テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
未来をここからプロジェクト
menu

”安倍なつみ”から名付けられた少女がハロプロと共演するまで<阿部菜々実>

現在、どれだけのアイドルが日本に存在するのかを断定するのは難しいが、“売れているアイドル“と定義できる存在となると、その数はぐっと減る。

例えば、武道館での単独コンサート開催を目標とするアイドルは少なくないが、実際にその地に立てた女性アイドルは、AKB48やももいろクローバーZをはじめとして、これまで30グループに満たない。

さらに近年の傾向として、HKT48からデビューした宮脇咲良(※現在はIZ*ONEに専念)に代表される「アイドルの掛け持ち」や「アイドルの転職」、「アイドルの再チャレンジ」も活発化しており、一口でアイドルと言ってもそのキャリアは多様化を極めている。

◆3歳からアイドルになった阿部菜々実

なかには物心がついた頃には、すでにアイドル活動を始めていたという人物もいる。

テレビ番組『ラストアイドル』から生まれたグループ「LaLuce(ラルーチェ)」のメンバー・阿部菜々実(あべ・ななみ)は、なんと3歳からアイドル活動を始め、12歳で一度メジャーデビューを経験している。

©テレビ朝日/テレ朝POST 「LaLuce(ラルーチェ)」のメンバー、阿部菜々実

しかし、思うように活躍できず、仕事が減っていく状況を変えるため、『ラストアイドル』に挑戦。見事、初代センターの座を勝ち取ったのだった。

かつて、念願のメジャーデビューを果たすも、リリースイベントではお客さんが10人以下という厳しい現実を味わったこともある阿部。

そんな彼女が、テレビを通して多くのファンに支えられるようになったいま、どんなことを思っているのだろうか。

◆”安倍なつみ”から名前をつけられた少女

2002年5月、山形県で生まれた阿部菜々実。

彼女は、この世に誕生する前から、アイドルになる運命が決まっていたのかもしれない。両親ともに人気グループ「モーニング娘。」の大ファンで、彼女の”菜々実”という名前は、あの有名アイドルにちなんだものだ。

©テレビ朝日/テレ朝POST 当時1歳。両親は菜々実が生まれる前に2人でモーニング娘。のコンサートに足を運んでいたそうだ

「お母さんは私がお腹のなかにいるときから、アイドルになってほしかったらしくて。両親が大好きな元モーニング娘。の安倍なつみさんにちなんだ名前をつけてくれたんです。でも、全く同じ”なつみ”っていう名前だとモーニング娘。に入れてもらえないかもしれないって心配したらしく、1文字だけ違う名前になりました(笑)」

母の影響か、はたまた本人の資質なのか。彼女は物心がつく頃には、将来進む道を決めていたという。

「一番古い記憶は幼稚園の頃。3歳のときに元モーニング娘。さんの『シャボン玉』っていう曲のライブ映像を見て、私も本気でアイドルになりたい!と思ったんです。自分では覚えてないんですけど、2歳のときに『ザ・ピ〜ス!』を踊ってたこともあるらしくて……」

◆4歳からアイドルグループに加入

物心がつく前から歌って踊ることが大好き。そんな彼女がアイドルを志すのは必然だった。

©テレビ朝日/テレ朝POST

「モーニング娘。さんに入るために、ダンスを習いたいと思って、仙台の事務所に入れてもらいました。山形から仙台に向かって受けた面接では、焼肉屋さんのCMのセリフを読んだのかな? その台本を渡されたことが記憶に残っています。1年くらいで事務所でグループを作ることになって。4歳のころには、『いちごレッキス』というグループでの活動が始まりました」

なんと、4歳からアイドルグループに入っていたというのだ。

初めてのパフォーマンスは、今でも忘れない。仙台のお祭りの路上だった。

「お祭りに来たお客さんが通り過ぎるなかで、踊った記憶があります。その頃はまだ自分でなにをしているかわかっていなかったので、アイドルという自覚もなかったですね」

そして6歳の頃にはアイドルユニット「Rex」に加入。10〜12歳のお姉さんたちの中に混ざって、本格的にパフォーマンスを学ぶことになっていく。

9歳で現在も所属しているグループ「mImi」(後に「pax puella(パクスプエラ)」へ改名)に加入すると、単に歌って踊るだけでなく、プロ意識も生まれたという。

そのきっかけはアイドルのフェスに出演したことだった。

「それまでは、ただ歌って踊るのが楽しいだけだったけど、この時期から握手会をすることも増えて。ファンの方たちに好きになってもらう、応援してもらうことが大事なんだって意識をし始めました」

©テレビ朝日/テレ朝POST 当時10歳。すでにアイドルユニットで活躍していた

わずか9歳にして、ファンに好きになってもらうためにはどうすべきか考えていたという阿部。彼女はまさにアイドルになるために生まれてきた少女だった。

◆「『ミュージックステーション』にも出て、みたいな想像をしてたんですが……」

2014年、「mImi」(2016年にpax puellaに改名)としてようやくメジャーデビューを果たし、アイドルとしての夢を叶えたはずだった阿部だが、嬉しい気持ちよりも、はがゆい思いが強かった。

「リリースイベントでライブをやっても、お客さんが10人以下のときもあって……。デビューする前は、CDがたくさん売れて、『ミュージックステーション』にも出て、みたいな想像をしてたんですが、いざデビューしたら思い描いてた理想とぜんぜん違いました」

