60人超の部員がいつでも走れる状態。増田明美氏が見た、東海大の“選手層の厚さ”
明日11月3日(日)に行われる「全日本大学駅伝」。「出雲駅伝」「箱根駅伝」とともに学生三大駅伝と呼ばれている大会だ。
学生三大駅伝の開幕戦となった「出雲駅伝」では、國學院大が初優勝を飾ったが、2位駒澤大、3位東洋大、4位東海大、5位青学大、と上位5校のゴールが1分以内にひしめき合う大混戦になった。
伊勢路の舞台でも、“5強”による優勝争いが予想されている。
その中で、今年の「箱根駅伝」で、創部史上初となる悲願の総合初優勝を飾った東海大と、“絶対王者”青学大に、スポーツジャーナリストの増田明美氏が迫った。
◆「全日本は俺らでなんとかしよう」
舘澤亨次、關颯斗、鬼塚翔太、阪口竜平ら、東海大を引っ張ってきた“黄金世代”。4年生の彼らにとっては、今季が最後の駅伝シーズンとなる。
しかし、その“黄金世代”の選手たちが相次いで怪我に陥ってしまい、「出雲駅伝」でも本調子の走りができず、結果は4位と優勝を逃してしまった。
両角速監督は、「全日本大学駅伝」に向けて、「総入れ替えぐらいのつもり」でオーダーを大幅に変更することも示唆したが、それこそが東海大の強みだと増田氏は語る。
「“黄金世代”の選手たちが走れなくても、チャンスを与えてくれる監督、チームなんだなと。60人以上いる部員が、いつでも走れる状態という、選手層の厚さを感じました。
この選手初めて見るけど、こんなに強かったの!というように、“新生東海大”が見られるかもしれませんね」(増田氏)
実際、“黄金世代”以外の選手の活躍は昨今目立っている。
先月、有力者が集った「札幌マラソン」では3年生の名取燎太が、大会新記録で優勝(ハーフマラソンの部)。「全日本大学駅伝」出場となれば、学生三大駅伝デビュー戦となる。
「駅伝ならどこでも走れる自信がある。4年生のインパクトある選手が不在でも、選手層が厚いと頃を見せたいし、きっちり優勝したいですね」(名取)
市村朋樹は2年生にして「出雲駅伝」で一足早く学生三大駅伝デビューを果たし、区間賞まで僅か5秒に迫る快走を見せた新戦力である。
「黄金世代と呼ばれる4年生が卒業したあとには、今の3年生と自分ら2年生でチームを引っ張っていかないといけない。走りで頼りになる存在になりたい」(市村)
一方で、黄金世代にも意地がある。
「出雲駅伝」でエントリーはされていたものの、出場メンバーには選ばれなかった4年生の小松陽平と郡司陽大は、大会の裏で行われた記録会、通称“もうひとつの出雲駅伝”で見事ワンツーフィニッシュ。
悔しさをぶつけた形となったが、今度は自分たちが、という思いが強いという。
「これまでは館澤、關、鬼塚たちに任せきりだったので、今は郡司と『全日本は俺らでなんとかしよう』と話しています。(優勝する)自信はありますよ」(小松)
「全日本大学駅伝」では、選手層の厚さを見せつけることができるのか、注目したい。
◆窮地に立たされる青学大、カギを握るエース
そして、昨季までの4シーズン、学生三大駅伝12戦中8勝と、驚異の勝率75%を誇っていた青学大。
言わずと知れた“絶対王者”だが、今年1月の「箱根駅伝」で東海大に敗れて5連覇を逃すと、先月9月の「出雲駅伝」でもまさかの5位と、窮地に立たされている。
そんな中、カギを握るのはエース・𠮷田圭太だ。
𠮷田は、昨季の学生三大駅伝全てで区間賞を獲得。青学大の黄金期を支えてきた1人である。
今年2月からは、在学する学部のカリキュラムで、神林勇太と2人でニュージーランドに留学。長期間、チームを離れていたが、異国の地で自分と向き合い練習に励んでいた𠮷田を増田氏は絶賛する。
「原晋監督の目が届かない異国の地での練習。甘えようと思えば、いくらでも甘えることはできます。しかし、𠮷田さんは同期の神林さんと声を掛け合い工夫しながら、5ヶ月もの間、しっかりと練習をされていたそうなんです。本当に自立心と自覚があって、素晴らしいですよね」(増田氏)
その成果は今年9月「全日本インカレ」で実を結んだ。5000mで日本人トップとなる3位に輝き、チームの絶対的エースへと名乗りを上げたのだ。
しかし「出雲駅伝」では区間賞を獲得することができず。不本意な結果に「全日本大学駅伝」では、雪辱に燃えている。
「大学に入って、三大駅伝で初めて区間賞が取れなくて、区間賞をとれないことがこんなに悔しいとは思っていませんでした。
全日本は、出雲よりもいい状態でいけそうですし、チームとしては優勝、個人では区間賞を獲りたいなと思っています」(𠮷田)
前回王者が連覇を果たし、“駅伝戦国時代”に再び反撃ののろしをあげることができるのか、エースの活躍に期待したい。
※番組情報:『第51回全日本大学駅伝』
11月3日(日・祝)あさ7時45分~午後1時40分