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『リエゾン』子どもだけでなく、親の弱さ・つらさも受け止めることに救われる第2話「心の健康を取り戻す」

『リエゾン』子どもだけでなく、親の弱さ・つらさも受け止めることに救われる第2話「心の健康を取り戻す」

<ドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』第2話レビュー 文:赤山恭子>

自らも発達障害=凸凹(でこぼこ)を抱える児童精神科医&研修医が、生きづらさを持つ子どもと親にまっすぐに向き合う感涙必至の医療ヒューマンドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』

第1話の放送終了後、SNSには「すごくいいドラマで涙が止まらなかった」「心が締め付けられたり、ぽかぽかしたり素敵なドラマでした。佐山先生の笑顔に私も仕事の疲れが癒されました」といった視聴者からの熱い声が。

診療所にやってくる子どもやその家族たちを「患者」とひとくくりにして隔てるのではなく、彼らに目線を合わせ、親身に寄り添う院長・佐山卓(山崎育三郎)と研修医となる遠野志保(松本穂香)の温かさと思いやりに、誰もが胸を打たれた。

そして、志保がいよいよ本格的に「さやま・こどもクリニック」の研修医として働きはじめた1月27日(金)放送の第2話。

志保は、うつ病の⽗・滝川治(岡田義徳)と2⼈で暮らす発達障害の疑いがある⼩学4年⽣の悠里(浅田芭路)のもとを尋ねる。ゴミ屋敷同然の家で、学校にも通えず父の面倒を見る悠⾥を見かね、佐山院長のもとへ来るように志保は促すのだが…。

(※ここから先はネタバレを含みます。)

第2話でスポットがあたったのは、滝川父娘。妻の自殺以降、うつ病となり万年床で酒を飲みふさぎこんでいる無職の父・治と、そんな治を献身的に支えて見守る娘・悠⾥という家庭だ。

まだ小学4年生というのに「お父さんが死ぬかもしれないから」という理由で学校にも行かず、狭い部屋で父の様子を気にかけている。志保は訪問看護師の川島雅紀(戸塚純貴)に連れられ、その家にやってくる。

普段ちゃらついている川島が、滝川家に入る前、「かなり厳しい現場だけど驚かないでね」とまじめに向き直る。一瞬、ぴりっとした空気の後、ドアを開けるとそこにはゴミが無残に広がる汚部屋が広がっていた。息を飲む志保と同じく、視聴者である私もそのありように二の句が継げなかった。

無邪気に川島を迎え入れる悠⾥に朗らかに対応し、てきぱきと部屋の整理をしながら、父ともコミュニケーションを取る川島。それに対し、志保は何とか状況を飲み込み手伝うことしかできない。

そんな志保の姿は視聴者の視点でもあり、彼女と一緒に私たちも痛みを抱える。志保が感じ、思っていること――どうにかしたいけれども、出すぎたことは決して許されない――その無力さを、志保を演じる松本の動揺し、こわばる表情の演技からつぶさに感じ取る。厳しい現実を突き付けられた衝撃で胸が痛み、やりきれない思いがうずまいた。

その後、一度はクリニックに尋ねた滝川父娘であったが、状況は改善せず悪化の一途をたどる。ついに悠⾥は、コンビニで酒を盗む万引き事件を起こしてしまう。

いたたまれない事態を機に、佐山院長はじめ川島や児童相談所の職員、警察がなんとか状況をよくしようと治の説得にかかる。大人同士のいさかいのなか、志保は「誰のためにみんなは働いているのか、悠⾥ちゃんのためじゃないのか」と金切声で訴える。

ことを収めるために大人たちは最善策を考え、近道をいこうとするものだ。しかし、子どもは違う。感情が先に立ち、すくんで動けなくなってしまう。悠⾥はただただ学校に行きたくて、お父さんは大好きだけど一緒にいるのは限界で、でもどうしていいかわからなくて、万引きを起こしてしまったのだから。

小さい体から発せられたSOS。傍にいて気をつけて見ていたはずなのに、何もわかっていなかった、できていなかった事実を大人たちは知ることになる。治と悠⾥のような親子関係でなくても、もしかしたら大人同士でも、多かれ少なかれ近しい人だから気づけなかったことは、誰もが経験のあることだろう。

最後に、佐山院長が治に言う。「あなたの心の健康を取り戻しませんか」と。その後、治の瞳に正気が戻り、目から涙があふれ出した。演じた岡田の細やかな変化にこちらの涙腺もゆるむ。

妻に自死されうまく立ち直れないなか、娘の面倒もきちんと見ないといけないというプレッシャーに、自然と押しつぶされたのかもしれない。振り回されて心身ともに疲弊する親の気持ちは、たとえ同じ立場ではない者でもわかる。つらい気持ちを抱えるのは、子どもだけではない。親だって、大人だって同じなのだ。

私たちは神ではないし、ロボットでもない、いつだって完璧に思った通りには生きられない。弱さも認めて生きていくこと、そしてそれは決してダメなことではないと、このドラマを通してあらためて気づかされる。

佐山院長の言う「凸凹に当てはまる生き方」はまさにそれであり、救いの言葉なのだ。

さまざまな親子が登場し、そのたびに感動と温かさ、気付きも受け取ることができる『リエゾン-こどものこころ診療所-』。第2話では志保の活躍が目立っただけに、第3話では佐山院長のさらなる存在感&金言を楽しみにしたい。

(文:赤山恭子)

※番組情報:金曜ナイトドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-
【毎週金曜】よる11:15〜0:15、テレビ朝日系24局(一部地域で放送時間が異なります)

※『リエゾン-こどものこころ診療所-』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

※動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」では、地上波放送終了後にドラマ本編を配信!

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