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松本若菜、デビュー10年で演じた“絶対に友だちになりたくない女”。自信につながり「私の代表作になった」

2007年、『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)で女優デビューした松本若菜さん。

2009年には映画『腐女子彼女。』(兼重淳監督)に主演。映画『駆込み女と駆出し男』(原田眞人監督)、映画『無伴奏』(矢崎仁司監督)など話題作に出演が続き、2017年に公開された映画『愚行録』(石川慶監督)で第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞受賞。実力派女優として注目を集める。

 

◆初主演映画でユニークなキャラに挑戦「コスプレが照れくさくて…」

初主演映画『腐女子彼女。』は、平凡な大学生・ヒナタ(大東駿介)が、アニメやボーイズラブの世界を何よりも愛する“腐女子”のヨリコ(松本若菜)に振り回され、戸惑いながらも愛を育んでいく姿をコミカルに描いたもの。松本さんはコメディーセンスを発揮したユニークな表情やコスプレ姿も。

-ユニークなキャラでしたね-

「そうなんです。私は『腐女子』という存在を知らなかったので、オタク文化は秋葉原だけかと思っていたら、中野ブロードウェイも有名だったり、実際にBL本を読んだり、映像で『執事カフェ』を調べたり…初めて知ることがいっぱいありました」

-お茶目な表情もいっぱいされていましたね-

「家族からは、『若菜の素に近いんじゃない。電王のほうが猫かぶっているよね』って言われました(笑)」

-劇中ではいろいろなコスプレもされていて-

「違和感はすごくありましたけど、みんなは私が照れるから、その照れを捨てさせるためにほめてくれるんですよ。それがまた余計恥ずかしくて…。『すごい!めちゃくちゃ可愛いよ』とか言ってくれるんですけど、『そんなわけないでしょう』って(笑)」

-とても良く似合っていましたね-

「本当ですか? ありがとうございます。コスプレはしたことがなかったので、いい経験にはなりました。コスプレって大変で、あらためてコスプレイヤーの方たちはすごいなと思いました。

お金もかかるし、何か一つつけるにしても結構大変なんですよ。ウィッグやコンタクトレンズもそうですけど、メイクもすごく時間がかかるし、本当に好きじゃないとできないなって思いました。

それが職業の皆さんもいらっしゃるけど、趣味でこれだけのことをしている人は本当にすごいなあって。しかもみんなクオリティーの高いことをされているし、好きじゃないとできないですよね」

-コスプレイヤーにはなれそうもないですか-

「なれそうにもなかったです。今からだったらまたさらに無理でしょうね。でも、あの役はちょっとひと癖もふた癖もある役だったのでおもしろかったです」

 

◆池松壮亮さんと斎藤工さんのラブシーンがすばらしくて

2016年に公開された映画『無伴奏』は、直木賞作家・小池真理子さんの半自伝的小説を映画化したもの。

舞台は学生運動が盛んだった時代。多感な青春時代を過ごす女子高生・響子(成海璃子)は大学生の渉(池松壮亮)とその仲間たちと出会い、しだいに渉に強く惹かれていく。当時の若者たちの恋愛模様と時代の流れを描いたこの作品で、松本さんは渉の謎めいた姉・勢津子を演じた。

-池松壮亮さん演じる弟とまるで恋人のように見えるちょっと怪しい雰囲気でした-

「不思議なお姉さんでしたよね。なぜか私は怪しい役や悲しい役が多いんです(笑)。映画の中では描かれていないけど、『もしかしたら一線を越えていたんじゃないの?』っていうような感じで」

-ものすごく危うい匂いがありました-

「そうですね。そういうところに関しても矢崎監督といろいろ話し合いながらやりました。監督には、『成海璃子ちゃんと真反対にして。嫉妬されるような女性にしてくれ』と言われていたので、衣装もそう見えるようにしていただきました。

学生運動の時代で、成海璃子ちゃんは高校で『制服をなくそう!』と闘っている設定でしたので、ミニスカートで流行りの服を着ている中、私が演じた勢津子は今でいうレトロなおしゃれな洋服。高校生の響子にはない落ち着いた大人の女性の色気というのを意識したのですが、私はいつも『色気がない』と言われるのでとても苦労しました。

矢崎監督とは2度目で、『勢津子は松本さんで』と指名してくださったので、役柄をつかむというよりは、矢崎監督が信じてくれた私が作れる勢津子をやってみようという感じで挑みました」

-劇中、池松さんと斎藤工さんの美しいラブシーンもありました-

「きれいでしたね。すばらしいなって思いました。すごくきれいだったので彫刻を見ているみたいな感じで、女性が嫉妬してしまうぐらいの色気がありました。

その撮り方ということに関しても、矢崎監督はとてもうまく、女性だけではなくて男性もすごくきれいに撮られていて、すてきだなあって思いました。あんなに美しい男性同士のラブシーンを観たのは初めてでした」

 

◆デビュー10周年で代表作となる映画『愚行録』に出演

2017年に公開された映画『愚行録』で松本さんは、第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。新境地を開拓したと絶賛された。この作品で松本さんが演じたのは、世間を震撼させた殺人事件の被害者である妻・田向友希恵(旧姓・夏原)。

エリートサラリーマンの夫、美人で完璧な妻、可愛い一人娘という絵に描いたような幸せな家族を襲った惨殺事件から1年。週刊誌の記者が迷宮入りした事件の真相に迫るべく取材を開始。被害者一家、そして証言者たちの実像が明らかになっていくという展開。

