テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
未来をここからプロジェクト
menu

松本若菜、真っ暗なバルコニーで猛練習したアイドルのダンスシーン。しかし蓋を開けると「あんなに頑張ったのに…」

新境地を開拓した映画『愚行録』(石川慶監督)で第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞し、端正な美貌に演技力を兼ね備えた実力派女優として注目を集めた松本若菜さん。

映画『コーヒーが冷めないうちに』(塚原あゆ子監督)、映画『ピンカートンに会いにいく』(坂下雄一郎監督)、映画『大綱引の恋』(佐々部清監督)、『だから殺せなかった』(WOWOW)、『金魚妻』(Netflix)、主演ドラマ『復讐の未亡人』(Paravi)など多くの映画、ドラマに出演し、目覚ましい活躍が続いている。

愛猫・もずくちゃんと

◆頑張ったダンスシーンが大幅カットに?

2018年に公開された映画『コーヒーが冷めないうちに』は、ある席に座ると望み通りの時間に戻れるという不思議な噂(うわさ)がある喫茶店に、噂を聞きつけてやって来た人々に訪れる奇跡を描いた作品。

松本さんはその喫茶店の常連客の平井八絵子(吉田羊)の妹・久美役で出演。実家の旅館を継がずに飛び出して自由に過ごしてきた姉と一緒に旅館をやることを願っていたが、叶(かな)わないまま事故でこの世を去ってしまう。

「吉田羊さんとは以前に『コウノドリ』(TBS系)でご一緒させてもらったのですが、『コーヒーが冷めないうちに』で羊さんの妹役ができると聞いたときは、すごくうれしかったですし、とてもすてきな方なので共演できたことは本当に幸せでした」

-羊さん演じるお姉さんとは性格も反対でという設定でしたね-

「はい。塚原監督が描く世界観というのがとてもすてきだったので、本当に楽しかったです」

-亡くなった人に伝えたいことがある人はたくさんいると思うので、ああいうことができたらなあと思いました-

「本当にそうですよね。過去は変えられなくても、ああいうお店があったらいいなあって思います」

2018年には、再起をかけた大勝負に挑むアラフォー女性たちを描いた映画『ピンカートンに会いにいく』も公開された。松本さんは、20年前にブレイクを目前にして突如解散してしまった5人組アイドル「ピンカートン」で1番人気だった中川葵役。

-20年ぶりに「ピンカートン」再結成ということで歌とダンスも-

「懐かしいです。アイドルやりました。ダンスが本当に大変でした(笑)」

-衣装も合っていましたし、ダンスも決まっていました-

「本当ですか? みんなで大爆笑でした(笑)。それこそしょっちゅう連絡し合うわけではないですけど、5人(内田慈・山田真歩・水野小論・岩野未知)のチームワークもすごく良かったですし、あの5人じゃないと絶対に成り立たなかったなあと思っています。

めちゃくちゃ頑張ってダンスの練習をしたのに、蓋を開けてみたら若い頃の5人のダンスシーンのほうが多かったんです。だから、5人で監督に『あんなに頑張ったのに、何で私たちのダンスシーンはほぼカットなんですか』ってブーブー言っていました(笑)」

-歌って踊るのはかなり大変でした?-

「めちゃくちゃ大変でした。(内田)慈さんはジャズダンスをされていたんですけど、他のキャストさんと私は日舞の経験しかなくて、テンポとか動きがまったく違うので本当に大変でした。あの撮影当時はバルコニーだけがすごく広い住居に引っ越したばかりで、何に使おうかなって思っていたら、最初に使ったのがそのダンスレッスンでした(笑)。

周りに見られると恥ずかしいので、夜真っ暗になってから自主練習していました。私は、何度も練習しないと覚えられないくらい運動音痴なので、とにかくからだに叩(たた)き込みました」

『愚行録』以降、役柄の幅が広がったという松本さん。

2020年に公開された映画『大綱引の恋』では、バツイチで一人娘がいる陸上自衛隊三等陸尉・中園典子(愛称・テンコ)役。2020年3月に急逝した佐々部清監督の遺作となったこの作品は、鹿児島県薩摩川内市に420年続く勇壮な“川内大綱引”に青春をかける青年・有馬武志(三浦貴大)と韓国人の女性研修医(知英)との恋と二人を取り巻く家族模様を描いたもの。

-(自衛隊の)迷彩服姿が凛々(りり)しかったです-

「佐々部監督が『若菜は普段からチャキチャキしているから、こういう役が絶対合っているんだよ』って言ってくださったのが、あの作品のテンコなんです」

-あれほど男まさりの役は初めてだったのでは?-

「初めてでした。それこそ小さい頃から“川内大綱引”の一番太鼓になりたくて仕方がなかったのに、どうしても性別というのがあるからなれない。それで自衛官という仕事を選んで、男女関係なく頑張って階級が上がっていく。たしかにそういう役はそれまでなかったし、私の男まさりなところを佐々部監督が見つけてくださって、とてもうれしかったですね」

-佐々部監督は、決まりきった役柄を当てるだけではなく、新たな魅力を引き出してくれる方でした。早すぎる死が残念です-

「本当に突然の訃報だったのでショックでした」

-いろいろ準備されていた企画もあったみたいですね-

「そうですね。『今度こういうのがあるから、若菜出てよ』って言われていたので、いまだに信じられないです。でも、最後に佐々部監督とご一緒させていただけて良かったと思っています」

