宮澤美保、映画初主演後も「思い通りにいかなかった」女優業。10年潜り…アルバイト生活の日々「結婚してからもしていました」
デビュー作『櫻の園』(中原俊監督)で注目を集め、『苺の破片(イチゴノカケラ)』(中原俊・高橋ツトム共同監督)、『お元気ですか?』(室賀厚監督)など主演作も多い宮澤美保さん。
自ら主演映画の脚本を手がけ、バイクの連載記事を担当するなど幅広い分野で活躍。書道師範の資格を取得し「宮沢光華」の雅号も持つ。2022年には、夫である深川栄洋監督とともに映画『光復(こうふく)』と映画『42-50 火光(かぎろい)』を自主制作。主演だけでなくスタッフとしても奔走した。
◆劇的に変わるとは思っていなかったが…
『櫻の園』で共演した梶原阿貴さんと共同で脚本を手がけた『苺の破片(イチゴノカケラ)』で映画初主演を果たした宮澤さんだったが、思うように仕事は展開していかなかったという。
「すごく変わると思ったんですけど、やっぱり思い通りにはいかないものだなあって。それで劇的に変わるとは思っていなかったですけど、もうちょっとつながっていくかなと思っていました。なかなかやっぱり芸能界って難しいですね。それでまた10年潜ることになるんですけど(笑)」
-バイクの連載記事を担当されたり、書道師範の資格と雅号も持つなど幅広い分野で活躍されていますね-
「今はもう離れちゃって、バイクにはしばらく乗ってないです。定期的にやりたいことが現れて、バイクの次はゴルフ。ちょうど30歳になったときにバイク、それで40歳になったときにゴルフだったんです」
-書道をはじめたのは?-
「小学校1年生です。みんな塾とかに通いはじめていて、友だちが通っていたので私も行きたいという感じで習いに行くようになって。いろいろな習い事をしていくなかで、一つだけずっと続いていたのが書道でした。何か落ち着くという感じだったのかもしれないです。
学生時代は中学校まではやっていたんですけど、高校生のときにお休みして、東京に来てから20代前半で復活しました」
-「宮沢光華」という雅号は?-
「20代後半だったと思います。雅号は師匠がつけてくれるもので、私が女優をやっているというのもあって、『光』とか『華』があるようにというようなイメージでつけてくださったのだと思います」
-生活はどのようにされていたのですか?-
「高校を卒業してからずっとアルバイトをしていました。飲食店とかアパレルの販売などいろいろやりました。でも、あまり長続きしなくて、やっぱり大変だなあって。仕事やオーディションが入ったときにお休みがもらえるかどうかが大きいので、仕事的には内勤というか、ちょっと事務みたいな仕事が一番長かったかもしれないです」
-アルバイトはいつ頃までされていたのですか?-
「ついこの間までやっていました。結婚するぐらいまで。結婚してからもしばらくはしていました」
◆『神様のカルテ2』で深川栄洋監督と出会い
2014年、宮澤さんは映画『神様のカルテ2』に出演。地方病院の医師・栗原一止(櫻井翔)が妻(宮﨑あおい)と仲間に支えられて成長していく姿を描いた人気作第二弾となるこの作品で、宮澤さんは入院患者・四賀藍子を演じた。
からだを治すためにきちんと食事を摂らなくてはいけないのだが食欲がない。そんな藍子に糖尿病で食事制限されている会田卓夫(佐藤二朗)が接近。藍子の食事を食べてあげることに。
-極端にセリフが少なくて不思議な役でしたね-
「鋭いです。本当はセリフをしゃべっていたんですよ。それなのに全部セリフをカットされて。録音部さんがたまたま『櫻の園』の録音部さんだったんです。『美保ちゃん、今度の映画、全然しゃべってないことになっているから』って試写を観る前に言われて(笑)。
役的にそんなにしゃべる感じじゃなかったんですけど、食事のシーンで佐藤二朗さんとアドリブでいろいろ芝居をしていたんですね。相槌をしながらちょっとしゃべるという感じだったんですけど、結構いっぱいやったのに、観てみたら私だけまったくしゃべってなくて、『ああ、こういうことか』って(笑)。珍しいですよね」
-佐藤二朗さんと良いコンビでしたね-
「そうですよね。私は食べなきゃいけないのに食べられなくて、佐藤さんに食べてもらうというか全部食べられちゃう(笑)。不思議ですね。アドリブ以外でセリフもいくつか台本にはあったんですけど、カットされちゃって。でも、しゃべらないということでキャラクターが作られていたんです。それで監督のことをすごくおもしろい人だなって思いました」
-監督とは『神様のカルテ2』の撮影後すぐにお付き合いするように?-
「全然すぐじゃないです。連絡先も聞いてないし、そこから1年以上空いていると思います。次に一緒になった作品が、『連続ドラマW LINK』(WOWOW)という作品でした。
