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加納竜、32歳年下ダンサーと再婚「今ちょうどダブルスコアなんです」

若手俳優のなかでも群を抜いたルックスの美形俳優としてブレークし、映画『愛と誠・完結編』、ドラマ『西部警察』(テレビ朝日系)をはじめ、数々の映画、テレビ、舞台に出演してきた加納竜さん。

40年以上のキャリアを誇り、ダンディな大人の魅力を漂わせる俳優へと進化。近年は俳優としてだけでなく、大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科の教授として後進の育成にも尽力。プライベートでは32歳年下の奥様と幼い2人の子どもたちのよきパパとしても多忙な日々を送っている。

◆先輩たちから「宵越しの金は持たない」と教えを受け…

映画や人気ドラマに多数出演してきた加納さんだが、年齢的にきつい時期もあったという。

-大変だったときというのはいつ頃のことですか?-

「30代後半から40代かな。テレビの連続ドラマがだんだん減っていく時期があるんですよ、2時間ドラマが多くなって。

それで、2時間ドラマで色々やってきて、それもだんだん終わりかなあっていうときに、今度は舞台に移行していくんですよ。

舞台もまあまあお客さんがまだ入った時代なので、結構やってはいるんです。『レ・ミゼラブル』のジャベールやミュージカルもやりましたね。

昔、歌もやっていたのでよかったかなっていうのはありますけど、一番難しかった時代は40代かもしれないですね。

ドラマもだんだん減ってきたのに加え、年齢的にもお父さん役にはちょっと早いし、若者の役もないしという感じで、一番しんどかったかもしれないですね」

-デビューされてからアルバイトの経験などは?-

「ないです。なんだかんだずっと仕事をやってきていますね。だから、恵まれていることは恵まれているんですよ。

でも、順風満帆で生きているわけじゃなくて、どーんと落ちたり、浮き沈みはあったし、もう仕事をやめようかなと思ったり、違う仕事をしようとか、何か儲(もう)かる仕事はないかなと思うんですよね。でも、ないんですよ(笑)。

いろいろ怪しげな話がありましたよ。『一緒に店をやろう』とか、『名前だけ貸してくれ』とか、『レーサーのチームをやりましょうよ』とかね(笑)。

いろんな儲け話みたいな、儲からない話がいっぱいくるんだけど、そういうのがあったからなんでしょうね。いろんな底辺部分も多少はわかりますよ」

-仕事がなかったときには蓄えを崩してという感じだったのですか?-

「蓄えなんかないですよ。だって、『宵越しの銭は持たない』という教えを先輩たちから受けてきているんだから(笑)。

だから何も残っていない。一個保険みたいなのに入っていたけど、それも切り崩したのは覚えていますよ。それでも何とかやっていたんだから、まったく仕事が途切れてはいないということですよね。

2、3か月仕事がないということはあったけど、半年間仕事が何もないというようなことはなかったと思うので」

-Vシネやオリジナルビデオにもたくさん出てらっしゃいますね-

「結構やっています。だから、なんやかんやどこかで繋(つな)いでるんだろうね。舞台に行ってみたり、オリジナルビデオやVシネとか、いろんなところで」

◆夢は教え子たちと一緒に作品を

一昨年からは大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科の教授に就任。俳優業だけでなく後進の育成にも力を注いでいる。

-大学の先生をやることになったきっかけは?-

「ある舞台に出たときに演出家の方が先生をやられているんですけど、空席があるので、ぜひともやりませんかって言われて。

その5年ぐらい前から僕は、役者、俳優を育成するための演技指導学校『スタジオカリブ』の校長兼講師をしていて子どもたちを教えていたので、これはやっぱり何か縁があるなあと思って。そういう年齢にも入ってきましたしね。

演劇っていろんな職業につながると思っているんですよ。どの職業でもコミュニケーションとか、人とのつながりとか必要じゃないですか。

なので、若いうちにそういう人とのつながりとか、人前でプレゼンしたりとか、演ずるとか、そういうものができるようになれば、きっと将来役に立つと思うんです。

僕は昔、『愛と誠』でスイッチが入って変わったんですよね。変わるそのスイッチさえ作ってあげれば、将来絶対スイッチの入れ方を覚えてくれれば何とかなる。

人前でしゃべれる、人とのコミュニケーションがうまくいくということが身をもってわかっているので。

あと、若い頃は恥ずかしいことを嫌がるじゃないですか。昔も今もそうだと思うんですけど、でも恥ずかしいことをいかにできるかが、演劇の基本でもあるし、社会に出ても同じだと思っています。

人前で何か演ずるのが恥ずかしいと思っていたら、まず演劇はできないわけで、どこかで恥ずかしさをかなぐり捨てるというか、一枚も二枚もむけないといけない。それさえ覚えてくれたらと、それを思ってやってるんですけどね、今」

