宮澤佐江、想定外の事態で仕事がなくなった“宙ぶらりん”期間。AKB48所属では出会えなかった2人の恩師
AKB48のメンバーとして活躍しながら、映画『高校デビュー』(英勉監督)、映画『ウルトラマンサーガ』(おかひでき監督)をはじめ、映画、舞台にも出演してきた宮澤佐江さん。
2012年には、中国・上海のSNH48に移籍することになるが、初っ端(しょっぱな)から問題が勃発。日本と中国の情勢から中国で活動するためのビザが発行されず、数カ月間宙ぶらりんの状態に陥ってしまう。しかし、その状況が恩人との出会いに…。
◆中国・上海のSNH48に移籍するも予定通りにはいかず…
傍からは選抜総選挙の常連でトップグループに見えた宮澤さんだが、本人は2010年頃から「こんなに頑張っているのに自分には何が足りないんだろう?」と苦悩していたという。そんなとき、移籍の話が。
「秋元(康)さんから『新しく中国にできる姉妹グループは佐江を筆頭にしたい』って言われたんですけど、海外というのは想定外だったし、まだ22歳だったので、すぐには返事ができませんでした。
でも、迷いもあったけど、これはチャンスだって思いました。もう完成されたAKB48の選抜メンバーからもちょっと外されつつあって。新しい世代の子たちが選抜に入っていったりしていて、グループの転換期の時期だったので、私は今、このグループじゃないところに行ったほうがいいんだろうなあという判断で、最終的には自分で中国に行くって決めました」
-中国語の勉強も?-
「最初は習って頑張っていたんですけれども、情勢問題で、予定されていたことと全然違う生活を送ることになってしまったので、途中からはもうモチベーションが落ちて、中国語を学ぶ気力がなくなってしまって。
せっかく行こうと思って、頑張っているのに、自分たちではどうしようもない国の事情、情勢でというのはつらかったです。
上海に行くことになっていたので日本で仕事を入れてなかったですし、宙ぶらりんの状態で。毎日マネージャーさんから、『明日も仕事お休みです』、『明日も仕事お休みです』というメールが送られてくるんですよ。『何をしたらいいんだろう?』みたいな感じでした(笑)」
-それはどれぐらいの期間続いたのですか?-
「何カ月ぐらい続いたかな? 最初は、中国に行くと決めたからには日本での仕事は一切するなというような約束だったんですよね。せめて自分で握手会だけは参加したいって言っていたんですけど、それすらも一時期出させてもらえなくて。
そういう時期もあったので、ファンの方との交流もできなかったというのは、結構ストレスが自分の中ではあったから、あのときの記憶が一番ないですね。でも、家族とやっと一緒にいる時間が増えたというのは、あの期間で感じたかもしれません」
2013年4月、AKB48チームKを兼任することに。同年6月に行われた選抜総選挙で選抜メンバーに選ばれるが、開票イベントでSNH48に専念すると宣言し、AKB48を卒業。チームKとの兼任も解除することに。
◆岸谷五朗さんと寺脇康文さんとの出会い
宮澤さんは、2014年1月8日~3月31日という長丁場の地球ゴージャスプロデュース公演Vol.13『クザリアーナの翼』に出演。地球ゴージャスとは、岸谷五朗さんと寺脇康文さんが1994年に結成した演劇ユニット。
「地球ゴージャスの岸谷五朗さんと寺脇康文さんは、私の人生で出会えて本当に良かったと思える人たちです」
-宮澤さんのキャリアを拝見していると、あのときに地球ゴージャスの舞台を経験したことは重要なターニングポイントになったと思いますが-
「そうですね。AKB48所属だったら、あの地球ゴージャスの長期期間の作品には、多分出演できてなかったので。SNH48での仕事ができなかった期間だったから、地球ゴージャスの作品に出られたんだなあと思うと、これも奇跡だし、運命だし、巡り合わせだなあと思います」
-岸谷五朗さん、寺脇康文さんとはいかがでした-
