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かたせ梨乃、「100年早い」と言われた『極道の妻たち』の大役。出演して「初めて“女優です”と言えるようになった」

女子大生モデルとして『11PM』(日本テレビ系)のカバーガールに起用され、端正なルックスと日本人離れしたグラマーなプロポーションで注目を集めたかたせ梨乃さん。

1978年、『大江戸捜査網』(テレビ東京系)で女優デビュー。1986年に出演した映画『極道の妻たち』(五社英雄監督)での体当たりの演技が高く評価され、『吉原炎上』(五社英雄監督)、『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』(山田洋次監督)、『名探偵キャサリン』シリーズ(TBS系)など多くの映画、ドラマに出演。

2023年1月20日(金)には映画『BAD CITY』(園村健介監督)が公開される、かたせ梨乃さんにインタビュー。

 

◆伝説の深夜バラエティ『11PM』のカバーガールに

東京で生まれ育ったかたせさんは、小さい頃は人見知りで、人前で何かをすることなど考えられなかったという。

「何しろ人見知りでしたからね。小学校1年のときなんて、学年で1番おとなしい子だったと思う。本当に人前で何かすることが大嫌いだったから、歌のテストとか、スピーチしなきゃいけないというときには発熱しちゃうの(笑)。

父親に『将来女性が仕事をもつ時代が来るから、そういう方向に向かって勉強しなさい』って言われていたから、母がからだが弱かったこともあり、お医者さまになりたいなとか…」

-学芸会などではどうでした?-

「そういうのは、どちらかというと“木”がいいという感じ(笑)。ただ、父が商社に勤めていて海外勤務になったので、母が私の写真を自宅近くの写真館で、毎年プロのカメラマンに撮ってもらって父の赴任先まで送っていたから、写真を撮られることは好きでした。だけど人前で何かしゃべったり、モーションすることは苦手でした」

-芸能界でお仕事をすることになったきっかけは?-

「中学くらいのとき、家のほうに芸能界からのスカウトはあったんですね。だけど、規則が厳しい学校だったので、やるんだったら学校をやめなきゃいけなかったし、私自身も女優を自分でできるとは思っていなかったので。

たまたま大学時代、友だちがモデルクラブに入っていたので、アルバイトでモデルをするようになったのがきっかけです。初めてしたバイトがモデルさんだったの。

あの時代はアグネス・ラムさんが人気で、ハーフの方や外国人のモデルさんが多かったんだけど、私が日本人にしてはちょっと珍しい感じだったからコマーシャルのお仕事をたくさんいただくようになって」

-ラオックスのコマーシャルも印象的でした-

「そのラオックスの頃に『11PM』のカバーガールをやることになったんですけど、当時の『11PM』はあまり子どもが見ちゃいけないようなイメージだったじゃないですか(笑)。

それでもどうしてもやりたかったから両親の許可を取って、結局『11PM』は5年くらいやったんじゃないかな。はじめはカバーガールで、そのあと(愛川)欽也さんのお隣に座らせていただいて。でも全然しゃべらないで座っているだけ(笑)」

-グラマーなプロポーションが映えて華やかでしたね。親に『大人の番組だから見ちゃダメ』と言われましたが-

「そう。ダメって言われるの(笑)。でも、今考えると『11PM』って、海外取材があったり、いろんなミュージシャンの人が来たり、サーフィンとか新しいものを色々取り入れていて、今の情報番組のはしりですよね。あれは生だったので、私は毎週水曜日に麹町に行っていました」

※かたせ梨乃プロフィル
1957年5月8日生まれ。東京都出身。大学在学中にCMモデルとして注目を集め、『11PM』のカバーガールに。『大江戸捜査網』で女優デビュー以降、『極道の妻たち』シリーズ、『肉体の門』(五社英雄監督)、『東雲楼 女の乱』(関本郁夫監督)、『孤狼の血 LEVEL2』(白石和彌監督)、『十津川警部』シリーズ(TBS系)、『湯けむりドクター華岡万里子の温泉事件簿』シリーズ(テレビ東京系)などに出演。2023年1月20日(金)公開の映画『BAD CITY』に韓国マフィアの首領・マダム役で出演している。

 

◆時代劇で女優デビュー。撮影現場ではすべてが勉強

1978年、かたせさんは、隠密同心たちが江戸の街を舞台に活躍する様を描く時代劇ドラマ『大江戸捜査網』で女優デビュー。“流れ星おりん”を演じることに。

-女優さんとしての最初の仕事が時代劇のレギュラーというのは、大変だったのでは?-

「そうなんですよね。まだ20歳くらいで。子どものときに日本舞踊をやっていたので着物を着たことはあったし、子どもの頃お転婆で男の子とプラスチックの棒みたいなものを振り回して遊んでいて好きだったんですよ。

