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“あの韓国戦”でも。遠藤保仁がパスに込める“メッセージ性”「わざと弱くした理由がわかるでしょう?」

テレビ朝日のスポーツ番組GET SPORTSでは、Jリーグ30周年を記念し、遠藤保仁と中村憲剛の対談を放送。

日本サッカー界を代表する2人がJリーグを語り尽くした。

テレ朝POSTでは対談の模様を全6回に分けて紹介。今回は「2人のライバル関係」「似て非なるパスの違い」について迫る。

◆「遠藤保仁にどう勝つかしか考えてなかった」

前人未踏、J1歴代最多632試合出場を誇り、今なお第一線でプレーし続けている遠藤保仁。

2020年に引退するまでチームを牽引し続け、川崎フロンターレに3度のJ1優勝をもたらした中村。

ともにJリーグを代表する選手としてピッチに立っていた2人は、互いのことをどう思っていたのだろうか?

中村:「遠藤保仁から見る中村憲剛はどんなイメージですか?」

遠藤:「憲剛のことは入団した当時は全然知らなかった。フロンターレが力をつけだして、代表で絡みはじめて、一緒に試合したり、対戦相手として試合をしたりした時に、やっぱり一番要注意人物でした。技術もあるし、なんせ得点に直結するパスが多い。周りも見えているし、やっかいな選手でしたよ、本当に」

中村:「バチバチに意識していたのは気づいてましたか?」

遠藤:「俺のことを? 代表入ってから?」

中村:「いや、もうプロに入ったときから」

遠藤:「それは全然知らない」

中村:「(現役生活の)最初から最後まで、遠藤保仁と対戦するときは、遠藤保仁にどう勝つかしか考えてなかった。僕、特定の個人に対して思いを寄せることはそんなにないんですけど、あまりにも最初の衝撃がデカすぎたので」

遠藤:「でもフロンターレが優勝争いし始めて、ガンバと優勝争いするようになると、フロンターレに勝つにはとにかく憲剛とジュニーニョ、レナト、その辺を絶対に抑えるというのが毎試合の課題だった。そう考えると、憲剛はどのチームにとっても抑えなきゃいけない1人で、僕らからしたら厄介というかフリーにさせたらいけない選手でしたよ」

中村:「永久保存版にします。今の使わなくていいので後でください(笑)」

◆「感覚が合う人は言わなくてもわかる」

2006年からの8年間は、日本代表として同じピッチに。ライバルから「仲間」に変わった。

中村:「それまでは対戦相手だったじゃないですか。でもチームメイトとして日本代表でやったとき、メチャクチャやりやすかったですよ。たぶんヤットさんはみんなに言われると思うんですけど」

遠藤:「人の邪魔をしないからね。僕からしても(憲剛は)やりやすかった。どのタイミングで来るかわかるから、次のプレーがしやすい。いい連携してたよね」

中村:「そう思いますよ。オシムさんの時は僕が前でヤットさんが後ろでしたけど、基本的に関係なく動いてるのですごく楽しかった。ただ、そんなにしゃべってなかったですよね」

遠藤:「試合で『こうしよう』とかはほとんどなかった」

中村:「コミュニケーションが大事って結構今言うんですけど、本当はいらないんだなとその時初めて知ったんですよ」

遠藤:「感覚が合う人は言わなくてもわかるからね、それが本当は一番いいよね」

◆同士が語る遠藤と中村の“パスの違い”

これまで日本代表の中盤で重要な役割を担ってきた遠藤と中村。その1本のパスから、幾度もゴールが生まれた。

では、同じパスでも2人のパスに違いはあるのだろうか?

中村:「ヤットさんと僕、共通点はチームの中でパスの出し手がメインのタイプの選手ということ。ただ、実際に僕らのパスを受ける側の選手からすると、微妙に違いがあるという話なんです。ある2人から証言してもらいました」

最初に証言してもらったのは、南アフリカワールドカップで2人とともに戦った松井大輔。

遠藤とは鹿児島実業高校時代、2学年違いの先輩後輩だった。そんな松井が挙げた遠藤と中村の違いは…。

松井:「ヤットさんの場合、僕にはちょっと冷たいですけど(笑)最終的には愛を持って接してくれるので、冷たい中にもラブがあるという感じですね。でも、その優しいパスを外すと次出てこない。もう見捨てられた感じ。『君は決めてないからもう出さない』っていうのが何回かありましたね。

憲剛は、家族想い。パス出した後も温かい目で見守ってくれるんですよ。外した後も2、3回目までは憲剛のほうがチャンスくれる。見守りのパスみたいな」

そして2人目は、大久保嘉人。

大久保も代表で2人とともに戦い、川崎フロンターレでは中村とのホットラインで3年連続得点王に輝いた。

大久保は、そもそも2人のパスは「性質」が異なると言う。

大久保:「ヤットさんはシャボン玉のようなパスです。優しいきれいなパスを出す。すごくトラップもしやすいし、本当にフリーの時に出してくれますね。憲剛さんは、和田アキ子さんのように力強い。『お前決めろよ!』っていう鋭いパスを出してくる選手ですね。ディフェンスがいても『そこに出してくるんだ』ってボールを出してくるので、そこは2人でちょっと違いますね」

◆遠藤がパスに込める「メッセージ性」

中村:「2人の意見を聞いて率直にどう思いました?」

遠藤:「俺も聞かれたら同じように答える。(大久保)嘉人が言ったように憲剛は“針の穴を通すようなパス”が俺より多いかなと思う。とくに憲剛とジュニーニョのホットラインの時はバシッと来るパスが多かったので、そのイメージが強いかな」

中村:「優しいんですよね、ヤットさんのパスって。嘉人も言ってますけど、きれいなんですよ。ボールがス~っと芝を(いくような)。あれは意識しているんですか?」

遠藤:「意識していないよ」

中村:「本当ですか!?」

遠藤:「そんなにしていない。回転は意識しているけど」

中村:「しているじゃないですか」

遠藤:「なんて言うんだろう。きれいに出さなきゃという風には意識してないけど、『回転をこれだけかければ止まるだろう』とか、そういうのはもちろん意識している」

中村:「一番こだわってるのはなんですか?」

遠藤:「次の選手のプレーしやすさかな。『わざと弱くした理由がわかるでしょう?』『次のプレーわかるでしょう?』みたいな。メッセージ性っていったら大げさかもしれないけど

中村:「メッセージ性がヤットさん以上に強い人、僕会ったことないです。ヤットさんから弱いパス来たら返さなきゃいけないと思ってやっていましたから」

遠藤:「『返したり食いつかすパスだよ』みたいな。それは今でも意識してやっていますよ」

遠藤の凄さ、それはパスを出した後のプレーまで想像し、味方にパスを送っているという点。

例えば、2011年アジアカップの韓国戦、いまもサッカーファンの間で語られる前半大チャンスの場面。

遠藤が本田にパスを送ると、相手ディフェンスが本田につられ、引き出されたことで裏にスペースが生まれた。ボールが遠藤の元に戻ると、すかさず空いたスペースに鋭いスルーパス。本田へのパスは、相手をおびき寄せ、スペースを作るという「メッセージ」が込められていた。

まさに、“食いつかすパス”だったというわけだ。

遠藤保仁×中村憲剛対談、次回は、遠藤の日本一ともいわれる技術を徹底解剖。ボールを「止める・蹴る」極意を本人自ら解説する。

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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