼ちゃんが軽やかに演じていて羨ましいなって思いました。みんなが『大変だね』って言っていたのですが『おもしろいです!』って、すごく楽しそうでおもしろかったです。

現場は皆さん楽しんでいました。スタッフの皆さんも現場を汚すシーンのときなど、『もう少しいっちゃう?』みたいな感じで(笑)。すごく楽しんでいて、いい意味で文化祭みたいで内藤組はとてもおもしろかったです」

 

◆アニバーサリーイヤーに相応しい挑戦

今年は、女優デビュー20周年を記念して「佐津川愛美映画祭」を開催することに。東京では『ヒメアノ~ル』(吉田恵輔監督)、『だれかの木琴』(東陽一監督)、『ポンチョに夜明けの風はらませて』(廣原暁監督)、『ゼニガタ』(綾部真弥監督)、『タイトル、拒絶』(山田佳奈監督)が上映される。

――主演映画に映画祭、20周年が良い形でスタートですね。

「ありがたいです。もう20年になるなんて信じられないです。去年、ちょっとゆっくりお休みにさせてもらって、京都とか名古屋に長期滞在していた際に、名古屋にいる新体操の後輩に久しぶりに会って。

彼女はイベントなどの企画プロデュースをしていて、前から私の映画祭をやりたいと言ってくれていたのですが、『20周年ってお祝いですよ。今やるべきです。やりましょう』って言ってくれて、開催することになったんです。私的には20周年で何かやるというつもりはなかったので、『20年ってお祝いすることなのかな?』ってそのとき思ったぐらいで。

そんなことを言ってもらって恐縮だなって思ったのですが、そういう風に言ってくださる方がいるというのは本当にありがたいことだなって思って、去年の夏ぐらいに動き出したのかな」

――著書も出されるそうですね。

「はい。『高崎映画祭』と一緒に作っていまして。私の映画祭をやることになったときに、パンフレットを作ろうとかいろいろ話したのですが、何かしっくりこなくて。自分に何ができるのかと考えたときに、20年やってきている私だからこそできることって何かあるかなって。恐縮ですけれども、少しでも映画業界を知ってもらえるようなことができたらいいなと思ったんです。

映画は、ちょっと敷居が高いものって思われがちですが、私は現場を経験させてもらってから、やっていきたいと思った人間なので。この業界は、たくさん映画の知識をもっていらっしゃる方もいるし、逆に特別な知識がなくても、入ってから学びながら働けます。それぞれの考え方とか個性とか感性をもっていれば働ける業界。いろんな業種があるということを知って興味をもってもらえたらいいなと思って。

自分の中のテーマでは、中学生ぐらいの方にも読んでいただけるぐらいのわかりやすいものにしたいなと。(映画の)企画から撮影して、編集して、宣伝して、公開する…という映画の流れがわかる本を作っています。

それぞれの部署の方にお話を伺いに行って、インタビューさせていただいて。どういうお仕事があるのかとか、どういうコミュニケーション方法が必要なのかとか、どういう風にしてこの業界に入ったのかということを取材させていただいて。5月末に出版する予定です」

主演映画、映画祭、著書出版、連続ドラマ出演と超多忙な毎日。20周年記念に相応しいアニバーサリーイヤーに。(津島令子)

ヘアメイク:杉村理恵子
スタイリスト:稲葉江梨