競泳リレーでも光る、日本の“バトンパス”技術 陸上だけではないコンマ数秒の工夫
7月21日(日)に開幕した「世界水泳2019」。世界190以上の国と地域から集まった精鋭たちが集い、2年に1度行われる水泳の“世界一決定戦”だ。
今大会、日本選手は個人種目で金メダルを獲得すると2020年東京五輪代表に内定するため、例年にも増して熱い戦いが繰り広げられることが予想される。
瀬戸大也や大橋悠依、入江陵介などの活躍に期待が高まるが、今大会で12位以内に入ると、東京五輪出場枠を獲得できる“リレー種目”にも注目だ。
今日7月26日(金)も、男子4×200メートルフリーリレーが行われる予定となっている。
日本はリレー種目において、4大会連続で、五輪でメダルを獲得しており、今ではメダル候補の種目としてすっかり定着しているが、このリレーの強さの秘密はどこにあるのだろうか。そこには、“ある技術”が隠されていた――。
◆ロンドン五輪、メダル獲得の裏に“反動”
“バトンパス”技術と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは陸上のリレーだろう。
2016年のリオ五輪、日本男子が400メートルリレーで、銀メダルを獲得した際にも、バトンをもらう選手が、走るフォームを崩さずに受け取れる“アンダーハンドパス”が注目を浴びた。
しかし、実は陸上だけではなく、競泳のリレーにも奥深い“バトンパス”技術がある。
北島康介や松田丈志らを擁した日本が、男子400メートルメドレーリレーで銀メダルを掴みとった2012年のロンドン五輪。
個人種目のスタートは制止しなくてはいけないが、リレーの引き継ぎは反動をつけてのスタートが許されており、日本チームはこの“反動”を使ってタイム差を縮めた。
競泳リレーの引き継ぎは壁にタッチする前に、スタート台から離れてしまうと失格になってしまうため、前を泳ぐ選手のスピードを見ながら、次に泳ぐ選手が手の振りあげる勢いを変えて、タイミングを調整。
これにより、コンマ数秒という引き継ぎにも関わらず、決勝では予選から0秒33のタイム短縮に成功し、見事日本チームは銀メダルに輝いたのだった。
◆ “羽の後ろに片足を置くスタート”でタイムアップへ
そして、日本チームはさらに“バトンパス”技術に磨きをかけている。
近年取り組んでいる「アドバンス・ステップ・スタート」は、リレーを指導する下山好充コーチが、2020年東京五輪を見据えてチームに提案したもので、スタート台のバックプレートの後ろに片足を置くのが特徴だ。
バックプレートの後ろに置いた足を、一気に前にステップ。スタート台の先端で、両足で踏切ることで、通常のステップスタートよりも速い飛び出しで勢いが付けられるという。
成功すると、0.1~0.2秒のタイムアップが見込め、今回「世界水泳」のリレー種目に出場する選手たちも、練習時に確かな手ごたえをつかんでいるようだ。
「陸上が、バトンの引き継ぎ技術でメダルを獲ったように、競泳も“引き継ぎ技術”で勝負する」(下山コーチ)
今後、状況によっては披露される可能性がある「アドバンス・ステップ・スタート」。陸上だけではない、水泳の“バトンパス”技術に注目しながら、日本の東京五輪の出場枠と、メダル獲得に期待したい。
※放送情報:『世界水泳 韓国・光州2019』
7月21日(日)~28日(日)8夜連続、テレビ朝日系で放送(放送予定詳細はこちら)