トヨタ、タナックが3位発進。“勝負の金曜日”に自信のコメント【WRC:ラリー・スペインDAY1結果】
現地時間の10月25日、WRC(FIA世界ラリー選手権)第12戦「ラリー・スペイン」のデイ1が開催された。
SS1はバルセロナ市内に作られたターマック(舗装路)3.2kmの特別コース。
通常木曜日に行われるSS1は顔見世の要素が強く、タイム差も1秒以内に10台近いマシンが入るが、今回のSS1はそうならなかった。
デイ1の結果は、1位セバスチャン・オジェ(フォード)、2位はトップから3秒7遅れでティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)、3位は同4秒2遅れでオット・タナック(トヨタ)、4位は同5秒6遅れでアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)、5位は6秒0遅れでエルフィン・エバンス(フォード)、そして6位にはひとつ下のクラスであるWRC2のマシンが続いた。
さらにその下には、11位にヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ)が同9秒7遅れ、14位にティーム・スンニネン(フォード)が同10秒9遅れなど、たった3.2kmのコースにも関わらず、WRCクラスで10秒以上の差が出る形となった。
この結果の最大の理由は、全13戦で唯一となるミックスサーフェイスラリーの特性にある。
木曜日のSS1はターマック(舗装路)だが、金曜日早朝からはグラベル(未舗装路)ラリーがスタートする。
そのため、グラベルにマシンセッティングを合わせた状態ほど、ターマックでは走りにくくなる。それはトヨタのマシン、次にヒュンダイ、そしてフォードのマシンという順で顕著にあらわれていた。
11位だったラトバラのマシンは、アクセルオンでリヤサスペンションが沈みこみ、ブレーキングではフロントサスペンションが沈み込む。さらに車高が見るからに高い。
左右にマシンを曲げるときも車体が大きく傾き、完全にグラベルでの走りに合わせたセッティングだった。走行後のラトバラも、コースとマシンがまったく合っていないことをコメントした。
「ここではグリップがまったく出なかった。3本のソフトタイヤと1本のハードタイヤを組み合わせたのだけど、ウォームアップでハードタイヤを温めることが非常に難しかった。マシンバランスが良くなかったね。ペースが出せなかった」とタイヤに上手く熱を入れられなかったことを残念がった。
3位に入ったタナックは、トヨタ3台の中では安定した動きをしていた。走行直後は暫定1位だったこともあり、タナックのコメントは自信に満ちていた。
「僕にはこのトヨタのマシンがある。このアドバンテージを生かすよ」と語り、マシン的に有利と言われている金曜日のグラベルでリードを築く走りができると感じていたようだ。
そして圧倒的な速さを見せたのが、1位のオジェだった。実際、マシンの車高は低く見え、車体はグラベルラリーセッティングとは思えないほどで、前後左右に揺れることなく安定していた。見ていた観客も、明らかに動きが違うことを実感したはずだ。
「ここは良いけど、明日からは決して楽じゃない。というのも、ここではタイヤ戦略が有利に働いた。ただ、明日からは他のドライバーと比較すると少しタイヤ的には厳しいからね」と、ここでタイムを稼ぐべく、グラベルよりターマックで有利となるタイヤ選択をしていたことを明らかにした。
金曜日はSS2からSS7までの6つのSSが行われる。SS4とSS7はグラベルとターマックの両方があるが、それ以外はすべてグラベル。
グラベルに有利と言われているトヨタとヒュンダイのマシンは、この金曜日の走りが大きなポイントになるだろう。
SS2の現地スタートは26日9時33分。日本時間では16時33分のスタートとなる。タナック、ヌービル、そして王者オジェの走りに注目したい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>