アメリカ挑戦1年目の佐々木麟太郎、ド軍・ロバーツ監督からの“金言”「君は打てるけど、この舞台に立つには…」
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、アメリカの名門・スタンフォード大学に進学した佐々木麟太郎を特集した。
岩手の強豪・花巻東高校で、高校通算140本という最多本塁打を放った佐々木。卒業後は海を越えてアメリカへ渡り、アメリカの大学からメジャーリーグを目指す異例の挑戦を続けている。
高校時代から取材を続ける長島三奈は、佐々木の成長と苦悩の1年に迫った。(※前後編の後編)
◆メジャーで活躍するため「小さいけれど大事なこと」
佐々木がアメリカに渡って間もない2024年5月。さらなる成長につながる出来事があった。
花巻東高校の先輩・大谷翔平の試合をチームメイトと観戦に訪れた時のこと。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が声をかけてくれたのだ。
「ひとつアドバイスがある、守備を大切にしてほしい。君は打てるけど、この舞台に立つためには両方が必要だ。守備も本気で頑張れ。それがここに来るための、小さいけれど大事なことだ。会えてよかった。ガンバッテネ!」(ロバーツ監督)
この助言に、佐々木は強い刺激を受けた。
「自分にとってすごく『あぁそうだよな』って。守備ってやっぱり安定してできるものだと思うし、全試合通してやらなきゃいけないもの。その時にあらためて強く感じました。今年はシーズンが始まるまで、監督・コーチと一緒に守備に対してもすごく取り組んできたと思います」
ロバーツ監督の言葉をきっかけに、ファーストの守備練習にもこれまで以上に打ち込んだ結果、名門スタンフォード大学で1年生ながら全試合にスタメン出場を果たした。
◆直面した壁「ダイナミックさを失っていた」
一方、課題が見えたのは打撃だ。
長島:「こちらに来て打撃の手応えはいかがですか?」
佐々木:「今年はもう全然ダメですね。自分の中ではもっとできるという気持ちがあった1年でしたし、それをずっと探し続けた感じでした」
シーズン序盤、4試合で4本のホームランという好スタートを切ったものの、そこからおよそ1か月もの間、長打から遠ざかってしまった。
佐々木:「アメリカに来てから、平均球速がすごく上がりました。チームによっては160キロくらい投げるピッチャーもいて、そこにアジャストするためにシンプルでコンパクトなフォームを作り上げてきたつもりだったんですけど、ダイナミックさを失っていた部分もあったのかなと」
160キロにもおよぶ速球に対応するなかで、本来のバッティングを失ってしまったという佐々木。悔しさと向き合いながら、改善に取り組んだ。
佐々木:「何を変えたかと言うと、打つポイント、打点って言うんですかね。それを思い切って今はすごく前にしています。私はスイング軌道的に振り上げるタイプで、バットに当たるポイントが今までちょっと近すぎたので、振り上げにいこうとすると全部ゴロになってしまった。それを今わざと自分が思っているより前で捉えることで、ボールが上手く上がるようなラインに入っていくようになったんじゃないかなと」
持ち味である長打を取り戻すために、シーズン途中からバッティングの修正に着手。その努力について、コーチのアンドレ・マーキュリオ氏が語る。
「先日の夜、全員が帰って僕も寝ていた頃、麟太郎は22時半にひとりで打っていたってクラブハウスの用具係から聞いたんだ。きっと彼は1年中そうしてきたんだろう。麟太郎の努力は誰にも負けないんだ」
誰もいない練習場で、深夜までバットを振り続ける。そんな佐々木の姿は、やがてチームにも変化を与えていった。
「彼の練習に対する姿勢は、僕たちにとってすごく刺激的」
「彼にならって努力を惜しまない選手が増えれば、チームにいい影響になる」
チームメイトたちはそう称賛する。チームを率いるデイビッド・エスカー監督も次のように評価している。
「彼の強みは打撃だが、もうひとつはよくなるために諦めない姿勢です。最も才能のある選手が最も努力家である姿は、全員に良い影響を与えるんです」
◆「ホームで打つホームランは、感覚的にもすごく嬉しい」
