ツール・ド・コルスで見えた、第5戦「ラリー・アルゼンチン」でのトヨタの大きな可能性【世界ラリー(WRC)】
4月16日深夜に放送されたテレビ朝日のスポーツ情報番組『Get Sports』(毎週日曜日0時45分~、一部地域を除く)で、トヨタのWRC(FIA世界ラリー選手権)挑戦、その第4戦となる「ラリー・フランス」での戦いの模様が放送された。
開幕戦のラリー・モンテカルロで2位、第2戦のラリー・スウェーデンで18年振りの優勝、そして第3戦ラリー・メキシコで6位入賞を果たしたトヨタ。18年振りの参戦とは思えないほどのトップレベルで戦いに挑んでいることが紹介されたが、迎えたのは最も難しいラリーのひとつと言われている「ラリー・フランス」。
1万以上のコーナーがあるといわれる難しいコースでの戦いに注目が集まった。
大会前にトヨタのエースであるヤリ‐マティ・ラトバラは、「ここラリー・フランスは好きなコースだが、タイヤの温度管理とブレーキ対策が大きなポイントになる」と予想していた。
大会初日からトラブルがトヨタを襲う。
SS1を走行していたユホ・ハンニネンは、路面状況の変化でわずかにマシンを大きく横滑りさせてしまい、運悪く橋の壁に右リヤをヒットさせてしまった。それだけならばラリーを継続できたかもしれないが、サスペンションからオイルが漏れて出火。マシンの右リヤを燃やしてしまい、デイリタイアを選択した。
エースのラトバラも、マシンこそしっかり走るのだが、どうにも攻めきれずに初日はトップから1分遅れの6位。ラトバラ本人は自分が慎重になりすぎたとテレビのインタビューには答えたが、マシンのセッティングが詰まってない状態で自信を持って攻めきれないのが原因だった。
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大会2日目。
トヨタのラトバラはギャンブルを選択した。午前中に新たなセットアップの方向性を掴み取ったラトバラは、午後に向けてマシンのセッティングを大幅に変更した。マシンの要でもあるトランスミッションやサスペンションまでまるごと交換する大ギャンブルだ。
だが、これが見事に当たった。本人も午後については、「マシンがまるで見違えて、自信を持って攻めることが出来た」とこのギャンブルが成功であったことを喜んだ。じつは2日目にラトバラは4位まで浮上しているのだが、5位との差が本当にわずかで、午前のままのマシンでは逆転されていた可能性が高いのだ。
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大会最終日、マシンのセッティングに自信を持ったラトバラがみせた。
最後のSSは「パワーステージ」と呼ばれており、ラリー全体のチャンピオンシップポイントとは別にパワーステージのボーナスポイントがもらえる。ラトバラは、ここで見事1位を獲得。さらには、最終SSの前に5位に落ちていた順位を0秒1差で再逆転。見事4位入賞という結果に繋げた。
シーズン初のターマック(舗装路)ラリー、1万以上のコーナー。そして、大会2日目に大きく変えたセッティングでマシンの新たな潜在能力を大いに引き出したラトバラ。
これによって、これから始まるラリー・アルゼンチンに大きな可能性が見えてきた。
というのも、ここまでの4戦、ラリー・モンテカルロ、ラリー・スウェーデン、ラリー・メキシコ、そしてラリー・フランスと、すべてコース特性が違うラリーだったが、そのすべてでトヨタは上位をキープし続けてきた。
次のラリー・アルゼンチンは、標高こそラリー・メキシコほどではないが“高地ラリー”であり、ラリー・スウェーデンのような高速部分もあり、ラリー・モンテカルロのように滑りやすくも大きなコーナーがいくつも続き、ラリー・フランスのように狭く路面変化の多いセクションもある。
つまり、これまで得た経験すべてが必要となるラリー。それが次戦、ラリー・アルゼンチンなのだ(4月27~30日開催)。
果たして、成長したトヨタは、フォード・ヒュンダイ・シトロエンといった経験豊富なライバルたちにどう挑むのか? 『Get Sports』では、次戦もトヨタに密着したラリーの魅力を伝える予定だ。
<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>