テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
menu

日本ハム・吉田輝星、先輩・上沢直之に学んだ“プロで勝つためのヒント”「あらためてその重要性を知りました」

©Get Sports

2年前の2018年、平成最後となった第100回・夏の甲子園を席巻した“高校BIG4”の吉田輝星、小園海斗、藤原恭大、根尾昂。

4月5日(日)深夜に放送されたスポーツドキュメンタリー番組『Get Sports』では、高校時代から彼らを追い続けてきたヒロド歩美(『熱闘甲子園』キャスター)が、それぞれの“いま”に迫った。後編となる本記事では、吉田輝星と小園海斗を特集する。

◆持ち味のストレートが通用せず「壁は結構感じました」

2018年の夏、日本中を駆け巡った金足旋風。その象徴といえば、吉田輝星の気迫のこもったストレートだ。

レギュラーメンバー全員が地元・秋田県出身の選手の公立高校で「雑草軍団」と呼ばれた金足農業。吉田はエースとしてマウンドに立ちつづけ、最速150キロのストレートを武器に準優勝まで上り詰めた。

そしてドラフト1位で日本ハムに入り、プロデビューを飾った2019年6月。吉田はプロのバッター相手にも強気のストレートで真っ向勝負を挑む。結果は、5回4安打1失点で初勝利。今後の活躍を期待するには十分な滑り出しだった。

しかし、以降の試合はすべて序盤でノックアウト。1軍での勝利はデビュー戦の白星だけ、1勝3敗で1年目のシーズンを終えてしまった。

©Get Sports

ヒロド:「去年1年間で振り返ったら、どんな感情が一番強いですか?」
吉田:「悔しいシーズンだったというのが一番強いです。持ち味にしていたストレートが通用するときとしないときがあって、そこの壁は結構感じました。アウトローに全力で投げても普通に打たれるときもあるので、ちょっとびっくりしましたね」

ヒロド:「高校のときはそのアウトローをどういう風に思っていました?」
吉田:「アウトローに決まれば絶対に打たれないですし、決まらなくても球が強ければ『大丈夫かな』みたいなのはありました。だけど、初勝利してから1か月くらい1軍で投げて、もう全部自信は潰されたというか…。アウトローに強い球を投げて、もうひとつ何かアクセントを加えないと打ち取れないのがプロだと思いました

自慢の球が狙い撃ちされ、プロのマウンドはストレートだけでは勝てないと痛感した1年目。そこで吉田がオフシーズン、とくに力を注いでいたのが“スプリット”の習得だ。

吉田:「一瞬浮いてからバッターにわかりやすいけど大きく落とすのか、ボール1個分しか落ちないけれどストレートの軌道で落とすのか、どちらがいいのかなと思っていたんですけれど、ストレートの軌道でちょっと落ちた方がいいという風に考え方が変わりました」

ストレートの軌道からわずかに落ちるボールを理想としているというが、そのきっかけをくれた先輩がいた。

吉田:「上沢(直之)さんはストレートも綺麗ですし投げ方もすごい。あと、自分が一番参考にしたいなと思ったのが変化球の速さ。ストレートと同じように投げないとああいう風にはいかないんだろうなって思って(上沢に)聞きに行ったんですけれど、やっぱり自分の想像と同じようにストレートの感覚で変化球を投げるということをいわれて、あらためてその重要性を知りました。

日本ハムの先輩・上沢直之の武器といえば多彩な変化球だが、とくに目を見張るのが高速フォークの球速だ。2018年のストレートの平均球速は143.7キロ、フォークの平均球速は140.5キロと、わずか3キロしか球速差がない。そのため、バッターはストレートと見分けるのが難しくなる。

一方、吉田の去年の平均球速を見ると、ストレートは143.1キロ。縦に落ちる変化球として使っていたツーシームは130.9キロと大きな開きがあった。そこで今シーズンはストレートにより近い、落差の小さいスプリットの習得に励んでいたのだ。

そんな吉田は2年目にかける決意を練習グローブに刻んでいた。“不屈の華”という言葉だ。

吉田:「プロでやっていくうえで大事にしたいポリシー。詳しく言えばやっぱりストレートなんですけれど。強気のピッチングをしたいので、どれだけ疲れていても打者を抑える気持ちだけは絶対もっていたい。その気持ちをもっていれば、試合で疲れていても良いボールがいったりするかもしれないので」
ヒロド:「“華”っていうのはなんで?」
吉田「高校が雑草軍団といわれていたので、雑草みたいなイメージはもっています。壊れるくらいギリギリまで練習して成長してきたので、プロでもその心を忘れずに試合で全部解放できればいいかなって思いで入れています」

