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小野花梨、晴天の霹靂だった日本アカデミー賞新人俳優賞。受賞の知らせも心当たりがなく「宛先間違えてますよ」

映画『南極料理人』(沖田修一監督)、『鈴木先生』(テレビ東京系)に出演し、子役時代から演技力の高さで注目を集めていた小野花梨さん。

『親バカ青春白書』(日本テレビ系)、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)、映画『ハケンアニメ!』(吉野耕平監督)、『罠の戦争』(フジテレビ系)など話題作に次々に出演。

現在、ドラマ『グレイトギフト』(テレビ朝日系)が放送中。2024年3月1日(金)に映画『52ヘルツのクジラたち』(成島出監督)の公開が控えている。

 

◆初主演映画で“イタすぎるヒロイン”に

2021年、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でヒロインの親友・きぬちゃんを演じて話題になった小野さんは、同年、『プリテンダーズ』(熊坂出監督)で映画初主演を果たす。この映画は、SNSを武器に社会を変えようと奮闘する女子高生の姿を描いたもの。

社会に反抗心を抱く花田花梨(小野花梨)は、電車の中で病人に席を譲ったことがきっかけで、現実にフィクションを加えてファンタジーを生み出し、世界平和をもたらそうと思いつく。親友・風子(見上愛)とともに「プリテンターズ」を名乗り、SNS上でさまざまなドッキリを仕掛け、バズることに成功。しかし、思いがけないしっぺ返しをくらうことに…という展開。

「あの映画は、『人狼ゲーム ビーストサイド』という映画でご一緒にさせていただいた熊坂出監督だったので、信頼関係ができていて、何でも言い合えるような、仕事を超えた仲間と作品作りができた初めての作品でした。

脚本がどんどんブラッシュアップされていく過程なども見せていただいて、映画作りの楽しさをあらためて教えてもらった作品で、自分の中では大きなプレゼントをいただいたような時間でした。役名も自分の『花梨』を使っていただいて。とても大切な作品です」

――長編映画初主演作でしたが、プレッシャーはありました?

「自分が何か大きなことができる人間だと思っていないので、主演というプレッシャーはあまりなかったです。

ただ、スタッフさんひとり残らず、自分が主演している作品のために朝早くから夜中まで働いてくれていると思うと、今までにはない感謝の思いというか、実感がすごく襲ってきて。そういう気持ちを学んだ作品でした」

――最初に台本を読んだときはどう思いました?

「あのイタさ、未熟さ、未完な感じ。すごくイタいんですけど、でも人間って誰しも未完じゃないですか。そこから目をそらし続けて生きていますけど、それをあらためて突きつけられることで自分の未完さを愛せるというか。『そうだよね。人間誰しもこういう汚さがあるよなあ』と思わせてくれる役でした。

ああいうイタいくらいむきだしな役というのは、苦しさももちろんありますけど、挑戦させていただける喜びがあります」

――ものすごくイタくて自己チューですが、一生懸命なんだということが伝わってきて愛おしく見えてくる。それは小野さんのキャラクターによるところも大きいと思いました。

「ありがとうございます。ウザさとチャーミングさのバランスはすごく難しかったです。監督と事前にたくさん話し合って微調整を繰り返したので、(劇中の)花梨は、もうひとりの自分のようでした。

役柄と自分があまりに近くて、しんどくなってしまうので、あの作品は当分見られそうにないですね(笑)」

 

◆日本アカデミー賞で新人俳優賞に!

2022年、小野さんは、『恋なんて、本気でやってどうするの?』(フジテレビ系)に出演。これは、恋に本気になれない6人の男女が人生最大の“本気の恋”に落ちていく様を描いたもの。小野さんは、ヒロインの純(広瀬アリス)が好きになる柊磨(松村北斗)の元カノ・竹内ひな子役で出演。

――勝手に合鍵を使って柊磨の部屋に出入りし、誰か泊まったのか、ごみ箱の中の歯ブラシをチェックしたりして視聴者に「ひなゴン怖い」と言われていましたね。

「そうですね。たしかに陰湿な感じで怖かったですよね(笑)。でも、あの役もそういう側面もありながら、恋のライバルだった純に柊磨のモンスターママ(斉藤由貴)のことを教えてあげるお節介焼きな温かみがあったりして。やっぱり白か黒かの2色で判断しないような描かれ方が好きでした」

