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中村ゆり、シングルマザーを演じて話題になった“短編映画のようなCM”。見た人からは嬉しい報告「みんな涙を流しているの」

映画『パッチギ!LOVE&PEACE』(井筒和幸監督)のヒロイン役で注目を集め、多くのテレビ、映画、舞台、CMに出演してきた中村ゆりさん。

2019年には、日本生命のCM「笑顔が大好き篇」で仕事と子育てに頑張るお母さんを演じ、透明感溢れる美貌と演技力が話題になり、「第58回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」で入賞。

2020年には『今夜はコの字で』(BSテレ東)でドラマ初主演を果たし、2022年にはシーズン2も放送。『クロサギ』(TBS系)での流暢な中国語を操る謎めいた美女役も記憶に新しい。現在、映画『嘘八百 なにわ夢の陣』(武正晴監督)が全国公開中。

 

◆薄幸なイメージの役が多くて

『パッチギ!LOVE&PEACE』が公開されるまではハンバーガーカフェでアルバイトをしていたという中村さんだが、公開後はテレビ、映画に次々と出演することに。

「自分の体感としては地道な感じはしますけど、結構忙しくなりましたね。当時はアーティストの事務所で、私が初めて女優になった子だったんです。

だから、事務所も結構手探りの状態で、チャンスがあるならばチャレンジさせようという感じだったので、ものすごい数の仕事をしていました」

-連続テレビ小説にも『おひさま』、『梅ちゃん先生』、『花子とアン』、『わろてんか』、『エール』の5作品に出演されています。薄幸の役のイメージがありますね-

「そうなんですよ。薄幸のイメージが強いみたいで、朝ドラは、ほぼ幸薄い役なんです(笑)」

-『エール』もとても印象的でした。コロナで撮影のスケジュールも大幅に変更になって大変だったと思います。亡くなった志村けんさんの撮影の合間に撮られたという、とてもいい笑顔が劇中で使われていて胸が熱くなりました-

「監督が『となりのシムラ』(NHK)を撮っていらっしゃる監督だからこそ、志村さんも出てくださったみたいで、監督も深いお付き合いがあるなかでの悲しいことでしたから、すごい思い入れがあったと思います」

-感染拡大防止の自粛期間中はどのように過ごされていたのですか-

「世の中が一斉に自粛ということになり、1カ月くらい何にも仕事を抱えなくていい時間だったので、逆にリラックスして楽しんでいましたね。

普段そういう時間はあまり取れないので、ミシンにハマっていました。ミシンでマスクとかポーチとか、いろんなものを作って、頼まれてないのに友だちに渡したり(笑)。ああいう無心になれる時間が結構私は豊かに感じられて好きなんです」

-不安になったりすることは?-

「ありがたいことに、ちゃんとその後の仕事が決まっていた状態だったので、そんなに不安にはならなかったけど、演劇(舞台)の方々は舞台が飛んだりして大変な思いをされているのは心配でした」

-コロナの前、2018年くらいから、とくにすごい勢いでお仕事をされているイメージがあります。映画『影に抱かれて眠れ』(和泉聖治監督)の余命宣告を受けた外科医役も印象的でした-

「あれも薄幸の役でしたけど、男性の願望みたいな女性ですよね(笑)」

-加藤雅也さん演じる主人公は罪な男ですよね。愛人には心は与えないけど肉体は与え、中村さん演じるヒロインには純愛、心はすべて与えるが肉体的には結ばれない-

「どちらにも優しいようで残酷ですね(笑)」

-あの作品の中村さんが好きだという男性が周りにも結構多かったです-

「本当ですか(笑)。あれは男性が好きな女性の役ですからね。でも、ハードボイルドの世界観だから、男性が好きな女性でいいなと思いました。ただ、敬礼するシーンだけは照れ臭かったです(笑)」

-女性の敬礼シーンが好きな監督は多いですよね。中村さんは、ハードボイルドな世界に咲く一輪の美しい花という感じで-

「ありがとうございます。ハードボイルドでも美しい映画にはなりましたよね。加藤雅也さんも主人公のキャラにピッタシだったし、監督も2度目だったんですけど、すごくいい雰囲気で温かい現場でした」

 

◆完成度が高い短編映画のようなCMが話題に

2019年には、小学校低学年の息子を抱えて仕事と子育てを頑張るシングルマザーが病気になり、息子のために病気と戦う姿を描いたCMが話題に。

-頑張るお母さん、とてもすてきでした-

「ありがとうございます。相性が良かったという言い方は変かもしれないですけど、私自身母性も出てきている年齢だし、自然と気持ちのリンクができる設定だったんです。

あの子役(潤浩)ちゃんも本当に可愛くて、すごい子どもらしい子どもだったんですね。自然体で、道端に虫がいると『あっ、虫』って行っちゃうような子で(笑)。

私にすごくなついてくれたし、CMとはいえ、本当にいいお芝居をやり合えたという感覚があって、それが90秒も流してくださる枠で、贅沢に流してくださってうれしかったです。

