話題作に次々出演!小野花梨、難しい役でもひたむきに挑戦「一生懸命って人の心を動かすパワーがある」
8歳でデビューし、11歳のときに映画『南極料理人』(沖田修一監督)に堺雅人さん演じる主人公の娘役で出演し、演技力と度胸の良さを高く評価された小野花梨さん。
多くのドラマ、映画、舞台、CMに出演。2022年に公開された映画『ハケンアニメ!』(吉野耕平監督)で第46回日本アカデミー賞・新人俳優賞受賞。2023年には、『初恋、ざらり』(テレビ東京系)で連続ドラマ初主演(風間俊介さんとW主演)。
現在、サバイバル医療ミステリードラマ『グレイトギフト』(テレビ朝日系)が放送中。2024年3月1日(金)に映画『52ヘルツのクジラたち』(成島出監督)、5月17日(金)に映画『ミッシング』(吉田恵輔監督)の公開が控えている。
◆壮絶な復讐劇の撮影現場はほのぼの
2023年、小野さんは『罠の戦争』(フジテレビ系)に出演。このドラマは、草なぎ剛さん主演の「戦争シリーズ」第3弾。議員秘書・鷲津亨(草なぎ剛)が瀕死の重傷を負わされた息子の事件の犯人と、その事件を隠蔽しようとする国会議員への復讐を果たす様を描いたもの。小野さんは、高圧的な先輩秘書(田口浩正)のパワハラ、セクハラに悩む私設秘書・蛍原梨恵役を演じた。
「『罠の戦争』は、『銭の戦争』、『嘘の戦争』と続く戦争シリーズの3作目で、スタッフ陣がほとんど変わらず、草なぎさんを中心とした空気感とかチームワークとかが出来上がった場所にお邪魔させていただいた形でした。長くたくさんの人に愛され続けている草なぎさんのお人柄に圧倒されました」
――あのドラマでも難しい役でしたね。すごく優秀な秘書ですが、パワハラとセクハラで心に傷を負っていて。
「そうですね。パワハラやセクハラもそうですし、後輩に裏切られたこともありましたね。それでも、最後まで草なぎさん演じる鷲津さんのことを裏切らずに信じ続けた蛍原さんが私はとても好きでした。
草なぎさんのことも大好きだったので、蛍原さんが鷲津さんを思う気持ちとリンクして、撮影が終わってしまうのが悲しいほどでした」
――撮影現場はどんな感じだったのですか。
「まさにほのぼのという感じでした。草なぎさんが前室でギターを弾いていて、それを聞きながらメイクしていただく贅沢な日があったり、みなさんとご飯を食べたり。ドラマのような張り詰めた雰囲気は一切なかったです。幸せな時間でした」
◆12年ぶり共演の風間俊介さんと恋人役
2023年、小野さんは、『初恋、ざらり』で連続ドラマ初主演を果たした。風間俊介さんとW主演を務めたこのドラマで小野さんが演じたのは、軽度知的障害と自閉症のあるヒロイン・上戸有紗(ありさ)。新しいアルバイト先である運送会社で出会った先輩・岡村龍二(風間俊介)と恋に落ち、初めての恋に悩み、心が揺れ動く様を繊細に描いたドラマ。
――このドラマも難しい役どころでしたね。
「はい。軽度知的障害という設定ではありましたけど、軽度と言ってもどこまでが軽度なのかということとか、知的障害と言っても悩みや症状は十人十色だということで、ニュアンスの押し引きに悩む時間はありました。
でも、いろんなことに不器用で上手にできないことはあるけど一生懸命に生きている。ただそれだけで、そんなところがすばらしくて、それはもはや個性のひとつと言って良いのではないか、と思いました。
だから、私もただただ一生懸命に、できるだけ多くの方に応援していただけるような主人公でありたいと思いながらやらせていただいた作品でした」
――何事にも一生懸命な有紗ちゃん。最終的には意地悪をしていたパートのおばさんたちも受け入れて応援してくれるようになって。
「そうですね。一生懸命って人の心を動かすパワーがあるんだなと思えました。『初恋、ざらり』に出てくるキャラクターはひとり残らず、役者さんご本人のお人柄もあって人間らしさがありながらチャーミングで、キュートで、そんなところが大好きな作品です」
――純粋無垢な表情と初々しさがとても印象的でした。
「ありがとうございます。そこが有紗ちゃんの大きな魅力だと思いながら演じさせていただいたのでうれしいです」
――ご自身で放送をご覧になっていかがでした?