――謎めいていてユニークでしたね。だから、本命はいると言いながら、柊磨と不思議な関係で。

「なかなか素直になれないいじらしさだったり、不安だからこそ強がってしまう裏腹さだったり。そういう人間らしい矛盾が魅力的な子でした」

――繊細な心情表現がとても巧みですね。実はこうなんじゃないだろうかというニュアンスがとても自然で。

「ありがとうございます。すごくうれしいです」

2022年、小野さんは、映画『ハケンアニメ!』に出演。この映画は、地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ主人公・斎藤瞳(吉岡里帆)がアニメの頂点である「ハケン(覇権)アニメ」の称号を手にするために熾烈な戦いを繰り広げる様を描いたもの。小野さんは、天才アニメーター・並澤和奈役を演じた。

――天才アニメーターですが、プライベートはイマイチで…という感じでしたね。

「はい。天才と言われると、すべてを超越している隙のない人を想像してしまうのですが、和奈は隙や人間らしさがたくさんあるチャーミングな女性でした。仕事は天才的だけどプライベートはあまり充実していなくて自信がなかったり、頼まれた仕事を断れない押しに弱いところがあったり」

――いいキャラですよね。今度こそはプライベートを充実させようとしていたのに仕事を頼まれると断れない。

「そうなんです。いったん引き受けたら譲れない部分があって、ちゃんと努力もしていて、ポリシーも持っていて…というところが非常によく伝わって、すごく魅力的なキャラでした」

――絵を描く練習もされたのですか?

「実際に使うのはプロの方が描いたものだったので、私は作業をしている姿がプロのように見えるように、結構練習しました。ペンの持ち方とか、手首の動かし方も普段とは全然違いました」

――アニメ業界の舞台裏も興味深かったです。

「そうですよね。あんなにたくさんの人が関わっているんだと知って驚きました。色の種類の多さにもビックリでした。単純に青とか赤、黄色というのではなくて、コバルトブルーとかいろんな種類があるんだなあって」

――小野さんは、『ハケンアニメ!』で第46回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞されました。

「自分にはそういう賞とか、華々しいものは縁がないものだと思っていたので、びっくりしました。移動の車の中で、マネジャーさんから『新人賞受賞おめでとう』ってメールが来たんですけど、心当たりがなさすぎて『宛先間違えてますよ』って送ったら、『間違えていませんよ』って(笑)。それぐらい根も葉もないことだと思っていたので本当に驚きでした。

新人賞をいただいたことであらためてたくさんの人に感謝をお伝えすることができたので、それが何よりうれしかったです」

――『ハケンアニメ!』は、日本アカデミー賞の9部門で優秀賞を受賞されました。

「私自身、大好きな映画のひとつになりましたし、そんなたくさんの方に愛していただける作品の一部になることができて幸せです」

子役時代から演技力を絶賛されていたが、あらためて広く知られることになり、『罠の戦争』、映画『Gメン』(瑠東東一郎監督)など話題作に次々と出演。2023年には、『初恋、ざらり』(テレビ東京系)で連続ドラマ初主演(風間俊介さんとW主演)を果たす。

次回は、『罠の戦争』、『初恋、ざらり』、現在放送中のドラマ『グレイトギフト』、2024年3月1日(金)に公開される映画『52ヘルツのクジラたち』の撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:森下奈央子
スタイリスト:髙橋美咲(Sadalsuud)

※ドラマ『グレイトギフト』
テレビ朝日系で毎週木曜日夜9:00から放送中
出演:反町隆史 波瑠 明日海りお 小野花梨 /坂東彌十郎/ 津田健次郎 倉科カナ 筒井道隆 尾上松也 佐々木蔵之介

完全犯罪を可能にする殺人球菌“ギフト”をめぐる、ノンストップのサバイバル医療ミステリー。大学病院で、ひとりの患者が不審な死を遂げ、うだつの上がらない病理医・藤巻達臣(反町隆史)が未知の殺人球菌“ギフト”を発見。この球菌が体内に侵入すると、まもなく患者は死亡するが、球菌は完全消滅し、死因は急性心不全としか診断できなくなる。それは“完全犯罪の殺人”を可能にする恐ろしい球菌だった。この発見によって、藤巻は、院内の熾烈な権力争いをはじめ、さまざまなトラブルに巻き込まれ、人生が激変してしまう…。

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