優柔不断な男・藤巻が見せた「逃げない勇気」。“友情と仲間”に揺れる『グレイトギフト』第2話<ネタバレあり>
<ドラマ『グレイトギフト』第2話レビュー 文:くまこでたまこ>
主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。
1月25日(木)に放送された第2話では、反町演じる病理医・藤巻達臣が脅迫状を送った人物を探すために奮闘する姿が描かれた。
(※以下、ネタバレを含みます)
◆誰の呼び出しにも応じる藤巻
藤巻は誰の呼び出しでも応じる。明白な理由がなくても、とりあえず足を運ぶのだ。行かない選択もできるのに、藤巻は呼び出しから逃げることをしない。
第2話でも、藤巻は、久留米穂希(波瑠)、伊集院薫(盛山晋太郎(見取り図))、白鳥稔(佐々木蔵之介)、神林育人(尾上松也)といった人物から声を掛けられる。
殺人球菌「ギフト」の秘密を共有しており、藤巻の弱みを握っている白鳥はさておき、自身の立場が完全に不利になる久留米、伊集院、神林にも対応し、話を聞く姿に本当に断れない人なのだなという印象を受けた。
とくに、久留米から食事に誘われたシーンには驚いた。白鳥に「口にするものは気を付けてください」と言われていたのにもかかわらず、久留米からの食事の誘いという名の呼び出しを藤巻は受けたのだ。それはもう日常生活で染みついた、呼び出しは断らないという条件反射だったのかもしれない。
しかし、殺人球菌「ギフト」を作り出した人物ではないかと疑っていた人物と食事に行けるのかと考えると、個人的には断りたいところだが、藤巻は絶対に断らない。優柔不断だからと言ってしまえばそれまでだが、藤巻は呼び出しから逃げないという勇気を見せたのではないだろうか。
その証拠に、藤巻は真犯人かもしれない久留米に対し、激しく動揺はしていたものの、逃げることなく質問に答え、さらには自分からも「目的はなんですか?」と質問を投げ掛けていた。
思い出してみれば、言いくるめられてしまうことや反論されてしまうことは、第1話、第2話を通して何度もあったが、藤巻が自分の意見を言わずに終わったことは一度もない。誰に何かを言われようとも藤巻なりの言葉で何かしらを発しているのだ。
良し悪しは関係なく、置かれた状況で自分らしさを保ち、どんな呼び出しにも応じる藤巻が誰よりも勇気ある人間に思えた。
◆人間らしい郡司の今後に期待
第1話のレビューで「推しを作ったらいかがでしょう」と記載したが、私の推しは津田健次郎演じる明鏡医科大学付属病院心臓外科・郡司博光である。
某スポーツアニメで津田を知って以降、重版になった伝説の写真集も購入し、最近では津田がコラボした某化粧品も購入するほど、彼にハマっている。そんな津田は、本作で色気を爆発させており、心の底から制作スタッフの方に感謝したのはここだけの話だ。
津田が演じているから郡司が好きなのかと思うだろうが、もちろん理由はそれだけではない。郡司自身のキャラクターが、誰よりも人間くさく素晴らしいのだ。
郡司は腕も良く、患者思いの完璧すぎる医者。しかし、その一方で権力を欲しており、目的のためならば手段を択ばない人物でもあるという。
とくにそれが現れていたのは、第2話のホテルシーン。
藤巻が教授になることでイライラしていた郡司は、不倫関係にある明鏡医科大学付属病院の看護師長・鶴下綾香(片山萌美)から、藤巻に「突発的な心不全患者が病院に出たら知らせてほしい」と言われたと聞き、その表情が一気に変化する。
何かをたくらむようなその表情にゾワっとした人もいるだろう。そこが郡司の魅力だ。
自分が持てる全てで、自分にとっての最善をいつも手にしている。郡司の行動は、誰かにとっては悪なのかもしれないが、自分を守るためならば正しい行動ではないだろうか。
郡司は人間らしく己に忠実な心を持っている。藤巻を狙い、その先の白鳥の位置にも手を伸ばそうとする瞬間があるかもしれない。郡司がこれから取る自分のための行動に期待が膨らむ。
◆脅す相手が悪すぎた伊集院
盛山(見取り図)演じる明鏡医科大学付属病院病理部の病理医・伊集院は、白衣の下は白いボトムスを履いていたり水筒を持参したりと、おしゃれな一面がある。
伊集院は検査技師の奈良茉莉(小野花梨)に恋愛感情を持っていることは第1話からも明らかで、藤巻への態度が少々悪く、むかつくところはあっても、どこか憎めないキャラクターだった。
しかし、そんな伊集院は、第2話で殺人球菌「ギフト」の犠牲者になってしまう。
藤巻の行動を見て、白鳥の指示のもと殺人球菌「ギフト」を培養していることに気が付いた伊集院。
それだけであれば、伊集院は白鳥によって水筒に殺人球菌「ギフト」を入れられることはなかったが、伊集院は殺人球菌「ギフト」を脅しの道具として使用。藤巻を通して、奥野信二(坂東彌十郎)を殺害したことを黙っている代わりに金をよこすよう、白鳥を脅してしまった。
自分より強い相手に挑み負けたとき、「相手が悪かった」というセリフが出るが、まさにそれだった。本当に相手が悪すぎたのだ。
白鳥には全て筒抜けで、伊集院はいとも簡単に犠牲となった。
そんな伊集院を、連続ドラマ初レギュラー出演であり、憧れの反町との共演に緊張していると何度も口にしていた盛山が演じている。盛山の迫真の演技に、命が尽きる瞬間に思わず息を飲む。伊集院の早すぎる幕引きに、残念という言葉しか出なかった。
◆藤巻が取るのは友情か、仲間か
第2話では、藤巻は2人の人間から「信頼」という言葉を掛けられる。ひとりは、尾上松也演じる神林。神林は、娘・琴葉(中島瑠菜)の見舞いを通じて明鏡医科大学付属病院に出入りする中で藤巻と知り合った。
作中では数少ない藤巻を見下さない人物だと記憶している。そんな神林は、元刑事として、奥野を殺害した犯人は白鳥だと疑っていた。そのため、白鳥が怪しい行動を取ったら教えてほしいと藤巻に依頼する。
藤巻はどうして自分に頼むのかと問うと、神林は「病院で唯一の友達なので」と爽やかに答える。神林から信頼されていることにどこかうれしそうな藤巻に、こちらもほっこりしてしまう。
2人の友情がこのまま続けば、藤巻は白鳥の手から抜け出せるのでないかと思うがそうもいかない。
白鳥からも裏切らない仲間として、藤巻は信頼されていた。神林から白鳥が疑われていることをきちんと報告する藤巻。何でも相談するところは社会人として立派なことだが、この時点で、神林の信頼を裏切っていた。
本人もその申し訳なさから、神林に見せていた表情に比べ、白鳥の前では暗く悲しそうな表情だった。その上、神林の行動を報告するように言われ、二重スパイになることを指示される。
「信頼」という意味は一緒でありながら、言葉をもらう相手によって喜び方が違う藤巻の素直さに笑いが込み上げる。今後、神林と白鳥のどちらの手を取るかで、藤巻のゴールは変わってくる。
そのとき、藤巻が友情を取るのか、仲間を取るのかはまだまだわからない。それでも、少しでも藤巻が笑えるゴールであることを願うばかりだ。
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※番組情報:木曜ドラマ『グレイトギフト』
【毎週木曜】よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局