「さまざまな事情で、台本の順番に撮影することが難しかったので、最初のほうはとくに声のトーンやスピードが定まっていないなと思うことはありました。
でも、クランクインする前にひとりで作り込むのではなく、監督やスタッフさん方と言葉を重ね、時間をかけて考えたからこそ生まれた表現やバランスは間違いなくあったと思うので、ここら辺の調整は今後の課題だなと思いながら見ていました(笑)」
――軽度の発達障害があることを岡村先輩に打ち明けたときの不安、心情変化がとてもよく伝わりました。
「ありがとうございます。失敗の多い人生のなかで、相手のマイナスな感情ばかりに敏感になってしまうのは、とても共感を覚えます。そして、考えてもどうしようもないことばかりに気をとられて失敗を重ねてしまうんですよね。それで、どんどんダメになっていく。
軽度知的障害という描かれ方こそされていますけど、多くの人が共感できる。というのが、この作品のすばらしさだなと思います。
『一応彼女』って言われたらどんな人でも嫌だよな…とか、恋愛するなかで生まれる小さなボタンの掛け違いとか」
――風間俊介さんは、『映画 鈴木先生』(河合勇人監督)で生徒たちを人質に中学校に立てこもる犯人を演じていて、小野さんも首に刃物を突き付けられていましたね。
「はい。本当にうれしい再会でした。子ども時代を知っていただいているという安心感と風間さんがお持ちの膨大なやさしさに完全に甘えてしまい、台本のことから風間さんに直接関係ない有紗のことまでなんでも相談させていただきました。
どんなことでも、『聞かせて、聞かせて!』と温かく聞いてくださり、風間さんが岡村さんでなかったら、と思うとゾッとするほどでした。心から感謝しています」
※ドラマ『グレイトギフト』
テレビ朝日系で毎週木曜日夜9:00から放送中
出演:反町隆史 波瑠 明日海りお 小野花梨 /坂東彌十郎/ 津田健次郎 倉科カナ 筒井道隆 尾上松也 佐々木蔵之介
◆反町隆史さんのオーラに圧倒される
小野さんは、現在テレビ朝日系で放送中の木曜ドラマ『グレイトギフト』に出演中。このドラマは、完全犯罪を可能にする殺人球菌「ギフト」をめぐる、ノンストップの“サバイバル医療ミステリー”。
大学病院に勤務する病理医・藤巻達臣(反町隆史)は、ひとりの患者が不審な死を遂げたことがきっかけで、未知の殺人球菌「ギフト」を発見。この球菌が体内に侵入すると、まもなく患者は死亡するが、球菌は完全消滅し、死因は急性心不全としか診断できなくなる。
それは“完全犯罪の殺人”を可能にする恐ろしい球菌だった。この発見によって藤巻は、院内の熾烈な権力争いをはじめ、さまざまなトラブルに巻き込まれ、人生が激変してしまう。
重い心臓病を患い入院している妻(明日海りお)を人質に取られている状態の藤巻は、命じられるまま「ギフト」を作ることに。そしてひとり、またひとりと犠牲者が…という展開。小野さんは、藤巻と同じ病理部に所属する検査技師・奈良茉莉役を演じている。
――自己防衛本能も働き、自分に好意をもっている病理医との食事にはひとりで行かず、先輩技師・久留米(波瑠)を誘っていく。しっかりしていますね。
「そうなんです。優秀でしっかりしている検査技師なんですけど、ちゃっかりさん(笑)。おいしいものは食べたいけど、ひとりでは行かない。ちゃんと自分の身は守る。
奈良さんは検査技師なのですが、私はこれまで専門職の役を本格的に演じたことがないので初めてなんです。明るくて元気いっぱいな等身大の女の子だけど、仕事はちゃんとできる聡明さもある。そのバランスが取れたらいいなと思っています」
――撮影現場はどんな感じですか。
「最初のほうは私の出番が少なかったので、現場に行くたびに反町さんのオーラに圧倒されていました(笑)。なかなか慣れないから、毎回ごあいさつするだけでも緊張して(笑)。
だんだん話数が進むにつれて少しずつ慣れてはきましたけど、それでも毎日、スターの佇まいに見惚れています」
――次々と起きる「ギフト」を使った殺人に加え、藤巻の妻と心臓外科医・郡司(津田健次郎)の不倫が明らかになるなど、驚きの展開に。
「私自身もワクワクしながら挑ませていただいています。最初に『ギフト』を作った犯人は誰なのか。皆さんにもワクワクハラハラしながら楽しんで見ていただけたらと思っています」
※映画『52ヘルツのクジラたち』
2024年3月1日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
配給:ギャガ
監督:成島出
出演:杉咲花 志尊淳 宮沢氷魚/小野花梨 桑名桃李 金子大地 西野七瀬 真飛聖 池谷のぶえ/余貴美子/倍賞美津子
◆監督から「太陽であれ!」と演出されて
2024年3月1日(金)に公開される映画『52ヘルツのクジラたち』に出演。“52ヘルツのクジラたち”とは、他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのこと。その声なき声に耳をすませてくれる相手がきっといると思わせてくれる作品。過去と現在を交差させながら物語を紡いでいく。
かつて家族に虐待され、人生を搾取されていた主人公・貴瑚(杉咲花)は、心に深い傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家へと移り住んできた。その街で、虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年(桑名桃李)と出会った彼女は、見すごすことができず、一緒に暮らしはじめることに…。
小野さんは、会社の先輩・岡田安吾(志尊淳)とともに、虐待され生きる気力も失っていた地獄のような日々から貴瑚を救い出す親友・牧岡美晴を演じている。ネグレクト、ヤングケアラー、トランスジェンダー…さまざまな要素が含まれているこの作品で、美晴は救世主のような存在。
――小野さんが演じた美晴は、本当に救いです。義父の介護を強いられ、夢も希望もなく地獄のような日々を送っていた貴瑚を安吾とともに救い出し、絶対に見捨てない。美晴のような人がいたら…と思わせる存在ですね。
「ありがとうございます。私はもともと原作の大ファンで、映像化されるずっと前に原作を読んでいて、好きすぎていろんな人に配り歩いたほどでした。
演じさせていただいた美晴はとにかく強くたくましい明るいエネルギーに満ちた子で、成島監督からは『美晴は太陽であれ!』と何度も演出していただきました。映画の中で一瞬でも救いになれる瞬間があったなら、とてもホッとします」
インタビュー中の姿にも天性のリズム感の良さが感じられ、とても自然体でチャーミング。明るい善人からシリアスな難役までどんな人物を演じても違和感なく見事に馴染み演じ切る。多くの映画監督から「いまもっとも仕事をしてみたい女優」として名前があがるのも頷ける。今後も出演作品が目白押しの楽しみな逸材。(津島令子)
ヘアメイク:森下奈央子
スタイリスト:髙橋美咲(Sadalsuud)