5月、今シーズン最後となるホームでの3連戦。ついに努力の成果が実を結び、今シーズン7本目となる待望のツーランホームランを放った。
佐々木:「すごく良い伸び方をしていたので、これは間違いないなと。ホームで打つホームランは、感覚的にもすごく嬉しいですね。みんな勝ちたい気持ちがある中で貢献できているのはすごく嬉しいことですし、喜びや感謝を感じます」
さらに、翌日のホーム最終戦。延長10回、ツーアウト満塁で打席に入った佐々木は、デッドボールで押し出しのサヨナラ勝ちを演出。チームの勝利に体を張って貢献した。
試合後には、チームメイトから祝福の水を浴び、笑顔を見せる場面もあった。
佐々木:「いつも水を“かける側”をやっているんですけど、初めてかけられたので(笑)。それも良い経験になりましたね」
長島:「でも当たるのはちょっと嫌じゃない?」
佐々木:「いやいや、運ありきですよ(笑)。当たるのも仕事ですから」
高校時代、寮の部屋には「貢献こそ活躍」という言葉を掲げていた。その頃から貫く原点だ。
◆今でも続く仲間との絆
長島:「花巻東高校の同級生と連絡取り合ったりしていますか?」
佐々木:「はい。もうしょっちゅう。本当に良い仲間たちで、それぞれ新たな一歩を歩み出してるので、すごく刺激をもらっています」
今も気持ちを高めてくれる仲間の存在。なかでも、特に長い時間をともに過ごしてきた2人の同級生がいる。
法政大学で野球を続ける熊谷陸は、佐々木とは小学生時代からの幼馴染だ。2024年、東京六大学野球で、1年生としては32年ぶりとなる首位打者に輝いた。
「子どもの頃から一緒にやってきた友だちがすごいところで活躍していて、やっぱり麟太郎には負けたくないなっていう強い気持ちがあります。まずプロ野球選手になって、もっと上のレベルで一緒に戦いたいです」
そんな熊谷は、佐々木から“プレゼント”をもらったことが。
「正月に帰省して一緒に練習した時に、バッティング手袋をもらいました。この手袋をつけて、高校の時打ったことのなかったホームランを紅白戦で打てたんです。力になったのかなと思います」
人生初ホームランは、佐々木にもらった手袋で。
そしてもう1人が、武蔵大学でマネージャーを務める藤澤翼。高校時代は記録員として、佐々木をいちばん近くで支えた同級生だ。
そんな彼だからこそ、アメリカで戦う姿から感じたことがあるという。
「彼の魅力は、1人で野球をしないところです。仲間の1本1本を全員で喜ぶ。チーム愛と言いますか、チームで野球してるなと感じます。立場は違いますけど、自分も人並みの結果で満足したらいけないなと、毎回刺激を受けています」
藤澤は、佐々木にこんなエールを送った。
「これからも結果を出し続けてやってほしいんですけれど、やっぱり野球は難しいスポーツなので、落ち込んだ時はいつでも戻ってきてくれれば。自分たちも仲間なので受け入れるので」
野球で結ばれたあの日の仲間たち。場所が変わっても、その絆は今も続いている。
◆終わりなき旅路
高校時代、佐々木は自ら考えたこんな言葉を自身の部屋に掲げていた。
「野球道 極める者の旅路に終わりはない」
そんな佐々木の旅路は、いよいよアメリカ挑戦2年目へ。2026年7月には、メジャーリーグのドラフト指名資格を取得し、ついに夢舞台への扉が開かれる。
佐々木:「あそこ(メジャーリーグ)が最終的なゴールとしてずっと目指しているので、来年がすごく大事な1年になっていくと思いますし、分岐点だと思います。自分自身が成長しないとあそこに立つ保証もないので、頑張りたいなとすごく思っています」
長島:「アメリカの旅路で目指していきたいもの、極めていきたいものはありますか?」
佐々木:「もちろん野球選手としても極めていきたいですし、人としても良い影響をもたらせるような人間になりたいというのがいちばんです。佐々木麟太郎の価値はそういうところにあるべきだと思っています」
長島:「この先もずっと旅路は続いていくんですね」
佐々木:「そうですね、ここからです」
佐々木麟太郎の終わりなき旅路。大きな一歩が刻むその先には、無限の景色が広がっている。
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)