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ドラマ『私のおじさん』が描く“自立”。数え切れない苦しい夜も抱きしめたくなる最終回に

就職した途端、超過酷ロケで有名なバラエティ番組『限界MAX★あなたも私もヤッテミー!!』に配属されたポンコツ新人AD・一ノ瀬ひかり(岡田結実)。彼女の前に突如現れたのは、「妖精」を名乗るおじさん(遠藤憲一)だった――。

どうやらひかりにしか見えていない妖精おじさんとともに始まった珍妙なお仕事ライフを描いてきた金曜ナイトドラマ『私のおじさん~WATAOJI~』

©テレビ朝日

3月8日(金)に放送される最終回について、小劇場特化型メディア「ゲキオシ!」編集長で、独自のドラマレビューも人気を集めるライター・横川良明さんに寄稿してもらいました。

相次ぐ捏造記事とそれによる炎上騒動で番組打ち切りに追い込まれた『限界MAX★あなたも私もヤッテミー!!』。3月1日(金)に放送された前回第7話は、そんな理不尽を前にしても一生懸命くだらないことをやりきる千葉(城田優)やチームの面々のテレビマンとしての誇りが胸を打つ回でした。

©テレビ朝日

せっかくの最後なのに、「出演者を嘘発見器にかける」というくだらない千葉の企画に納得がいかない様子のひかり(岡田結実)。そんなひかりに声をかけたのが、「デブチーフ」改め「デブディレクター」にランクアップした出渕(小手伸也)。

壁に手をつき、「どうしたんだよ」と無駄にいい声の出渕。戸惑うひかりに、「言いたいことがあるのはさ、みんな一緒なんじゃねえの」と優しく諭します。何だいきなりその“月9”の相手役みたいなキャラは。あれ?ずっと地獄のミサワにしか見えなかった出渕さんが、一瞬キムタクに見えた気が…。

そんな最終回を前にしたまさかの出渕の2枚目キャラに、惚れっぽい僕は危うく恋のカチンコを鳴らすところでしたが、カッコいいところを見せたのは出渕だけではありません。

©テレビ朝日

ネットで番組がディスられまくっていることに腹を立てた九条(戸塚純貴)が、「ヤッテミーの濡れ衣を晴らす会」というアカウントをつくって自作自演の擁護をしたり、打ち上げの席でずっとクールだった千葉が熱い涙を流したり。

なんかみんな人間臭いんですよね。だからつい「バカだな~」と思いつつ好きになっちゃう。そして、そんな彼らがもう二度と同じメンバーで番組づくりができないという現実に、胸が苦しくなってしまうのでした。

◆ひかりが見つけた「大人になる」ということ

©テレビ朝日

そしていよいよ最終回。

なぜだか最初の頃の状態に逆戻りしているひかり…。そんなひかりの前に、再び妖精おじさん(遠藤憲一)が現れます。そして舞い込む、『ヤッテミー!!』復活のチャンス。散り散りになったメンバーが再び結集するんです。

あのボロい会議室にいつものメンバーが次々と集まるくだりは、ちょっとした“プロジェクトX”。僕の頭の中で中島みゆきが高らかに熱唱しておりました。

いいよね、こういう逆境に追い込まれたヤツらが最後に一矢報いるシチュエーションって。目の輝きを取り戻したみんなの顔を見て、こっちのテンションまで上がります。

©テレビ朝日

そして、その『ヤッテミー!!』復活の企画に選ばれたのは、なんとひかりのアイデア。初めて企画が認められ、喜びつつも混乱するひかり。今までは上の人から言われたことをこなしていれば、それで良かった。だけど、今度は自分でいろんなことを決めなくちゃいけない。

次々と投げられるボールを打ち返すのに精一杯。「全部私が決めなくちゃダメ?」と早速ひかりは音を上げます。あったな~、こういうの。「そんな細かいこといちいち確認しなくていいから、いい感じにやっといて!!」って放り出したくなること、いっぱいあった。

でも、それが責任を背負うということ。中心に立って物事を進めるということ。

何となく仕事が好きになりはじめていたひかりでしたが、実は今までのひかりは「仕事が好き」なんじゃなくて、「一緒に働いている仲間が好き」だっただけ。だけど、環境要因に自分のモチベーションを委ねているようでは、プロとは言えません。

©テレビ朝日

この最終回は、ひかりが「番組をつくる」ということにとことん向き合うお話。そして、その中で失敗したり認められたりしながら、またひとつ成長していきます。

そう、この『わたおじ』って作品は、やりたいこともなければ、自分の言いたいこともろくに言えないポンコツ人間だったひかりが、“本当の大人”になるための自立を描いたドラマだったのです。

もうすぐ春。始まりの季節を迎えるのがちょっと楽しみになる最終回です。

はたして『ヤッテミー!!』は見事復活を遂げるのか。ひかりの千葉への恋はどうなるのか。そして、おじさんの正体は一体…? 残りは最終回を観てのお楽しみです。

©テレビ朝日

季節はちょうど3月。この春から社会に出ていく人もいれば、職場の環境が変わる人も大勢いることでしょう。そんな方たちが観たら、きっと4月を迎えるのがほんの少し楽しみになるエンディングになっています。

僕も次で36歳。もうひかりのように新人とは言えないし、仕事でわんわん泣きわめくようなことは昔と比べて確実に減ってきました。

それでも、何者になれるかわからずに悩んだ時期というのが確かに僕にもあって。どの道を選べばいいのか。どうすればなりたい自分になれるのか。焦りと嫉妬の中で、もがいていた日もあった。

押し寄せる理不尽に息苦しさを抱えたり、自分のやりたいことがなかなかできなくて、世界中に当たり散らしたくなるような夜も、数え切れないくらいあった。

そういう躓いたり転んだりを経ての今なのだ、と。最終回を観ながら、これまで歩んできた道のりをぎゅっと抱きしめたくなるような気持ちにさせられました。

©テレビ朝日

そしてそれはきっと僕だけではないはず。

『ヤッテミー!!』の仲間たちや妖精おじさんに会えるのも、これでラスト。最後の最後まで面白い番組をつくることをあきらめないみんなの“悪あがき”が、あなたの心に届くことを祈っています。<文/横川良明>

※番組情報:金曜ナイトドラマ『私のおじさん~WATAOJI~』【最終話】
2019年3月8日(金)よる11:15~0:15、テレビ朝日系24局(※一部地域で放送時間が異なります)