あくまでも自分のこだわりは高校時代と変わらない強気のストレート。変化球の挑戦も、その勝負球を生かすためのものだった。「雑草」という原点に立ち返り、勝負の2年目をむかえる。

◆「エラーをしてベンチ裏で泣いていた」

2019年、BIG4のなかでもっとも成績を残したのが広島の小園海斗だ。

©Get Sports

高校時代は名門・報徳学園で1年生からショートのレギュラーとして活躍。3年生でむかえたはじめての甲子園では大会タイ記録となる1試合3本のツーベースを放つなど、チームを8年ぶりのベスト8に導いた。

2019年にドラフト1位で広島カープに入団すると、6月にプロ初打席で初ヒットを記録。そして球団の高卒新人記録を塗り替えるシーズン4本のホームランを放った。BIG4のなかではもっとも多い、1軍で58試合に出場し、ルーキーイヤーとしては堂々たる成績をおさめた。

ヒロド:「振り返って、1年目はどんな1年でしたか?」
小園:「いつもテレビで見ているすごい選手の方々が、目の前で一緒にプレーしているというのが一番驚きで、経験できないことをいっぱいさせてもらったなという風に思いました」
ヒロド:「世間は数字を見ていると小園選手が抜けていると」
小園「いわれますけど、そんなことまったく思っていないし、活躍をしたとも全然思っていないです。レギュラー獲得とかそういうのも全然ないので、まだまだあの数字じゃ甘いなという風に思います」

去年の成績には、まったく満足していないという小園。実は、活躍の裏で大きな挫折も味わっていた。

小園:「去年はエラーをしてベンチ裏で泣いたりしました。9回だったですね、エラーをしたのが。それでそのままホームランを打たれたことがあったので、キツかったですね

6月のオリックス戦、広島が1点リードでむかえた9回。ショートの小園が一塁へ悪送球し出塁を許すと、つづくバッターにホームランを打たれた。それが決勝点となり、チームは逆転負け。

さらに翌日の試合でも、初回からエラーを記録すると、6回には平凡なゴロをまさかのトンネル。これをきっかけに連打を浴び、この回3失点。2試合連続で、敗戦につながる致命的なミスを犯してしまった。

実は小園が高校時代から何よりもこだわりをもっていたのが、このショートというポジション。当時のグローブには「日本一のショート」という刺繍が。

世代屈指のショートとして18歳以下の日本代表でも2年生のときからスタメンを任されてきたほど、守備には自信があった。それゆえに、自らのエラーが敗戦に繋がってしまった経験は涙を流すほどに悔しかったのだ。

ヒロド:「守っていてプロの打球は違いますか?」
小園:「そうですね。とくに外国人の選手とかはすごく速いので。結果を残すのが難しいなと思いましたし、毎日つづくので体力的にも精神的にも強くないと無理だなと思いました」
ヒロド:「高校時代も毎日キツイトレーニングだったと思うんですけど、また違う?」
小園:「それもキツイですけど、人生がかかっているのでそれが一番ですかね。活躍出来る選手も大勢いるわけではなく一握りなので、その選手になるために自分もみんなもやっていると思うので本当に厳しいところだなと思います」

ヒロド:「小園選手にとってショートのポジションってどんな魅力があるんですか?」
小園:「やっぱり守っていてやりがいがあるというか、自分のミスから流れが変わることも経験しましたし、本当に大事なポジションだと思いました。ショートというポジションで活躍したい気持ちはずっと持っているので、そこのポジションは絶対に守りたいと思っています

プロの世界で屈辱を味わったからこそ、あらためて感じたショートというポジションの重要性。2年目こそショートのレギュラー獲得を目指す。

前編では藤原恭大と根尾昂、後編では吉田輝星と小園海斗について特集した今回の「プロ2年目の現在地」。取材を終えたヒロドは、次のように所感を語った。

「高校生から取材させて頂いた4人。プロの世界に入るとこんなに表情が逞しくなるのだと感動しました! 高校野球のスターとしてドラフト1位で飛び込むもプロの壁は高く、もがきながらも甲子園の経験を糧に1歩ずつ前に進んでいる姿がありました。プロ2年目、彼らにとっての春も必ず来ると信じています!」

©Get Sports

番組情報:『Get Sports

毎週日曜日夜25時30分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)