-大学生の学生さんというのはどんな感じですか-

「僕が20歳ぐらいのときとは感覚的にものすごく違うので、自分の考えを押し通せば嫌がられるし、向こうの考えをすべて聞けば軽く見られるし…みたいな(笑)。難しいところですよね」

-反抗してきたりとかは?-

「露骨に嫌がる生徒はいますけどね。それが今の時代じゃないでしょうか? 19、20歳って、ある意味、いろんな部分を否定しかねないじゃないですか。

肯定するものって、ほんとに少ないと思いますよ。全部一応は否定する。僕らもそうでしたからね。

でも、人のよいところを素直に自分の引き出しにしまえば、将来その引き出しがきっと役に立つと思っています。

僕も19、20歳ぐらいのときには『あいつのあの演技は違う』みたいなことを言っていましたよ。違うという否定から入るんですよね。でも、今はすべての入り口は否定ではなく肯定から入るようにしています」

-短期大学ということは、加納さんが最初に教えた学生さんたちはもう卒業されたわけですか-

「卒業しました。2年なので、意外と早いんですよね。彼らと一緒に何かをやるということが一番楽しみ。育てるということがおもしろい。僕も若い彼らの感性を吸収しているんです。役者に完結はないですからね。

とくに今年はコロナの状況下、大学受験で悩んでいる方たちもたくさんいると思うんですよね。

大阪芸術大学短期大学部のホームページにアクセスすると、オープンキャンパスにおいて僕が無料体験授業を開催しているので、芸能の世界に興味のある受験生に見ていただけたらと思います。

将来的にはやっぱり大学の卒業生とかで芸能界でやっていく子たちがいたら、そういう子たちと芝居を作るのか、映画でもいいし、何かの作品を作りたいなと思っています。それが夢かな」

-「スタジオカリブ」のほうはいかがですか-

「そっちは小学生とか、1番大きくて高2かな。だいたい高校生になるとみんなどこかに行っちゃうんですよ。彼氏ができたり、ほかにもっと楽しいことがいっぱいあるじゃないですか。来なくなりますね(笑)。

お芝居を習いにくる小学生の子どもたちは、どっちかと言うと内向的な子が多いんです。

高1になった子は、最初登校拒否で大変だったんですけど、そういうのが直ってきたり、人前で芝居ができるようになったりするのを見ていると、ニコニコしてしまうんですよ。

今まで、学校にも行かないような子とか、人間不信でお母さんともいつもケンカをしていたような子が、高2くらいになったとき、『今、ディズニーでバイトしています』とかね。

そういう子たちが育っていくのを見るのは本当にうれしい。いいんですよね。だから、そういう部分というのは、演劇のすごいところだと思う。もうひとりの自分を作り出してくれたり、第2、第3の自分を作り出すわけですからね。そこがおもしろい。

短期大学のほうは2年しかないので、そこができるかどうかは別として、種だけまいてあげようと思っているんですよね。

その種が将来的に芽を出してくれて、花を咲かせるまでいってくれれば、それが一番いいんですけど、耕して種だけはまいてあげようと思って。だから、すごい楽しみなんですよ」

◆32歳年下のダンサーと再婚、60歳でパパに

私生活では2015年12月に32歳年下のダンサーの友希さんと再婚。2016年9月に第一子となる女児が誕生し、2019年12月には男児が誕生した。

-奥様との出会いは?-

「『IMAGINE9.11』という舞台でした。2006年から11年までやっていた舞台で、彼女は2010年からの参加だったんですけど、はじめて会ったとき、若いんだけど、肝っ玉が据わってる子だなって。とにかく動じない。

『何なんだろうな?この肝っ玉の据わった感じは』というのが印象にあったんですよね。そこに引きつけられたのかもしれませんね。

32歳違うので、彼女はそのときまだ22歳くらいでしたから、肝っ玉が据わっていて珍しかったんですよね。何がそうさせているのかなと思って、舞台公演が終わった後で『飯食おうか』って言って、そこからですね」

