世界196カ国の着物、東京五輪開会式で披露へ 「各国のプラカード持つ人に着てほしい」
テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。
現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。
今回、修造が応援に訪れたのは、福岡県の久留米で呉服店を営んでいる高倉慶応さん。
迎えてくれた部屋に敷き詰められた色とりどりの着物は、すべて世界の国々をイメージして作られたものだ。
高倉さんが中心となり、4年前から製作を開始。2020年の東京五輪に向け、196カ国分の完成を目指している。
「2020年の開会式で、各国の選手団を先導するプラカード持つ人に、それぞれの国の着物を着てもらう!というのを目指しています」(高倉さん)
部屋に飾られた着物を見て、「もう本当に、これ好きです」と足を止めた修造のお気に入りは、ケニアがモチーフの着物。雄大な自然と動物たちの楽園が描かれている。
その他にも、ドイツはベートーベンなどを輩出したということでクラシック音楽をイメージしている。
◆東京五輪で“最大級のおもてなし”を
そしてアメリカの着物の帯には、あまりイメージにないオリーブの葉が描かれていた。
アメリカ人にも「なぜ、オリーブの葉?」と問われるそうだが、その由来はアメリカの国章にあるという。
実はアメリカの国章にあるイーグルは、両足でそれぞれ“戦争”を意味する13本の矢と“平和”を意味するオリーブの葉をつかんでいる。
そしてよく見ると、“大統領”を意味するイーグルはオリーブを持っている方の足に首を傾けている。ここには、「アメリカの大統領は、常に平和を求めている」というメッセージが込められているそうだ。
それを踏まえた上で、高倉さんはオリーブをアメリカの着物に入れてもらったという。
このこだわりに修造は「アメリカの人も、この着物を通してアメリカの文化を学んでいくような…」と感嘆の声をあげる。
「2020年のオリンピックで各国の選手、関係者にどうやったら、日本らしくおもてなしできるのか、一番喜んでもらえるのかということを考えています」(高倉さん)
その国のことを深く知ってこそ、“真のおもてなし”と考える高倉さん。ここまで1つ1つのデザインにこだわるのには、来る東京五輪で“最大級のおもてなし”をしたい、という思いが秘められていたのだ。
◆職人たちが競い合う“着物のオリンピック”
そしてもう1つ、おもてなしを形にするために、こだわっていることがあるという。
「振袖は、全体の90数%はインクジェッタという機械を使った印刷で作っているんです。1つずつ手作りで作っている職人さんたちは、もう今、絶滅寸前なんです。この時代、1つ作るのに大体1年から、長いのは2年くらいかけているんです」(高倉さん)
196カ国を目指している着物はすべて、職人が手作りした一点ものだ。
もちろん、職人の仕事は塗るだけではない。機で織り、じっくりと染める。すべて日本各地に脈々と伝わる、伝統の技を駆使して作られているのだ。
高倉さんは日本古来の着物の良さを生かすべく、全国の職人たちの協力、賛同を得て1つずつ着物を作っていたのだった。
高倉さんの情熱に心動かされた職人たちにも、新たな発見があったという。
シリアとパラオの着物を担当した鎌倉友禅の坂井教人さんは「70年仕事をやってきたが、あんなに喜んで仕事をしたのは初めて。ものづくりの本当の姿を学んだ」と語る。
「若い先生でもベテランの先生でも、プロ同士は「半分はライバル視しながら、半分は勉強になる」とおっしゃって下さっています。だから、ある意味作品が勝負になるそうなんです。まさに着物のオリンピックみたいですね」(高倉さん)
日本中の職人たちが腕を競い合い、渾身の力作が次々と誕生。出来上がった着物の展示会も頻繁に行われるようになった。
そして今年2018年4月、ついに折り返しの100か国を突破!目標の196カ国へ着々と近づいている。
「日本文化は相手の国の良い所をきちんと取り入れながらも、自分たちも美しくなれる、というメッセージですね。これが日本らしいと思うんですね。私たちとしては、この日本らしさを着物に描くことによって伝えたいです」(高倉さん)
2020年に向けて「開会式に着物で参加して、世界の心を1つにしたい!」と、高倉さんは最後に熱い思いを口にした。<制作:TOKYO応援宣言>
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系