映画では大学という狭いコミュニティーの中での独身時代の“夏原”をメインに描いている。大学の中で歴然としていた上下関係。裕福な家に生まれたわけでもなく、私立の一貫校に外部から入学したにもかかわらず、“内部生”たちのトップグループのマドンナ的存在となった夏原とは何者なのか。なぜ一家惨殺事件は起きたのか。衝撃の事実が明らかになっていく。

-松本さんが演じた夏原は、一見完璧でものすごくいい人だけど、悪意がないにもかかわらず、人を傷つけるところが絶妙でした-

「本当ですか? ありがとうございます。そう見てくださってすごいうれしいです。まさにその通りで、監督とも『10人中9人が、すごい嫌なやつだと思っても、残りの1人は、本当に悪いのかなって思ってくれるような役の作り方にしよう』と。

ですから悪く見えすぎてもダメだし、かと言って天然に見えてもダメだし…というラインを監督とずっと話し合いながらやっていました。

1シーン1カットをどうやるか、いろんなパターンを撮影して、それを編集でうまく繋げて夏原というキャラクターを作ってくださっているんですが、出来上がったものを観て、『こんな女がいたらイヤだ。絶対に友だちになりたくないな』って思いました(笑)。

それこそ知らない間に人を傷つけていたりとか、誰かを落とし込んだりとかしている子って、いなくもないよなあって。その描き方もリアルでしたし」

-言葉には出していなくても、ちょっとした目の動きとかで、『もしかして?』と思わせるカットがいっぱいありました-

「それはありましたね。目線は本当に監督と相談しながらやっていました」

-カメラワークも心情が伝わる感じですごかったです-

「そうですね。ピオトル(ニエミイスキ)というポーランド人のカメラマンなんですけど、監督がポーランドで映画の勉強をされていたときに一緒に撮ったカメラマンを連れて来られて。後になって照明部さんが、ピオトルが作る画力が本当に勉強になったと言っていました。

最初は何を言っているか意味がわからなかったそうなんです。『日本でこれまでやってきた照明と全然違うことを言うから、何を言っているんだろうって思ったけど、出来上がってみたら、これかーって思ったんだよね。それからピオトルが作りたい画というのがだんだんわかってきて、チームワークもできてきた』っておっしゃっていて、本当に映像を見たときに、何かジメッとしていながらも何とも言えない感じがすごいなあってあらためて思いました」

-底なし沼に引きずり込まれるような感じがしました-

「そういう感じがありますよね。『なんだろう?』って。あの頃言われていたイヤミス(イヤな感じのミステリー)という言葉が、まさに『これだ!』って思いました。ピオトル本人は『アイラブジャパン!』みたいな感じで、すごいひょうきんなんですけどね(笑)」

-撮影期間は気分が落ちたりしませんでした?-

「そうしないようにしました。というのも、夏原友希恵っていろんな人の証言から出てくる回想なんですよ。私もそうなんですけど、過去のこととかって、みんな結構美化したり、作り込んだりして、記憶って曖昧だったりするじゃないですか。

みんなが思っている夏原さんは、『すごいイイ人だったよ』って言う人もいれば、『あんな女は絶対にイヤだ』と言う子もいたりする。

だからその人それぞれの回想に合わせて、少しずつ作っていったところもあったりしたので、実際のところは誰もわからないみたいな感じにしてみました。

私も最初はわからなくて悩みまくって、『どうしよう?』って監督に何回も相談したりしていたんですけど、あるとき『わからなくていいんじゃないかな。だって本当のところは誰もわからないし、いろんな人のみんな勝手に改ざんされた記憶の中の夏原なんだから、それをそのまま演じればいいんじゃないかな』って思った瞬間、すごく気が楽になったんです。

それぞれの人物にとっての夏原像があるので、『本当の夏原』というのはあえて作らず、それぞれの思い出の中の夏原でありたいという思いはありました。だから、演じていて『ちょっとこの前の撮影のときと今の夏原違うな』って思っても、『いいんだよ、違う人の記憶だから』というように考え方を変えられました」

-無意識下での悪意みたいなものがあるだろうなと思わせる女ですものね。『愚行録』はデビュー10年目でヨコハマ映画祭助演女優賞も受賞されました-

「うれしかったです。ものすごく月日が経った気がしますけど、まだ5年なんですね。それまで映画の賞が欲しいとか思ったことはなかったんですけど、映画をたくさんやっていきたいというときだったので、受賞が決まったと言われたときには震えました。

しかも、マネジャーに『主演は1人だけど、助演はたくさんいる中でのことだから、すごいことなんだよ』って言われたときに、すごい賞をいただけたんだなあって。しかも同じ作品から二人、臼田(あさ美)ちゃんと一緒だったので、それもうれしかったです」

-劇中では臼田さんと殴り合いもありました-

「そうですね。テンポのいいひっぱたき合いがありました(笑)。懐かしいなあ」

-あの作品をやったことでオファーが来る役柄が変わったりしました?-

「特別なかったと思います。だけど、それこそ今までかわいそうな役とか、不幸でか弱い女性みたいなイメージがついていたのが、『愚行録』で、ちょっとイヤミな女もできるというふうに思っていただけるようになったので、私の中でも幅が広がったというか、自信につながったというか…そういう感覚はありました。ちょうどデビュー10周年でしたし、私の代表作になった作品だと思います」

『愚行録』で新境地を開拓した松本さんは、映画『コーヒーが冷めないうちに』(塚原あゆ子監督)、映画『ピンカートンに会いにいく』(坂下雄一郎監督)、映画『大綱引の恋』(佐々部清監督)、『だから殺せなかった』(WOWOW)、主演ドラマ『復讐の未亡人』(Paravi)などに出演することに。

次回後編では撮影エピソード、“女優魂”で耐えた激痛、愛猫・もずくちゃんも紹介。(津島令子)

ヘアメイク:つばきち

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