バドミントン界に現れた新星ペアは“W新米パパ” 日本男子ダブルス史上初の偉業、その前には「よし人生変えようか」
5月8日に開幕した『バドミントン国別対抗戦2022 トマス杯・ユーバー杯』。
4大会ぶりの優勝を目指す日本男子は、ダブルスのエースとして保木卓朗と小林優吾の通称“ホキコバ”ペアが出場する。
2021年12月に行われた「世界バドミントン」で金メダルを獲得し、日本男子ダブルス史上初の偉業を成し遂げた彼ら。
日本バドミントン界の新エースペアへと急成長を遂げたワケに迫る。
◆今年で結成12年目。息ぴったりのペア
一躍日本男子ダブルスのエースペアに上りつめたホキコバペア。
前衛を務める保木がネットプレーで相手を翻弄、ゲームメイクし、後衛の小林が決める。日本一速いといわれる小林のスマッシュを武器にした超攻撃的なバドミントンこそが彼らのプレースタイルだ。
そんな2人の出会いは15年以上前、小学生の頃。
当時はシングルスで対戦する仲だったが、中学3年の時にアジアユース出場のため初めてペアを結成。その後、富岡高校時代にはインターハイも制覇し、卒業後はそろって強豪トナミ運輸に入社した。
ペアとして同じ時を過ごし、今年で12年目。お互いの存在について聞いてみると…。
「今自分が思っていることを察してくれるというか、一緒にいるときに俺がこう思っているんじゃないかと考えて、そこから先に行動してくれている感じがありますね。自分のことを見てくれているんだなと」(小林)
「自分は逆に、2人部屋になるんだったら小林がいいなと思うくらい気楽です。一緒にいても冗談には冗談でしっかり返してくれますし、本当に兄弟みたいな感じですね」(保木)
気心知れた息ぴったりの彼らは、2019年の「世界バドミントン」で台頭する。当時無名だったにも関わらず快進撃を見せ、銀メダルに輝いた。
◆「かっこいいと言われるようなパパになりたい」
そして、2人にはともに“父親”という大きな共通点がある。
2020年2月に保木が入籍すると、その3か月後に小林も結婚。さらに翌年にはそれぞれ第一子に恵まれ、新米パパとしても奮闘している。
バドミントンは海外での連戦が多く、国内での合宿も含めると約4か月もの間自宅を離れることもあるという。そんな過酷なスケジュールの中で支えとなっているのが家族の存在だ。
「ここまで長期遠征で回っていますけど、自分ひとりだけだったらここまでがんばれていないなって常に思うんです。奥さんと子どものためにがんばろうと常に思えるので、自分ひとりより家族がいてくれるのはすごく力になります」(保木)
「今の自分がいるのも子どもができて、この子のためにがんばろうって思えることが一番なので、本当にありがたいですね。子どもがしゃべられるようになったらかっこいいと言われるようなパパになりたいなと思います」(小林)
◆「男子ダブルスが“穴になる”」周囲の厳しい声
そんなホキコバペアだが、2019年の「世界バドミントン」以降は勝てない日々が続いた。
直後の中国オープンから、5大会連続で1回戦敗退。当時の自分たちを2人はこう振り返る。
「一回浮かれちゃいましたね。これで銀メダル獲れるのかって思っちゃいました。練習しなくなったわけではないんですけど、やはりちょっと疎かになっていたのではないかなと思います」(保木)
「自分たちの自力というか、『アタックだけでミスも多い』というのがたぶんバレたというか…。そこを突かれた感がすごかったですね」(小林)
夢舞台のオリンピックは程遠く、先輩たちの姿をただ見つめるしかなかった。
そして東京オリンピック後、園田啓悟、嘉村健士、遠藤大由の3選手が代表を引退。3番手だったホキコバペアが自動的に1番手のペアになる。
しかし、このとき彼らが耳にしたのは厳しい声だった。
「園田・嘉村ペアが辞めて、『次いないね』っていうのが正直聞こえてくるというか…。自分たちもいるんですけど、その時はランキングも15~16位だったので、上位で戦える選手だとはまったく見てもらえなかったです」(小林)
「男子ダブルスが少し“穴になる”という話もニュースとかで見ました。そういったことで『クソっ』となって、小林とも見返してやろうぜっていう話をしていました」(保木)
◆「これ勝って人生変えよう」
エースペアになるために必要なのものとは――。2人は自分たちのプレーを見つめ直した。
「ずっと長所を伸ばすためにアタック力を磨いてきたんですけど、それだけでは勝てないと思って、本格的にレシーブ力、守りの技術を磨こうという気持ちになりました」(小林)
得意だった攻撃に加え、弱点の強化に着手。あえて人数不利な状態で徹底的に打ち込まれ、練習後もひとり残り猛特訓した。
「小林がレシーブを強くなることによって、自分のゲームメイクの幅も広がる。これまでは自分が前に出るだけのプレーだったんですけど、前に行ってもダメだったら一回上げて、レシーブのスタイルからやり直せる。そういった部分で自分の中で余裕ができて、自信をもってプレーすることができています」(保木)
真のエースペアになるために、2人はもがき続けた。
そして2021年10月。ワールドツアーの中で一番グレードの高い「デンマークオープン」の決勝に進出。
相手は地元のデンマークペア。圧倒的アウェーの状況で、2人はこんな会話を交わしていた。
「よし人生変えようか」「これ勝って人生変えよう」
並々ならぬ決意で挑んだこの一戦、結果はストレート勝利。2人は初めてワールドツアー制覇を成し遂げた。
自信をつけた2人はその後もツアー年間王者を決める「ワールドツアーファイナルズ」、世界一を決める「世界バドミントン」を続けて優勝。
連戦の活躍で世界ランキングはオリンピック前の16位から4位にランクアップし、名実ともに日本の新エースとなった。
しかし、彼らの夢はその先にある――。
「世界チャンピオンにはなったんですけど、まだまだ。ランキングを4位以上維持しつつ、最終的にはパリオリンピックに出場して、メダルを獲ることが今本気で考えている夢です」(小林)
「今年東京で『世界バドミントン』があるので、2連覇が直近の目標です。去年『世界バドミントン』を優勝したことでパリオリンピックがさらに近くなったと思うので、もっともっと自分たちを鍛え上げて、優勝だけを狙ってがんばりたいと思います」(保木)
「世界バドミントン」での連覇のために、まずはその前哨戦である「トマス杯」でエースペアらしい活躍を見せてほしい。
※番組情報:『世界バドミントン国別対抗戦2022 トマス杯・ユーバー杯』
◆テレビ朝日地上波(関東地区)
5月11日(水)深夜2:56~
5月12日(木)深夜3:02~
5月13日(金)深夜3:00~
5月14日(土)深夜2:30~
5月15日(日)深夜1:30~
◆CSテレ朝チャンネル2
5月9日(月)午後9:00~ グループリーグ2日目
5月10日(火)午後9:00~ グループリーグ3日目
5月11日(水)午後9:00~ グループリーグ4日目
5月12日(木)午後4:00~ 準々決勝、午後9:00~ 準々決勝
5月13日(金)午後2:00~ 準決勝、午後8:00~ 準決勝
5月14日(土)午後3:00~ ユーバー杯決勝
5月15日(日)午後3:00~ トマス杯決勝