「恩師です。出会えて良かったなって、自分の人生で出会ってよかったって本当に思えるお二人です。最初は、やっぱりミーハーな気持ちがあったので、勝手に『テレビで見たことある人たちだ』って(笑)」
-それまでにも舞台には出演されていましたけど、稽古はいかがでした?-
「それまでやっていたのは、AKBグループの内部の作品で、初めて外部の大きな舞台に出たのが地球ゴージャスだったので、毎日が楽しかったです。本当にいろんなことを教えていただきました。お稽古期間が終わってほしくないなあと思いながら日々過ごしていました」
-苦労されたことは?-
「もちろん全部苦労だったけど、学ぶことのほうが多かったので、すごく刺激的な時間を過ごさせてもらっていました」
-千秋楽が終わった後、お二人には何か言われました?-
「私はずっと泣いていて覚えていないです。とにかく泣きすぎたっていうのを覚えています。寂しくて、終わりたくなくて、ずっとずっとみんなと一緒にいたい気持ちがすごく溢れていて。千秋楽の幕が開く前から泣いていました」
-その舞台を経験したことによって、将来的に女優さんとしてやっていく決意をされたのですか-
「そうですね。大きいきっかけは、地球ゴージャスの舞台だったかもしれません。お芝居ってこんなに楽しいんだなあって思えたし。
秋葉原の劇場で、生のステージに立って自分が積み上げてきたものの経験も、ミュージカルには活かせるものもいっぱいあったので。やっぱり私はステージに立つのが好きなんだなって再確認させてもらえたのは、地球ゴージャスに出たことがきっかけでしたね」
-その頃ご自身の中では、AKBグループを卒業するということは考えていたのですか?-
「いいえ、全然。まだそのときは意識していませんでした。それから、いろんな仕事をしたり、仲のいいメンバーの卒業を見送るという経験していって、徐々に考えるようになっていきましたね。
SNH48という上海のグループに行って所属して、そのあとAKB48との兼任というのを発表されて、それを自分で蹴ってしまったので、やっぱりAKBにも戻れないという暗黙のルールみたいなのが、多分勝手にグループ内にあったんですよね。
でも、日本で活動させてあげないとかわいそうだよねということもあり、SKE48に新しい風を吹かせたい時期でもあったということでSKE48に行かせていただけたんですけど。私はAKBで卒業しないで、SKEで卒業できて良かったなって今でも思っているので、それはすごくうれしかったですね」
AKB48に入って10年目となる2016年、宮澤さんはAKBグループを卒業。自身の巣立ちのときは10年の節目と決めていたという。卒業後、ミュージカル『王家の紋章』、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)をはじめ、多くの作品に出演。
次回後編では撮影エピソード、1年間の休業、2023年3月17日(金)に公開される映画『犬、回転して、逃げる』の撮影裏話も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:伊藤里香
スタイリスト:藤井エヴィ
※映画『犬、回転して、逃げる』
2023年3月17日(金)よりシネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
配給:アイエス・フィールド
脚本・監督:西垣匡基
出演:長妻怜央(7ORDER) 宮澤佐江 なだぎ武 中村歌昇 三戸杏琉 小坂涼太郎 ワタリ119 仁科亜季子/登坂淳一
泥棒という裏稼業を持つカフェ店員の青年・木梨栄木(長妻怜央)。次のターゲットは、1日でも早く世界が終わることを願っている婦人警官の眉村ゆずき(宮澤佐江)。しかし、彼女の部屋で、「ずっとお前を見ているからな」という手紙を見つけて驚く。数日後、木梨がこよなく愛する愛犬の豆柴・天然くんが部屋から姿を消してしまい、盗まれたたと思い込み、失意のどん底に。さらに街では相次ぐ爆弾予告事件、小学生の誘拐騒動が勃発し、予想外の展開に…。