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俳優・細田善彦、役作りでマッチングアプリに登録。マッチした相手の正体は…「ものすごくショックでした」

主演映画『ピア~まちをつなぐもの~』(綾部真弥監督)で在宅医療に取り組む若手医師、主演映画『武蔵-むさし-』(三上康雄監督)では筋トレと毎日1キロ鶏肉を食し17キロ増量して二刀流で知られる剣豪・武蔵に全身全霊で挑んだ細田善彦さん。

善人から悪役まで幅広く演じ分け、役柄によっては体型まで変えて真摯に取り組む若手実力派俳優として高く評価されている。

 

◆大林宣彦監督と出会った瞬間から大林組の一員に

細田さんは、『武蔵-むさし-』の撮影が終わった直後、大林宣彦監督が20年ぶりに故郷・尾道で撮影し、2020年に公開された映画『海辺の映画館-キネマの玉手箱』に、スクリーンの世界にタイムリープする3人の若者の一人、団茂役で出演。

映画を観ていると劇場に稲妻が走り、スクリーンの世界に押し込まれた3人は、戊辰戦争、日中戦争、第二次世界大戦末期の沖縄戦、原爆を投下された前夜の広島と上映作品の劇中で描かれる戦争をめぐることに…という展開。

-『海辺の映画館-キネマの玉手箱』はオーディションですか-

「はい。本来は何年か前に撮影しようとしていたものが、撮影時期が遅れて、当初予定していたメイン3人の俳優のスケジュールが合わなくなったので、オーディションをすることになったそうです。

僕のプロフィールを見た監督が『会いたい』とおっしゃってくださったそうで、会いにいかせていただきました。

『すごいなあ』と思ったのが、監督の事務所に入って、そこで『細田です』と言ったら『この夏映画を一緒に撮ろうか』って、本当に第一声で言ってくださって。

その初めてお会いした日は、『3人男の子が出る話だけど、3人のうち誰にするかはちょっと悩ませて。3人のうちの誰かを一緒にやろう』って。

それで『尾道で撮影するから、尾道はこういうところだよ』とか、『映画はこうでさー』って、そこからもう大林組がはじまったという感じはありました」

-あのときも『武蔵-むさし-』と同じような体型でしたね-

「あれは大林監督が衣装合わせのときに、『男3人の話なので、全員違う体型のほうがおもしろいだろう』みたいなことをおっしゃって。

武蔵の体型の名残りが僕にはあって、みんなで上半身裸のシーンとか、フンドシのシーンが結構多かったので、衣装合わせのときにそれを見た監督が、それぞれに『もっと鍛えて』、『もうちょっと食べて』、『そのままで』って(笑)。

-細田さんの最初の登場シーンは、雨の中派手な花柄のスーツで足元はなぜか下駄(げた)、強烈でした-

「すごかったです。あの登場シーンはすてきに作っていただいたなあって思っています。本当に感謝している登場シーンです」

-あの衣装は最初から決まっていたのですか-

「はい。もう決まっていて、着たときにすごい衣装だなって思っていたんですけど、画面で観たら、すごくいいなあって思いました。画面の暗さとの相乗効果ですばらしい衣装を着させていただいたなあと思っています」

-あの映画では劇中で武蔵と戦うシーンがあるんですよね。武蔵を演じた細田さんが武蔵と戦っていて驚きました-

「そうなんですよ。僕もあのシーンはちょっとおもしろいなあって思いました(笑)」

-大林組は、実際にお仕事をしてみていかがでした?-

「これだけやりたいことが明確に決まっていらっしゃる監督ってすばらしいなあって思いました。

監督自身が次の世代に戦争の話を残したいという思いもあったと思うんですけど、戦争を経験していらっしゃる監督さんには今後出会えなかったりするじゃないですか。

そういう意味でもたくさん戦争の話を撮影の合間に教えていただいたりもしていたので、ものすごく勉強になりました」

-大林監督は握手してくださるんですよね-

「そうです。朝監督に『おはようございます』って言うと握手して、帰るときも『ありがとうございます。お疲れさまでした』って言うと、『今日のあのシーン大変だったよね。今日もありがとうね』って、握手してくださって終わるんです。

こんなに『ありがとう』と言われたことはないんじゃないかというくらい、『ありがとう』と言っていただきました」

-大林監督の最後の作品となりました。お亡くなりになったと聞いたときは?-

「コロナの影響で映画の公開が遅れたんですけど、当初公開する予定だった日に亡くなられたということを聞いて、監督のこの映画に対する強い思いを感じました」

-とくに印象に残っていることは?-

「監督の映画に対する思い、観た人を楽しませようとする思いはすてきだなあって。

映画に対してあれだけ愛情を注ぎ続けてこられたというのはすごいです。ご一緒できたことは、僕にとってかけがえのない財産です」

©2022BBB

※映画『人でなしの恋』
2022年6月25日(土)より池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開
配給:BBB
監督:井上博貴
出演:兎丸愛美 細田善彦 渋江譲二 上野なつひ 織田美織

◆江戸川乱歩原作の映画でヒロインの相手役に

細田さんは、2022年6月25日(土)に公開される映画『人でなしの恋』(井上博貴監督)にヒロインのミステリアスな相手役で出演。

ヒロインの京子(兎丸愛美)は、結婚寸前だった恋人に裏切られて傷心の日々を送っていたが、マッチングアプリで門野(細田善彦)と出会い、お互いに惹かれ合って結婚する。門野との生活に幸せを感じる京子だったが、夫が自分以外の誰かを愛しているのではと疑惑の念に駆られ、探偵に調査を依頼。そして衝撃の事実が明らかに…という内容。

