『星降る夜に』“幸せ”と“苦しい”が交互に押し寄せた第7話。描かれたのは「泣く」ことの大事さ
<ドラマ『星降る夜に』第7話レビュー 文:横川良明>
このドラマ、幸せな気持ちと苦しい気持ちが交互に押し寄せてくるので、情緒がおかしいことになりそうです。
いよいよ佳境を迎えつつある『星降る夜に』第7話。それは、人の温かさに泣き、人の弱さに泣く回でした。
◆誰か早く鈴と一星にノーベル平和賞をあげてほしい
とりあえずシリアスなところに行く前に、今回も最高にキュートだった鈴(吉高由里子)と一星(北村匠海)について存分に語らせてください。
仕事を終え、病院から出てきた鈴を迎えてくれたのは、スーツ&トレンチコートの一星。
見ました? あの北村匠海のカッコかわいさ。これはもうリアルロミオ。家から出てくるたびに、毎回こんな男の子が待っててくれたら、玄関開けた瞬間、興奮しすぎて蒸発しそう。
ほんまに北村匠海がUberEatsのバイトとかしてなくてよかった。もしやってたら、毎日、無駄にウーバーしてしまうところだった。
大人っぽく前髪を上げたスタイルもよく似合っているし、そのくせネクタイが曲がっているところが絶妙にツボを押さえすぎている。これを考えたのは誰? 大石静先生なの? 今さらだけど天才じゃね??
とりあえずスタイリングをしてくれたヘアメイクさんと衣裳さんには僕から金一封を差し上げたいので、口座番号を教えてください。マジで1日の疲れが、あの北村匠海を見た瞬間に吹っ飛びました、ありがとう。
で、それをさらに上回る破壊力をぶっ放してくるのが吉高由里子です。
一星に連れられ、ショップでドレスアップをする鈴。ファッションショーのように次々と試着をする吉高由里子がどれも可愛すぎて、これを見たらバイデンとトランプも「吉高由里子、最高やんな??」「わかる……」って意気投合しそう。
たぶん、今、地球上でハニカミ顔をさせたらいちばん可愛いのが吉高由里子。1回転して、けつまずくところとか素なのかと思うナチュラルさだし、仮にあれが演技だとしてもいい、僕はもう大人しく吉高由里子に騙される男になる道を選びます。その方が絶対に幸せです。
カーテンに身を隠しながら登場するところも、照れ臭そうに身をよじらせながら「綺麗?」と聞くところも、なんというか、全細胞ではにかんでるよね。そして、観ている我々もずっとはにかんでいる。なんだこの幸せの好循環。
あ〜、もう2人にはずっとイチャイチャしてほしい。好きな人同士が仲良くしているのを見ているだけでこんなに平和な気持ちになれるなんて…。誰か早く鈴と一星にノーベル平和賞をあげてほしい。
そのあとの一星の「鈴もきれい。何を着てても着てなくても」も、これが北千住のスナックでおっちゃんが言うてたら一瞬で体感温度が氷点下まで冷え込むけど、このシチュエーションで北村匠海に言われたら心は一気に猛暑日です。結局顔なのか…? まあ、顔やけどな!
