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大谷翔平だけじゃない!大学野球界に現れた“新時代の二刀流”。侍ジャパン・栗山監督も熱視線「本当に可能性ある」

海の向こうで今年も二刀流・大谷翔平が大暴れしている。そして日本にも、新たな二刀流が現れた。

日本体育大学4年生・矢澤宏太。

所属する首都大学リーグの開幕戦で自己最速の150キロをたたき出し、得意とする2種類のスライダーで三振を量産。

打者としても3番に座り、4打数4安打3打点。翌日には4番DHでホームランを含む3打数3安打をマークするなど、2試合で7打数連続安打をやってのけた。

実はこの二刀流大学生、日本代表・侍ジャパンのメンバーにも選ばれていた逸材だという。いったいどんな選手なのか――。

テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、これからの球界を彩る“新時代の二刀流”に迫った。

◆「好きなのは野手なのかもしれないです」

日体大のチーム初練習となった1月11日。二刀流・矢澤は、寒空の雨の中で動きはじめた。

秋には注目されるであろうドラフトも控えている。そこで、今年にかける思いを色紙に書いてもらうと、「ドラフト1位指名」という文字が。

「大学に入る時からドラフト1位で入るのを目標にしていますし、この1年本当に大事だと思うので」(矢澤)

ドラフト1位にこだわるワケがある。

矢澤は神奈川・藤嶺藤沢高校の出身。甲子園とは無縁だったものの、投打ともに評判が高く、プロも注目する選手だった。

しかし、ドラフトでその名が呼ばれることはなかった。

「高校指名漏れして、日本体育大学に入ると決めてからは、もう本当にそこ(ドラフト1位)を常にイメージしてやっています」(矢澤)

大学野球は高校野球よりも投打の役割がより明確になるが、矢澤は才能を買われ、入学時から二刀流に挑戦している。

今やその評価は投手としてだけでなく、野手としてもドラフト1位確実と言われているが、はじめに頭角をあらわしたのは野手としてだった。

豪快な打撃で1年春からリーグ戦に出場。身長は173センチと決して大きくないが、全身のバネでホームランを放つ。さらに、50mを5秒8で走る脚力も持ち合わせており、2年秋には外野手としてリーグのベストナインにも選ばれた。

本人に投手と野手、どちらが好きか聞いてみても…。

好きなのは野手なのかもしれないですね。ピッチャーの割合が多いので、野手の練習はバッティング練習が基本なんですけど、バッティング練習はただ楽しいという感じです」(矢澤)

◆粗削りだった投球も「意識改革」で変化

一方、投手としては1年の秋にリーグ戦初登板を果たすが、こちらは野手に比べると荒削りだった。

指導する元中日の辻孟彦ピッチングコーチによると、最大の課題は大学入学以前から不安定だったコントロールだという。

そこで、辻コーチが指導したのは、1球投げることにしっかり集中すること。そしてフォームをしっかり考えて投げること。

1球1球に集中するのは、ピッチングはもちろん、その準備段階であるキャッチボールから。ただやるのではなく、フォームを考えながら投げる。

すると、「投げること」への意識に変化が起きた。

「登板までの日数によって違ったりするんですけど、フォームの確認だったり、試合前であればコントロールだったり、毎回毎回自分の中で意識するところは違うような感じです。キャッチボールを丁寧にやるというのは自分の中でも意識しています」(矢澤)

どんな時でも考えて投げる習慣が身に付くと、コントロールは改善され、3年春からはチームの絶対的なエースとして君臨するようになった。

そして、意識の変化は技術面だけでなく、肉体面にも大きな影響を及ぼしている。

大学入学後から日課となったウェイトトレーニングで、体重は10キロ以上アップ。比例するようにプレーに力強さが増したという。

ほんの少しの「意識改革」が矢澤の転機となり、投打ともにドラフト1位と言われるまでに進化させた。

最近では大谷翔平と比較されることもあるというが、矢澤は謙虚な姿勢を崩さない。

「本当に自分とレベルが違いすぎるので、ひとりのファンとして見ているような感覚です。自分は自分という感じでやっていきたいなと思います」(矢澤)

◆二刀流を育てた名将・栗山監督も期待

そんな矢澤が2022年2月、一躍脚光を浴びることになる。大学生ながら侍ジャパン・栗山英樹新監督の初陣となる強化試合のメンバーに選出されたのだ。

くしくも新型コロナウイルスの影響で試合は中止となったが、その後も栗山監督は矢澤が出場するオープン戦の視察に訪れ、熱視線を注いでいた。

かつて、前代未聞の二刀流を育てた名将・栗山の目に、矢澤はどう映ったのだろうか?

(大谷とは)違う形、先発と4番ではなくて、守っていていきなり短いイニングを投げたり、違った野球のおもしろさができる選手の可能性があると僕には見えています。プロでも1イニングぐらい抑えられる感じするんですよ。打つ方もホームラン打てるし。プロの世界で早く経験すると、本当に可能性あるかなと思った」(栗山)

野手でスタメン出場し、リリーフで登板する二刀流。このプランが実現していたら、さらに注目されていたことだろう。

◆「投打どちらもやるのが、自分の中では当たり前」

一方、侍ジャパンデビューがお預けとなった矢澤は、ストレートに磨きをかけることをテーマに投げ込んでいた。

より強く、より正確にストレートを操れるようになることは、後のプロ入りを見据えても重要になる。幻に消えた大舞台に未練はなく、気持ちは次の目標へと向かっていた。

「チームとしてリーグ優勝、そしてその先の日本一を目指してやっていきたいと思ってます。個人としては最優秀投手、首位打者を取っていきたいと思っています」(矢澤)

そんな決意を胸に迎えたリーグ開幕戦。矢澤は3番ピッチャーとして出場し、1回の第1打席でいきなり先制タイムリーを放ってみせる。

そしてマウンドで見せつけたのは、磨きをかけたストレート。この試合、自己最速の150キロを2度マークし、5回無失点の被安打1と確かな成長を示した。

さらに打者としても、バットを振ればヒットになる。2日間で怒涛の7打数連続安打。投打に周囲が驚愕する中で、矢澤は平然と語った。

野球をはじめたころから投打どちらもやるのが自分の中では当たり前で、それが自分のスタイルなので、特別な感情とかはなく自分の野球をやっている感じです」(矢澤)

この先、どんな選手になるのだろう? どれほどのプレーを見せてくれるのだろう? 想像すればするほど、二刀流・矢澤宏太から目が離せない。

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜日夜25時25分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)