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王者オジェ、ラリー・メキシコ5勝目!トヨタ・タナックは総合トップをキープ【WRC】

2019年のWRC(FIA世界ラリー選手権)第3戦「ラリー・メキシコ」が開催され、DAY4(最終日)となる日曜日は3つのSSが行われた。

©WRC

最終日の朝、この日は最後に上位5台に追加のポイントが加わる「パワーステージ」があるため、残り少ないタイヤをどう残すかが各ドライバーの戦略となった。しかし、順位を競い合っているドライバーには、最後のために良い状態のタイヤを残すことはなかなか難しい。

前日までの順位は、トップはシトロエンのセバスチャン・オジェ。2位エルフィン・エバンス(フォード)/1位から27秒0遅れ、3位オット・タナック(トヨタ)/同29秒2遅れ、4位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同1分15秒7遅れ、5位クリス・ミーク(トヨタ)/同4分37秒1遅れ。

6位と7位はWRC2クラスが占め、8位ヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)/同16分32秒4遅れ、10位ダニ・ソルド(ヒュンダイ)/同21分59秒7遅れ、11位アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)/同36分2秒6遅れ、14位エサペッカ・ラッピ(シトロエン)/同1時間2分56秒7遅れ、であった。

朝の時点のタイム差や順位からして、トヨタのミーク、ヒュンダイのミケルセンとソルド、そしてシトロエンのラッピらがパワーステージを見据えてタイヤをセーブする走りをするのではないかと予想された。

また、初日にパンクで出遅れたヒュンダイのヌービルは、ここまで追い上げるためにタイヤを使ってしまっており、どこまで良いタイヤを最後に残せるかは難しいところだ。トップのオジェは確実にラリーをコントロールしていて、最後もタイヤを残せそうな状態にあった。

◆トヨタのラトバラに驚きの事態

こうしてスタートした最終日。最初のSS19を制したのはトヨタのタナックで、これで総合順位を2位に浮上させた。次のSS20でもトヨタのタナックが制し、3位につけるフォードのエバンスとの差を広げる。また、トヨタのラトバラが総合7位まで順位を上げた。

そして迎えた最後のSS21。下位のドライバーから1台ずつタイムアタックをしていく。そこで驚きの事態が発生したのが、トヨタのラトバラだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

なんと、フロントのバンパー類がすべて外されていて、ラジエターやオイルクーラーがすべてむき出しの状態。何かのトラブル対応であることは分かるが、これではフロントのエアロパーツがないし、前後のバランスも崩れてしまいタイムは出ないはず。

案の定、その時点でトップから21秒3遅れ。走行後、ヤリスWRCのフロント部分が無い理由がラトバラから語られた。

「SS20の最後の方の右コーナーで、マシンのサンプガードが当たってしまってラジエターが壊れたんだ。水が漏れ出したのだけど、自分たちは持ち合わせの水がなかった。持っていたのは接着剤による応急処置用のケミカル剤だけ。そこから500m山を下って走って、川の水を汲んで対応したよ。それでもサンプガードは半分しか修復できなくて、マシンを速く走らせることも出来なかった」

ラトバラはそう語り、パワーステージ前にリタイヤするかもしれないピンチがあったことを明かした。さらにその後、チームリリースでより細かい最終日の状況が語られている。

「4ポイントを獲得するために、これほど頑張って戦ったのは初めてです。デイ4の2本目のステージ終盤に、路面の根石にクルマが当たってしまい、サンプガードにダメージを負いました。もしかしたら走り続けられないかもしれないとも思いましたが、どうしても諦められませんでした。何とかサンプガードを応急処置できましたが、パワーステージでは攻められませんでしたし、タイムコントロールに遅着した結果ペナルティを受け、4秒差で総合7位の座を失いました。しかし、フィニッシュすることができて良かったと思います」とラトバラ。総合7位を失ったのは、修理のためだったことも判明した。

©WRC

結果として、SS21パワーステージを制したのは、シトロエンのオジェ。これで総合1位と合わせて30ポイントのフルスコアを獲得した。

2位にはトヨタのミークが入る。その差は0秒1で、もしミークが勝っていれば、トヨタは最終日のSS完全制覇を成し遂げるところだった。運が少し足りなかったが、トヨタのヤリスWRCはグラベルでも速いことを証明した。

◆オジェ、ラリー・メキシコ5勝目

こうして最終結果が出た。

トップはシトロエンのセバスチャン・オジェ。2位オット・タナック(トヨタ)/トップから30秒2遅れ、3位エルフィン・エバンス(フォード)/同49秒9遅れ、4位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同1分27秒0遅れ、5位クリス・ミーク(トヨタ)/同6分6秒2遅れ。6位と7位はWRC2クラスが占め、8位ヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ/同16分32秒4遅れとなった。