「江戸川乱歩原案のものを井上監督が現代にうまく置き換えてくださった魅力的な脚本だなという第一印象でした。とても今の時代にマッチしているなあと」

-結婚まで考えた相手に裏切られた過去があるヒロインが、マッチングアプリで出会ったのが、町を歩けば女性たちが振り返るような長身でイケメン。不安になりますよね-

「撮影中、笑っちゃったのが、監督が周りの女性に対して、僕のことを見て振り返るアクションを演出されていたんですけど、本当にそう見えるかなあって(笑)。

僕が撮影現場で見ているものと、カメラを覗(のぞ)いて見えるものって違うじゃないですか。いい感じに皆さんに振り返っていただきました(笑)」

-細田さん演じる門野が何を抱えているのか、なぜそんなに苦しんでいるのかというのがなかなか明かされず、いろいろなケースを考えてしまいました-

「いろんな見方ができると思うんですよね。色々と想像してもらえたらいいなあという思いでやっていました。

自分が一番大事にしたことは、最初に京子と出会うシーン。あのシーンをとにかく大事にしたいなと思っていました。

兎丸さん演じる京子と出会ってからは、一緒に歩みながら素直に反応していけたらいいなと思ったんですけど、最初の出会いのシーンだけはすごい考えましたね」

-京子と出会って自分も何とか変わろうとしているんだけれど、なかなか変われないジレンマ、やつれていき加減もいい感じでした-

「いい感じでした? ありがとうございます」

-一番苦労したシーンは?-

「あまり言えないですけど、門野が濃く見えるシーンですね。それが撮影初日だったので、きつかったです。一緒に映画を作っているメンバーの皆さんも『はじめまして』の中、あのシーンですから、精神的にきつかったです(笑)」

 

◆役作りのためマッチングアプリに登録。マッチングした相手は…

『人でなしの恋』で細田さん扮する門野は、マッチングアプリを運営しているという設定。そのため、細田さんは初めてマッチングアプリに登録。

-実際にマッチングアプリに登録されたのですか-

「はい。やったことがなかったので、『どういうふうにしてみんな出会うんだろう?』って思って、いろんなアプリに登録しました。

友だちがマッチングアプリで付き合ったりもしていたので、そのカップルと会って話を聞いたりとかしている中で、自分も一回マッチングしたいなと思って、マッチングアプリに登録したらマッチングしたんですよ。

自分は写真を載せてなかったからなのか、なかなかマッチングしなかったんですが、一人だけマッチングしたんですよ。それで、これはもう会いたいと思って(笑)」

-それでお会いしたんですか?-

「それでメッセージのやりとりをしていたのですが、しばらくして『LINEのIDを教えてもらえますか?』って来たんです。

マッチングアプリって登録するのは無料だったりするんですけど、やりとりを本格的にすると、男性側はお金がかかるんですよね。

アプリによっていろいろあるんですけど、『月額4000円とか払ったばかりなのに、何でアプリを通さないでLINEで連絡するんだろう?』って思って、『もうちょっとアプリでやりとりしたいです』って送ったら、相手が退会したんですよ。それで、いろいろネットで調べたら、いわゆる業者さんというやつだったんです」

-サクラですか?-

「いいえ、アプリサイト側が女性を雇って『メッセージのやりとりをしてください』というのがサクラで、業者さんは別のサイトに引っ張るためにやっている人を指す言葉のようです。こういう機会がなかったらマッチングアプリに登録するという一歩が踏み出せなかったからよかったかなと(笑)。

アプリで出会うという、とても現代的な出会い方の感覚を知りたかったので、勉強になりました。それにしても、すごいいい感じでマッチングしたと思ったら、まさかの業者さんだったなんて、ものすごくショックでした(笑)」

-今後はどのように?-

「こればかりは作品や出会いの連続でしかないと思っているので、何かいい出会いがあるといいなあと思っています。良い出会いがあって良い方向に。自分自身じゃ何もできない人間だなと思っているので、良い方向に転がっていけたらいいなと思っています」

現在、6歳の柴犬と暮らしている細田さん。愛犬の散歩と食事、そして自炊もしているという。

-きちんと自炊もされているのですね-

「生きるためですよ(笑)。自炊して犬と散歩して…わりと堅実な生活をしています」

-今一番ホッとするのはどんなときですか-

「ずっと茶道をやっているんですが、最近また熱を上げてやっている感じです。最近“あんこ”が好きになってきて(笑)」

-ご実家が和菓子屋さんですものね-

「はい。『やっぱり抹茶とあんこって合うなあ』っていうのが、最近すごいからだに染み込んでいるというか。何か歳をとってからあんこが好きになりました。

今、兄が継いでいるんですけど、兄が作った柏餅を先日食べさせてもらいました。つぶしあん、こしあん、味噌(みそ)あん…いろんな柏餅をいっぱい並べて、家族で食べ比べをやっていたんですけど、やっぱりそういう時間は良い時間だなって思いました」

仕事に取り組む真摯な姿勢に加え、品の良さも魅力。2020年、細田さんはカンボジア映画にも出演。日本人は細田さん一人だけという状況だったが、知らないところでの映画作りは本当におもしろかったと話す。今後の活躍も楽しみ。(津島令子)

ヘアメイク:石橋遥(ADDICT_CASE)
スタイリスト:カワサキ タカフミ

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