南極は「楽勝だな」冒険家が歴史的偉業を達成できたワケは…約20年間の“北極通い”
“激レア”な体験を実際にした「激レアさん」をスタジオに集め、その体験談を紐解いていく番組『激レアさんを連れてきた。』。
6月20日(土)の同番組では、日本人初となる大偉業を成し遂げた冒険家を紹介した。
◆20年間で16回!やめられない”北極通い”
現在42歳のオギタさんは、2019年までの20年間で16回も北極に通った北極冒険家。
最低気温がマイナス50度にもなるという、吐く息すら瞬間に凍てつく世界で、死にそうになりながらひたすら歩きつづけた末、日本人初となる”ある大偉業”を成し遂げた人物でもある。
南極と混同されがちな北極だが、南極が陸地なのに対し、北極は陸地がなく、流氷が集まっている場所。流氷ということで、人もほぼいない。
オーロラの美しさが印象的な一方、極寒に乱氷(らんぴょう)、さらに巨大なホッキョクグマなどが行く手を阻む、死が隣り合わせの危険な場所だ。
ところが、オギタさんは帰国して数日経つと、毎回「また行きたくて辛抱たまらん!」という心境になってしまうとか。
◆はじめての海外が北極!
そんな北極マニアのオギタさんがはじめて北極に行ったのは2000年のこと。
大学3年生だったオギタさんは就活をはじめたものの、「周囲に流されるのは嫌だ」との思いにかられ、大学を中退してしまう。
その矢先、「極地冒険家」として知られる人物がテレビで北極に行く若者を募っていることを知り、「これだ!」と応募。その後、とんとん拍子に北極行きが決まった。
北極が初海外のうえ、アウトドア経験もほぼゼロ。そんな初心者にとって、約1か月間ソリを引きながら700 kmを徒歩移動するという冒険旅行は、過酷そのものだった。体力の限界を感じ、ときに命の危険すらあったそう。
それでも、見るものすべてが新鮮だったはじめての体験が、若者に刺激をもたらしたのも確か。普通だったら大きな感動を覚えそうだが、オギタさんの正直な感想は「よくわからなかったなぁ」。
そして「ピンとこなかったからもう1回ひとりで行こう」と思い立ち、2回目からはほぼ誰も助けてくれない“単独冒険”を選んで北極に通うようになった。
◆過酷すぎ!北極ライフ
3回目の北極は、24日かけて500 kmを踏破。最低気温がマイナス50度にもなるという過酷な環境下で、東京から神戸ほどの距離をひとりきりで歩くという冒険だった。
マイナス50度とは、「痛い」を通り越して、体から熱やエネルギーを「搾り取られる」ような感覚を覚える気温。
オギタさんはそんな環境のなか、食料や燃料などの荷物を積んだ約120kgのソリをひとりで引っ張り、ひたすら歩きつづけた。
さらに、彼を苦しめたのは乱氷と呼ばれるデコボコの隆起。
北極では、流氷同士が風などでぶつかり合ってできる乱氷がいたるところにあり、高いところでは10mほどにも及ぶという。
この超デコボコの道を重いソリを背負って登らなければならなかった。
◆孤独な生活で愚痴のオンパレード
このような過酷な冒険ゆえ、オギタさんの口からは時折“悪態”が飛び出すことも。
記録用に撮影していた自撮り映像を見てみると、乱氷を登りながら「重てぇな!キツイ!誰か押してくれ後ろから!誰もいねぇんだけど」と愚痴を言いまくるオギタさんの姿が。
好きではじめた冒険とはいえ、話し相手が誰もいない孤独な環境に慣れすぎて、ひとり言が止まらなくなってしまったのだ。
肉体的にも精神的にも強烈なダメージを与えた単独冒険。だれもが「もう二度と行くもんか」と思うところだが、不思議なことにオギタさんは北極通いをやめようとはしなかった。
それどころか何度も北極に通い詰めるうちに、すっかり北極の魅力に魅せられ、北極を極めるようになった。
◆ホッキョクグマに煽り&恫喝!
そんななか、冒険中にはピンチに見舞われたこともあった。
あるとき、テント内で炎上事件が発生。オギタさんは驚くことに“素手”で消火し、手が野球のグローブくらい膨れ上がったことがあったという。
またあるときは、北極圏に生息する肉食獣・ホキョクグマと50cmまで超接近。
オギタさんはなんと「ヘイヘイヘイ!オラァ!」とホッキョクグマを“煽り”、怒号をとどろかせながら全速力で追いかけるという、驚きの方法で追い払った。
◆北極がダメなら南極に
そんなピンチを乗り越えながら、北極で実に20年近く単独冒険を重ねたオギタさん。しかし、北極点への到達はついぞ成功することができなかった。
北極点周辺には陸地がなく、海に浮かんでいる流氷の上を歩いても氷が常に流れるため、到達することが困難だったのだ。
そこでオギタさんは一大決心をする。北がダメなら南、ということで、南極点への無補給単独歩行に挑戦したのだ。
南極は陸地のため、南極点は動かない。それにくわえ、成功すれば日本人初とのこと。
だがいざ南極に行ってみると、北極とは違う苦労もあった。
デコボコがあるとはいえ平坦だった北極と異なり、南極では1000 kmという、東京から稚内ほどの距離の上り坂を登らなければならなかった。南極点の標高は2800mのため、標高の高いところから吹く向かい風にも苦しめられたという。
また、南極にはクレバス地帯という、落とし穴のような割れ目もあり、「落ちたら死ぬ」怖さと常に隣り合わせだったとか。
オギタさんはそんな困難を乗り越え、2018年、見事南極点への無補給単独歩行に成功する。日本人としては史上はじめてのことだった。
帰国後は植村直己冒険賞を受賞するなど、日本中の称賛を浴びたが、オギタさんの正直な感想は「楽勝だな」。
北極を20年近く歩きつづけた経験があったからこそ、誰の助けも借りずにたったひとりで南極点に辿り着くという、大偉業を成し遂げることができたのだ。
※番組情報:『激レアさんを連れてきた。』
【毎週土曜】よる10:10~、テレビ朝日系24局(※一部地域を除く)