©WRC

勝利したオジェは、これでラリー・メキシコ5勝目となる。ラリー後の公式会見は以下の通りだ。

――おめでとうございます。ラリー・メキシコ5勝目、シトロエンでの走りでは初勝利です。ここまでの挑戦について教えてください。

「今週は楽に勝つことができず、本当に挑戦だらけの週末だった。“簡単に勝てない”というのは、最近のWRCにおけるトレンドになりつつあるね。決して楽なコンディションなどはなくて、すべてが昨年より挑戦的になってきている。多くのドライバーがトラブルに見舞われ、リタイヤに追い込まれた。僕たちも同じだ。2度のタイヤパンクと小さな技術的トラブルに見舞われた。楽な戦いではなかったよ。ただ、今回5勝目と共に30ポイントを獲得できた」

――スーパースペシャルステージ以外では、ミスらしいミスは感じられませんでした。実際はどんな原因でどこを苦しんだのでしょう。

「問題としては昨日の午後だね。1日を通じて厳しかったのだけど、昨晩のサービスに入ったタイミングが良かった。すでにマシンはドライビングが難しい状態になっていた。この問題の原因の一部は僕自身にあったんだ。ちょっとブレーキを楽観視し過ぎた。ただ、トラブル自体は小さなものだったので、数秒のロスだけですんだ」

――パワーステージでも1位となり最大ポイントを獲得して、チャンピオンシップを2位に押し上げました。これでタナックとの差は4ポイントだけです。スウェーデンの厳しい結果の後としては、もっとも求めていた内容じゃないですか。

「そこには常にリスクがある。リスクを取ることなく表彰台獲得はありえない。しかし、パワーステージで3位以内に入れる良いパッケージ状態にあると感じていたので、それを目標にしていたんだ。パワーステージトップは、ケーキの上にさくらんぼを追加したようなものだね。スウェーデンの後としては、非常に良い結果だ。これで安心だとは言えないけどね。まだまだシーズンを心配するには早すぎる段階だ。しかし、大きな差をつけられるよりは良い。ここでの目標は勝利だったし、それは成し遂げられたよ」

◆トヨタのタナック、ラリー・メキシコ初の表彰台

©TOYOTA GAZOO Racing

以下、コメント。

――タナック、チャンピオンシップトップからスタートして、なんとかそれを守りました。そしてラリー・メキシコ初の表彰台です。金曜日の時点で表彰台獲得は可能だと信じていましたか?

「そうだね。僕が思うに、表彰台に上がるだけの力を得るため、そのために僕たちは長い期間働いてきた。だから、結果には文句はないよ。決して楽ではなかった。僕自身、マシンはすごく良い状態で、すべてが思ったとおり動いていると感じていた。良いタイムでまとめることは難しく、競争自体には苦労したけどね。オジェは金曜日から速かった。タフな1日だったよ。残念だったのは、今日の最後にラッピにほんの少し差をつけられてパワーステージ5位に入れなかったこと。でも、全力は尽くしたよ」

─―今朝の走りについて教えてください。

「まず言いたいのは、フォードのエバンスは、すごく安定していてタフな相手だったこと。常にトップタイムに近いものを叩き出していた。土曜日のランチの時点で僕たちは20秒負けていて、このタイム差を取り返すのはこの日しかないと感じていた。もし、土曜日のうちに20秒差を埋めなければ、今日チャンスはなかっただろうね。でも、僕たちはなんとかタイム差を取り戻し、今朝の時点で選択できるタイヤも良い状態にあった。

今朝は全力ではなかった。それでいてクリーンに走ることが出来て、タイム差を広げることもできた。じつはパワーステージの早い時点で、タイヤのパンクに見舞われた。そこで少し不安に駆られたんだ。走行中の僕はエバンスがどの程度のタイムを出すかわからなかったからね。そして残念ながらパワーステージでのポイント獲得はならなかったんだ」

©WRC

ラリー・メキシコを終えてドライバーズチャンピオンシップは、

1位オット・タナック(トヨタ)/65ポイント
2位セバスチャン・オジェ(シトロエン)/61ポイント
3位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/55ポイント
4位クリス・ミーク(トヨタ)/35ポイント
5位エルフィン・エバンス(フォード)/28ポイント
6位エサペッカ・ラッピ(シトロエン)/20ポイント

となっており、マニュファクチュアラーズタイトルは、1位トヨタ/86ポイント、2位シトロエン/78ポイント、3位ヒュンダイ/77ポイント、4位フォード/45ポイントだ。

こうしてラリー・メキシコは終了した。次戦は3月28~31日に開催されるラリー・フランス。地中海に浮かぶコルシカ島で開催される、ターマック(舗装路)ラリーだ。1万のコーナーがあると言われ、まともな直線はない。ドライバーの腕もだが、マシンの操安性が大きく問われる。

今回のラリー・メキシコ、そして、次戦のラリー・フランスという両極端なコンディションのラリー両方に速ければ、シーズン全体で速いことは間違いない。そんな視点でも楽しめるラリーだろう。次戦も楽しみにしたいところだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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