それもまたおもしろいチョイスをしてくれて。武田鉄矢さん演じる政治家の奥さんの役だったんですけど、銀座で水商売をしていたんじゃないかなというような歳の離れた奥さんで、家でもずっと着物を着ている人。それまでそういう役をまったくイメージされたことがなかったので新鮮でした。『何で私がこの役なんだろう?』って(笑)。
当時のマネジャーが売り込みに行ってくれたんですけど、そのときに『この役がいいんじゃないか』って監督が言ってくれたのが、私としてはすごく意外な役柄でおもしろかったんです。でも、そこでも連絡先は聞いてないですけど(笑)」
◆ゴルフ帰りに渋滞にハマって交際
『神様のカルテ2』で出会ってから1年半くらい経った頃から宮澤さんは、深川監督と一緒にゴルフに行くようになったという。
「『櫻の園』と『神様のカルテ2』の録音部だった林さんという方がキーマンになっていて。『櫻の園』の同窓会みたいなものを年に一回くらいやっていた時期があって近況を話したときに、林さんが監督とよく一緒にゴルフに行っているという話を聞いたんです。
そのとき、私はちょうどゴルフをはじめようと思っていて、友だちから中古のゴルフセットを一式もらって近所のゴルフのレッスンに通っていたので、コースデビューをしたかったんですよね。まだそんなゴルフの友だちもいなかったので、『私も行きたい』って言って、林さんを通じて一緒にゴルフに行くようになったんです」
-ゴルフに行くようになっていかがでした?-
「ゴルフをいっぱい教えてくれました。私が最初に抱いたイメージは、全然スポーツをやる感じの人じゃないと思っていたんですけど、ゴルフは本当にうまくて、いろいろ打ち方とか教えてくれて。監督業とはまたちょっと違うけど、やっぱりいろいろ教えてくれる人なんだなって思いました(笑)」
-そのときには、将来結婚することになるかもしれないとは?-
「そうですね。最初にゴルフに行きはじめたときは、録音部の林さんの車で都内から連れて行ってもらっていたんですけど、監督のほうが家が近かったので送ってもらうようになって。そこからですかね。
あるとき、渋滞で長時間車の中に二人でいることになって、それぞれの生い立ちや、この世界に入った理由とか、お互いに話をするようになって」
-そのことをきっかけにお付き合いをするように?-
「はい。何かちょっと恥ずかしいですね(笑)。こんなに詳しく話したことがないので。付き合ってから結婚するまでは半年だったので、この渋滞からは1年未満かもしれないです。でも、仕事の部分でも見ていたし、あと生い立ちなどもそれぞれ話しているので、性格もわかっていたので」
2016年、宮澤さんと深川監督は結婚。2ショット結婚会見は、宮澤さんの主演映画『お元気ですか?』の舞台あいさつで緊急会見として行われた。
2022年、夫婦二人三脚で監督、主演を務めた映画『光復(こうふく)』と映画『42-50 火光(かぎろい)』を自主制作。40代で初ヌードに挑み、剃髪までして流転のヒロインを演じきった。次回はその撮影エピソードなども紹介。(津島令子)
※映画『光復(こうふく)』
深川栄洋return to mYselF プロジェクトsideB
2023年6月2日(金)~9日(金)、広島 横川シネマ
2023年7月1日(土)~2日(日)、山口 YCAM山口情報芸術センター
配給:スタンダードフィルム
監督:深川栄洋
出演:宮澤美保 永栄正顕 クランシー京子 関初次郎 池田シン
15年前に両親の介護のために東京から長野に戻ってきた42歳の大島圭子(宮澤美保)。生活保護を受けながら父親を看取り、アルツハイマーに冒されて意思の疎通も取れない母親の介護をしていた。ある日、高校の同級生だった横山賢治(永栄正顕)と再会したことがきっかけで、人生が真っ逆さまに転がり落ちて行くことに…。
※映画『42-50 火光(かぎろい)』
深川栄洋return to mYselF プロジェクトsideA
2023年6月2日(金)~9日(金)、広島 横川シネマ
2023年6月17日(土)~23日(金)、大分 日田シネマテーク・リベルテ
2023年7月1日(土)~2日(日)、山口 YCAM山口情報芸術センター
製作・配給:スタンダードフィルム
配給協力:ポレポレ東中野
監督:深川栄洋
出演:宮澤美保 桂憲一 白川和子 加賀まりこ 柄本明
深川監督と宮澤さんの結婚生活をベースに描く、東京で暮らす脚本家と女優の夫婦のお話。2年前に結婚した50歳の脚本家・祐司(桂憲一)と42歳の女優・佳奈(宮澤美保)。不妊治療のストレス、難病で死に向かう父、問題を複雑化させる姉妹、わがままをこじらせる親たちなど、さまざまな問題が…。