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米国から帰化し“日本代表”に。夫婦カップルが世界に挑む覚悟「今は日本人としてもっとがんばりたい」

4月15日(木)に開幕する「ISU世界フィギュアスケート国別対抗戦2021」。

日本は男子が羽生結弦と宇野昌磨、女子は紀平梨花と坂本花織と、主力選手たちが出場する。

ただ、2大会連続5回目の優勝を狙うアメリカも、世界選手権3連覇のネイサン・チェンを筆頭にアイスダンスとペアも世界選手権最上位組が出場。

また初優勝を目指すロシアも、女子は世界選手権金と銀のアンナ・シェルバコワ、エリザベータ・トゥクタミシェワのほか、アイスダンスとペアも世界選手権優勝組と、力を入れたチーム編成になっている。

その中で競り勝ち、2017年大会以来3度目の優勝をはたすためにはアイスダンスとペアの活躍が必須になる日本だが、今回はその勢いもこれまでとは違っている。

世界選手権ではペアの三浦璃来と木原龍一が10位に入り、北京五輪出場枠を獲得、アイスダンスの小松原美里・尊も五輪出場枠を自力で獲得する19位と力を伸ばしてきているからだ。

◆世界選手権で花ひらいたペア「やっとここまで来た」

今大会でチームキャプテンも務める木原は、「世界選手権よりプレッシャーがあります。日本の順位はカップル系にかかってくると思うので、少しでも上に行くためには僕たちががんばることにかかってくると思う」と気持ちを引き締める。

コロナ禍だった今シーズンは日本国内での大会出場も取りやめ、世界選手権が2020年2月の四大陸選手権以来の実戦になることも覚悟をして拠点のカナダでの練習を継続した。

「日本に帰るとコーチのもとから離れないといけないので、自分たちの成長が止まるのはわかっていたし、五輪の枠を獲得するのも難しかったと思う。かなり悩んだが、全日本がゴールではないのでいろんな方と相談して1年間カナダに残るという決断になりました」(木原)

ペア結成は2019年8月。誘った三浦は「どうして誘ったんだろう。根拠はなかったけど、運命かな?」とごまかすが、三浦は「トライアウトのときからふたりの技のタイミングは完ぺきで、最初から合うなと確信していた」と話す。

だからこそ、コーチのもとを離れず練習をつづけたかったのだ。

そして今は、木原が「ストローキングだったり技のタイミングも、組めば組むほどよくなっていくなと感じている」と言えば、三浦は「技の恐怖心はすごくあったけど、私のことを信頼して『絶対に落とさないから』と毎回言ってくれる。今まで1回も落とされたことはないし、信頼感があるからよくなるというか…」と信頼を寄せる。

「行動規制が厳しくて制限も多く不自由な面もかなりあり、冬は外でウォームアップをしなければいけないのがつらかった」というカナダでの練習の積み重ねが、世界選手権で花ひらいた。

ふたりは大会でも、「練習でやってきたことを出せば、五輪出場枠は必ずとれる」と落ち着いた表情を見せていた。結果はSP(ショートプログラム)、FS(フリースケーティング)ともに自己ベスト。SPはミスがありながらも全米王者のクニエリム&フレイジャー組に0.30点まで迫る8位と見事な結果だった。

「ようやく自分たちのやってきたこと、技術レベルを世界中に発信できて、『やっとここまで来たな』というのが一番思っていることです。でもこれがゴールではなく、今からが一番勝ちはじめなくてはいけないときなので。僕たちががんばらなければ、日本で次の世代がペアをやらないと思うので」

木原がこういえば、三浦は「私は高所とかジェットコースターが大好きなんです。投げられたり振り回されたりするのは感覚も似ている。本当に楽しいから、それが大好きな方はぜひ、という気持ちです」と、今後のペア普及へ向けての意識も口にする。

◆異例のシーズンも「精神的にも成長できた」

一方、アイスダンスの小松原美里・尊組の今季はカナダではなく、国内を拠点にするシーズンだった。北京五輪出場へ向け、尊の日本国籍取得などの理由もあったからだ。

美里は「モントリオールに帰れなかったのも難しくてふたりでケンカもしたが、周りの方たちが環境を作って助けてくれた。ケンカをしても、終わるときにはお互いに答えを見つけていたので、精神的にも成長できた」と話す。

2回目の挑戦だった世界選手権は、「今シーズンはとくにRD(リズムダンス)が大事だとわかりました。RDに集中したというのはいい作戦だった」と尊が言うように、RDは自己最高を6.57点更新して18位の滑り出しになった。FD(フリーダンス)では順位を落としたが、19位をキープした。

五輪出場枠を獲得したとき、美里は「よろこびより安堵する気持ちのほうが勝っていて驚いたと」と言う。そして尊も「これからもう少し点数が出るようにがんばらなければいけないと思った」と振り返る。