©テレビ朝日/テレ朝POST 当時15歳。山形の公立中学校を卒業

デビューからあっという間に2年が経過し、周囲からは「アイドルを辞めるべきでは?」という声も上がり始めてしまった。

「中学3年生だったこともあり、周りの人たちから『いったん、受験勉強に専念したらどうか』と言われてしまって、悩んだこともありました」

しかし、阿部はアイドルでいることを諦めきれない。 そんなときに知ったのが、あの『ラストアイドル』のオーディションだった。

「自分がアイドルを続けるためにも、昔からずっと一緒に頑張ってきたpax puellaのメンバーのためにも、頑張ろう。そう思って番組に挑戦しました」

アイドルになるために生まれた阿部を、神は見捨てなかった。

背水の陣で臨んだ結果、番組発グループの初代センターという、最高のポジションにつくこととなったのだ。

「本当に嬉しかったです。テレビでパフォーマンスをするのも、夢が叶ったなって」

◆「お客さんが10人のときと、私は何も変わってないんです。でも……」

現在はラストアイドルと並行する形で、元々所属していたユニットpax puellaの活動も継続している。

©テレビ朝日/テレ朝POST 当時16歳。アイドルになるために生まれてきた彼女は大きなステージで歌うようになった

「昔からずっと一緒に頑張ってきたメンバーたちと一緒なので、本当に楽しいです。ラストアイドルとpax puellaの両方で、どちらにも良い影響を与えられるように、と思って活動を続けています」

デビューシングルのイベントではファンが殺到し、握手券が即完売。Zepp TokyoやTOKYO DOME CITY HALLなど、これまで体験したことのない大きなステージでのパフォーマンスも当たり前。観客が10人以下の時代とは、何もかもが変わった。

「でも、お客さんが10人のときと、私は何も変わってないんです。でも、一つだけ違いがあるなら……」

彼女が唯一異なると答えたのが、眼前に見える景色だ。

「お客さんの数も、ステージの大きさも、周りの環境がぜんぜん違う。テレビに出ることの影響力ってすごいんだってびっくりしました」

◆「武道館に立ちたいとかは言いたくないんです」

『ラストアイドル』で勝ち残ってからというもの、彼女が仙台で思い描いた夢がいくつも実現している。

©テレビ朝日/テレ朝POST

「一番嬉しかったのは、サプライズで鈴木愛理さん(元「℃-ute」メンバー)と一緒のステージに立たせてもらったこと。夢にも思ってもみなかったことので、本当にびっくりしました」

自分の名前のルーツでもあり、幼少期には憧れの存在だったハロープロジェクトのアイドルたちが、現在はライバルとなっている。

そのことについて、阿部はどのように感じているのか?

「やっぱり、CDの発売日が同じだと意識しますね。それより感じるのは、自分がようやく戦える場所まで来れたんだ、ということです。正直『ラストアイドル』になる前だったら、ハロープロジェクトのオーディションを受けたい気持ちも、心のどこかに残ってたんですけど(笑)。今はこの自分がいる場所で、悔しい思いをしてきたぶん、誰にも負けないように、もっと上を目指してがんばっていきたいです」

3歳からアイドルを続け、ようやく夢を叶え始めた彼女が見据える、今後の目標とは?

「武道館に立ちたいとかは言いたくないんです。言っちゃうと、そこに立ったときに終わっちゃう気がするから。ライブを重ねるごとに、どんどん大きなステージに立てるようになりたいです。最終的な目標は、自分のアイドル像を模索しながら、日本中、知らない人がいないくらいのアイドルになることです。大きすぎる夢ですけどね(笑)」

©テレビ朝日/テレ朝POST

1月25日から全国公開される映画「がっこうぐらし!」では主演を務めたが、収穫はあったのだろうか。

「演技は未経験だったので、オーディションに受かると思ってなかったんです。できないと思っていたことに挑戦したことで、可能性が広がったと思います。焦ったり悲しんだりする、感情を出すシーンの撮影では、表現力が身につきましたね。今まではダンス振り付けを完ぺきに覚えることだけを考えていたんですけど、今後は歌詞を理解して表現できる様になると思うので、アイドルの活動に活かしていこうと思います」

<撮影:長谷英史、取材・文:森祐介>

※阿部菜々実(あべ・ななみ)プロフィール

2002年5月、山形県生まれ。モーニング娘。に憧れて、3歳からアイドル活動を開始。14歳でメジャーデビューを果たすも、思った活躍ができず『ラストアイドル』に挑戦し、見事初代センターの座を勝ち取った。「LaLuce(ラルーチェ)」と、仙台で活動する「pax puella」を兼任。現在は仕事で毎回お弁当が出ることが嬉しいようで、「ラストアイドルになってから一番おいしかった弁当のメニューはエビチリ」とのこと

※映画『がっこうぐらし』

2019年1月25日全国公開。原作は、海法紀光(ニトロプラス)と千葉サドルによる同名のコミックで、学園で共同生活を送る4人の女子高生の日常と生き残りをかけたサバイバルホラーの非日常を描いた、大人気作。コミックの累計発行部数は250万部を超え、TVアニメも圧倒的な人気を誇る。実写化にともない、『呪怨』シリーズのプロデューサーと『リアル鬼ごっこ』の柴田一成監督がタッグを組んだ。『ラストアイドル』からオーディションによって選出された阿部菜々実・長月翠・間島和奏・清原梨央の4名が、メインキャスト

※番組情報:ラストアイドル4thシーズン『ラスアイ、よろしく!
【毎週土曜】深夜0:10~0:35、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

はてブ
LINE
おすすめ記事RECOMMEND