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大の甘党・尾上松也が出会った理想のケーキ「これを超えるものはないなと思いました」

©テレビ朝日

歌舞伎俳優としてだけでなく、ミュージカル、声優、バラエティー番組、ドラマ、映画など幅広い分野で精力的に活動を続けている尾上松也さん。なかでも子どもの頃から大好きだったディズニー・アニメーション映画の吹き替えは夢のようだったという。

©テレビ朝日

◆苦手だったミュージカルが好きになったのは猿之助さんのおかげ?

-ミュージカルをやりたいと思うようになったのはいつ頃からですか?-

「20代半ば過ぎぐらいです。僕はそれまでミュージカルが苦手だったんですけれど、(市川)猿之助のお兄さんがまだ亀治郎さんだったときに、『ライオンキングを見に行こう』と誘って下さって。

僕は小さい頃からディズニー・アニメーションは大好きでしたので、『ライオンキング』はディズニーなので大丈夫かなと思い、初めて見に行ったミュージカル作品なんです。

そこからもう音楽とお芝居の融合したときの爽快感というのは、ストレートプレイとはまた違う楽しさがあると感動してどハマりしまして、自分でもいつかやってみたいと思うようになりました。

今考えると歌舞伎も和製ミュージカルみたいな演劇ですから。やはり音楽と演劇というのは、切っても切り離せないっていうことではあると思うんです」

-歌舞伎の自主公演を始められたのも24歳ということですから、20代半ばは色々なことに挑戦されるようになった転換期でもあったのでしょうか-

「挑戦という気持ちもなかったわけではないのですが、今思えば挑戦というより、とにかく必死でしたね」

2017年、松也さんはディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』の日本語吹替版でマウイの声を演じることに。

-マウイの声を担当することになったときはいかがでした?-

「もう最高でした。僕の幼少期はディズニーなしでは語れないというくらい大好きで、いつかディズニー・アニメーションの声優ができたら最高だなとずっと思っていたんです。それは事務所の方にも話していましたし、夢でしたので、決まったときには天にも昇る気持ちでした」

-マウイ役はオーディションだったのですか-

「そうです。オーディションで声と歌を録ってから、決定するまでに2カ月ぐらいはありましたので、その間は周りのスタッフさんに『いつ決まるの?』と何度も聞いたりしてモヤモヤしながら過ごしていました。

大好きなディズニー作品ですから気になるじゃないですか。それが、あるとき取材だと言われて現場に行ってみたら、それは全くのウソで、『出演が決まった』って言われたんです。

本当はみんな知っていたんだと思ったら、一瞬だけ複雑な気持ちになりましたけど、とてもうれしかったです(笑)」

-声だけで表現するというのは、また違うと思うのですが、改めて感じられたことは何かありますか-

「声優に関してはすごく舞台的な要素が必要だなと常々感じていました。アニメのキャラクターというのは、それぞれの動きのリアクションが大きいので、普段話している感じで吹き替えてしまうと、そこにギャップが生まれてしまうんです。

そこで僕は、声優のお仕事では歌舞伎の舞台で培った抑揚や、オーバーな節の付け方というのが重要だろうと思い演じさせていただいているのですが、それは通ずるものがあったと思いました」

-スムーズにいきました?-

「いやいや、そんなことはないです。ディズニーアニメの場合は本国の俳優さんのお芝居に合わせてアニメーションを作るらしいんです。

本国の俳優さんたちは、アニメーション映像を見ながらアフレコをするのではなく、『こういう感じでやってくれ』と言われて、演じたことにアニメーションを合わせたものが出来るんです。

日本語と英語は全然違いますので、口の動きから秒数までそこに合わせるのは少し難しいところもあって、最初はなかなか慣れなかったです。

僕の声を収録したときは、まだ主役のモアナの声優さんが決定していませんでしたので、一人で秒数が来たらしゃべるという感じでしたから、少し大変でした。

僕が思い描いていたのとは少し違いましたね。僕のなかではもっとキラキラした世界なのかなと思っていたのですが、すごくシビアで(笑)。

それに収録した音声データを本国に送って、OKが出て戻ってきて…というやり取りも必要でしたので、時間もかかりました。ですが、とても楽しかったですね」

-ご自分の声が入ってできあがった吹替版をご覧になったときはいかがでした?-

「本当にうれしかったです。ディズニー・アニメーションの声優をさせていただいて最高にうれしいことは、色々なところで子どもたちが僕の歌を聴いて歌ったり踊ったりしていることを聞くわけです。