そのあとの鈴の「私も裸の一星好き」という返しも見事で、何も食べてないのに游玄亭のシャトーブリアンコースを3回食べたような満腹感に包まれました。ごちそうさまでした。
◆目に見えているものだけで、その人のすべてはわからない
でも決してただのイチャイチャだけでは終わらないのです、このドラマは。そのあとの一星の台詞がすごくよかった。
「人殺し」という伴(ムロツヨシ)の声が耳から離れないと言う鈴。一星は「そんな言葉、聞かなくていい」と鈴の耳を塞ぐ。この後の台詞がとてもいいので、全文引用させていただきたい。
「聞こえる人は聞こえる人で大変だと思うよ。俺はいいことも聞こえないけど、嫌なことも聞こえないから。それに、俺が聞こえないのは誰だってちょっと見てりゃわかるし、みんな理解しようと思ってくれてラッキーかも。目で見てわからないものを抱えて生きている人の方が俺よりずっと大変だ」
こんなふうに世界を見ることができるから、みんな、一星のことを好きになるんだろう。
自分だけが不幸なわけでも悲劇なわけでもない。どんな人にも何かしら苦しさはあって、みんなそれを抱えながら生きている。そうわかっているから、一星は誰に対してもフラットに接することができるんだと思う。
きっとこの一星の言葉に救われた人は多いんじゃないだろうか。自分の持っているしんどさなんて、他の人に比べたら些細なことで、もっと大変な人がいるんだから、あなたは一生懸命頑張りなさい。そう誰かに言われているような気がする世の中で、自分の苦しみを吐き出すことは決して易しいことではない。
でも、一星はそうじゃない。見た目やステータスだけで、その人のことなんてわからない。わかりやすい何かだけを切り取って、僻んだり、妬んだり、攻撃的になってくる人に、あなたが傷つく必要はない。そう言ってくれるから、一星といると癒される。
さっきの発言を前言撤回します。一星の魅力は、顔じゃない。内面なんです!(まあ、顔もめちゃくちゃ好きですけど)
そして、一星の一連の台詞が、「幸せそうな女性を見ると殺してやりたい」という犯人の言葉が世間に衝撃を与えたあの事件を思い起こさせた。
ただ笑っているから。ただ恋人がいるから。ただ裕福だから。ただ女性だから。そんな理由で攻撃されることが許されていいはずないし、そんな脅しに縮こまる必要などないのだと勇気づけられるような気持ちになった。
みんながそれぞれ大変な思いをしながら生きているし、みんなそれぞれ胸を張って幸せになっていい。一星の生き方は、現代を生きる私たちにとても大事なことを教えてくれる。
◆大変なことを抱えた大人たちに必要なのは、泣く場所なのだ
だからこそ、この先の伴をどう描くかに注目が集まる。
正直に言うと、今の伴にあまり共感はできない。突然何の前ぶれもなく妻を失った悲しみにはできるだけ寄り添いたいとは思う。
けれども、鈴に過失がなかったことは法的にも認められた。それでもなお鈴に嫌がらせを繰り返すのは逆恨みでしかないし、その行為はもはや許容範囲を超えている。ここから伴にどういう救済がもたらされるのだろう。
対比するキャラクターとして、佐々木深夜(ディーン・フジオカ)が配置されてはいるものの、同じ境遇にある中でそれでも悲しみに負けずに生きている人がいるのだという言葉が伴の救いになるのかと言われればわからないし、他の人はできているんだからあなたもできなくちゃダメという論理はある種の暴力にも思えてくる。
ならば、伴はどうやって立ち直ればいいのか。きっとヒントとなるのは、鈴の最後のモノローグだろう。
「なんでだろう。あの人もここにいたらよかったのかなと、ふと思った」
自分が誰かに恨まれ続けている。そして、それによって周りの大切な人に迷惑をかけている。その苦しみは、人の心を潰すにはじゅうぶんすぎる重さだ。
でも、鈴には一星がいてくれる。深夜がいてくれる。突然泣き出した鈴に対し、一星も深夜も何も言わない。下手な励ましもしない。背中をさすって慰めることもしない。ただ泣いているのを、ずっとそばで見守ってくれる。そんな人がいるだけで、どれだけ心が救われるだろうか。
大変なことを抱えた大人たちに必要なのは、泣く場所なのだ。守るべきものがありすぎる大人たちがほしいのは、自分を守ってくれる人なのだ。
伴には、それがなかった。生まれたての子どもを抱えて、必死に親の役割を果たすしかなかった。
誰かの前で思い切り泣いたり、無防備に甘えることができないまま、癒えない傷ばかりがどんどん化膿して、その痛みを鈴にぶつけることでしか、自分のバランスを保つことができなかった。
だからせめて伴が思い切り泣けたらいいなと思う。誰でもいい。誰かのそばで泣けたらいい。
生きるのが大変な僕たちにとって大事なことは、誰かのように頑張ることではない。自分の辛さを認めて、ちゃんと泣けることなんだ。
(文:横川良明)
※番組情報:『星降る夜に』
【毎週火曜】よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局
※『星降る夜に』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)
※動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」では、地上波放送終了後にドラマ本編を配信!