-はじめてふたりで食事されたときはどんな感じでした?-

「僕がひとりでしゃべっている感じでした。向こうは『ふーん』みたいな感じで全然相手にされない(笑)」

-それが恋愛感情に変わったのは?-

「何なんでしょうね?『クソ!』って思ったんでしょうね、僕が(笑)。何かしゃべらせてやろうかなみたいな。それでアプローチしたんですね。

どこか世のなかをナメた感じがあるし、ものごとに動じない。これは同年代の男じゃ勝負にはならんなあ、年上じゃないとムリだろうと勝手に分析して(笑)」

-それにしても32歳という年齢差はすごいですね-

「そうですね。今ちょうどダブルスコアなんです。僕が64歳で彼女が32歳ですから。もう2度とこないダブルスコア(笑)」

-加納さんのなかでちょっとひるんだりするようなことはなかったですか?-

「向こうがひるまないので、それはなかったかな。ストライクゾーンが広いんだろうね(笑)。

僕だったら、うちの娘が32歳も年上のおじさんを連れて来たら、『やめとけ』って言うよね(笑)。まぁ、そこが芸能界のちょっと特殊なところかもしれないですね」

-3歳のお嬢さんと8か月の息子さんがいらっしゃいますが、子育てはいかがですか?-

「子育ては若いときに限るなぁって思いますよ。しんどいもん(笑)。3歳をカミさんが見ると、0歳を俺が見なくちゃいけないじゃないですか。それは結構大変なんです。

最近ママチャリに子どもたちを乗せて僕が買い物に行ったときに感じました。とにかく子どもふたりが乗っていると重いんです。

普段当たり前のように世のお母さんたちは子どもを乗せて走っていますが、『すごいなあ』って。女房の偉大さをあらためて感じました」

◆子育て、料理…コロナ自粛期間は濃い時間

コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言の期間は、撮影、舞台は中止や延期。短大の授業もリモートになり、ずっと家で子育てをしていたという。

「僕のことはパパじゃなくて、父親の『父(ちち)』って呼ぶんですよ。女房も『母(はは)』にしようと思ったんですけど、向こうは若いから『いやだ』って言って、今は『ミミ』になったんですよ。『マミー』って言えなくて、『ミミー』って言っていたのが、いつのまにか『ミミ』になって」

-お子さんたちは加納さんがずっと家にいるので喜んだでしょうね-

「下の子は8か月でまだ何もわからないですけど、娘は3歳なので、一番外に出たい年頃じゃないですか。

公園とかにも遊びに行けないし、2歳ぐらいからインターナショナルの幼稚園みたいなのに行かせてるんですけれども、その友だちとかに会えなかったので、家にいるとつまらないから暴れまくっていましたよね、ストレスで。

下の子はおばあちゃん、女房の母親とコロナ予防でずっと会えてなかったから、会うと泣くんですよ。

近くに住んでいるんですけど、万が一コロナを持っていてうつしちゃいけないからって来ないわけですよ。

だから、下の子は親とお姉ちゃん以外の人と会ってない。顔を合わせている人間は3人だけだったのが、解除になって、いきなり違う人が来ると大泣きするんですよ。

恐怖でしかないみたいで怯(おび)えた顔をするんですよ。『何者?』みたいな感じで、まるで獣が来たみたいな感じ、本当に。

ちょうど、人見知りする時期でもあるし、そういうのもコロナの被害なのかなあって思います。人と会わないことがね。

子どもを見ているとよくわかる気がしますね。人と会うことが、やっぱり基本的に小さいときには大事なのかもしれないなぁってよくわかります」

-子どもの反応は素直ですね-

「そう、素直なんですよ。0歳でまだ真っ白な人間だから、どうこの期間を過ごしてきたかというのがね。そういう見方をするようになりました。僕も人を教えなきゃいけないので。

学生がどういうふうにこの数か月を過ごしてきたのか。それこそ入学式もなければ、オリエンテーションもない。大学の説明会なども一切なくてメールだけですからね。『この子たちはどういう捉え方をしているんだろう?』って思いましたね」

-家事もされているのですか-

「やりますよ。メシ作るわ、子どもの面倒みるわ、何でもだいたいやれますから。自慢じゃないですけど、これだけ家のことをやるお父さんはあまりいないだろうなっていうくらい、色々やっていますよ。やらないのは掃除ぐらい。

料理も子どもができてからはちょこちょこ作るようになりましたしね。簡単に作れるので、パッパパッパ作っていますよ。

野菜を食べようかなというのは多くなりましたね。でも、女房は若いから肉が好きなんですよ。

俺があっさり系を作ったりすると、『肉は?』って言われますからね(笑)。肉があればOKなんですよ。だから、何でもいいから肉を入れておく」

-よき夫でいいお父さんですね-

「俺はひとつだけよく言うんですけど、俺に残された人生が、あと20年あったらすごいと思うんですよ。

80で死ぬとしたら、あと16年しかない。16年の人生をどう濃く生きるかというと、今の子どもたちと16年、濃く生きるべきだなって。これは俺の最後の終活みたいなもの。

俺が生きていたとしてもカラダが動けるのが80ぐらいまでかなと。バリバリ動けるかどうかはわからないじゃないですか。

そうしたときに、あと16年をどうやって濃く、子どもたちと女房と暮らしていくのか。どうやって家内を支えていけるかとか、あるじゃないですか。

だからそういう意味では、このコロナの自粛っていうのはよかったんだけど、こんなに大変だとは思わなかった。

ずっと家にいてずっと子どもの面倒を見るわけだから、しんどい。これは若いときしかムリだというのもあるんですけど、内心はこんな濃い生活というのは二度とないかもしれないなあって、ポジティブに考えるようにしています」

すてきに年齢を重ね、大人の俳優として活躍するかたわら、演技を教える教授でもある加納さん。奥様とお子さんたちのお話になるとひときわ優しくなるまなざしが印象的。(津島令子)

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