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山口まゆ、海外で大反響を受けた最新主演映画。性暴力被害に遭ったヒロイン役…蘇る撮影当時のつらさも「今では素直に応援できる」

2015年、『コウノドリ』(TBS系)で、妊娠、出産する中学2年生の女子生徒役を演じ、演技力の高さで注目を集めた山口まゆさん。

2019年、日本大学芸術学部映画学科に進学し、学生生活と仕事を両立することに。2021年、映画『樹海村』(清水崇監督)に山田杏奈さんとW主演。2022年には、木村拓哉さんと『アイムホーム』(テレビ朝日系)以来、7年ぶりの再共演となった『未来への10カウント』(テレビ朝日系)に出演。

2024年3月16日(土)に主演映画『ブルーイマジン』(松林麗監督)の公開が控えている。

©Blue Imagine Film Partners

◆大学での出会いが今につながっている

山口さんは高校卒業後、日本大学芸術学部映画学科に進学。両親と話し合って大学に進学することにしたという。

「やりたいもの、学びたいものもあったので、祖父と同じ日大にしました。落ちたら大学には行かないという選択だったので、イチかバチかでした。何とか受かって良かったです(笑)」

――映画学科ですが、いずれご自身で映画を作りたいという思いもあったのですか?

「入学当時はとくになかったんですけど、いろいろ制作していくなかで少しずつ変わっていきました。同級生がそれぞれ同じ環境で頑張っている姿を見て、技術部や制作部の気持ちとかすごく勉強になりました。作品でもシナリオから携わってみたいと思うようになりました」

――卒業制作は?

「15分ぐらいの短編を同級生と作りました。その作品が卒業後に東宝の映画祭でグランプリを獲ったり、いろいろ賞をもらえたので、作って良かったです(笑)」

――仕事をしながら大学を4年間で卒業、結構大変だったのでは?

「1年生は普通に行っていたのですが、コロナ禍になって2年生からはほとんど授業がオンラインだったんです。オンラインになったからこそフルで講義を受けることができました。オンラインじゃなかったら卒業できてなかったかもしれないです」

――大学入学時はすでに結構テレビや映画に出ていたわけですが、すんなり受け入れてもらえました?

「高校のときは、映画とかドラマに興味がある人がなかなかいなかったり、同級生も気を遣っていたりで、なかなか友だちができなかったんです。

ひとりとか、特定の子とずっと一緒にいて、高校生活をあまり楽しめなくて。だから大学では何とかやっていきたいという気持ちがあって。

自分が黙っていたら誰も近寄ってこないと思ったので、積極的に自分から話しかけに行くようにしたり、大学で友だちの作り方をもう1回学びました(笑)。

作品を一緒に作っていくなかで意見がぶつかったり、時にはケンカをしたりしても、責めたりせずに、それはその人の良さだと受け入れていって。そういうことが、結果的に今にもつながっているので、人生勉強もたくさんできた4年間でした」

――学業との両立も問題なく?

「そうですね。授業がオンラインというのもあって、あまり苦労はありませんでした。中学生のときからずっと仕事と両立してきたし、どっちかに偏らず、一緒にどっちも頑張るというのが自分には結構向いているみたいで、そんなに苦ではなかったです」

 

◆木村拓哉と7年ぶりに再共演

大学在学中も映画『僕に、会いたかった』(錦織良成監督)、初めての時代劇の映画『下忍 赤い影』(山口義高監督)などに出演。2021年には、映画『樹海村』で主演(山田杏奈さんとW主演)を果たす。

『樹海村』は、富士の樹海を舞台に、「絶対に検索してはいけない」と、インターネットの怪談スレッドで語り継がれる、通称「コトリバコ」と呼ばれる樹海に封印された呪いの箱の恐怖と、樹海の負の引力がもたらす狂気と混沌の世界を描いたもの。山口さんは、封印してから13年後に突然出現した呪いの箱の恐怖にさいなまれる天沢鳴(めい)役を演じた。

――清水崇監督の現場はいかがでした?

「ホラー映画を撮っている監督って、もっとコワモテの感じなのかなと思っていましたけど、とても陽気な感じでした(笑)。

実は私が子役事務所に入っていたときに、初めてエキストラの仕事をしたのが清水監督の『ラビット・ホラー3D』という、満島ひかりさんが主演のホラー映画だったんです。『樹海村』で10年ぶりに主演という立場で監督とご一緒できて感慨深かったです」

――結構怖いシーンもありましたが、撮影はいかがでした?

「ホラー映画だけど、結構みんなでワイワイやっていました(笑)。どうやって人を怖がらせられるかということを本当に一生懸命考えながらやっていましたね。

昔はレンタルビデオ店でホラー映画のパッケージを見ただけで寝られなくなるタイプだったのですが、ある日突然、学校の帰り道に『ホラー映画はフィクションだ!』って思ってから大丈夫になりました(笑)。自分でもよくわからないんですけど、ある日突然そういうのが降ってきたんです(笑)。それから全部大丈夫になりました」

――撮影はスムーズにいきました?

「そうですね。私は霊が見えないので余裕でした(笑)。怖くなかったです」

――出来上がった作品を見ても大丈夫でした?

