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<WRC>トヨタ、タイトル獲得は最終戦へ持ち越し。豊田章男氏「最後に走るヤリスが一番強かった、といえる戦いを」

2021年シーズンのWRC(世界ラリー選手権)も残りわずか。各チームから2022年シーズン体制についての発表などが始まっている。

©TOYOTA GAZOO Racing

まずトヨタは、7度のワールドチャンピオンに輝いた王者セバスチャン・オジェがWRCフル参戦を終了し、スポット参戦へと切り替わる。オジェは「家族との時間」などこれまで出来なかったことをしたいと語っている。

そしてオジェと3台目のマシンをシェアするドライバーとして、前戦ラリー・フィンランドで5台目のヤリスWRCをレンタルしたエサペッカ・ラッピのトヨタ復帰が決まった。エルフィン・エバンスとカッレ・ロバンペラは引き続きトヨタで参戦となる。

ヒュンダイはすでに契約更改が終わっているティエリー・ヌービルとオット・タナックが引き続き残留。3台目のマシンをダニ・ソルドとオリバー・ソルベルグがシェアすることになった。オリバーの父親は2003年にスバルでワールドチャンピオンを獲得したペター・ソルベルグだ。

そしてフォードのマシンを使用するMスポーツは、クレイグ・ブリーンがヒュンダイから移籍。ガス・グリーンスミス、アドリアン・フルモーとの3台体制となる。

勝田貴元の2022年シーズン体制は発表されていないが、今季WRC初表彰台も獲得しただけに、来季はぜひともフル参戦を期待したい。

◆タイトルは最終戦まで持ち越しに

©TOYOTA GAZOO Racing

そして、先週行われた第11戦「ラリー・スペイン」の注目は、オジェが8度目のワールドチャンピオンをここで決めるか、ということ。また、トヨタもマニュファクチュアラーズタイトルの獲得がかかっていた…。が、結果を先に言えば、どちらも最終第12戦ラリー・モンツァまで持ち越されることになった。

ラリー・スペインの上位の最終結果は以下の通り。

1位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)
2位:エルフィン・エバンス(トヨタ)/1位から24秒1遅れ
3位:ダニ・ソルド(ヒュンダイ)/同35秒3遅れ
4位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)/同42秒1遅れ
5位:カッレ・ロバンペラ(トヨタ)/同1分31秒8遅れ
6位:ガス・グリーンスミス(Mスポーツ)/同4分17秒3遅れ
7位:オリバー・ソルベルグ(ヒュンダイ)/同4分26秒7遅れ
8位:ニル・ソランス(ヒュンダイ)/同4分34秒9遅れ
<以下はWRC2、WRC3クラスのドライバーが入賞>

©WRC

優勝はヒュンダイのティエリー・ヌービルで、今季2勝目。2位はトヨタのエルフィン・エバンス。3位は母国ラリーで表彰台を獲得したヒュンダイのダニ・ソルドだった。

2位のエバンスはチームメートであるオジェとの差を17ポイントへと縮めたことで、ワールドチャンピオン争いに一分の望みを残し、タイトル決定は最終戦へと持ち越された。

例年、グラベル(未舗装路)とターマック(舗装路)のミックスラリーとなるが、今年のラリー・スペインは100%ターマックラリーに設定されたことで、かなりのハイスピードかつ接戦のラリーとなった。

ただし、平均スピードが上がればクラッシュしたときのダメージも大きい。今回、全17SS、合計280.37km、リエゾン区間1133.17kmで争われたラリー・スペイン。SS1でいきなりその洗礼を受けたのがトヨタの勝田貴元だった。

初日の金曜日はSS1からSS6までの6ステージ。ターマックを得意とするオジェに対して、チームメートのエバンスはSS1でいきなり8秒1速いタイムを叩き出す。エバンスの気合が感じられる出だしだった。

そして、サーキット出身でターマックを得意とする勝田だったが、右コーナーを曲がりきれず左フロントを激しくガードレールにぶつけてしまう。マシンはなんとか走行しステージフィニッシュは出来たものの、左フロントはサスペンションごと完全に破損しており、デイリタイアを選択した。

©TOYOTA GAZOO Racing

SS4ではヒュンダイのタナックがコースアウトでマシンをコース脇の木々に激しくぶつけてしまう。こちらもデイリタイアかと思われたが、マシン修復は難しいほどのダメージがあり、タナックのラリーはここで終了した。初日を終えて1位はヌービル(ヒュンダイ)、0秒7差でエバンス(トヨタ)が追う展開となった。

◆豊田章男氏はじめトヨタチームは士気の高いコメント

2日目の土曜日はSS7からSS13までの7ステージ。

この日速さをみせたのはヌービルだ。5つのSSでトップを獲得、残り2つのSSもステージ2位となり、2位エバンスとの差を16秒4まで広げた。また、同じヒュンダイのソルドはオジェを猛追。3位オジェとの差をSS13を終えて1秒2まで縮めた。

ヒュンダイドライバーの2人からは、チャンピオン争いこそ脱落しているが、ここで一矢報いてトヨタのマニュファクチュアラーズタイトル獲得を最終戦まで引き伸ばそうとする意地が感じられた。