やっぱりとても共感の多いCMだったみたいで、会う人、会う人、みんなが『あのCMが大好き』って言ってくださるから、そういう作品に出られてすごいうれしかったですね」

-あそこまで物語として完成されているCMは珍しいですよね。あのCMが流れると手を止めて見ていました-

「ありがとうございます。私はあのCMをやらせていただく前から、たまたま同社の生命保険に入っていたんですね。

それで、私の地域担当の女性社員さんが来たときに『中村さんですよね?うちの会社の朝礼のときに新しいCMを流すんですけど、シングルマザーの女性たちが、みんな涙を流しているの』って聞いたときに、すごくうれしいなあって心から思いました」

 

◆念願叶って“素”の自分に近い楽しくお酒を飲む仕事が…

2020年、中村さんは、『今夜はコの字で』(BSテレ東)で連続ドラマ初主演(浅香航大さんとW主演)を果たす。

会社の中でうまくやれない後輩男子(浅香航大)をコの字のカウンターがある大衆居酒屋に連れ出し、昔ながらの居酒屋文化に触れさせながら元気づけていくフードコーディネーターのケイコ先輩を演じた。

毎回、実際にあるコの字の居酒屋が登場し、おいしそうな料理とお酒も見どころに。2022年にはシーズン2も放送された。

-毎回、ものすごくおいしそうにお酒を飲んでおつまみを召し上がっていましたね-

「そういう仕事がしたいとずっと言っていたんですね。『楽しくお酒を飲んだりおいしいものを食べられる仕事が来ないかな』って言っていたら『来たー』みたいな感じだったので、『言霊(ことだま)だ』って思いました。

監督やスタッフさんも前にお仕事をしたことがある方たちで、一緒にお酒を飲んだりしていたので、私の性格を知っているから、結構素の私を活かしてくださっているという感じがすごくあって。本当にご褒美(ほうび)みたいな仕事だなあって思いました」

-撮影のときにお酒は実際に飲んでいるのですか?-

「あれは自由で、自己判断で飲んでいいんですね。浅香くんもすごい飲む子だし、シーズン1のときには『楽しく飲もう!』みたいな感じで。

でも、そうは言っても、撮影は朝8時から始まるんですね。その時間から飲んじゃうとお昼過ぎくらいにはお酒が回っちゃって、セリフもわけがわからなくなってきちゃうというので、私は1のときに反省をして、途中でペース配分を考えるようになりました。

ただ、日本酒とかを飲むシーンで水にしたりすると、寄り(アップ)を撮るときに『やっぱり顔が違うなあ』ってなって。水だとお酒がからだを突き抜ける感じが出ないんですよね。

なので、私は寄りとか重要なときだけ本物を飲んでいます。でも、他の飲める若いキャストの子はずっと飲んでいましたよ」

-朝から飲んで夜の撮影まで保っていられるのですか-

「保っているんですよ。でも、酔っていますけどね(笑)。『酔っているなあ』とは思うけど、ちゃんとセリフも言えるし、すごいなあと思って。私は2では必要なところしか飲んでないです」

-見ていて楽しいですよね。お酒が飲みたくなります-

「ありがとうございます。撮影もめちゃめちゃ楽しいです。夜あれを見ると『お腹(なか)空いたー』って思っちゃう(笑)」

-コロナ禍で撮影が大変だったのでは?-

「1の撮影はコロナ前だったんです。でも、2のときもひとりも感染者を出さずに撮影を終えられたので良かったです」

主演ドラマも経験し、演技力と美貌を兼ね備えた女優として広く認知された中村さんは、映画『愛のまなざしを』(万田邦敏監督)、『SUPER RICH』(フジテレビ系)、『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系)、映画『母性』(廣木隆一監督)、映画『窓辺にて』(今泉力哉監督)など立て続けに話題作に出演することに。

次回後編では、向上心に火をつけられたという衝撃のサスペンスドラマ『ただ離婚してないだけ』の撮影エピソード、公開中の映画『嘘八百 なにわ夢の陣』の撮影裏話なども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:藤田響子
スタイリスト:道券芳恵

©2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

※映画『嘘八百 なにわ夢の陣』
公開中
配給:ギャガ
監督:武正晴
出演:中井貴一 佐々木蔵之介 安田章大 中村ゆり 友近 森川葵/笹野高史

目利き古美術商・小池則夫(中井貴一)と腕の立つ陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)のはずが、くすぶり続ける“骨董コンビ”の活躍を描く第3弾。太閤秀吉の縁起モノ「秀吉七品」の中で、唯一所在不明の幻のお宝「鳳凰」。一攫千金のお宝を巡り、“TAIKOH”と名乗るカリスマ波動アーティスト(安田章大)やその財団を仕切る謎の美女(中村ゆり)も絡み合う騙し合いが…。