「はい。脚本を読んでいたので大丈夫でした(笑)。でも演出とか照明とか、技術さんの頑張りでこんなに魅力的な作品になるんだなって驚きました。あらためてホラー映画の色味とか、そういうものがめちゃくちゃ大事だと感じました」

2022年、山口さんは『未来への10カウント』で、7年ぶりに木村拓哉さんと共演。このドラマは、生きる希望を喪失している男・桐沢祥吾(木村拓哉)が高校ボクシングのコーチになったことで徐々に再生していく様を描いたもの。山口さんは、ボクシング部の力強い味方となる新聞部の部員・矢代智香役を演じた。

「木村さんとまた会えると思って、すごくうれしかったです。撮影現場でお会いしたときに『おはようございます』と言ったらピースをしてくれました(笑)。『憶えていてくれたんだ』ってすごくうれしかったです」

――撮影はいかがでした?

「『アイムホーム』のときもですが、木村さんは壁を作るような方ではないので、控室にみんなの顔を見に来たりして、緊張をほぐしてくれていました。本当に“先生”という感じでしたね」

©Blue Imagine Film Partners

※映画『ブルーイマジン』
日本・フィリピン・シンガポール合作映画
2024年3月16日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
配給:コバルトピクチャーズ
監督:松林麗
出演:山口まゆ 川床明日香 北村優衣 新谷ゆづみ 細田善彦

◆性暴力を受けた過去と向き合う役に

2024年3月16日(土)に主演映画『ブルーイマジン』が公開される。この作品は、性暴力やDV、ハラスメント被害者たちのトラウマに寄り添う多国籍シェアハウスを舞台に、心に深い傷を負った女性たちが連帯し、声をあげようと奮闘する姿を描いたもの。

山口さんは、過去にある映画監督から性暴力被害に遭ったが、そのことを誰にも打ち明けられず、苦しんでいる俳優志望の主人公・斉藤乃愛(のえる)役を演じた。

「主演ですし、題材も難しいので、『大丈夫なのかな?』という不安はもちろんあったのですが、脚本を読んで、ちゃんと伝えていかなきゃいけないなと思いました」

――監督はどのようにおっしゃっていました?

「松林さんとは、作品に入る前にお話をする機会があったのですが、そのときから『大丈夫ですか?』とか『つらくないですか?』『イヤことがあったら言ってください』って、ずっと気遣っていただいて。

前を向ける作品にしていきたいという松林さんのお気持ちは伝わってきたので、そこはブレずに頑張っていきたいと思っていました」

――優秀な弁護士である実のお兄さんにも自分の性被害のことを言えないというのも非常によく出ていましたね。

「あの兄とのシーンは、監督と結構お話をさせてもらいました。私が演じた乃愛の周りにいる人って優しい人しかいないんですよ。悪い風に見えるかもしれないけど、お兄さんだって手を差し伸べようとしてくれていたのに、タイミングが合わなかっただけで。

タイミングもいろいろあるじゃないですか。だから、お兄さんが悪い人にならないように、全員が悪者になってしまわないようにということは話し合いました。悪い人もいますが、結果的に乃愛の周りにいる人は優しい人ばかりだったということに、後から気づけるような作品だと思います」

――ひとりで苦しんでいた乃愛が「ブルーイマジン」に集まっている人たちと話すうちに変わっていく様がとてもよく出ていました。演じていていかがでした?

「やっぱりひとりで頑張ることも大事だし、ひとりで解決できることもあるかもしれないけど、誰かに手伝ってもらうというか、助けてもらうことも必要なときもある。

ひとりで頑張らなくていいというのは、『ブルーイマジン』のみんなを見てすごく思いました。最後に変わっていく、その変化というのはずっと意識していました。

人間はそんなすぐには変われないけど、乃愛は93分の中で変わらなくちゃいけないので、どこが発端で変わっていくのかというのは、作品に入る前から松林さんと本当にたくさんお話しました。監督は全体が見えているからこそ、そういうところを(監督に)聞いておきたかったんです」

――難しい役柄ですが、いかがでした?

「いろんな記事を読んだり、ドキュメンタリー番組などを見ていくなかで、被害に遭われた方の奥底にある気持ちは理解したくてもわからなかったり、自分の中に落ちない部分があったり。だからこそ、寄り添いながら丁寧に演じていくことは常に意識していました」

――完成した映画をご覧になっていかがでした?

「撮影当時つらかった記憶が一番強いのですが(笑)。出来上がったものを見たときに、あのときのつらさと、乃愛のつらさとか、いろんなものがリンクして、1年経った自分が見たときに『頑張れ!』って素直に応援ができるって感じて。少しでも自分が乃愛とつながることができたのかなとは思いました」

――この映画は、ロッテルダム国際映画祭でも上映されました。

「はい。すごく反響があったと聞きました。女性に限らず、男女ともに世界共通で抱えている問題なので、この映画に少しでも救われる人がいてくれたらうれしいなと思っています」

――今後はどのように?

「すごく大きい目標を立てているわけじゃないですけど、2025年までの2年間は思い切り走り続けて、芸能界での自分の位置を確立していけたらいいなと思っています。2025年、25歳ってキリがいいじゃないですか(笑)。頑張る2年間だと思っています」

2023年に大学を卒業し、仕事に専念している山口さん。さらなる活躍に期待している。(津島令子)

ヘアメイク:美樹(Three PEACE)
スタイリスト:梅田一秀

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