友人から『うちの子が松也の歌毎日聴いているんだよ』とか。僕の歌がかかると赤ちゃんが手をたたいたり踊ったりしているというのは、僕も実際そうだったわけじゃないですか。

ディズニー・アニメーションを見て歌って踊って…。その声が誰だかわからないけど、声や歌はずっと覚えているわけです。こんなに幸せなことはないなと思いました」

-何か変化はありました?-

「パーティーなどに行くと、お会いしたことのない俳優さんや関係者の方々に声をかけられることが多くなりました(笑)。芸能関係の方ですよ。

『うちの子が毎日見ていて、毎日聴いているので写真撮っていいですか』って。芸能関係の方に写真を撮られることってなかなかないのですが(笑)。ですのでそれはすごくうれしいです」

©テレビ朝日

◆大の甘党でスイーツ好きが出会った理想のケーキは…

大の甘党でスイーツ好きで知られる松也さん。2017年には連続ドラマ初主演となった『木ドラ25 さぼリーマン甘太朗(テレビ東京)』で、仕事をサボってスイーツを食べるという秘密を抱えたメガネイケメンの主人公を熱演。さらに『映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』ではスイーツに対しては情熱的かつ腕も一流のパティシエ、ジャン=ピエール・ジルベルスタインの声を担当した。

「『さぼリーマン甘太朗』に出演する前から色々なところで甘いものが好きだと言っていましたから、その結果がドラマにつながっているところもあります(笑)。

スイーツが主役のドラマでしたので。ドラマのなかで僕が行ったお店を巡る方もいらしたみたいでうれしかったですね。

あのドラマに出演したことで、『松也=甘いもの』というイメージがより一層広まりました(笑)。プリキュアもスイーツをテーマにした作品でしたからね」

-ご自身で作ることは?-

「20代前半の頃は好きが高じて作っていた時期もありました。ベイクドチーズケーキとか、ガトーショコラとか。今は食べる専門ですけど、ベイクドチーズケーキはお店に出せるレベルでしたよ(笑)」

-すごいですね。最近お気に入りのスイーツは何ですか?-

「よく聞かれるのですが、あまり食べ歩いて何かを探すというタイプではないので、ずっと好きなスイーツの第1位は変わらないんです。『パレスホテル東京』の『スイーツ&デリ』というお店のマロンシャンティイ。これに尽きるんですよ。甘いものが好きなので、色々な方がくださるスイーツのなかにはおいしいのもたくさんあるんですけど、私のなかではこれを超えるものはないんです」

マロンシャンティイ

-いつ頃からですか?-

「3、4年前ですかね。テレビ番組でご用意いただいたんです。ある番組に出演したときに『僕はスイーツが好きで、こういうのがないかなと思っているんですよね』とスタッフさんに打ちあわせの際にお話したら、番組からご紹介いただいたのが『パレスホテル東京』の『マロンシャンティイ』で、僕の理想郷がそこにあったんですよ(笑)。僕が理想とするケーキだったんです。もうこれを超えるものはないなと思いました。圧倒的な1位ですね」

-スイーツがお好きだということは皆さんご存じですからプリキュアの声優もぴったりでしたね-

「そうですね。おかげさまであの頃はスイーツ関係のお仕事が結構多かったです(笑)」

(C)野中英次/講談社 (C)「課長バカ一代」製作委員会

◆変顔満載のおバカキャラに挑戦

2020年1月には主演ドラマ『課長バカ一代』の放送・配信がスタート。松也さん演じる老舗家電メーカーの社員で「課長補佐代理心得」という肩書を与えられた主人公・八神和彦の暴走と、それに巻き込まれる部下たちの物語。松也さんは民族衣装を身にまといユニークなダンスや変顔も披露している。

