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陸上短距離における「スターター」の重要性 日本人初の9秒台を生んだ“こだわり”

テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。

現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。

2017年9月9日、日本人初の“9秒台”が生まれた。福井で行われたインカレ陸上、男子100m決勝で桐生祥秀選手が9秒98をたたき出したことは記憶に新しいだろう。

今回修造が訪れたのは、その歴史的快挙のかげで、この記録を演出した人物だ。

©TOKYO応援宣言

9秒98が記録されたレースで号砲を鳴らした、スターターの福岡渉さん。福井の地で陸上教室の代表も務めている人物だ。

陸上短距離において、スタートの合図をするスターターは選手の記録に大きく関係する重要なポジションであるが、この道12年のキャリアを誇る福岡さんには独自のこだわりがあるという。そのひとつが、選手がスタートラインに立つ際の“掛け声”だ

©TOKYO応援宣言

「オンユアマーク」と平たく発音するのではなく、「オン!ユアマーク」。

一聴すると癖のあるこだわりに、修造も驚きを隠せない。ただこれには、福岡さんの選手への思いが込められている。

「後ろから背中を押してあげたい気持ちで“オン!”を強調しています」(福岡さん)

桐生選手が9秒台を記録したあのレースでも福岡さんは、「オン!ユアマーク」としっかりかげながら選手たちにエールを送っていた。

 

◆50m付近で起きた奇跡

そしてもうひとつ、福岡さんが教えてくれたこだわりが、“号砲を鳴らすタイミング”だ。

陸上の短距離では、追い風が2.0mを超えると公式記録と認められず、参考扱いになってしまう。だからこそ、号砲のタイミングを決めるスターターは、その最適な間を求められるのだ。

男子100m決勝が行われたあの日、直前のレースも追い風参考記録になるなど、福井では強風が吹いていた。

「休憩中、吹き流しを見ながら、風が強くなったり、弱くなったり、また止まったりという一定のリズムで繰り返しているときがあったので、そのリズムがちょうどうまいこと号砲と重なったらいいかなと思っていました」(福岡さん)

©TOKYO応援宣言

桐生選手の9秒台が出るのか注目が集まったレース。福岡さんは風のリズムを頭の中で刻み、風が弱まるタイミングを読んで号砲を鳴らした。しかしこの後、ベテランスターター・福岡さんの想像を超えるドラマが待っていた。

桐生が一気にスタートを切った直後だった。

「追い風がぶわーっと吹いていましたね」(福岡さん)

このままでは、どんな記録でも参考扱いになってしまう…そう思った50m付近、ちょうど競技場の吹き流しを過ぎるところで、奇跡は起こった。

©TOKYO応援宣言

「桐生さんここ(50m付近)まで来ました。吹き流しも見えましたよね。どう感じました?」(修造)
「風が止まっていました!」(福岡さん)

最初強く吹いた風が、50m中盤を過ぎた時には突然やんだのだ

このレースの風速は、記録が認定される追い風1.8m。歴史的な記録誕生のウラで、福岡さん自身が“神風”と称する風をめぐる奇跡のドラマがあったのだ。

©TOKYO応援宣言

あの感動のレースから1年。福岡さんは今、目指している夢がある。それは、2020年東京オリンピックでのスターターだ。国内だけでスターター有資格者が4万人もいるなか、世界でわずか6人ほどしか選ばれない狭き門に挑戦している

「2020年の男子100m決勝。福井からの神風を新国立競技場で吹かせたい!」(福岡さん)

奇跡の経験を糧に大きな夢を目指す福岡渉さんの力強い決意を聞いた修造は、「オン!渉マーク」――挑戦をし続ける福岡さんに、エールという追い風を送り続けることを誓っていた。

※番組情報:『TOKYO応援宣言
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系