渡部秀、誰よりも強かった『仮面ライダー』出演への思い。1年間ほぼ休みなしでも「つらいことが一個もなかった」
2008年、第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞し、芸能界デビューした渡部秀さん。
2010年に『仮面ライダーオーズ/OOO』(テレビ朝日系)で主人公・火野映司/仮面ライダーオーズ役を演じ、同作で映画初主演も果たした。180cmの長身に端正なルックスが注目を集め、2017年から『科捜研の女』(テレビ朝日系)に橋口呂太役で出演。連続テレビ小説『純と愛』(NHK)、映画『おみおくり』(伊藤秀裕監督)、舞台『罠』など多くのテレビ、映画、舞台に出演。
2023年1月13日(金)に公開される映画『ひみつのなっちゃん。』(田中和次朗監督)では、ドラァグクイーン役に挑戦した渡部秀さんにインタビュー。
◆ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募
秋田県で生まれ育った渡部さんは、小学生の頃からテレビや映画の中の人になりたいと思っていたという。
「本格的に芸能界を目指すようになったのは、中学とか高校くらいです。それで、高校2年生のときに、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに初めて応募しました」
-準グランプリを受賞されたときはいかがでした?-
「めっちゃ悔しかったですよ、グランプリを目指していたので。ただ、『ここからはもう絶対に負けない』という気持ちでいました」
-だんだん勝ち抜いてくると舞台裏というのはライバル心バチバチなのですか?-
「いいえ、結構みんな仲が良くて、バチバチな感じは一切なかったですね、僕は。周りもみんなそうだったと思います。
僕もそうですけど、地方から来ている子も結構いっぱいいて、みんな中学生とか高校生の子どもたちなので、修学旅行みたいな感じでした。とくに僕なんかはそういうマインドで、『わーっ、都会ってすごい。いろんなイケメンが集まってきた。わーい、わーい』みたいな感じでしたね(笑)」
-私(筆者)も秋田ですが、初めて東京に来たときは驚きました-
「そうですよね。本当にすごいなあって思いました。見るものがすべて見たことがない造形美というか、空気もそうですけど、建物の雰囲気とか、人の雰囲気…全部が初めて見る光景だったので、楽しくてしょうがなかったです」
-準グランプリに決まって、すぐに事務所に所属することに?-
「そうです。ジュノンのコンテストにいろんな事務所の方々がいらっしゃっていて、そこでスカウトみたいな感じで。なので、わからないながらも、いろいろネットでどういう事務所なのかということを調べて、いいなと思ったところに入ったという感じです」
-それが高校2年生のときで、高校を卒業してから上京されたのですか-
「そうです。でも、その前に初めて深夜の連ドラが決まって、冬休みに撮影で出てきたり、いろんな芝居を観なさいと言われたので、遊び半分で東京に来たりはしていました」
-高校在学中にデビューされて、地元の皆さんの反応は?-
「めちゃめちゃいじられました。よりによって恋愛ドラマだったので、『何をやってるんだ?』みたいな感じで、すごいいじられました(笑)」
-高校時代はとくにそういうことに敏感ですからね-
「田舎だし、多感な年頃ですからね。当時はAKB48がすごい人気だったので、『AKBに会った?AKBに会った?サインをもらってきてよ』ってすごい言われて(笑)。もちろんAKB48には会ったこともないし、会ったところでそんなこと言えないですけどね」
-事務所が決まった時点ですぐに上京したいという思いはありませんでした?-
「やっぱり周りがどんどん上京したり、グランプリを獲った子が同い年で東京生まれだったので、ライバル心もあったし、焦る気持ちはありました。
1年自分が遅れて出る頃には忘れられているんじゃないかとか、いろんなことを考えて焦ったりはしたんですけど、事務所的には『焦る必要はない。せっかくいいところにいるんだから、ちゃんと地元で高校を卒業してから上京しなさい』ということで。それで、上京する直前に受けたオーディションが仮面ライダーだったんです」
※渡部秀プロフィル
1991年10月26日生まれ。秋田県出身。2008年、第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリ受賞。2010年、連続テレビドラマデビュー。2010年、『仮面ライダーオーズ/OOO』で主人公・火野映司/仮面ライダーオーズ役に。『鼠、江戸を疾る』(NHK)、『GIVER 復讐の贈与者』(テレビ東京系)、映画『BRAVE STORM ブレイブストーム』(岡部淳也監督)、舞台『ボクの穴、彼の穴。』など、多くのテレビ、映画、舞台に出演。