映画だけでなく、『だから殺せなかった』(WOWOW)、『金魚妻』(Netflix)、主演ドラマ『復讐の未亡人』(Paravi)、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)などテレビドラマにも数多く出演している。

-地上波だけでなくWOWOWやNetflixのドラマも多いですね。『だから殺せなかった』も見ごたえのある作品でした-

「父親の汚職記事を恋人が書いて失踪して死ぬという設定で、また死んじゃうんですけど、やっぱり地上波とは描くことができる部分が違ったりするので、おもしろいです」

-地上波ではいろいろと制限がありますからね-

「コンプライアンスという部分で地上波だと誰でも見られてしまうので、誰でも見られるものを作らないといけないというのがあると思うんですけど、配信などはお金を払って見たい人が見るというものなので、地上波とは制限がまた違いますし、それぞれにメリット・デメリットがあるのだと思っています」

-デビューされてから順調にお仕事をされて-

「そんなに順調ではなかったです。30代前半までアルバイトをしていましたし、お仕事だけで生活ができるようになったのは、本当にここ数年です」

-傍からはコンスタントにお仕事をされているように見えますね-

「そういう風に思っていただけたらうれしいです。作品によって撮影時期と公開時期が異なるものもあるので、休んでいるのに、『ものすごく忙しいよね』と言われることもあります(笑)」

 

◆“女優魂”で激痛に耐えて撮影を敢行

2020年、松本さんはヘルニアの手術を受けることに。杖がないと歩けないくらい痛みがひどかったという。

「もともと日本人は結構な確率でヘルニアの人がいるそうなんです。だけど、それが悪さ、痛みを伴うかどうかというのは、それぞれ人によって違うらしいんです。

私ももともとあったのですが、ある撮影のときに男性を後ろから羽交い絞めにして引きずって重さに耐え切れず、ドスンと尻もちをつくというシーンがあったんですね。

そのシーンのときに『あれっ?痛いな』みたいなしびれた感じがあったんですけど、そのときはまだ撮影も残っていたし、打ちどころが変だったんだろうなと思っていたら、帰りの電車の中で自分の足じゃないみたいに左足が変な感じになってしまって。

そのまま普段通っている整骨院に行ったんですけど、何だかよくわからなくて。その間も仕事があったので、何とか整骨院に通いながらやっていたのですが、それでもどんどん悪化していく感じで、日に日に歩き方がおかしくなっていって歩けないんですよね。痛み止めの薬も効かないし、かなり焦りました。

でも、撮影の前にスイッチが入ると何とか大丈夫なんです。変に心配されるのがイヤだったので、とにかく周囲にバレたくないって思って撮影していました」

-マネジャーさんは「その間に撮影した作品は涙なくしては見られない」と話してらっしゃいましたが、そういう状態での撮影はどれぐらいの間続いたのですか-

「最初に痛いなと思ったのが10月だから5カ月くらいかな。年末年始は仕事がなかったので休養したのですが良くならず、次に休みが取れるのが3月だからそこまで頑張ろうってやっていたんですけど、どんどん悪化していきました。それで、3月になって、ようやく手術ができることになって手術をしたんです。

『手術後、1カ月間はなるべく休んでください』と言われていたんですけど、3月の終わりくらいから撮影が入る予定だったのですが、コロナで全部後ろ倒しになったので、療養期間にさせていただきました。もともと私は出不精なので、自粛期間で家から出られないのが苦痛ということは一切なかったです」

-愛猫のもずくちゃんもいますしね-

「そうなんです。もずくとゆっくり過ごしていました(笑)。もずくがいるだけで家にいるのが楽しい。癒しの存在です。

私は幸いなことにコロナで流れた仕事が一つもなくて、全部延期だったんです。延期になったからこそ、いつも以上にしっかりと台本も読むことができましたし、準備期間として、ずっと気持ちが切れないまま居られたというのはありました」

-ヘルニアは、今はもう大丈夫なのですか-

「はい。もう左足のしびれも一切ないです。ヘルニアがかなり大きかったみたいで、先生に『そりゃあ痛かったよね』って言われました」

-よく痛みに耐えて撮影できましたね-

「自分で言うのもなんですけど“女優魂”っていうんですか(笑)。頑張りました」

-今後はどのように?-

「今までもそうだったんですけど、事務所も『焦らずゆっくりやっていこう』という感じで、『毎年少しずつでもステップアップしていけたらいいよね』と言っていますし、私もそう思っています。

今年もいろいろなお仕事をさせてもらっていますが、ステップアップしていく中で自分の気持ちや立ち位置もだんだんと意識できるようになってきました。

そういう面でも成長していっているのかなと思いますし、これからも焦らずおごらず、一つひとつの仕事、一つひとつの役に対して、誠心誠意向き合っていきたいなと思っています」

華やかで端正な美貌と演技力、仕事に向き合う真摯な姿勢…まさに無敵。勢いが止まらない。さらなる活躍に期待が高まる。(津島令子)

ヘアメイク:つばきち

はてブ
LINE
おすすめ記事RECOMMEND