だが次へ向けての欲も出てきた。

「FDのあとは15~18位くらいにはいけるチャンスがあったかなと思い、悔しかった」(尊)

「とくにFDは自分たちの最低限の演技だったなと思ったので、悔しさのほうがいっぱいだった。でも10位までとの差を見たら意外とそんなになかったので、これからの10か月どれくらい成長できるか楽しみになりました」(美里)

◆日本国籍取得、日本語も上達し「日本人としてがんばりたい」

16歳でアイスダンスに転向し、2011年には世界ジュニアに出場。2014~2015年からはイタリア代表としてヨーロッパ選手権にも出場していた美里が、アメリカ人のティム・コレトとカップルを組んだのは2016年4月。

それからカナダのモントリオールに拠点を移し、日本代表として競技をしはじめた。

そして2020年11月にはティムの帰化申請が通って日本国籍を取得し、グランプリシリーズ日本大会が日本人カップルとしての初舞台だった。

日本名は尊にしたが、その理由を「ユウキか尊(タケル)で迷ったが、美里の母親に『もう一人子どもがいたらどっちがいい』と聞いて決めた」と話す。

そんな尊も最近は一気に日本語が上達し、記者会見などでは日本語で話しはじめている。その上達の理由を聞くと、こう答えた。

「日本代表になる前は、アメリカ人として英語が話せていれば問題ないと思っていました。でも代表の国が変わってからは言語の勉強をしなければいけないと思うようになりました。

2年前に美里が脳震盪になって練習ができなくなった時期は一人でいる時間が多かったので、岡山の日本語学校に週3回くらい通って勉強をするようになり、今もその勉強はつづけています。以前は外国人としてがんばればいいと思っていたが、今は日本人としてもっとがんばりたいと思うようになりました」


ふたりが結婚したのは、カップル結成から9か月後。

今年の世界選手権出場のアイスダンスカップルの中で夫婦での出場はふたりだけだったが、その利点を聞くと「私たちの場合はスケート以外の時間にもスケートの話ができるのが大きいと思う」と説明する。

今はもう、夢でもある北京五輪出場へ向けてまっしぐらに突き進んでいるふたり。彼らにとって今回の国別対抗戦は、2大会連続出場となる。

美里は「10か月後の五輪で団体戦のメダルを獲得できる可能性もある中で、今回はその位置を確認する重要な大会だが、自分たちが一番足を引っ張る立場だと思う。でもみんなにポジティブになれるようなエナジーを出しながら、コミュニケーションをとり、みんなに誇ってもらえるような演技ができればと思う」と話す。

そして、注目してもらいたい彼らの見どころは…。

「衣装もガラッと変わっているが、ケガもあったりして苦しい時期を乗り越えてきて成長しているところを…。2年前とはまったく違うクオリティの演技、ツイズルがとくに変わったなと思っているから、そのクオリティの高さを見ていただければと思います」(美里)

「2年前に比べるとスピード感や、近くで滑る技術もとてもレベルアップしたと思うので、そこは見せたいなと思います」(尊)

ペアとアイスダンスの彼らが、男女シングルの4人をどこまで後押しして勢いをつけるか。今回の国別対抗戦は、楽しみがより増大している。<文/折山淑美>

※番組情報:『世界フィギュアスケート国別対抗戦2021 presented by SHISEIDO』
◆地上波
4月15日(木)よる6:30~ 男女ショートほか(一部地域を除く)
4月16日(金)よる8:00~ 男子フリーほか
4月17日(土)よる6:56~ 女子フリーほか
4月18日(日)よる9:55~ エキシビション

◆ABEMA
4月15日(木)ごご3:05~ アイスダンス リズムダンス
4月15日(木)よる6:30~ 男女ショートほか
4月16日(金)ごご3:20~ ペア ショート、アイスダンス・フリーダンス
4月16日(金)よる8:00~ 男子フリーほか
4月17日(土)ごご3:15~ ペア フリー
4月17日(土)よる6:55~ 女子フリーほか

◆CSテレ朝チャンネル2(全選手・全競技・会場音のみで放送)
4月29日(木)あさ7:00~ 開会式、アイスダンス リズムダンス、女子ショート
4月30日(金)あさ7:00~ 男子ショート、ペアショート
5月1日(土)あさ7:00~ アイスダンス フリーダンス、男子フリー
5月2日(日) あさ7:00~ ペア フリー、女子フリー、エキシビション

◆テレ朝動画LIVE配信(有料)
4月15日(木)あさ8:30~ 公式練習、開会式、アイスダンスリズム、男女ショート
4月16日(金)あさ9:00~ 公式練習、ペアショート、アイスダンスフリー、男子フリー
4月17日(土)あさ10:00~ 公式練習、ペアフリー、女子フリー、表彰式

◆ライブビューイング(全国の映画館でLIVE上映)
4月18日(日) ごご2:00~5:00  エキシビション

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