◆オーディションで念願だった仮面ライダーに
小さい頃から仮面ライダーになりたかったという渡部さん。2010年に念願叶って平成ライダーシリーズ第12作『仮面ライダーオーズ/OOO』の主人公・火野映司/仮面ライダーオーズを演じることに。
-「仮面ライダーになるために役者になりました」とおっしゃっていたそうですね-
「間違いではないですけど、いろんなものになりたかったんですよね。仮面ライダーも大好きだったので『やりたいです』って言ってオーディションを受けさせてもらいました」
-自信はありました?-
「自信というか、誰よりも思いが強いという自負はありました」
-地元の皆さんの反応はいかがでした?-
「記者発表までは言えなかったので、親にも言えなかったんですよ。東京に出てきてから発表だったんですけど、発表直前に親に言ったらびっくりしていました。地元の同級生とかは記者発表で初めて知ったので、連絡がバンバンきました」
-仮面ライダーは1年間という長丁場ですが、撮影のスケジュールはどんなペースだったのですか?-
「ほとんど毎日でした。テレビの撮影と同時に映画の撮影も入るので、午前中はテレビの撮影で、午後は映画の撮影という感じで1年間、ほぼ休みなしでした。撮影のほかに取材デー、ゲームの収録、イベントなど、いろんなことをやらせていただいたんですけど、撮影がない日に全部そういうことが入ってくるので。
僕だけ他のキャストよりちょっと期間が長かったんですよね。前のライダーに先行登場したり、最終話が終わった後も、次のシリーズとのコラボ映画があったりしたので。だから延べ1年半ぐらいはオーズに携わっていましたね、テレビ放送の前後含めて」
-かなりハードなスケジュールだったと思いますが、順応していけました?-
「順応していたほうだと思います。あまり考える間もなく終わったというのが正直なところです。とにかく楽しすぎて、つらいことが一個もなかったんですよ。それで、気がついたらもう終わっていたという感じが強かったです。
めちゃめちゃ忙しくてプライベートの時間もなかったですけど、それでもよくて、不満はありませんでした。とにかく駆け抜けていたという感じでしたね」
-放送が始まって反響はいかがでした?-
「街で見かけたり、イベントに行ったりすると僕の名前を呼んでくれたりしてうれしかったです」
-ヒーローを演じるにあたって、私生活の制限とかはあったのですか。クリーンなイメージじゃないといけないとか-
「とくにはなかったです。僕は高校卒業と同時に仮面ライダーになったので、18歳ってまだ子どもじゃないですか。だから、クリーンも何も、子どものままで大人ぶる暇もなかったし、悪いことをした経験もなかったから、全然気にすることもなかったですね、良いのか悪いのか(笑)。めちゃくちゃピュアだったと思います」
2022年3月には、『仮面ライダーオーズ/OOO』放送10周年を記念して、オリジナルキャスト&スタッフが再結集したVシネクスト『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』が公開に。撮影にあたって渡部さんは、10年前の容貌に戻したという。
「10年経って、成長して変化した映司を見せるという方法もあったと思いますが、放送当時観てくれていた人たちに『懐かしい』って思ってもらえるように、髪型、芝居、体型も完全に昔と同じにしました。どこまでできているかは置いておいて、僕の中では完璧を求めました。
でも、やっぱり顔つきは大人になっちゃっていました。どうしてもやっぱりそこは10代の頃の張りはなくなりますよね(笑)。初々しい感じとか、目付きとかは、昔とは違うなあって思いました(笑)」
仮面ライダーとして広く知られることになった渡部さんは、『純と愛』、『科捜研の女』シリーズ、映画『シュウカツ』シリーズ(千葉誠治監督)など話題作に出演することに。
次回はその撮影エピソード&裏話も紹介。(津島令子)
※映画『ひみつのなっちゃん。』
2023年1月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2023年1月6日(金)より愛知・岐阜先行ロードショー
配給:ラビットハウス 丸壱動画
脚本・監督:田中和次朗
出演:滝藤賢一 渡部秀 前野朋哉 カンニング竹山 生稲晃子 菅原大吉 本田博太郎 松原智恵子
ある夏の日、元ドラァグクイーンのなっちゃんが急死する。バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)、3人のドラァグクイーンは、なっちゃんが自身のセクシャリティーを家族に隠していたことを知り、遺族に知られないように私物を隠しに向かうが、なっちゃんの母親(松原智恵子)と鉢合わせしてしまい…。