でも、そういうお遊びのものと違って立ち回りは型があるからすごく難しくて、はじめは全然できなかったので、自分の撮影が終わっても撮影所で里見浩太朗さんとか、お上手な先輩の皆さんの立ち回りやお芝居をずっと見ていましたね。見るものすべてが新鮮で楽しくて」

-プロポーションの良さ、脚線美が際立っていました-

「隠密の変装として、一心太助で魚屋さんの格好をしていたじゃないですか。生足でやっていたんですけど、20歳くらいのときは全然寒くなくて飛び回っていたの。

ところが、年齢を重ねて23とか24になってくると、だんだん寒くなってきちゃって、『足が映らないときは何か羽織っていいですか?』って聞いて毛布を巻いていましたね(笑)」

-時代劇の所作とか色々難しかったでしょうね-

「だから私は最初が『大江戸捜査網』で良かったなあって思う。私は『大江戸捜査網』を4年近くやらせていただいたので、毎週撮影に行って現場で勉強ができたのよね。

今の若い人はかわいそうだなあって思う。今はそんなに長いスタンスでやるドラマがないじゃないですか。じっくり学べるほど長く続く作品がほとんどないですからね。私は映画学校に行ったわけじゃないし、スクールで勉強したわけでもなく、お芝居も現場で覚えたわけだから、そういう意味で環境に恵まれていたと思う。

それと若いときに時代劇をやらせていただいたことで、後にテレ東で『女無宿人 半身のお紺』に主演したときに、『大江戸捜査網』で学んだ立ち回りが役に立ったんですよね。所作も。やっぱり着慣れないと着物はどうしようもないんですよ。だから、本当に着物にからだをなじませるということが大事なんです」

 

◆『極道の妻たち』で岩下志麻さんの妹役に

『大江戸捜査網』のレギュラーのほかにもドラマや映画に出演していたかたせさんだが、自分で「女優です」とはまだ言えなかったという。

「現代物のドラマとかいろいろ出演させていただいていましたけど、女優というよりは、モデルさんがちょっとお芝居をやっているタレントさんという感じでしたね。かたせ梨乃は結構知られるようになったけど、代表作もなくて、自分で女優って言いにくい感じだった。

私の中では、岩下志麻さんのような銀幕の人が女優さんというイメージがあったんですよね。だから初めて『女優です』って言えるようになったのは、やっぱり『極道の妻たち』の1本目に出たあとですね。それまではなんとなく、よくわからない状態でやっていたという感じかな」

映画『極道の妻たち』シリーズは、家田荘子さんが1年で28人もの“極妻”(極道の妻)に取材したというルポルタージュを原作に、ヤクザを夫にもつ女性たちの熱き戦いを描いた異色のヤクザ映画シリーズとして話題に。

第1作目の『極道の妻たち』でかたせさんは、服役中の夫に代わって広域暴力団・粟津組を守っている妻・環(岩下志麻)の妹・真琴役。敵対するヤクザ・杉田(世良公則)を愛したことで環と敵味方に分かれてしまうことに。

-『極道の妻たち』は鮮烈でした-

「自分で言うのはおかしいけど、大抜てきだったと思いますよ。よく任せてくれたなあと思って。岩下志麻さんの相手役じゃないですか。『えーっ!こんなに大きな役を私がやらせていただいていいのかな?』って思いました。

五社さんの作品は何本か拝見させていただいたんだけど、本当に私がやっていいのかということを、京都で脚本を直したり、いろいろ準備をされていた五社さんのところに確かめに行きましたよ。クランクインする前に。

私はやりたい気持ちはありましたが、もしかしたらお会いしたら『君じゃダメだ』って言われるかもしれないし。お話をいただいたのは東映のほうからだったんだけど、監督が気に入らなかったらダメということもあるわけですよ。だから京都に五社さんに会いに伺っていろいろ話をさせていただいて」

-本当にインパクトがあって、岩下志麻さんとかたせさん以外、考えられないという感じでした-

「志麻さんが上から目線の方じゃないんですよ。大先輩で銀幕の大スターなのに、同じ土俵でお芝居をしてくださるんです。私ができなくて何回かテストになっても、嫌な顔一つせずに何回でもやってくださったんですよね。

五社さんが『志麻ちゃん、ごめんね。梨乃ちゃんできないから、もうちょっとやらせてくれる?』って言っても『はい』ってずっと付き合ってテストをやってくださって」

-最初五社監督はどうでした?-

「1本目の『極妻』のときは、私は無我夢中でした。何から何まで監督が『こういうふうにやれ』って実際にお芝居をいろいろやって教えてくださって、その通りに私がやるという状態で。本当に学校に行っているような感じでしたね」

 