©WRC

最終日の日曜日、SS14からSS17までの4ステージ。この日速さを見せたのは、母国ラリーとなったヒュンダイのソルドだ。

4つすべてのSSでトップを獲得し、地元ファンを大いに盛り上げた。順位も3位となり、ヒュンダイは1位と3位を獲得。トヨタのマニュファクチュアラーズタイトル決定阻止に成功した。エバンスは2位、オジェは無理することなく4位でラリー・スペインを終えている。

ドライバーズチャンピオンシップ、マニュファクチュアラーズタイトル共に最終戦のラリー・モンツァに持ち越されたが、トヨタ陣営の士気は高い。それはチームオーナーである豊田章男氏や王者を争うオジェとエバンスのコメントからも感じられる。

同時に、最終戦が「ラリー・ジャパン」ではなくなった無念も感じられた。

※豊田章男氏 コメント
「ラリー・スペインの前、ヤリ-マティは私にメッセージを送ってくれていました。『チーム代表となって、もう一度、マニュファクチャラーズタイトルを掴みアキオとお祝いするのが自分の夢です』

3年前のヤリ-マティはとても苦しいシーズンを送っていました。最終戦でようやく初勝利をあげ、その勝利でチームタイトルが決まり、当時そのことが本当に嬉しかったのを覚えています。その日、静岡県でラリーに出ていた私はその知らせを聞き、絶叫するように喜び、そのままお祝いのメッセージを送っていました。

あの歓喜の絶叫が“代表としてのモチベーション”に繋がり、チームを勝利へ導く一助になればとても嬉しく思います(笑) 次の最終戦モンツァ、ヤリ-マティの夢が叶うと信じています。一緒に喜びましょう!

ドライバーズチャンピオンも今回は決まりませんでした。セブとジュリアン、エルフィンとスコットには最後の最後まで悔いのない走りをしてもらいたいと思います。チームはそのために最高のクルマを準備してあげてください。

次のラリーはヤリスWRCが走る最後の大会です。2017年WRCに再参戦した時から、我々が言い続けていたのは『常に“今のヤリス”が一番強くなるようにしよう!』という言葉でした。『最後に走るヤリスが一番強かった』とドライバー達にも、ファンの皆さまにも言ってもらえるような戦いを最後に見せたいと思います。チームのみんな、最後までよろしくお願いします!」

※セバスチャン・オジェ コメント
「今回は総合4位以上を目標にしていたのですが、それでもドライバー選手権争いにおいては十分なポイントを獲得することができました。今日は接戦となり、最初の3本のステージは全力でトライしたのですが、最後のステージで雨が降ってしまい、そこでリスクを冒さないという私の戦略が功を奏さず、安全に走ることを選びました。

それでも、全体的には今週末がタイトル争いにおいてポジティブな一歩になったことは間違いないですし、それが何よりも重要なことです。タイトル争いはまだ終わっていないので、モンツァでは昨年の成功を再現できるように頑張りたいと思います」

※エルフィン・エバンス コメント
「総合2位というのはポジティブな結果ではありますが、ラリーのスタートがとても良かっただけに、手放しでは喜べません。残念ながら、少しずつ良い感覚が薄れていき、クルマとの完全な一体感を得られなくなりました。今週末は、本当はもう少し速く走れたと思います。

ただし、良かったこともあります。ポイント差を縮めることができましたし、タイトルの可能性はまだ残っています。1戦で詰めるには大き過ぎる差ではありますが、昨年自分達が経験したように、最後まで何が起こるかわからないので、モンツァではもう一度ベストを尽くして戦います」

◆“セントラルラリー2021”が11月開催

©TOYOTA GAZOO Racing

こうしてラリー・スペインは終了。ドライバーズチャンピオンシップ上位陣は以下の通り。

1位:セバスチャン・オジェ/204ポイント
2位:エルフィン・エバンス/187ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/159ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/140ポイント
5位:オット・タナック/128ポイント
6位:クレイグ・ブリーン/76ポイント
7位:勝田貴元/68ポイント
8位:ダニ・ソルド/63ポイント

チャンピオン争いはオジェとエバンスの一騎打ちとなる。圧倒的にオジェが有利だが、こればかりは下駄を履くまでわからない。

そしてマニュファクチュアラーズ争いは、トヨタが474ポイント、ヒュンダイ427ポイント、Mスポーツ185ポイントとなった。

トヨタが47ポイントリードしているので、ヒュンダイが最終戦に52ポイント(上位2台、1位・2位の合計43ポイントとパワーステージ1位・2位の合計9ポイントの合算)獲得しても、トヨタは5ポイント以上を獲得すればタイトルが決まる。

今シーズン、1度も表彰台を外したことはないだけに、トヨタのダブルタイトルはほぼ確実だ。

いよいよ最終戦。最後は昨年同様、イタリア・モンツァで開催される「ラリー・モンツァ」(11月19日〜21日開催)だ。

本来であればラリー・ジャパンで日本のファンの目の前でダブルタイトルが決まるはずだっただけに、直接勝利を観ることができないのは残念だが、トヨタのダブルタイトル獲得をオンラインなどで応援したい。

また、WRCラリーの迫力を感じられる一戦として、「フォーラムエイト セントラルラリー2021」が開催されることになった。こちらは11月12日〜14日開催。主催はトヨタ・モータースポーツ・クラブが中心となり、コースはラリー・ジャパンで予定されていた一部を利用する。

WRCの息吹を感じられるセントラルラリーにも注目だ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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