-1月からは主演ドラマ『課長バカ一代』の放送も始まります。コメディーセンス全開という感じですが-

「コメディーセンスというより、漫画自体がバカギャグのかたまりみたいな作品ですので。こっちはもうただそれを真剣に一生懸命やるっていうだけでした。

このような作品の場合は、こっちが面白くしようとしなくとも勝手に面白くなりますので、とにかくそれを一生懸命やるということでした」

-『サボリーマン甘太朗』もですが、ドラマはコメディーが多いですね-

「僕は基本的にはそっちが好きなんです(笑)。歌舞伎のなかでもいわゆる二枚目のお役というのが僕はあまり得意ではなくて、素顔の僕はそんな感じでもないですしね。

カッコ良い二枚目を演じるよりは、変な顔をしたり、変なことを言ったりしているほうが僕の性分には合っていると常々思っています(笑)」

-ファンの方からはバリバリの二枚目をやって欲しいという声もあるのでは?-

「いやいや。そんなことはないと思います。僕自身は得意ではないので、二枚目を演じるのは歌舞伎だけで十分です(笑)。

甘太朗のときもある程度は過剰に演じたつもりでいましたけど、今回はもっと振り切っているような感じはします。自分で見ても笑ってしまう場面がたくさんありました。バカなことをしてるなぁって(笑)。

甘太朗のときは、スイーツというメインテーマがありましたが、今回は核となるものが何もない真面目なバカですから(笑)。

一応『課長』ということですけど、それもよくわからない。僕だけではなく、みんながある程度振り切って演じないと面白くなかったので、現場はもう笑いばかりでした。

それはすごく楽しかったですけど。みんな真剣に撮影をしているんですが、真剣さのかけらもないというような、よくわからない状況でした」

-12月は新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』(新橋演舞場)の公演もありますね。チケットが発売と同時にソールドアウトになりました-

「ありがたいですね。これまで『NARUTO -ナルト-』や『ワンピース』を歌舞伎にしてきましたけど、これらの作品は、若い世代から僕らの世代まで幅広い層が見ている漫画原作で、根強いファンがいらっしゃいますからね。チケットが取れなくなるのも当たり前かもしれないと思っていました。

今だからこそ言えますが、ナウシカの歌舞伎化に関しては、お客様に受け入れていただけるか、実は少し不安がありました。

ですが、ソールドアウトになったということを伺って、やはり日本においてのアニメの影響力というのは、僕たちが思っている以上に凄(すご)いということを実感しました」

-同時進行で1月の「新春浅草歌舞伎」の準備もあると思いますが-

「そうなんです。今月中にそのお稽古も始まります」

-浅草で「新春浅草歌舞伎」を見てお正月が始まるというのが恒例になっているお客さんも多いと思います-

「僕たちも毎年お正月には浅草に戻ってくるということが、一つの目標になってきています。そこでまた自分たちが前年の一年で培(つちか)ってきたこと、やってきたことというものを新たに発揮する機会でもありますので。

そういう意味では僕自身もそうですし、周りの後輩たちも初演に比べると、大きくなっているという印象があります」

-ハードなスケジュールが続いていますね-

「そうですね。歌舞伎は休演日がありませんので、初日が開くとお休みがなくなります。ありがたいことに今では毎月どこかで歌舞伎公演はありますので。

続けて歌舞伎公演に出演させていただけるとなると、必然的に前の月の千秋楽が終わればすぐに翌月のお稽古というのは仕方(しかた)がないことですし、僕たちも慣れていますからね。あまり違和感はないです」

-色々なことに挑戦されていますが、今後やってみたいことは?-

「具体的なことはないですけれど、歌舞伎を基軸に、ミュージカルや歌舞伎以外の舞台でもチャンスがあればどんどん積極的に、これからもやっていきたいという気持ちはあります。

歌舞伎以外の世界に触れるということは、『尾上松也』という役者を作る上では重要な要素の一つで、それは今後もずっと続けたいと思っています」

伝統ある「新春浅草歌舞伎」のリーダー的な立場となって2020年で6年目。重責を担いつつ、未来を見つめ、自身の可能性に賭ける挑戦の日々が続く。(津島令子)

※「新春浅草歌舞伎」浅草公会堂
1月2日(木)~26日(日)
第1部 午前11時~  第2部 午後3時~

(C)野中英次/講談社 (C)「課長バカ一代」製作委員会

※ドラマ『課長バカ一代』
主演:尾上松也 出演:木村了 板橋駿谷 永尾まりや 若槻千夏 武野功雄 坂東彦三郎 市川左團次

老舗家電メーカー松芝電機に勤務する八神和彦(尾上松也)は上司に呼ばれて昇進することに。だが、任命された肩書は「課長補佐代理心得」という微妙なものだった…。2020年1月12日(日)19時よりBS12トゥエルビにて放送開始。