◆壮絶な取っ組み合いのシーンで着物も洋服も破れて…

-岩下さんとの姉妹ゲンカ、取っ組み合いのシーンもすごかったですね-

「あのシーンは本当に大変でした。でも、五社さんは全部きちんと安全をチェックしていらして、本気でやるんだけどあくまでも芝居で、本当にケンカしちゃダメだからということで。

いろんなことに気をつけながら、事故が起こらないように、本気でケンカしているように見えるような芝居をしなきゃいけない。本当にやったらわけがわからなくなってぐちゃぐちゃになるし、様も美しくないですからね。

五社さんの世界って様式美があるじゃないですか。独特の総天然色のような色合いで。五社ワールドというのは、本番は何回もやらない。1回だけだから、テストはすごく念入りに事故が起こらないように、1回で撮れるようにって、何回もテストをやるんですよ。

だから大体午前中はテストなんです。それで午後から一発で回そうかって。でも、あのケンカのシーンは怖かった。クローゼットの中でも取っ組み合うんだけど、ドアに挟まれそうですごく怖かったですね」

-大丈夫だったのですか?-

「大丈夫でした。無我夢中でやっているから、あちこちぶつけて青タンができるというのはあるけど、どこもケガしないで。私のほうは洋服だからいいけど、志麻さんは着物だったから大変だったと思う」

-取っ組み合いをはじめて、早々に岩下さんの着物が破れましたね-

「そう。あれも五社さんが、『梨乃ちゃん、志麻さんの着物破いて』って言ったんです。『えっ?怒られませんか?』って聞いたら『いいんだよ、姉妹ゲンカなんだから。破いちゃえ、破いちゃえ』って(笑)」

-あのシーンの撮影が終わった後は、もうヘトヘトだったのでは?-

「ヘトヘトでした。午前中からずっとテストテストで、午後から回して。私も洋服が破れているし、志麻さんも着物が破れているからやり直しができないから興奮しましたね」

-完成した作品をご覧になったときはいかがでした?-

「京都太秦撮影所って歴史のある場所で、やっぱりスタッフさんも職人さんで、とても厳しいんですよね。

それで、はじめは『どこから来たかわからないような子が志麻さんの妹の役をやるなんて、そんなの100年早いんだよ』って言われていたんですよ、本当に。

でも、何シーンか撮影すると、試写室でそれを観るラッシュというのをやるんだけど、何回かラッシュをやっていくうちに、『おっ、なかなかやるな』という感じになってきたのかな。スタッフもだんだん応援してくれるようになってきて。最後にはみんな一丸となって、『頑張れ、頑張れ、あとひと息だぞ』みたいな感じで。それでやっと完成」

-世良公則さんが、かたせさんの豊満な裸体に抱かれて死ぬシーンも話題になりました-

「あのシーンは、台本では車の中で撃たれることになっていたんですね。でも、五社さんが、『天下を取ろうとした、あれだけの男がそんな隙があるわけがない。やっぱり隙があるのは、大好きな女性と一緒にいるときに極道としての隙が出るんじゃないか』ということで、ああいうシーンに変わったんですよ」

-悲壮感も漂いましたよね。久しぶりに惚れた女房と会って肌を合わせているときに撃たれて命を落とすというのは-

「そうなんですよ。それで撃った(清水)宏次朗くんは、結局志麻さんの配下の人間だから、今度は私の側の竹内力さんが3年ぶりに出所したばかりの志麻さんの夫を撃つ。

姉妹のケンカが本当にお互いの愛する人を殺すことになるという壮絶なことになってしまう。家田荘子さんが書かれたオリジナルのルポルタージュのエッセンスを一番生かした作品でしたね」

かたせさんは“極妻”シリーズに欠かせない存在となり、シリーズ9作品に出演。さらに『吉原炎上』、『肉体の門』など話題作に次々と出演することに。次回はその撮影エピソードも紹介。(津島令子)

ヘアメイク:山岸直樹(Rouxda’)

©2022「BAD CITY」製作委員会

※映画『BAD CITY』
2023年1月20日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開
配給:渋谷プロダクション
監督:園村健介
出演:小沢仁志 坂ノ上茜 勝矢 三元雅芸 山口祥行 本宮泰風 波岡一喜 TAK∴ 壇蜜 加藤雅也 かたせ梨乃 リリー・フランキー

OZAWA名義で製作総指揮・脚本も担当した小沢仁志還暦記念作品。小沢は100人以上にのぼる敵を相手に、CGなし、スタントなしのガチンコアクションに挑戦。「犯罪都市」開港市に縄張りをもつ桜田組の組長が、韓国マフィア・金数義(山口祥行)に殺害された。金と裏でつながっている巨大財閥の五条会長(リリー・フランキー)を告発するため、検察庁検事長の平山健司(加藤雅也)は特捜班を結成。そのメンバーに、ある事件を起こした容疑で拘置所に勾留されている元強行犯警部・虎田誠(小沢仁志)を期限つきで復活させることに…。

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